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どうでもイイジャン!
作:いもっこちゃん



笑えない


オッペッケペッポーブタのけつ!蟷螂かまあげてぴっぴっぴーで、化けべそでべその・・・環のばかやろう〜〜〜〜!!。

飛島駅を降りて周囲に誰も居ないのを確かめて、暁子はぺちゃんこになったペットボトルを思い切り蹴飛ばした。
ペットボトルはガザッと一度飛んで側溝にひっかかり止まる。
遠くに飛ばなかったペットボトルが環のひねた性格を思い出されて、ズカズカとぺットボトルに暁子は近づき、浮いたペットボトルのはじをねらって足を振り上げた。

つま先はうまくペットボトルを蹴り上げて、あわれぺちゃんこのペットボトルは道路を飛び越えて駅の植え込みの中に着地した。
暁子の気分は最悪である。
糧としている環の姿を大学の構内で今日三度も見られたというのに、最後の三度目で明らかに・・・明らかににである・環に顔を背けられたのである。
昨日は軽く微笑んでくれたではないか。その前は・・・確か無視された・・・。

だが今日の環は完全に暁子と確認して顔を背けたのだ。
小学校、中学校、高校とクラスは違うが同じ学校だった環。
大学までも同じになるとはなんとラッキーだと思っていたが、
すでに過去から環の周りには男女たくさんの取り巻きがいて、暁子には近寄りがたい存在である。

大学での三千人もの新入生の中で沢尻環の姿を見つけたときは、天にも昇りたい気分の暁子だった。
英文学部と法学部という差を乗り越えてきっと会話を弾ませる日が来ると信じたあの入学式の日。
あれから半年が過ぎて、今なお顔を合わせて小学校の頃の思い出話をすることもなく、遠めに眺めるばかりで何も進展が無い暁子である。

暁子は新しく出来た友人から環の近況を逐一聞かされてはいる、が、取り巻きが多く暁子からは偶然を装う瞬間も学部が違うとニアミスも無い。
ポッケロポッケロ玉姫伝、かえるのおけつでポッパ、ポーーーと、踊りながら帰宅する暁子で
ある。


<<笑えない 1>>

人生において何が一番悲しいか・・・・それは努力した結果が得られないことである。
沢尻環は大学の食堂でけたたましい友人達の会話が流れていく中で、一人物思いにふけった。
「今度の新人戦はここで開催されんやろ先輩方が今度の土曜日は帰れんよって言ってたけれどホントかいな」
「聞いた聞いた、倶楽部室で寝泊りするってね。私しょうこさんに頼もうかな」
しょうこのトレーは量り売りのランチの皿と野菜とスープしか乗ってない。
から揚げやスパゲティの乗ったトレーは男子か体重管理をしていない女の子達だ。
入学式の時に茶髪でロール巻きにした派手派手女の一群が環の傍らではしゃぎまくる。
「いいわよー我が家ちょっとだけ他より広いから」と、しょうこさん
これまたファッション雑誌から抜け出たような(但し男子だが)
短い髪の毛を逆立てツンツンとした剣山にし、鍛えた胸元をアッピールした服装の連中が派手女の虚栄心をくすぐる。

「俺も便乗してもいいかな、しょうこさんち良い臭いだものな」
「あら〜、男子禁制なのよ〜」きれいに上がったまつげをより披露して、しょうこはあごを引いて見せた。
この上目ずかいはしょうこの得意技である。
このくだらない話に口の端を少し上げて、相槌打っているかのように環は見せかけているが、その実はまったく聞いていない。
今まで環の人生の中で大きな岐路は二度あった。
一度目は中学から高校への進学。二度目はもちろん大学への進路だ。
中学二年生のとき一組の東館暁子の進路を調べてショックを受ける、彼女は成績がよく市内の有名進学校を希望していたのだ。

環はといえば陸上部の顧問の先生から、陸上に力を入れている私立高校へ誘われていて、気持ちは新しい陸上部での活躍を夢見ていた。
中体連で3000メートルで県記録を塗り替え、その記録を三年生の夏にまた塗り替えた。
全国大会で入賞し、誰もが沢尻 環は有名私立高校は行くものだと思っていたが、
環は中二の終わりから塾に通い東館暁子と同じ公立高校受験したのだ。
環の周囲は驚いたが一番驚いたのは環である。大勢が受験した高校に見事受かり努力した結果が実ったのだから・・
高校では早くも進路ごとに教室が分けられて、東館暁子は特別進学クラス、沢尻 環は普通に進学クラスに入れられたのだ。
最悪な事に特進コースの教室は別棟で、堂花暁子と顔を合わせる機会は中学生の頃よりももっと減ってしまった。
沢尻環はへこたれなかった、人生はまだ始まったばかりだと自分に言い聞かせ、文化祭や体育祭などでなるべく目立つ位置に付くように心がけた。
勉強は駄目でもルックスとスタイルには自信があった。かといって悪ふざけやバカのりの言葉使いはしない。
品行方正の正統派を目指して行動したつもりだが、環が謙虚に振舞えば振る舞うほどなぜか腰パンの男子や超ミニの女子が環の周りには集まってくる。

インターハイで県記録を作り、またもや有名私立大学に行くものと思われていた環は、見事に皆の期待を裏切り国立大学法学部を受験したのである。
理由は東館暁子が行くから・・・
(安直に法学部は経済学部より上だと思ったからだが・・。)
大学の合格発表の日、受験番号の6桁の数字を見て、二人の新しいキャンパスライフを思い描いた。
彼女の通学路を調べ、授業内容を確認するのに文学部の知り合いに聞きまくるのに三ヶ月。
やっと行動を起こそうとした時夏休みになった・・・。

「それちょー可愛い!!!お高いでしょう?」
巻き毛の揺れにあわせて垂れたイヤリングがスイングしてきらきらした。
「これね、パパの誕生日プレゼントよ」
「それなんとかって女優がやってたわ。ブランド品でしょう」
「見た見た、きっと同じTVよね私もいいなぁ〜って見てたんだ」嬌声が続く。
夏休みがあけて・・9月。
一限目から出席するという彼女と同じ電車に乗り、顔を合わせるため
プラットホームから乗り換えの電車のドアで、鉢合わせした格好で軽く挨拶を交わした。
直後に一駅前で乗り込んだ知人に邪魔されなければ、後二言三言、言葉が交わせたのに・・・
次の日用意した言葉を幾度も反芻して、ホームに立った彼女に声をかけた。
残念な事に専門学校に通っている友人が間に入って、二人きりとは行かなかったが
とにかく会話は弾んだ。(友人と)
ホームでの続きを電車内でも続けたかったが、その日は法学部の知人が多く彼女は遠慮して離れて行った。
ことごとくこんな調子で彼女とは挨拶程度で、突っ込んだ会話が進展しないで居たが環は楽観していたのだ。
電車内やプラットホーム、キャンパスでは友人知人が始終邪魔をするが彼女の家の近辺では彼らが邪魔をする間が無い。
意外と近い距離に住んでいるのだから犬の散歩に託けて・・・次の土曜日に会いに行くつもりだった。

九月も半ば、東館暁子の小学校から友人中島るりから衝撃的な情報を環は得た。
中島るりは環の取り巻きのようにケバイ存在ではなかったが言動とアクションは大きく
自宅前でバイクに降り立った時るりは犬の散歩で通りかかっていた。
玄関前での立ち話だ・・・内容は主に同級生達の進路でるりは口さがない近所のオバサンと同じく様々な情報を仕入れているらしく話はつきない。
いい加減井戸端話しを終わらせたい環にとどめの一言、英文学部の東館暁子が一年間イギリスに留学生として候補に挙がっているというのだ。

その夜・・・環は眠れなかった・・・。

<<笑えない 2>>

「環、4限目はどちらの教室?」
キラキラ光るピアスとブランド物のバッグが18歳とは思えない。
菜々美は高校生までは黒髪が長く美しく、とても今の状態は想像できないだろう。
彼女の受験体制は親の庇護の元、万全を喫していた。
大学への推薦が決まり12月の推薦試験が終わって合格通知が来て・・年末から三ヶ月菜々美のタガは外れた。

ファッション雑誌を買い、美容室でパーマをあて母親を連れてブランド品の洋服を買いあさる。
イタリアンやフレンチのレストランで食事をし、様々なお洒落講座に席を取った。
結果は想像を絶する17歳が・・・誕生した。
環の周囲は菜々美のようにタガの外れた友人がたくさん居る。
彼らは有名大学に入ることだけが目的で後の事は何も考えていなかった。
恐らく彼らの両親は大学に入ってしまえば周囲の影響を受けてまた勉強に邁進すだろうという甘い夢を持って居る事だけは確かだ。
「ホント環は真面目よね。教育課程までとるんだから・・もっと大学生活を楽しんだらいいのに」
昨日したばかりのネイリストの繊細な仕事に満足げに菜々美は環を見下ろした。
「ちゃんと楽しんでるよ、試験を受けるのは結構刺激的なんだよ、今度漢検の2級を受けるつもりなんだ」
環の答えに口を突き出して抗議をするがあえて菜々美は否定はしない。
環は服のセンスもルックスもスタイルまでも彼女の及第点をクリアしている。
なおかつ菜々美のことを批判する事は一切無い。環のそばはかなり居心地がいいのである。
「では行きましょうか、環」
揺れるイヤリングを軽く髪の毛で隠して、ブランド物の皮のバックを肩にかけ、あごを上げ沢尻環をうながすしょうこは、親に言われるまま教育課程を取ってはいるが環と同じ授業以外さぼり気味だ。
「ダッルイなぁー、午後の授業は眠くてしょうがねぇや」
将兵と裕樹も重たい腰を上げる。
四人とも他県からの受験者で金額の差は有るけれど優雅な一人暮らし。
それゆえに自己管理が大変なのだが・・。
6限目が終わる頃には日が傾き環は陸上部に行く気も起きない。
これから電車を乗り継いで一時間、駅からバイクで10分足らず、たいてい帰りは乗り継ぎが上手くできずに帰りの帰宅時間一時間半だ。
もうじき国体に向けて合宿がある。環の記録は県では一番だが全国的には上に50人以上のランナーが居る。
コンマ以下の細かい数字のせめぎ合いが、これからも走り続ける限り環にのしかかっている。

環は帰宅すると一番に自分で作った基礎練習を始める。
インナーマッスルを中心に鍛えびっしりと汗をかいた所で暗い道路に飛び出す、周辺に家が無くなる広い田んぼ道が環の練習場だ。
たまに犬の散歩をさせる人に会うが、それ以外は走る車も無く、二時間近く走る事が出きる。
ただし、田んぼ道はジャリがしかれ、雨が降った後水溜りがある。
今日も自分で作ったメニューをこなさなければならない。そうしなればとても上位に食い込めないのだ。

陸上部の練習をパスして帰宅した。玄関前でバイクを降り、環は空を見上げる。
空には早くも月が昇り一番星が隣で輝いている。
バイクを車庫に入れ門扉を押す・・取っ手を上げてないから開かない。
肩に力がはいらない。

もう一度環は月を見上げた。
月とあの一番星のようにいつも暁子と一緒に居られたら・・と環は思った。












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