第2話トップヲ、トレ
―美術室。
じゃんけんで部室に残るメンバーとついていくメンバーを決め、結果、八雲先輩と千神先輩は留守番、出雲先輩は勿論、僕と無月くんは坂田くんの部活美術部の部室に向かった。
意気揚々と美術部に入った出雲先輩に、坂田くんは明らかに腰が引けていた。
すでに廊下で、出雲は坂田に無月に助けを求めた理由を聞いていたからか、面白そうな事件に関して目が無い出雲はいつもの数倍楽しそうだ。
坂田の話はこうである。
今から一週間前、一個のダンボールが部室宛に届いたらしい。
顧問の先生も覚えのない届け物で、送り主の名前が”藁氏”と明らかに偽名を使っていて気味が悪い。
とりあえず開けて見ると中にはたくさんの絵の具。しかも赤の色だけで新品の物。
ホラー物の展開に在り来たりすぎて、先生は坂田に他の部員には黙っておくようにと黙認させた。
が、次の日、2つのダンボールが部室に届いた。
開けると次は緑と黄色。
今の世の中こんなホラー現象があってたまるかと、また先生は黙秘させたが、日を増すごとに数と色が増え、今は27色の絵の具が入ったダンボールが部室を占領している。
先生は部室宛のダンボールは全て送り主に返してくれと郵便局に頼んだが、郵便局ですら送り主が判らないらしい。
でも部活動も休みに入ったし、しばらくは気味が悪いダンボールを見ることは無いと、ホッとしていた。
しかし今日の朝、あろうことか、自分の家にダンボールが届いた。それも真っ黒でいつものよりも小さい。
怖くなった坂田は同級生に相談したが、取り合って貰えず、無月に助けを求めた。−そこまで聞いて出雲と無月は顔を見合わせ、久那は坂田に同情した。
美術室に入ると、一番に目に入ったのは生徒の作品、では無く、積み上げられたダンボールだった。
入口から積み重ねられたダンボールは、授業の時にも使うモデル像までもが準備室行きになるほど場所を占領していた。
普通ダンボールの方が準備室行きではないかと思うが、先生が言うに、犯人が学校の生徒の時、迷惑だということを自覚させる為、だそうだ。
”あれが初めに届いたダンボールです。”と坂田が指差し、出雲が黙ってそのダンボールを凝視した。
こっそり出雲に”何か見えるんですか?”と久那が聞くと、出雲は”いや、全然”と答えた。
坂田は無月に言われ、『黒いダンボール』を取りに帰った。
だから聞かれることは無いだろうと、久那は
「…あの、これは人間以外の生き物のせいなんですか?」
と聞いた。
すると出雲はダンボールから目を離し、久那にやる気のなさそうな顔を見せると
「ソウダヨ」
と何故かカタコトに返事した。
その原因が分からず、久那は頭を捻る。
無月は欠伸して、身体が小さいせいか、ぶかぶかに見えるワイシャツをパタパタさせると
「…センパイ、後は頼みますよ。」
と出雲にわけありな一瞥を送り、帰ろうとする。
が、出雲に首根っこを掴まれ、引き戻された。
「オイ待て、てめぇは俺が”アイツ”達に逢いに逝けって言ってんのか?」
「当たり前じゃないデスカ。吸血鬼なんだからあちらさんちの方とも仲いいデショウ?」
「はぁ?んでアイツ達に好き好んで逢いに行かなきゃなんねぇんだよ!つか俺、アイツ達と仲ワリイんだ。だから、無理。」
首根っこ掴んだままの出雲は無月の即答に怒鳴り、早口になりつつも返す。
何を言い合っているのか判らない久那は二人の口喧嘩に、呆然としていたが、
「…あぁ!そうだ!久那、久那が逝けばいい!!」
漢字間違ってまセンカ?
「は?何言ってるんですか?久那クンにそんなチカラあるわけないじゃないですか。ついにボケましたか。」
「うるせぇ、ボケてねぇ。だから、明と逝かせりゃいくら鈍感な久那でも見えるだろ??」
「…ああ、成る程。その手がありましたか、センパイもたまには良い事を言いますね。」
「殺すぞ。」
何やら勝手に話が進み、久那は心の警報が鳴ったのに気付いて後ずさる。
すると”一回だけなら殺されてもいいですよ”と言っていた無月が振り向き、満面笑顔で
「久那クン、何処にイクんですか?」
と囁く。
肩を震わせた久那に、出雲も笑みを零し
「逝ってもらうぜ?久那ァ♪」
だから漢字が違うって!!
はっ!?いや、漢字は間違って無いのでは…!?
じゃぁまさか!ホントにィィイ!?!?
「逝ってこいや、下僕狼。」
最後に見たのは出雲先輩の笑顔溢れる怒り顔。
僕はそこで意識を手放した… |