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      4、 「宝石城」の恐怖

再びバスに乗り込んだ後は、ガイドさんの案内に加え、車内お土産販売が始まった。車内での物売りは初体験、少しびっくりした。

「まーちゃま」を形どったキーホルダーの、少しずつ違うのがビニールケースに5連になっていて、これはハサミでカットすると、切り分けられるので「ばらまき土産」に最適だった。それから「まーちゃま」の形をした金属の入れ物に入ったフォークセット、これは蓋を開けるとその中に、柄の所に「まーちゃま」の飾りが付いたフォークが7、8本入っていた。蓋を閉めて、後ろにあるスイッチを入れると「まーちゃま」の目が赤く点滅し、エキゾチックな音楽が流れるようになっていて、私は一目で気に入ってしまった。

キーホルダーは10シンガポールドル、フォークセットは15シンガポールドル、「こっちは他で買えばもっと高いよ」とのガイドさんの言葉に惹かれる。どちらもそんなに高くはなかったしとにかく可愛かったので、 「これ買おうか?」とゆりと「ぱん」に聞くと「可愛いから買おうよ」と言うので、私たちは2つ共買ってしまったが、「まーちゃま」ファンでなくても買ってしまいそうなお土産だった。

他のツアー客も皆、購入したようだった。

車内販売が一段落したところで、次の目的地である「宝石城」に到着した。

ここは読んで字のごとく宝石のお店、といっても工場がそこにあり、職人が手作りし、直売しているので、比較的低価格で良質な宝石が購入出来るという説明を聞いた。

「じゃらねっと」は実は宝石好きなので(買わなくても見るだけでも楽しい)、どんな宝石があるか、この「宝石城」に若干興味をそそられていた。

 また、シンガポールは輸入品などの洒落たデザインの宝石のある国だという事もあり、是非見てみたかった。

 海外旅行の楽しみの一つに、その土地々の名産品を購入するという事があるが、「じゃらねっと一家」もこれが楽しみだ。「じゃらねっと」は旅行した国々で、記念に貴金属を買うのが恒例でとても楽しみなのだ。購入した一つ一つに「じゃらねっと一家」の旅の歴史が詰まっているみたいで、後になってそれを見ると、旅行の時の思い出が蘇って来るのだ。

 店の入り口を入ると中から店員さんが出て来て、宝石店の説明を受けて、もし見終わっても勝手に外に出ないで集合場所で待っているように念を押されたが、なぜそのような事を言うのかその時は理解出来なかった。

そして、解散し各自好きなように見始めた。

私も宝石に興味があると言ってもここでは、見物だけのつもりだった。と言うのは、今度の旅行では以前から欲しかった、「ブルガリ」のネックレスを別のお店で購入しようと思っていたからだ。

「ぱん」もゆりも疲れていて椅子に腰掛けているので店内をぐるっと一周回ってみた。

一つ好みのデザインの素敵なネックレスを見つけ、試しに値段だけ聞いてみようと思い、店員さんに「これはいくらぐらいですか」と尋ねると、日本円で11万円弱との返事だった。想像したぐらいに高かったし、買うわけではないのでそのまま去って行こうとしたら店員さんが、私の着けているネックレスを見て、「素敵なネックレスですね、日本で買ったのですか?」と聞いて来たので「これは、日本ではなく、韓国に旅行した時購入しました」と言うと、「いくらぐらいで買いましたか、10万円以上はしたでしょう」とまた聞かれたので、「これはバーゲンでをやっていた時に買ったのでそんなに高くありません」と本当の事を言った。

 日本で買えば10万円ぐらいはするかも知れないが、韓国は意外と貴金属は高くないし、ロッテデパートがバーゲンをしていた時に購入したので本当に高くはなかったのだ。

 そこで店員さんが突然豹変し、日本から来た「カモ」を逃すまいと思ったのか攻め寄って来た。

 そして、私が値段を聞いたネックレスを指差し「これは、少し値引きできますけど如何ですか」と勧めれたので「ちょっと高いし、今日は買うつもりはないから」と言って去ろうとしたのだが逃すまいと、今度は「5万円までは安く出来るから如何ですか?」と詰め寄って来た。

 それでも断っていたら、更に今度は「このネックレスをいくらだったら買いますか?」とこちらが買うとは、一言も言っていないのに、買う前提で交渉を仕掛けて来たからすごい。本当に買うつもりがないのに値切っても仕方ないので「買うつもりがありませんから」と言って去って行こうとしたが、追い討ちをかけて「今店長に幾らまで値引き出来るか聞いて来ますから」と奥の事務所の方に言ってしまった。

 多少言葉的に疎通が悪い事もあるかも知れないが、価格的にこちらが納得がいかないから、渋っていると勘違いしていて、価格さえ折り合えば購入すると思っているみたいで、中国人の商売熱心さには感心させられた、と同時に閉口した。

 普通の店だとこれで外に出てしまうところだが、入店する時に買い物が終わっても、勝手に店の外に出ないように念を押されていたので、外に出る訳にもいかなかった。

 このシステムは高価な宝石がある事の他に、言葉は悪いがカモを逃がさない為もあるのではないかと思ってしまった。

 私達の一連のやり取りを見ていたガイドさんが私の所に来て心配して、「無理に購入しなくてもいいですから」と言ってくれた。やはり店員さんが無理強いしているように見えたのだろう。こういう事はよくあるのかも知れない。

 しかし、旅行代理店では、大抵、こういうお土産店からマージンを受け取っているというから、そういうことをあまり大っぴらに、お客さんに言ってはいけないのかも知れない。

 (ぱん)もどうしたのかと思って、私の所に来たので事情を説明した。

 そうこうしている内に、またさっきの中国人の店員さんが戻って来て、私の所にやって来た。

 「今店長に聞いて来たのですが、日本円で3万5千円まで割引してもいいと言われました」当然買いますよね、という感じだったのですが、私も思い切って「今日は本当に買うつもりがないから、ごめんなさい。でも、あちらにある、金に龍の姿が彫ってある、ペンダントヘッド、あれは母のお土産にいいなと思っていたので、頂きます」そういうと店員さんの機嫌を損ねるかと冷や冷やしたが、そこは商売上手な中国人、にこにことして「中国では龍は縁起の良い、強運の象徴で中国では良い物とされています」と親切に教えてくれた。

 商品を包んでくれ、支払うとき日本から持って来た、ハワイ旅行の残りの米ドル札があったのを思い出し、「米ドルで支払えますか?」と尋ねると「大丈夫です」とやけににこにこと返事をしてくれた。

 そのペンダントヘッドは、57シンガポールドルなので、100米ドル紙幣を一枚渡して代金を支払った。商品と一緒におつりとレシートも渡されたのだと思うが、その時は、店員さんとのバトルの疲れと、やっと「宝石城」から逃れられる喜びで、ろくに確認もせずお釣りを財布に締まってしまった。

 そして、再度バスに乗り、落ち着きを取り戻した時に、海外に来たら買う気がないのに商品の値段を尋ねたり、手に取ったりすると、買う気があるとみなされるから、地注意しなければいけないなと思った。これはとても良い経験になった。

 それから、米ドルのお釣りを確認したら少し少ない気がしたので、支払った時の事を思い出してみたら、シンガポールドルの値段を、米ドルに換算した金額を聞かずに払ってしまったので、もしかしたら、そのまま57米ドルで、多く支払ってしまったのかも知れないと思ったが、後の祭りで、すっきりしなかったが、よく確認せず支払ってしまった自分のミスだなと反省してくよくよしない事にした。

 やはり海外に来て冷静さがなくなっていたのかも知れないが、この程度のミスなら後になれば笑い話だ。

 とにかく「宝石城」は恐怖だったが、反面、面白かった。いつかまた訪れて店員さんとバトルをして購入してみたいものだ。

 




  つづく

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