世界最低のうみ ~貧乳で世界を制す~
「では、うみよ、そなたを転生させてやろう」
光の塊は俺にそう告げる。俺はトラックに轢かれ天寿を全うしたらしい。しかし、この光の塊が言うに、俺はまだ死ぬ予定じゃなかったそうだ。
手違いで死んでしまったから、神は俺を異世界に転生させてくれると言っている。そんなのはもってのほかだ。もう俺は疲れたんだ……
「いや、俺はもう疲れたんだ……貧乳のヒエラルキーは上がらなかった……」
そうだ。俺は頑張った。貧乳こそ至高! とおっぱい論争で貧乳をアピールし続けた。しかし、世間の風は巨乳に向いていたのだ……
俺がトラックに轢かれ不幸にも死んでしまった日も、俺は巨乳好き共に打ちのめされて帰宅する途中だった……もういいんだ……巨乳には勝てない。
「ふむ。そなたの野望は知っておるぞ。お前が欲しくて仕方ない能力を与えよう。行ってまいれ」
「え、俺はもう疲れたって言いましたよね?」
俺の言葉が終わらないうちに白い光が俺を包み込み……俺の意識は薄れて行く……
目が覚めると草原に寝ていた。ここは何処だ? あの神を僭称する光の塊め……俺を転生させやがったのか!
そんなこんなで転生させられた俺はこの世界が悪意に満ちたりた世界だと知る。
この国は巨乳が絶対正義! おっぱいは大きいこそ至高! そして現におっぱいが大きい者ほど地位が高くなる! 男も巨乳を好み、権力者は巨乳を取り合う。
俺は戦慄した……なんという悪夢のような世界だ。この国の貧乳は農奴階級にまで落とされ、巨乳のために日夜働かされているのだ。
なんという不条理……ただ貧乳に生まれただけで虐げられる世界! 俺は憎む! この世の巨乳を! そして巨乳をもてはやす男どもを!
俺は草原で目覚めた後、モヒカンに捉えられ農場で働かされることになった。何故なら……転生した俺は少女になっていて、貧乳だったからだ。
俺は貧乳になりたかったわけじゃあない! 俺は貧乳を愛でたかっただけなんだ! あの神を僭称する光の塊め! 俺は嘆き苦しむが、あの光の塊を殴り飛ばす手段は残念ながら無い。
そういや、俺に能力を授けたとか言っていたな……
俺は一日の農作業を終え、タコ部屋へ戻ろうとしている時……目の前に豪奢な馬車が通りかかる。
馬車の護衛だろうか……兵士が俺を威嚇してきて俺は馬車を通す為、道の脇に追いやられてしまった。
あろうことか馬車は俺の前まで来ると、停車して中から人が降りて来る。
巨乳の女二人だ。奴らは胸の前で腕を組み、ことさら胸をアピールして俺に嫌味を言ってくる。
「あらあら、これはまたちっぱいだこと」
うるせえ! この脂肪の塊がああ! と叫びたいが兵士の目が怖い。
あろうことか、巨乳の一人は俺を立たせて俺の手を掴み、自慢げに自身の胸に俺の手を当てる。
「どう? これがおっぱいですことよ」
たゆんたゆんしているおっぱいに触れても何も嬉しくねえ! むしろ憎しみが込みあがって来る。
巨乳は滅べばいい……その時、俺の心に誰かが話しかけてくる。
――巨乳が憎いか?
ああ憎い!
――力が欲しいか?
ああ、力が欲しい!
――ならばくれてやる! 巨乳を滅ぼす力を!
俺は直感的に力の使い方が分かる。力だ。これは世界を変える力だ!
俺はたゆんたゆんしているおっぱいに振れた手に意識を込める!
巨乳の美女二人は相変わらず俺を蔑んだ目で見ているが……
「巨乳は滅ぶべし!」
俺の力ある言葉と共に、たゆんたゆんに振れている手が何かを吸収する。
次の瞬間――
――たゆんたゆんがしぼむ!
はははは! どうだ。この力は!
俺はもう一人の巨乳を睨みつけると、彼女の胸に手を振れ、貧乳に変えてしまう。
「ははははは! ははははは!」
俺は狂ったような笑い声をあげる。
全ての巨乳を貧乳に変えてやる。理想社会を実現してやるのだ!
貧乳こそが正義。
こうしてこの日を境に、俺を中心とした虐げられた貧乳連合が国へ反乱を起こす。
二年後、国にいる全ての女子を貧乳に変えた俺はみんなに請われて王女として国に君臨することになる。
側近のスレンダーな貧乳美女が俺へかしずき口を開く。彼女は俺が力を発現した次の日からの親友だ。彼女は俺と同じ農場で働かされていて、元からの貧乳仲間になる。
「うみ様。次は周辺諸国の平定に向かうのですか?」
「ああ。世界全てを貧乳に変えてみせる!」
俺は立ち上がり、拳を握りしめる。たった一つ残念なことは少女に変えられてしまったことだな……貧乳美女を囲ってハーレムこそ男の夢だったんだが……仕方あるまい。
俺の野望はまだまだ続く。世界全てを貧乳に変えるまで俺は止まらない。
いろいろ酷い。
やっちまった。しかし反省はしていない。