挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.6~

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

188/338

6月29日雨 『唐笠1名』

「新しいの、入ったぞー」

 雨が降りしきる午後の日、カルラが屋根の下から顔を出すと、そこには和服姿の男が立っていた。黄色に縞模様の、奇妙な柄の大きな笠を頭に乗せている。
 人間のようでいて、紫の瞳という奇妙な男は、神妙な面持ちで口を開いた。

「すまんが、お金を貸してくれないか?」
「うちに貸せるもんはねぇ。……あ、妖刀ならいいぞ?」
「嫌でありまするっ! もっとイケメンが良いでありまするっ!」

 妖刀クリョクは、意外と面食いだったらしい。
 そんなクリョクを見て、何を思ったのか、笠の男は驚愕に目を見開いた。

「そ、それは付喪神か?」

 縞模様の笠を揺らし、男はたじろぐ。
 確か、器物百年を持って魂を得る、そんな言い伝えだったか。原理は同じであるため、似たようなものではある。
 勘が鋭いのか、別のなにかなのか、カルラは男に尋ねる。

「……よく分かったな? 外見が変なのに」
「お前に言われたくない」
「あぁっ!?」

 殺意のこもった視線を無視して、男はカルラの足元で隠れるクリョクを見つめている。

「実はオレも付喪神だ。笠に思念が入り、生物となった存在だったりする」
「それにしちゃ、ダサい柄だな。それは最近なものだろ?」

 何度も言われたからか、ムッとした表情でカルラを睨むが、諦めたように溜め息を吐いて肩を竦める。

「まあ、確かに、ダサいから捨てられた笠ではあるし、未使用で捨てられたから怨みで成長したわけだが、悪い笠じゃない」
「いや、説得力ねぇなぁ」
「だから言いたくなかったのに……」

 そう呟いた男の姿を見て、ふと最初の言葉を思い返した。

「それで、金ってなんだ? 魔物に成り立てで、所持金が無いとか?」

 笠の男は、何か込み入った事情があるのか視線を反らし、口ごもる。そして、意を決した様子で答えた。

「カジノで落としたから、探すためにお金が欲しい」
「酷い嘘だなっ! 絶対負けただろうがっ!」
「負けてなどいない。負けたと思わなければ、負けていない」
「言い訳も酷い」

 賭け事にはまったらしい。
 しかし、見れば衣服はボロ切れ同然の装いで、染みや汚れは最近のものではない。おそらく、その辺で拾った物を着ているのだろう。

「まあいい。クリョク、俺の財布を持ってこい」

 溜め息混じりに言うと、クリョクは訝しげな表情でカルラを見る。

「良いのでありまするか?」
「流石に、無一文はキツいだろうからな」
「す、すまない……」

 笠が地面に付くほど、男は深々と頭を下げる。
 クリョクが財布を取りに行き、しばらくして戻ってくるまで、それは続いた。

「主!」
「お、持ってきたか」
「何も入ってないでありまするっ!」

 ペタンと、クリョクの掌で平べったく寝そべる布袋は、中身の有無を尋ねるまでもなかった。
 小首を傾げて考えると、昨夜のことを思い出す。

「……あ、昨日お小遣い入ったから使ったんだ。全部」
「子供かっ!!」

 雨に濡れた顔で、男は叫んだ。
 しとしとと、未だに雨は降り止まぬ。
笠男(数時間)
特技……雨宿り
備考……とある貴族が娘のために買った笠だが、かなり目立つ上に、ダサいことから、すぐに捨てられる。その恨みを賭け事で発散するダメ笠。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ