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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.5~

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5月26日雨 『案山子一本』

「新しいの、入ったぞー」

雨が降りしきる中、誰もいない三叉路にカルラの声が溶ける。雨で掻き消された言葉を諦めて、カルラは小さく雲を睨んだ。
隣に立つシュラも、同じように空を眺める。

「ニコさん、居なくなって寂しいですね」

そっと、何気なくそう呟いた。
いつも問題を運んで来るやつだったが、それでも賑やかしくらいの役割は担っていたのかも知れない。
そう思うと、静かな鍛冶屋は妙に寂しくーーー。

「キャーキャキャキャキャーギャァァァアーーッ」
「……うるっせぇっ!!」

奇怪な笑い声、鳴き声とも取れるその音の主は、あまり人間のようには見えなかった。
手があり頭があり、服も着ているのだが、しかし腕や足が、木の棒で組まれていた。

「なんだアレ?」
「案山子、ですね。畑に置いてある、動物を追い払う目的の道具のはずです」
「そんなのが何で動いて、うちの前に居るんだ?」
「……ストライキでしょうか?」

雨風に打たれていれば、そうなるかもしれないが、案山子の存在意義が行方不明になりそうだ。
カルラは念のため、案山子に尋ねる。

「おい、案山子。こんなところで、何してんだ?」
「おいのことか? 人間」
「おお、そうだ。案山子」

不思議そうに、というのも変な話ではあるのだが、ボタンで構成された目の部分がこちらを見る。
そして、胴体を揺らしながら、布の肌を震わせた。

「馬鹿そうな顔……。まるで案山子のようだ、ケーキャキャキャーッ!」

突然の物言いに、カルラは鎚を取る。

「んだと、この案山子野郎! 折って畑の肥やしにしてやろうか?」
「カルラさん、案山子相手に煽られないで下さい」

シュラは袖を引っ張って、カルラを引き留める。その様子を見て、案山子は首を傾げてこう言った。

「子供が居るのか?」

シュラは袖から手を離し、にこりと微笑む。

「……カルラさん、丁度薪が切れてましたよね?」
「キレてるのは多分お前だ。さっき俺に言った言葉を思い出せ」

しかし、どうするべきか。このまま、この場所に放置しておいたら、ストレスで変になるかもしれない。

「やっぱり燃やすか?」

カルラがそう言うと、案山子は妙に落ち着いた様子で語り出す。

「……おいは人間を恐れない。おいは、人間の仕打ちを思い出しながら、炎の中でお前らを見てやる。さあ、燃やすといい!」

その言葉を聞いて、シュラは手のひらに炎を灯す。いつになく明るい、白色の炎である。

「この方は悪魔ですね。おそらく、普通に燃やしても甦るのかと」
「だから、あんなに余裕そうな顔なのか?」
「カルラさん、案山子は大体あの顔です」

白色の大きな光に照らされて、案山子は狼狽える。

「ケキャッ!? おい、おいをこの世から追い出すのか、おいそれとおいを……」
「おいおいおいおいうるっせぇ! 近所迷惑だ」
「嫌だ、死にたくない!」

そこに一人の老婆が通り掛かる。

「あら、喋る案山子なんて珍しい。いくらで売って下さるのかしら?」
「……」

無言で、二人と一本は彼女を見つめる。
案山子の悪魔(3days)
特技……お喋り
備考……気味の悪い案山子に育ったため、鍛冶屋の前に捨てられた。付喪神の一種で、低級の魔物ではあるのだが、人を模しているため、ある程度の理性がある。
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