5―1 ツインテールは自重して下さい
久しぶりのほのぼのコメディー
特待生と訊いて一般的に思い浮かべる人物像は、聡明な眼鏡くん、もしくは野球に己の全てを掛けている熱血であり、爽やかでもある少年。人それぞれで、そこら辺のイメージは若干異なるかも知れないが、真っ先に思い付いた特待生像がこんな感じの憐憫に思えるほど未来を嘱望されている少年少女たちだ。
そもそも特待生とは立派な略語である事をご存じだろうか? 正式には「特別待遇学生」と言い、一部の私立学校に置いて成績優秀者やスポーツなどで誇れる功績を残した一部の人物に与えられる特権だ。その内容は、主に学費の免除などが代表的だろう。
何故、このような説明をしているのかと言えば、俺のもっとも身近に存在する特待生は、学業態度最悪の上、頭の中身もJAS規格を満たしていないミソ程度な物で、この学校はダメ人間に投資している冨が盛んでいるのかと懐疑心を抱いてしまうのも無理はないだろう。
だって、葉月が特待生とかちょーありえない。
黄金の週と呼ばれるゴールデンウィークもいつのことやら、今は五月下旬、五月病もそろそろ醒めて来てもいい時期に突入してきた。
通称催眠授業の数学の講義中、俺は襲い掛かる睡魔と精神内部にて凄絶な戦闘が繰り広げられている。黒板に次々と綴られていく文字は、ヘブライ語表記にしか俺の瞳に映らなくなってきたその時、現状の異変を鋭敏に感じ取った。
何かが、おかしい。ステージIVの睡魔だろうが、俺は授業に墜ちた経験は無い。それは何故?
思案している内に覚醒してきた意識。それは同時に答えを授けてくれた。
「……ぅー……」
いつも邪魔してくるはずのツインテール葉月が、唸りを上げつつも勉学に励んでいる。
ありえん。これは十年遅れでノストラダムスでも来襲する前兆か?
授業が終了して数分が経過したにも拘わらず、葉月は今だ熱心に教科書と睨めっこをしている。自家製ブルーチーズ作成に失敗した新種のカビを食べて、脳構築パーツが組み替えられたか?
「葉月、どうした?」
「何が?」
振り向かずに葉月はぶっきらぼうに答えた。声音から分析して、相当ご立腹の様子だ。ちくちくした威圧感を肌を通して毛細血管にまで伝わってくるが、そんぐらいじゃあ俺は臆さないぞ。
「勉強なんてして、何の気の迷いだ?」
「バカ。アタシだってね、時々勉強ぐらいするわよ」
現段階の気持ちを描写するなら「意外」以外の何物でもない。
「あ、そう。悪かった。がんばれ。俺は邪魔にならんようどっか行ってるから」
弁当一式を手に持ち、斉藤を始めとする大分馴染めてきた級友たちのもとへと向かおうとすると、
「ちょっと待ちなさいよ!」
ブレザーの袖口を器用にも掴まれ、武力による制止を強制された。脈絡の無い行動は慎んで貰いたい。
「なんだ」
「あんた、何でそんなに余裕があるのよ?」
余裕とはなにか? 金銭的余裕に関しては考えるまでもなく葉月の方が数十枚上手に行くだろうし、精神面に到ってはカップ内に表面張力が発生している水のようにいっぱいいっぱい、もしくは少し零れてるかもしれない。ここ最近の俺は余裕と言う言葉が別次元の単語だと思えてくるよ。
「来週はテストよ! 仁井哉、あんた、そんなに頭良いわけ?」
テスト。そう言われてみればそんなイベントが合ったような気がしないでもないが、今月様々なイベントをこなしてきた俺にとっては気に留める値もない些事に過ぎん。
「だんだん腹が立ってきたわ……そもそも問題が難し過ぎるのよ。高一でこれとかありえない!」
確かにここの学校は曲がりなりにも偏差値そこそこ、全国水準よりも上に位置するが、進学校と言う訳ではないので、どこと比較しても目を見張るような差は出ないはずだ。にも拘わらず、葉月が必要以上に頭を悩ませている理由は、単なる学力不足。構造計算書偽造が浮上したマンションのような思考回路なのだと想像していたので、葉月のバカぶりに驚く要素はどこの次元を探しても見つからないだろう。
「ここの数学、サイコロを例にする問題が多すぎだと思わない?」
「解らなかったら、36通りと書けばいい。一問は当たるぞ?」
「仁井哉……ちょっと、しゃがみなさい」
言われるまま素直にしゃがみ込む俺は、将来嫁さんが出来たら尻に敷かれるタイプなのだろうな。
見下ろしてくる葉月は、下品極まりない笑みを浮かべ、俺の側頭部を両手で挟み込み、顔を近づけてくる。待て、この事態は何だ。急展開は嫌いじゃないが、いざ自分がその急展開の波に奔流されるとなれば話は別だぞ。
お互いの呼吸が届く位置で葉月は制止し、
「→溜め←+A――ブッチャーのヘッドバッド!」
鈍い振動が脳内に直接響き渡る。
葉月の頭部と俺の頭部が激突し、言いようのない痛みが脳内部に襲い掛かった。
「いってぇ……」
徐々に痛みが引いて行き、顔を上げてみれば、ヘッドバッドを繰り出した本人がその場に頭部を押さえ蹲っており、意気消沈としている。同情する余地はないが、あまりにも哀れな姿に咎める気力が霧散してしまった。
「バカ! 痛いじゃないの!」
前言撤回。ちょっとムカって来たぞ。
「自業自得だ、ばーか」
言ったあとに後悔。今の発言、現代社会を生きる小学生にも劣るとも劣っているあまりにも低次元。葉月の毒に侵されつつあるな……解毒剤があるならば一万までは惜しまず出資するね。
「くぅー……この痛さはヘッドフォンに髪の毛が絡まっている事に気付かないで、そのまま毛根から毛が抜ける時の痛みと同じぐらいね……」
俺は理解しがたい比喩をするツインテールとの距離を詰めて、今度はこっちが葉月の顔を覗き込むように接近する。よほどの衝撃だったのか、目尻が涙で滲んでいる。俺に非は斉藤の存在価値並に無いのだが、多少なりに罪悪感を感じるのは、こいつが生物学的に女であるからで、葉月が男だったら今頃は七年殺しで再起不能にしているところだ。
「なによ」
「大丈夫か?」
「べ、別に痛くなんかないわよ」
「さっきまで、「痛い、死にそ、ザナルカンドが見えてきた、これがアタシの物語だから」とか必死に痛さを表現してただろうが」
ふん、と鼻を鳴らす葉月。頬が紅潮気味なのは涙を堪えている、あるいはカフェイン中毒患者特有の禁断症状か。まさか葉月が高血圧で、服用しているバイロテンシンの副作用ということはなかろう。
まあ、本人が大丈夫と公言しているんだ。
遠慮はいらないな。
「なぁ、葉月」
「…………なに?」
右手を葉月の顔面を覆うように位置まで上げ、親指をストッパー代わりに中指を引っ掻け、前方へありったけの力を込める。そこでストッパーたる親指を解除すると、阻害が消えた中指は力の逃げ場を探し、前方へ吹っ飛ぶ。
音の圧力変動が起こる。
力の捌け口を求めていた中指は、葉月の前頭部に直撃し、秘めたる破壊エネルギーをありのまま開放した。
「っっッ!」
声にすらならない叫び。葉月は再びその場に蹲り、呪怨のような悲愴な唸りを喉から発している。
小難しく表現しているが、端的に言えば、デコピンを咬ましたのである。
「ささやかな仕返しだ」
「……に、い、やァ!」
潤んでいる瞳を目の当たりしても、もはや罪悪感は感じられない。
「葉月、そもそもお前と小突き合いをしている理由が解らないんだが」
「自分の心に訊きなさい!」
「そんなツンツンするな。短気は損気だぞ」
「うるさい! アタシだってね、好きで怒っている訳じゃないのよ!」
好んで激怒する人間がこの世に実在するとしたら、そいつはガチガチ縦社会で日頃の鬱憤を後輩に叱責するという形でストレス解消を図る根っからのサディスト属性を備え持つパワーハラスメント大好き人間ぐらいなものだろう。ちなみに後輩の部分は生徒にも置換可能だ。
「いい加減にやめとけ」
睨み合う俺と葉月を制止する如く、間に割り込んできたのは斉藤。仲立ちする為に来るとは、斉藤らしからぬ行為だ。内心では見返りにクラス女子からの名声を求めているに違いない。
そんな実直な感想が表情に出てしまったらしく、斉藤は否定の反応を示した。
「仁井哉、お前って全然、俺の事信用してないよな。とりあえず、周囲の視線を見てみろ」
斉藤に促されるまま、360度、周りの見渡してみれば、クラスの全員が全員、愛くるしい小動物でも観察しているような生暖かい視線をこちらに向けている。女子は発作を無理やり押さたような、くすくす笑いをしているし、男子は「俺にはついて行けない」と微笑ましい笑顔。
まずった。
俺のもっとも嫌いなバカップル同然のいちゃつきをカップルでもなんでもない葉月と繰り広げてしまった。いや、いちゃついていたつもりは斉藤の存在理由並に無いが、客観的に判断して、今のはいちゃついていたの同然だ。
「見ているこっちが赤面物の微笑ましさだ。夫婦漫才は教室内では禁止」
「だ、誰が夫婦漫才よ!」
そこに敏感に反応を示すでない。
「いいか、瀬尾。お前は仁井哉の主観的感想の通り、ちょいとばかしツンツンしすぎだ。典型的な素直になれない型とは言え、年中ツンツンばっかじゃあ、そこら辺の地雷ゲームと同然、いや、それすらも劣る。打開策として考えられるのは……そうだな、先程の頭突きシーンをめくるめくアナザーディメンション的な舌を絡ませる接吻――うがっ!」
R-18的な淫らな単語が出てくるのを予想し、俺は斉藤の喉ぼとけにエルボーを送り込んだ。いい角度で入ってしまったのは不可抗力で、客観的な判断としてみても充分許容範囲である。
「もう……どうでもいいわ」
そう呟いた葉月はブレザーの袖口で目元に溜まった液体を払拭しつつ、立ち上がると、おぼろげな足取りで教室を出て行った。
斉藤は断続的に咳き込みながら、
「瀬尾め、俺をスルーするとは不届きけしからん」
「お前の存在の方がけしからんと俺は思う」
「仁井哉。瀬尾を追わなくていいのか?」
あからさまに話題を切り替えるな。ちょっとお前は会話の流れを無視し過ぎだぞ。てゆうより、何故葉月を追わなくちゃならんのだ。
「こういうシュチエーション――じゃなかった。こういうシチュエーションの場合はヒロインの名前を叫びながら追い掛けると相場が決められている」
お前の語る相場は、俺の主観世界では確立されていないし、葉月の名前を叫びながら追い掛ける昼ドラ展開など、それこそ級友たちの格好の的となり、昼メロくんのレッテルを張られることになるぞ。
それにしても……
「あんのバカ……俺の弁当かっぱらって行きやがったな……」
手元に携えていた弁当一式が消失していた。何でもかんでも葉月と決定付けるのは褒められる思考ではないが、それでも真っ先に浮かぶ人物像はバカツインテールだ。胃袋に小宇宙が広がるあの大食いだ、今頃は臓器が食物をエネルギーに変換作業中だろう。
「くそ……お前のポジションが羨ましい」
羨望の眼差しでこちらを見据える斉藤は、とてもじゃないが正気の沙汰とは思えない。俺の正常なる胃袋は食物を欲しいと鳴き声を上げているが、弁当を失った今、食物を摂取する手段は学食に向かう選択肢以外の余地はないわけで、しかしこの時間帯に食堂に向かうと地雷原に突っ込むような物だし、今日に限って財布を忘れて、手持ち金はゼロ。
「斉藤、手持ちはいくらだ?」
「5円チョコ、消費税込みで十九個は購入可能だ。何なら貸してやろうか?」
それは嫌味と捉えていいのだろうか? 学生の味方である学食とはいえ、百円メニューは揃っていないぞ。
「仁井哉……これは「試練」だ。食欲に打ち勝てという「試練」とお前は受け取った。人の成長は……………未熟な自制心に打ち勝つことだとな……っておい、無視すんな」
斉藤の戯れ言は意識外へシャットアウトし、俺は自席へと腰を下ろす。ふと、前方の卓上を見ると、A4ノートに達筆らしき読解不可能の文字がぎっしりと羅列していあった。
あのバカは何を躍起になって、勉学に奮闘しているんだ? テストなんて、葉月にとって気にするに値ないイベントだと思っていたが、人間意外な一面があるものだ。
「ニィ」
背中を小突かれ、一顧する。俺の後部座席に控える人物――お察しの通り未梨である。シャレた赤縁眼鏡に、人工的な色合いを出す金髪は女子にしては短めである。磨き掛かった無表情が発する微細なモールス信号が捉えるのはちょっとした至難の業。習得するまでに十年の歳月を費やしたものだ。特技として履歴書に記入しても誇れるだけの価値はある。
「あげる」
そっと差し出されたのは未開封のあんパン。
施しを受けたいのは山々だが、あんパンは未梨が持参してくる唯一の食料である事は重々承知済みだ。それを受け取るほど飢えているが、飢えていない。
「俺なら平気だ」
ちょっとした痩せ我慢です。
「……」
未梨は機械的緻密な動作でビニール袋を開封する。そのまま中身を取り出し、おちょぼ口に運ぶと思いきや、未梨はあんパンは精緻に二等分し、その半身をこちらに差し出してきた。
「はんぶんこ」
無表情から発せられる機微なモールス信号を俺は確かに捉えた。
ここまでの気遣いを断るのは却って失礼だな。
「サンクス、未梨」
「べつに……」
俺は差し出されたあんパンを受け取り、最大級の感謝の気持ちを込めつつ口内へと運んだ。斉藤がぶつくさ罵るのを黙殺して。
授業五分前を知らせる予鈴とともに葉月は戻ってきた。俺の弁当一式を携えているところは、殴って欲しいという暗黙のサインかこの野郎。
「おいしかったわ」
弁当の感想など訊いとらん。
「他に言う事は?」
「玉子焼きの味付けの仕方が訊きたいわね。嗜好の違いを超えたおいしさだったから」
「他に」
「お箸が歯に引っかかって折れちゃったわ。ごめんなさいね」
謝る箇所が違うし、人の箸を噛み砕くとは何事だ。
それからも葉月は自分の侵した非を固執なまでに認めようとはせず、黄昏れ気味に俺の言葉をあしらい続けていた。教師が教室に闖入してきたところで俺もいい加減どうでもよくなり、これから始まる授業に集中することとし、ツインテールとの口論は打ち止め。
それにしたって授業開始の途端、葉月の勉強に打ち込む姿勢がまるで国立大学を目指している勉強バカに変貌するとは一体全体どういう風の吹き回しだろうか。昨日までの葉月は男女混合の二十メートルシャトルランでひとり200回こなした挙げ句、教師に強制終了を命じられ、ぶつくさ罵っていたほどエネルギーハツラツで、テストの件について、ほのめかしたりするなどは一切無かった。そして、今日になってみればこの有様。あからさまに怪しい。
今や、瀬尾葉月の名は問題児、超人、ツインテールの三拍子で学校全体に流布されており、意気消沈としている葉月を目にした教師は瞠目して、名簿とツインテールを照らし合わせている。今は五時限な訳だが、恐らく俺が気付いていなかっただけで、一限目からここのクラスに講義に来た教師は驚きの反応を示していたのだろう。そりゃあ、誰でも疑いたくなるね。二ヶ月近くに渡り、授業を受けているとは言い難い態度だった奴が、別人のように振る舞っているのだから。心理学者の菊池聡さんも感嘆符を浮かべることだろう。
普段なら起こりえない絶対的静寂は、講義を行う教師にとっては気まずいらしく、いつもなら円滑に進む授業も心なしかスローペース。生徒も重苦しい空気の所為か、時間の流れを遅く感じている様子で、その禍根は負のオーラを噴出させる葉月であることも全員が全員、把握している。ちなみに俺は伊達に未梨の幼馴染みをやっていないので、沈黙耐性は当の昔に習得済。雑魚とは違うのだよ雑魚とは。
微妙に普段と異なる授業の終了後も葉月は忙しくペンを走らせていた。
「ニィ、帰宅」
既にリュックサックを背負い込んでいる未梨を例えるなら、疑惑の高校を潜入捜査中の中学生といったフレーズが浮かんだ俺は末期なのかも知れない。
「……帰るか」
「仁井哉、待ちなさい! アタシも帰るから!」
いちいち声を張り上げるな。てゆうか、お前は音楽推薦のどーのこーのがあるんじゃないのか?
「今日からテスト三日前。部活動もアタシたち推薦組の授業もないのよ」
「未梨がやだって言うから先帰るわ」
「……言ってない」
……未梨が否定した、即ち突っ込んだ。これは言うまでもなく前代未聞、天変地異。しかし考えてみるといい傾向かも知れない。もしかしたら、葉月に好感を抱いているのではないだろうか。
「よし、帰るわよー!」
考えようによっては俺は今現在、女子ふたりと帰宅中であり、ハーレム状態なのかもしれない。出来れば「仁井哉くん、一緒に帰ろう、えへ」みたいな恭しい女の子を所望したいと思うが、口にすると斉藤辺りに刺されそうなのでこの想いは心の深層部分にしまって置くことにしよう。
右斜め前方に葉月、左斜め後方に未梨、中心は俺という斜線的隊列を無意識上に取っているのは不思議なものだ。潜在的性格のあらわれなのかな?
一緒に帰ると言っても実際に歩く距離は北海道と沖縄の総距離の1/2500km程度であり、葉月とは校門から五分でグッバイバイである。
葉月はツインテールの先端を弄くり回しつつ、
「ねぇ、未梨。あんた勉強できる?」
「……ひとなみ」
ウソツケ。お前が人並みなら、俺の無知蒙昧もいいとこだし、葉月に到ってはネアンデルタール人よりも劣ることとなるぞ。
「人並みね……うん、そうね……そうしましょ。未梨、今から数学教えてくれない? アタシん家でさ。あ、ついでに仁井哉も来なさいね。アンタは拒否権無しの強制だからね」
俺の存在がおまけ扱いの上、強制とは存外だな。自慢じゃあないが推薦組とは違って、俺には受験勉強をしたアドバンテージがあるんだ。お前に教鞭を振るう程度の知識なら、俺にだって充分可能だぞ。
「いいのか、未梨?」
「べつに、いい」
本当にどうでも良さそうに言うよな。もうちょっと時間を大切にしなさい。
「おーし! 決定!」
無駄に意気込む葉月。黄昏れたり、怒鳴ったり、今日の葉月は妙に情緒不安定だな……あれか? 女性が周期的に起こる月経とかなんとか――
「仁井哉、アンタ今しょうもない事考えてない? 顔がたるんでるわよ」
「めっそうもございません、はい」
葉月はどうでもよさげに、ふーん、と頷く。
何て勘のいい奴だ。もし俺が、サトラレだったら葉月の手により、今頃は首と胴体が分離していたな。
「………」
だいたい、この広辞苑と聖書ばっか読んでる根暗無口の未梨に人に物を教えることが可能なのかどうか危惧するところでもあり、その答えは考えるまでも不可能なのだから、行くだけ無駄足だろう(俺がね)
まあ、いい。テストが近いというのは事実な訳だし、五月の最後くらいは学生らしく勉強しろとの、どっかの神様のお告げに違いない。
そう思わなければ、やってられないのが本音だけどね。
ちょっと一人称がへたれたような気がする。
というわけで久しぶりの葉月登場。私がこの小説内に出てくる登場人物の内で二番目に書きやすい葉月。執筆がありえないほど速く済みました(笑)。ちなみに一番書きやすい人物は「愛沢さん(天然)」。一番書きにくい人物「未梨」です。
本来ならそろそろ終わりに差し掛かってもいいのですが、番外編+計画性無の所為で、どこまで伸びるか解りません。
ちょっと余談。
ネタがないので、最近読んだ小説の感想。
『そのときは彼によろしく』
一文字がでかい、ベタな展開だがそれがいい、夏目きゅん、父さんがいい人。
こんな感じです(笑)
では、またその内に。