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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.5~

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5月4日晴れ 『返却1名』

「新しいの、入ったぞー」
「やっと見つけた!」

いつも通り、店の前で呼び掛けをしていると、一人の女が駆け寄ってくる。黒い短髪に皮鎧という、可愛らしい外見とは異なり野性味ある服装を身に付けている彼女は、緊張に強ばらせた唇をきつく結んだ。

後ろの方で作業をしていたシュラも、その来客に気がついて声を掛ける。

「あの、どうなさいましたか?」

シュラを見て安心したのか、あるいは強がりを見せたいだけなのか、女はカルラを指差し、大きな声でこう言った。

「そ、その男に借りがあるの。返しに来たわ」
「借り? 貸せるようなほど、金も体も、思いやりも無いはずなんだがな」
「そんなことは無い、思い出せ! あと、思いやりは在れよ、人として!」

そんなこと言うから、思いやれない
言われたからには考え込むカルラ。しばらく考え込んでから、しばらく前のことを思い出す。

「ああ、林の時の奴か」
「そうだ! あのときは世話になったな!」

二人だけの会話に、シュラは戸惑い尋ねる。

「あの、どういうことですか? お知り合いなのですか?」
「まあな。少し前に、遠出したことがあってな。そのときの奴で間違いない」

「丁度、去年あたりの出来事だ。目的地に向かう途中、壊れた荷馬車があって、それを周りを囲むようにして山賊が十人くらい立っていた。どうやら、荷馬車の持ち主である少女を狙っていたらしく、俺が山賊をボコボコにして助けてやったんだ」


「そのときの山賊がこいつだ」
「え、そっちですか!? 普通、その場合は少女の方が来るものですよね?」

そうは言われても、ここに居るのは残念なことに、山賊の方なのだから仕方ない。俺だって普通の女の子の方が良かった。

山賊の女は自分の胸に手を当て名乗りだす。

「私はマリア。あれのせいで、私はリーダーの座を追われた! 許さないぞ!」
「そして、当然のように逆恨み。他にやることあるだろうに」
「でも、どうしましょう……。放っておくわけにもいきません」

こんな狭い場所で暴れられたら、どうなるか分からない。商品にぶつかりでもしたら、街が壊れる可能性もある。
マリアは不適な笑みを浮かべている。

「フッフッフッ……。お前らには酷いめにあってもらうぞ。覚悟っ!」

バキッ、ガツンッ!

「いたい……」
「あ、悪い」

飛び掛かって来たから、思わず顔面を殴り、そのまま地面に叩き落としてしまった。手加減したから、大事には至らないだろうけれど、ご近所の目はすでに大事として捉えているようだ。
山賊というのは恐ろしいな。

「こ、今回はここまでにいておいてやる! 覚えてろ!」

マリアは両目に涙を溜めて、走り出す。世間体的には、せめて笑顔で逃げ去って欲しいものだ。
静かになった店の前で、カルラは言った。

「山賊らしいっちゃ、らしいかったな。噛ませ犬的な意味で」
「本人の前で言わないでくださいね。たぶん、泣いてしまいますから」

泣かせる程度で消えてくれるのなら、それでも良さそうだけど。
マリア・セインライト(21)
特技……説得
備考……仲間と一緒に悪党専門の盗賊を結成したが、結婚詐欺師の女を襲う際失敗し、その後解散してしまった。頭は緩く、正義感が強いため、奇襲は出来ない。
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