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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.6~

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6月1日晴れ 『兄エルフ1名』

「新しいの、入ったぞー」

珍しく、この時期にしてはよく晴れた今日、店の前には男が立っていた。最近では見掛けないくらいに、貧相なボロ切れを身に纏い、口元を同じような布で隠している。
ほとんど顔を隠してはいるのだが、それでも、目に浮かぶ真面目そうな視線と青い色彩から、そこにいる人物が誰であるかを判別することができた。

「……シュラの兄貴か?」
「よく、我だと気付いたな。見事だ」

シュラの兄、ビジャ・トンプソンが、ボロ切れのフードとマスクを取り払う。シュラと同じ白く短い髪が揺れた。
カルラは当然というように、肩を竦めて鼻で笑った。

「いや、その目と、その凄くダサい格好を見りゃ大体分かるだろ?」
「ダサい……!?」

本人は気がついていなかったようで、かなり動揺して見せ、ビジャは店の奥を見て言った。

「シュラ! シュラもそう思うのか!?」
「ふぇあっ!?」

振り返ると、商品棚に隠れて、シュラが驚いて尻を付いていた。
さっかく来訪して下さった、面倒な兄貴の相手を一人でさせようとしていたとは、後で説教だな。
シュラは落ち着かない様子で店の前に出て、申し訳なさそうに、言葉を選びながら答える。

「その……お兄ちゃんの服装は……、あまり流行りに乗れていないだけで……」
「それをダサいって言うんだ」
「カルラさん、オブラートに包んで下さい!」
「お前も隠しきれてなかったぞ?」

二人の会話を聞いて、ビジャはこの世の終わりを見たような、何とも言い難い顔になり、そして膝を付いた。

「最近、ダメージ加工なんて粗末なものが流行っているのではなかったのか!?」
「"粗末"言うな! 後でファッション業界に怒られるだろ!」
「カルラさん、怒られる程、うちは知名度ありませんから……」

まあ、そうなのだけれど。
しかし、とりあえず、目の前の兄貴はどうしてもファッションというものの認識がズレている。
仕方なく、カルラは手解きをしてやることにした。

「お兄さんよ、ファッションなんざ既製品買ってりゃ身に付くもんだ。無理に個性を出そうとするから、ダサく見える」
「しかし、それでは、シュラの格好いいお兄ちゃんでは要られない。普通のエルフになってしまう!」

知り合いの兄貴には、シスコンしか居ないのは何故だろう。カルラは自分の処遇を内心嘆きながら、ビジャに言う。

「着たい服を着て、あとは中身で勝負しろ。外観飾っても、中身が粗末のハリボテより良いだろ? 外に売ってる宝石よりも、魂磨いて、誇れる自分を作ろうや」

カルラの言葉に、真面目なビジャは感銘を受けて、自分の所行を恥じた。そして、力の抜けた笑みを浮かべる。

「我が間違っていたな。シュラ、やはり良い師に出会ったな」
「……そ、そうですかね?」

シュラが照れた様子で頬に手を添える。
そんな和やかな雰囲気を壊さないように、カルラは言った。

「それで、この"お洒落な鎖カタビラ全身セット"なんだが……」
「買おう!」
「お兄ちゃん、騙されないで下さい! それも凄くダサいです!」

こうして、在庫処分は失敗に終わった。
ビジャ・トンプソン(21)
趣味……昆虫採集
備考……シュラファンクラブの3代目会長に、シュラを紹介してくれと頼まれた。その後、責任者行方不明につき、仕方なく4代目を選任した。
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