Second night..夢の続き…
「もう朝だよ。起きなさい〜」
ママのゆる〜い声で私は夢から覚めた。
顔はぼんやりとしか見えなかったけど…
あれは確実にあの人です。
どうしてかって…
あの声は絶対に聞き間違えるはずがないから。
私が切な〜い恋心を寄せるあの人は、世界で一番素敵な声の持ち主なのです。
「…そんなわけがないから!!世界にはもっともっと素敵な声の人はいるよ!」
友達は呆れ顔。
でも良いよ。
だってその方が私にとっては好都合♪
ライバルは一人でも少ない方が良いしね。
橘 梓
名前まで素敵な彼が私の恋しいあの人。
私が恋に落ちたその日はちょうど二年前のまさに今日!!
素敵な声が空から降ってきたの。
───
「どうしたの?気分でも悪い?」
素敵な声の持ち主は顔も笑顔も。
何もかも素敵な男の子だったんだ。
「私…もう嫌。もう嫌だ!」
受験に失敗して、けっこう長い間付き合っていた彼氏と別れ、失恋と言えば髪を切るでしょ〜!と思って切りに行ったら大失敗されてしゃがみ込んでいた。
きっと、いっぺんにたくさんのものを失くしてしまった私への神様からのプレゼントだと思いました。
その人は一枚の名刺をくれたんだ。
そこには英語のお店の名前と彼の名前。
「…美容師さん?」
彼は優しい微笑みをかけてくれた。
あの素敵な声で語りかけてくれた。
私には彼がキラキラして見えたんだ。
きっと悩みなんて一つもなくって。
カッコ良くって、優しくて。
きっと恋愛だって、仕事だって完璧なように見えたの。
「そんなことないよ。俺にだって悩みくらいあるよ」
気休め。
優しい人の言葉って時に傷付くことがある。
自分が余計惨めに思えてきて泣けてきたりして…
「名前。俺は自分の名前が嫌だった。男なのに何か女の子みたいで恥ずかしかったしさ。まぁ今は別に平気だけどね。」
「そんなことない!!梓って確かに珍しいけどすごく良いと思います。それに少なくとも今の私よりは全然良いと思う…。」
「じゃあ…俺走るの遅いんだ!!これ男としてはけっこう辛い悩みだよ!」
「だったら私だって明日から学校行けないし!元彼同じクラスだし…」
「俺だって3年片想いして振られたことあるよ。しかもバイト先一緒だったから気まずい気まずい!」
「だったら私だって!」
「…って俺らすごい不幸自慢してるね(笑)何かおもしろくなってこない??」
「確かに…!!でもこの髪型は笑えない…」
そして私の愛しの彼は優しくこう言ったのでした。
「俺に任せて。俺が世界で一番可愛くしてあげるから。」
疑心暗鬼でした。
だってほんの数分前に会った人に、女の命の髪型を委ねるなんてさ。
でも彼の一言でそんな疑いの気持ちはどこか遠くへ吹っ飛んで行っちゃった♪
"俺を信じなさい。"
あまりにも素敵な声で、あまりにも素敵な笑顔でそんな言葉を言われたら…
もう信じてみるしかないでしょ!!って感じだったの。
彼の素敵な言葉どうり、私の髪は素敵なものになった。
数時間前とはまるで別人だった。
「またいつでも来てね。いつでも世界一にしてあげます♪」
「本当に本当にありがとうございました!!」
私は大満足になった。
───
と、まぁこんな感じで私の素敵な片想いが始まったわけなのですが…
相手が相手だからさ…
「まじ営業トークだから!!小憂〜美容師さんなんてホストと一緒なんだからね!!分かってる!?」
友達の意見は時に腹が立ってうざいこともあるけれど、後になって冷静に考えるとたいがい、当たっている気がする。
現に私がお店に行かない限りまったく会えないし。
お店に行ったってほとんどアシスタントの人と過ごすわけで。
だいたい私のバイト代のほとんどが美容院代へと消えて行き…
報われない!!!
だからせめて。
せめて夢の中でだけでもと…
そう願って毎晩眠りについているわけなのですが…
きのう見た夢の続きなんてそう簡単に見られるものなのかなぁ。
何かそんなことばっかり考えていたらすっごく眠たくなってきたので寝ることにしました。
「今日も一日お疲れ様。逢いに来たよ。」
まさかのまさか!
これはもしかしてきのうの夢の続きってやつですか?
「梓くん?」
あ〜なんて素敵な夢。
こんな素敵な夢なら覚めないで。
「ずっと待っててくれたんでしょ?待たせてごめんね。小憂ちゃん。」
夢って願望が出るとよく聞きますが…私の願望は…!!
「何でも言って♪待たせたお詫び!!言うこと聞くよ。」
「私…梓くんにね…えと」
小〜憂〜!
遠くの方でママのゆる〜い声が聞こえる。
あーママお願い。
せめてあと1分だけでいいから夢の中に居させて…
「私…梓くんに"好き"って言われたいの!!」
「いいよ。」
あ〜ついにあの素敵な声で愛の言葉を!!
「小憂!!いつまで寝てるの!しかもにやにやして変な子…!!」
ママのバカ!! |