閉幕の後で
目が覚めた。
枕もとの時計で時間を確認する。
……午前十時。……そういえば、今日の授業って何時限からだったっけ。
日付と曜日を確認するが、取っていた授業が思いだせない。
あれー……まさか、この年でボケたか。
布団の中でぬくぬくと丸まり、二度寝の誘惑と戦いながら必死に記憶を手繰るが思い出せない。
トイレに行こう、と思って布団から出たら足元にボールのようなものがあった転びかけた。
「あ、宝珠」
床の上に宝珠が転がっている。疲れていたから仕舞うのも面倒で適当にほっぽったんだっけ、と考えたところで思い出した。
――ああ、俺、あの変な世界から昨日帰ってきたんだ。
ようやく意識が覚醒してきた。
久しぶりに自分のベッドで寝たせいですっかり寝ぼけていたらしい。
授業、というか大学も本当に久しぶりだ。
何か月ぶりだろう。そりゃ、時間割なんか覚えているはずもない。
一応、こちらに戻ってくる時間は、異世界に連れ去られた時間からあまりずれないように気をつけて転移をした。
【時空魔法】だけあって時間の調整もある程度きいたのがよかった。帰ってきたら何か月も行方不明扱いでした、ではこっちの生活に困る。
流石に《時間移動》は魔力が足りないのでやれないからな。
さて、パソコンで大学のHPに繋げ、ネットから自分の時間割を確認する。
ああ、そういやこの授業とか取っていたなー、と思い出しながら今日の曜日を見ると、すでにぶっちぎっていることが発覚した。
仕方がないので朝食の用意をし、せめて次の授業には間に合うようにと支度を始める。
「――昨日、××駅で夕方ごろに起きた人身事故ですが、電車に轢かれた少年は頭部を強打したものの命に別状はなく、数日中には退院の見通しが――」
奇跡の生還!とでかでかとテロップが出て、テレビに見知った駅が映し出されていた。
この駅、いつも使っている駅じゃないか。
人身事故があったのか……。さすがに今はもうダイヤの乱れはないよな?
しかし、電車に轢かれて軽傷ですむとかどれだけ頑丈なやつなんだろ。
「――と、そろそろ時間がやば。真面目に支度しないと」
玄関から出て鍵をかける。
外は快晴、気持ちのいい青空だ。
転移を使おうと思えば使えるが、普通に歩きと電車で学校に向かう。
最近、自分の足で移動することが少なかったから少し太った気がする。
今日の帰りは一駅手前で降りてそこから歩く、というのをやってみようか。
それとも大学のジムにでも行ってみるかな。
「あ」
帰りで思い出した。
ゼミのレポート、帰ったらやろうと思っていてまだ手をつけていない。
あの異世界に召喚されたせいですっかり忘れていた。
ゼミの先生厳しいからちゃんと作り上げないとめちゃくちゃ嫌味を言われるんだよな。
これも全部あの世界に召喚されたせいだ。
昨日帰ってきた時には精根尽きて、レポートに手をつける余裕がなかった。
「はぁ……。
『復讐からは何も生まれない』というのは本当だな。
今日は早めに帰ってレポートをやるか」
完
祝・完結!
たくさんの応援ありがとうございました!
この作品は本当に好き勝手やらせていただきました。今はとても清々しい気分です。
正直、最後の方は調子に乗って書きたいこと詰め込みました。
『デウス・エクス・マキナとか、いきなり出てきて読者さん置いてけぼりじゃないかな? でも書きたいから書くかー』と思いながら書いていましたので、もしも感想とか評価いただけると嬉しいです。
『最後の主人公のぶちまけ部分いらない!』とかでもいいので一言もらえると喜びます。
感想返しはちょっと許容量オーバーしたので割烹で後々返信します。
許してください、全部ちゃんと目を通しています!
それでは、またどこかでお会いしましょう!
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!!