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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.6~

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6月2日雨 『紙魔術師2名』

「新しいの、入ったぞー」
「あ、すまない。ちょっと雨宿りさせてくれ!」

 カルラが店の前に出ると同時に、二人の男女が、突然降りだした雨から逃げるようにして、飛び込んできた。
 二人の格好は随分と奇妙だった。
 まず男の方は、黒い上下のシャツとズボンを身に付けていて、赤い髪の上には風変わりな鍔付の帽子を被っている。
 そして、女の方は子供で、白い着物に赤い袴を着ているため、どこからどう見ても巫女なのだが、髪の毛が、何故か青く光っているのだ。

「ぴぇぇ~。どうして急に雨が降るんですか~……!」
「それはだな、空気中の水分が……」
「もっと分かりやすく話してください!」
「…………空が泣いている」

 分かりやすいけども。
 どうやら男の方が、少女より格が下らしく、不満げながらも言うことを聞いてしまっている。こんな小さな少女の言いなりなんて、どこかの鍛冶屋を思い出させて憐れだ。

 そんなことを考えているカルラの視線に気がついて、男はこちらの方を見て、申し訳なさそうに頭を下げる。

「急な来訪で礼儀知らずだった、商品を見せてくれるか?」
「ああ、ようやく……いや、何ていい客なんだ」
「無理するな。たぶん演技は向いてない」

 笑顔なら蛇を殺せると評判なのだがな。
 ともかく、男は少女を置いて、店の中に入ると、品物を物色しはじめた。
 雨音だけが時間を食いながら、しとしとと降り続く。
 しばらくすると、少女の方が飽きてしまったようで、カルラに向かって不満を口にした。

「あ、あの、雨はいつ止むんでしょうかぁ……?」
「そのうち止むはずだ」
「そのうちって、いつですかぁ~……!?」
「急ぐと成長が止まるぞ? あと少しで止むだろうし、もう少し気長に待て」

 カルラが言うと、少女は僅かに光を取り戻した空を見上げる。せいぜい10分くらいで止むだろう。
 振り返ると、男がひとつの道具を手に、興味深そうな顔を浮かべている。

「これは何だ? 鞭のようだが……」
「"相手を大人しくさせる鞭"だな。それで巻かれた奴は、大抵静かになる。我が儘なガキにでも使うといい」
「俺に子供はいないのだが……」
「ぴぇぇぇ~っ! 何で止まないんですか! 太陽のばかやろ~っ!」

 随分と古典的な台詞が、店内に響く。しばらくの沈黙のあと、男は財布を出す。

「必要だ。買おう」
「毎度あり」

 財布の中で小銭が鳴る。
 金を受けとるときに、カルラは男に尋ねた。

「そういや、お前とあのガキはどういう関係なんだ?」
「一応、主人と護衛なんだ」
「あれが偉いのか?」

 疑問に思って、カルラは首を傾げると、男は苦く笑みを浮かべる。

「あれが護衛なんだ……」
「お前、大変だな……」

 雨はまだ降り止まず、少女の雄叫びが空に向かって聞こえていた。
レンヤ・カミノクジ(24)
特技……紙魔法
備考……紙に思念を織り混ぜて、魔法を発動する術師。雨や炎に弱いことを除けば、強力な魔法使いではあるが、式神がドジ過ぎて危険に巻き込まれる。
故郷に変えるため、東の島に向かっている。

紙の式神・ネネ
特技……絶対防壁、多属性攻撃
備考……千年の間、倉に眠っていた折り紙が、レンヤの協力で、魂を得て生まれた。長年込められた思念により、高い性能を生むのだが、使いこなせていない。かなり我が儘。
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