「しおりちゃん」
あなたは知らない。
ずっと私が抱く想いに。
「初潮はまだだったかしら?もう中学生にもなるのに・・・でも焦ることはないわ。私も遅かったのよ」
私の大切なものを奪ったのに、どうしてそんなに平然としていられるのかしら。
きっとあなたは最初から、私のことなんて眼中になかったのね。
憎らしい、憎らしいわ。
「孝雄さんも心配しているけど大丈夫よ、私がちゃんと言っておくから」
そうやって心配するふりをして、私を惨めにさせる。
気づいていないの?
それとも故意でやっているの?
どっちにしろ関係ない。
私はあなたがとても嫌い、大嫌い。
私の大切な大切なものを奪ったあなた。
「しおりちゃん?」
ああ、私あなたを許せない。
きっとあなたがいる限り、あの人は私を見ることはない。
こんな悲しい想いはうんざりよ。
大切なものを奪ったあなた。
「きゃああ!!」
ほら、見て。
私真っ赤よ、もうあなたに言わせたりしない。
私はもう立派な女になったのよ。
ほら、ちゃんと見てよ。
「し、おりちゃん・・・どうして・・・」
すごいわ。
どんどん出てくる。
これが初潮なのね。
あなたから吹き出る血が私を染める。
私はやっとあの人に見合う女になったのね。
うれしい。
大切なものを奪ったあなた。
感謝の意を込めて、大切に大切に埋めてあげましょう。
二度とあの人と出会えないように、現世に戻ってこれないように。
深く暗く、冷たい地へ。
花も咲かず、鳥たちも避け、虫たちが悲鳴をあげるような場所にしてあげましょう。
ずっと祈りながら見守りましょう。
「しおり?どうした、血がついているぞ」
ああ、うれしい。
こんなにうれしいことはない。
これで私のものなのね。
ずっと、ずっと願っていたわ。
きっと一生叶わないと思っていたから。
「兄様、私女になったのよ」
真っ赤、ずっと私は真っ赤なまま。
洗ったはずの服からは、ずっと血が滲み出る。
鏡を覗くと顔中真っ赤。
きれいね、私今とってもきれい。
まるでお化粧しているみたい。
ねえ、結婚式をあげましょう。
私とあなた、永遠に一緒にいられるように誓いましょう。
きっとみんな祝福なんてしてくれない、だけどいいのよ。
私はあなたがいればそれでいい。
あなたもそうでしょう?
ふと見えたあの人の顔。
あの憎らしい人と重なったことは内緒にしましょう。
だって、嫌でしょう?
あなたと私を、ほんの一瞬でも離れ離れにしたあの憎らしい人。
でももう何も思い出さなくていいの、考えなくていいの。
あなたは私だけを、今のように見つめていてくれればそれでいいの。
「どうして殺した、お前なんて死ねばいい」
ああ、お腹が熱くて痛い。
月経かしら?
だったらうれしいわ、思い出すの、私が一人前になった瞬間を。
きっと忘れない、あの瞬間。
私とあなたが永遠になった瞬間。
「早く死んでしまえ」
もういないわ、あの憎らしい人は。
私がきちんと埋めてあげたわ。
だからそんなに怖い顔をしないで、もう大丈夫なんだから。
そうだ、一緒に外へ出かけましょう。
広い野原に行きましょう。
たくさん歩いて、疲れたら木陰でお弁当を食べましょう。
私頑張るわ、あなたのためならどんなことも頑張るわ。
ああ、その前に今すぐ私を抱きしめて。
体がとても冷たいの。
指先なんて感覚がないわ。
どうしたのかしら?
一度病院で見てもらいましょう。
あなたの子を授かる大事な体、しっかり守るわ。
だから、ねえ、少しでいいから抱きしめて。
誰かに触れられる前に、あなたに触れてもらいたいの。
あなたに触れてもらいたいの。
ああ、血が随分滲んでる。
とまらない。
あなたの涙もとまらない。
どうして?
私の涙もとまらない。
とまらない、動かない、何もかも。
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