挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.7~

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

217/338

7月26日晴れ 『冒険者1名』

「新しいの、入ったぞー」

 カルラが店の前に出ていくと、汚れた衣服を着た男が、そこには立っていた。傷痕を見る限り、魔獣との戦いを繰り返していたらしく、そんなことをする職業は、冒険者くらいだろうと想像出来た。

 男は、カルラの店を見回すと、明るい笑顔を見せる。

「おお、鍛冶屋があったか。ようやく、装備が新調できる」

 そう言って歩み寄る男に、カルラの横に居たシュラが、愛想の良い笑みで尋ねた。

「どの装備をお探しでしょうか?」
「全身鎧と、それと武器が欲しい。金はあまり無いから、武器の方は、鎧のお釣程度の性能でいいから」

 ポケットから取り出した財布を手に取ると、あまり多くない額の、冒険者らしい金額が入っていた。
 男の注文に疑問を覚え、カルラは眉を潜めて、男の方を見る。

「そんな武器で良いのか? お前、冒険者だろ?」
「いや、元の装備がこれだからさ……」

 男が腰に付けていたのは、なんと表現するべきか。その辺で拾ってきたような木の枝だった。

「棒だな。棒以外の何物でもない。……え、これ武器なのか?」

 その問いに、男は自慢げな様子で棒切れを振るう。

「"ひのきのぼう"だ。王都から、ゴブリンなんかと、これ一本で戦ってきたんだ」
「スゲェなぁっ!?」

 呆れたような、感心したような声でカルラは言う。

「なにがスゲェって……これ……何で折れねぇんだ? 別に、魔法で強化されているわけでもねぇし……何だコレは?」
「カルラさん、ヒノキです」

 冷静に答えるシュラは、後ろで装備を見繕っているようだ。カルラは再び男を見ながら尋ねる。

「っつか、こんだけ丈夫な棒きれに敵うような武器なら、結構な値段するはずだが?」

 しかし、男は肩をすくめ、まるでガラクタを扱うように、自分の持つ棒を見せびらかす。

「いや、それはないだろう。……だって、この棒の攻撃力は5だから」
「攻撃力ってなんだよ!? テメェで限界決めるな、ヒノキを信じろっ! 諦めたら可哀想だろうがっ!」
「どうしてヒノキの方に感情移入しているのですか!?」

 シュラは興奮するカルラを抑え、防具一式と、同じ素材の武器を男に手渡した。

「えと、料金分の防具一式と、武器は用意しましたけど……」
「おお、いい装備だな! ありがとう!」

 男は満足げにそう言って、その場で装備を身につけて歩き出した。その背中を見送ってから、男の残した棒切れを見る。

「カルラさん、ヒノキですね」
「どこから、どう見てもヒノキだな……」

 後日、良い薪になりました。
ヒノキのぼう
……丈夫な檜の枝。駆け出し冒険者が、ギルドから渡される武器。苦情は多いが、素手よりはマシと評判。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ