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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.7~

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7月27日曇り 『小人1名』

「新しいの、入ったぞー」
「すまんが、ちょっと尋ねたいことがあってな」

 カルラの前には、ひげ面の男が立っていた。顔は黒く汚れ、手には奇妙な道具を持っている男の風貌から、カルラは何となく察することが出来た。

「シュラ、親戚が来てるぞ?」

 背後に立っていた小さな弟子に言うと、シュラは冷たい眼差しを向けてくる。

「カルラさん、切り取られたいのですか?」
「いや、どこをっ!?」

 そんな会話を訝しそうに見る男は、使い古された鎚をカルラの前に掲げた。そして、髭の中に隠れた口を動かす。

「親戚ではないんだが、ちょっと儂の作品を見てもらおうと思ってな」
「鍛冶屋に武器見せんのか? 随分といい度胸だな」

 自慢のつもりかと思ってそう言うカルラに、シュラは隣で説明を加えた。

「カルラさん、この方はドワーフですよ。金属加工に秀でた種族で、私もカルラさんのことを知る前は、そちらの村でお世話になる予定だったくらいです」

 伝承では聞いていたが、やはり鍛冶の技術が高いらしく、ゴツゴツとした手を見ても、その経験は見てとれた。
 そこまで分かったのだが、カルラはあることに疑問を持つ。

「ん? じゃあ、どうして俺のところに来たんだ?」
「ハーフリングと間違えられたので……」

 視線を泳がせながらシュラは言う。どうやら、そのことが原因でこちらに来たようだ。

「あー、なるほど。ショックだったんだな」
「家を壊してしまいました……」
「与えた方だった!」

 どんな驚き方をすれば、他人の家を破壊することになるのだろう。まあ、たまに見るけど。
 シュラは小さな身体を、さらに小さく折り畳んで地面を見つめて、何かをしきりに呟いている。

「――――……ち、小さくないです、私、成長、します。たくさん」
「落ち着け、戻ってこい。あとで慰めてやるから、あとで泣け」
「うぅ……」

 今にも泣き出しそうな顔でトラウマを押し込めるシュラを立たせて、カルラは男の顔を見る。

「で、ドワーフの爺さん、どの作品を見りゃいいんだ?」
「見て驚くなよ? 実は、これなんだ」
「こ、これは……」

 置かれた造形物を見て、カルラは驚愕に目を見開く。
 歯車がいくつも連なり、造形は乱雑ながらも、繊細な設計が施されたその兵器を見て、カルラは呟いた。

「ゴミだな」
「ちっがうわっ!」

 断言してしまったカルラに、ドワーフの男は憤慨する。見てやったのだから、怒られる筋合いはない。
 二人の職人が睨み合っていると、シュラだけは興味深そうに、その兵器を眺めていた。

「これ、古代の設計図から復元したものですよね? とても貴重なものですよ」
「ほう、そっちの子供の方が分かるじゃないか」
「こ、こど」

 それ以上、傷口を抉らないでやってほしい。
 シュラの反応に、カルラは頭を掻きながら、深い溜め息を吐いたを

「まあ、確かに貴重なもんだな」
「そうだろう、そうだろう? 儂らは十年以上も、これの復元に時間を費やしたからな」
「だが動かなかった、だろ?」

 貴重な兵器を片手に、軽薄に持って、弄ぶカルラに、男は戸惑い気味に尋ねた。

「やはり、分かるか?」

 カルラは目を細め、見覚えのある形に視線を滑らせる。

「そりゃあ、設計図は公開されてんだから、武器を作ってんなら、知っていて当然だ」
「じ、じゃあ、どうして動かないと思う?」

 カルラは兵器を男の前に置き、簡潔に答えた。

「それ、最初から動かねぇ設計だからだ」
「動か……ない……」

 男は納得出来ないのか、持ってきた復元物を奪うように手に取ると、反論もなく足早にその場を去っていった。
 少し悪いことをしたかと思ったが、別に良いだろう。
 工房に戻ろうとするカルラに、シュラは尋ねた。

「本当に動かないのでしょうか……。あれほど大事にしていたのに」

 カルラは振り返り、祈るように手を前で合わせるシュラを見る。その表情に負け、小さく息を吐くと、カルラは面倒くさそうに応えた。

「いいや、あれは動く。工程としちゃ、三段階も前だが、それでも良くできている方だ」
「えっ? それならば、何故嘘を……」
「別に、変わんねぇだろ?」

 いくつもの武器が並ぶ店内を歩き、シュラの目の前でカルラは立ち止まる。

「殺すだけの兵器なんて、ゴミと変わりゃしねぇ。自分で作る物の意味くらいは把握しておけ」

 そう言ってカルラは、再び工房へと戻り始めた。その背中を追うように、シュラは優しく微笑む。
ドワーフ
……小柄な体格と、力強く丈夫な肉体が特徴。男は髭を生やすことを誇りとしている。金属加工で右に出るものはいない。
幼女ならば最高。

古代兵器
……魔法金属や、特殊な技術を組み込まれた古い時代の兵器。伝説では、過去の対戦が激化した際、記憶ごと封印されたとされる。
幼女ならば最高
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