挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.8~

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

240/338

8月18日曇り 『クエスト進行中』

「新しいの、入ったぞー」

 何もない平原の道を歩きながら、カルラは空虚にそう言った。誰に聞かせる訳もなく、ただ歩きながら告げた言葉に、シュラは眉を潜める。

「……あの、どうされましたか?」
「いや、一日1回は言っとかないといけない気がしてな。風邪でも引いたか?」
「少なくとも、私の知ってる風邪ではありませんね……」

 呆れた様子でシュラは小さく溜め息をつき、遠くに見えてきた壁を見る。

「ところで、私達はどこに向かっているのでしょうか。もうすぐ国境ですよね?」
「ああ、今からS級クエストに向かうからな」
「……ふ、ふぁいっ!? 」

 思わぬ答えに目を丸くするシュラの口からは、間が抜けた声を漏れる。そして、平然と歩き続けるカルラの顔を見て抗議した。

「危険だから止めておくべきだと、沢山言われていたではありませんか! それに、私達はB級冒険者で、S級はまだ受けられないランクでしたよね!?」

 動揺するシュラが語気を強めて言うと、頭を掻いてカルラは、適当に口を開いた。

「落ち着け、俺達だって冒険者として成長してる」
「まだ5日目ですけど!? ……まさかとは思いますが、依頼書を盗んだわけではありませんよね?」
「そりゃ、まあ、その、だな……」
「盗んでしまったのですかっ!?」

 明らかに目が泳いでいるせいか、言葉に迷いすぎたせいか、シュラはすぐにカルラの思考を理解する。不機嫌そうに、白く幼い顔を歪める弟子の様子に、師であるカルラは落ち着かせようと言葉を紡いだ。

「違ぇよ。受付嬢のオッサンが居ただろ? ちゃんと視線も交わしたし、熱意も見せた。あと、念も送った」
「一切会話が見られないのは気のせいですか……?」

 その問いに、カルラは首を横に振って否定する。

「でも、最後には何か伝わったみたいで、良い顔で頷いていたぞ。そのあと、食事に誘われたんだが?」
「明らかにナンパだと思われているではありませんかっ!?」
「えっ!! なんでっ!?」

 不振な態度で女性を見れば、恋だと勘違いされるのだが、カルラにそのような知識は皆無である。
 カルラが背負っていた鞄の中で会話を聞いていた、刀に変化している妖刀のクリョクは、カタカタと震えながらシュラに言う。

「シュラ殿、主に乙女心は分からぬものでござりまする。期待はせぬように」
「それは、そうですが……」

 どこか諦めたようにシュラはそこで黙り込む。どこか納得のいかない反応ではあるが、これ以上の言及は首を絞めるだろうと考えてカルラも何も言わない。
 誰も喋らなくなったところで、クリョクがカルラに言う。

「しかし主、ご相談が」
「暇だから聞いてやる。なんだ?」

 何かモジモジと、背中に振動を感じていると、心が固まったのか、クリョクは上ずった声で願望を口にした。

「もしも、主と受付嬢殿が、そのような関係になったとき、彼の筋肉について克明なデッサンをお願いしたいのでありまする!」
「誰がそのような関係になるかっ!?」

 もはや妖刀の癖に、人間のような変な趣味を持ち始めているため、少し心配になってくる。

「ってか、今さら言うのも何だが、お前の趣味って変わってるな」
「まあ、主ほどではないでありまする」

 何のことなのか、心当たりが多過ぎて分からない。
S級クエスト
……Sランクの冒険者でなくては受けられない、高難易度、あるいは危険な依頼。種類は様々なだが、単なる届け物であろうとも、場所や物によっては、このランクに設定される。

国境の壁
……国境警備隊という、警備隊の上位組織が任務についている、国と隣接する壁。ここを通る際は検問を通らなければいけないが、冒険者等の許可を得た人物は、武器の携帯を免除される。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ