第4話バトンハ、オトスナ
目を開けた久那は、手で両瞼を擦り、周囲をキョロキョロした。
まだこの状況が理解出来ないらしい久那に出雲が
「平気か?久那」
と話し掛けると、久那は出雲の姿を認めて眉をひそめ
「…久那とは何者じゃ、我は死神貴族、時莵様なるぞ」
「…」
声、姿というか身体は久那だが、ヨリマシになった久那は別人を降ろしていた。やった本人は成功した事にガッツポーズとっていたが。
突然出雲の都合で降ろされてしまった死神、時莵は周囲の(ダンボール等)物に興味を示し、椅子から降りるとそれらに触って不思議がっていた。
無月は出雲のワイシャツの裾を引いて
「…センパイ、一体何を降ろしたんですか」
「あ?さっき自分で言ってたろ、死神」
「あぁそれは知ってます。でもなんでよりによって死神?」
「知らねぇのか?死神って結構情報通なんだぜ」
「はぁ、情報通でも現代の物にあんなに興味示すんですね」
「…あったぼうよ」
「…というか、とっくに犯人が誰なのか解ってるのかと思いました」
「んなの判るかよ、犬じゃあるめぇし」
出雲は頭の後ろで腕を組み、やる気のなさそうな声を出す。
呆れた無月は出雲を視界から外し、時莵に近付く。
「ぇえと…時莵サン?」
「時莵様じゃ!鬼の子は敬うという事を知らぬのか」
人の良い微笑を浮かべ、話し掛けたが思い切り冷たく睨まれ、笑顔が凍りついた。
その後ろで欠伸する出雲はいつの間にか擬体の姿に戻っている。
物凄く殺意が湧いたがそれを抑え、頭を下げ”失礼しました、時莵様”と返す。
それに満足したのか否か、時莵は腰に片手を当て踏ん反り返ると
「で、何用じゃ?鬼の子、血吸い鬼。」
「(素直に吸血鬼って言ってくれないかな…)」
「実は人間に固執して、辺りに迷惑をかける者が居るようで…何か知っている事を教えて頂きたいのですが」
素で無月は感情を込めずにそう聞いた。敬語は皮肉の為に在ると信じている無月は段々と疲れてきたらしい。
すると時莵は
「…代償は?」
と言った。出雲の肩がびくっと跳ねる。
「代償…?」
「我はソナタ達にジョウホーをやる、その見返りをよこすのじゃ。」
久那の声をした時莵は無月を見下ろしながらそう言った。
無月は出雲を振り返ると出雲は顔を背ける。それを見て、無月は時莵に顔を戻し
「…分かりました、では貴方様を降ろした血吸い鬼に代償を払わせましょう」
「っはぁ!?おいっ何勝手に決めてんだ!!」
ニコリと笑って言ったのに、出雲は身体を起こして猛反発する。
が、
「コイツが代償を払うのじゃな?では前払いといこう…」
時莵はすでに出雲に迫っていた。
両手を振って止めさせようとする出雲の反抗も虚しく
「…宣死予告、この者の魂を天に戻す事をお誓い下さい…」
「っ!?!?やっやめっつ!!」
時莵の宙に描いた不思議な紋章に胸を貫かれた。
「い”っ…ぁ!」
出雲は貫かれた胸を押さえ膝を着いた。
「いずもっいずもっいずもぉ〜!最凶最悪あびきょーかんっ♪さまっさまっさまっ!気をつけろっ!出雲様が通ると道は血の海っ♪俊敏迅速ちょびっとサド〜っ!」
どんな歌よ…。
明から出雲に呼ばれた事を知った八雲はすっかりと立直り、先程から変な歌を歌っている。因みに美術室までの廊下の中で、だ。
心配した意味は…?
「…ルネス様大丈夫かな…?」
ボソリと呟いた八雲の台詞は後ろに付いて行く千神と明には届かなかったが、そう言う八雲の顔は真剣だった。
「…?どうしたの?」
「ん?べつにぃ…」
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