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森のウシュク

作者:茉雪ゆえ
 ウシュクは水の中ずっと座っていた。いつからいるのか、もう覚えていない。ウシュクは精霊に近いひとの魂で、今となっては森と泉に属している。薄青の髪と濃い青の瞳と、青白いほど白い手足を持っていて、くちびるまでも冷え切ったかのように紫だ。

 がさり、と音がして、ウシュクは顔を上げた。森の藪の向こうから現れたのは、ウシュクが人であるならば、同じほどの歳の青年である。ああまた来たのねとウシュクは思う。たしか3日振り、だっただろうか。
 青年は何日かに一度、この泉に現れる。名も年齢も立場も知らない。なぜならウシュクの声は彼に聞こえず、ウシュクの姿は彼には見えないようなので。
 彼はよろけるように泉のほとりに腰を下ろす。いつも、見えているのではと思うほどにウシュクの真横に座る。ウシュクの位置がどこであってもだ。それから泉に首を突っ込んでごくごくと喉を潤し、ばしゃばしゃと顔を洗い、少し黙り込んでから、ボロ布を泉に浸して身を拭い始める。ウシュクはそれを、黙って見ている。引き締まった若い肉体は美しく、ウシュクは時折ため息をつく。
 清拭のさなか、男はいつも泉の水面を覗き込む。そして言うのだ。

 ……どこにいるんだ、******。

 末尾はいつも聞き取れない。ただわかるのは、青年が何か――誰かを探して森を彷徨っているらしいことだけである。
 そういえばこの男、前はもっと身奇麗で、貴公子然としていたな、とウシュクはぼんやり思い出す。今でこそ、濃い無精髭と煤けた衣類、ボロボロのマントと傷だらけの防具をまとっているが、初めてこの泉で彼を見た時は、まるで王子様のようだと思ったものだった。濃い金の髪、深い青の瞳、すらりとした体躯。磨き上げられたブーツと、由緒ありげな腰の長剣。白い馬。
 あれは……いつのことだったかしら。ウシュクは思い出そうと頭を捻ったが、彼女の記憶はぼろぼろと刃毀れしていて、たった数日前のことさえ、はっきりとは思い出せなかった。

 森の乙女ウシュクはかつて、精霊の血をひく人間だった。今は、人としての生を捨てて、森の精霊となるべく、泉に浸かって過ごしている。人の身には冷たすぎる森の泉は、一刻毎にウシュクの中の人間だった部分を洗い流し、彼女の身を精霊へと近づけるのだ。今のウシュクには人だった頃の記憶も、きっとあっただろう人としての情も、ほとんど残っていない。

 ウシュクはぼんやりと、泉のほとりで水面を覗きこむ男の姿を眺めやった。ひどくつらそうだとは思うが、それだけだ。精霊は基本的に、人と交わらずに生きるいきものである。ウシュクの祖先のように、人の中で生きていこうとするものは、ごくごく稀であり、精霊たちにとっても、変わり者、と呼ばれるような存在だった。

 ウシュクがぼんやり、男を眺めていると、男はついに、膝をつき、そのままどう、と地に伏した。ウシュクはおどろき、それから、まだ「おどろく」という心を残していた自分にもう一度おどろいた。ウシュクは泉の水を掻き、ふらふらと男に近づいた。憔悴しきって力を失った、やつれてボロボロになった男。なんとはなしに、その頬に触れてみる。

 すると、男は瞳を薄っすらと開いて、そして言った。

 アウレーリエ?

 途端、ウシュクの中を凄まじい記憶の奔流が駆け巡った。





 森の乙女ウシュクは以前、精霊の血を引く人間だった。しかし、竜の毒を受けた夫を救うため、妖精と取引をして、森の乙女となったのである。森の乙女は精霊の「見習い」で、ウシュクは精霊になるために、彼女に残る「人間の気」を洗い流すべく、泉番として泉に浸かっていたのだった。
 気が洗い流されてゆくのと合わせて、ウシュクからは人間の頃の記憶はなくなってゆく。それ故、今となっては本当の名前――アウレーリエという――も忘れていた。名の由来であった美しい金の髪も、精霊の色になってしまっている。

 彼女と夫、フリードリヒは、仲睦まじい夫婦ではなかった。彼は幼馴染で、聖ゲオルグ騎士団の出世頭で、伯爵家の長男坊だった。剣を握り、馬を駆る事を愛した彼は、跡継ぎでありながら、行儀見習いも兼ねて入れられた騎士団から戻ろうとせず、両親を悩ませていた。彼を家に縛る方法のひとつとして結婚をさせることとなり、その相手として選ばれたのがアウレーリエだったのだ。彼女は隣の子爵領の二番目の娘で、フリードリヒと2つ違い。年の近い貴族の子供同士として、幼い頃から見知った仲だった。

 そんな理由であてがわれた妻である。見目麗しく、女に不自由していたわけでもないフリードリヒが、受け入れるはずもなかった。幼い頃から知る人間を妻と見るのも難しく、両親への反発もあり、フリードリヒは一度もアウレーリエに触れなかった。初夜にでさえだ。そればかりか、他の女との関係をみせつけるようにさえ振る舞った。

 一方のアウレーリエはすっかり諦めていた。彼が強情なことはよく分かっていた。自分が彼の好みではないことも。彼が肉感的な女性を好むことを、よく知っていたからだ。アウレーリエは美しい娘だったが、それはほっそりとした肢体と薄い金の髪の、妖精や精霊を彷彿させるものだった。精霊の血を引いているのだから、当然ではあった。

 しかし、アウレーリエは幼い頃から、彼を好いていた。幼いころ、彼はアウレーリエに優しかったのだ。精霊の力が強く、森に魅入られそうになるアウレーリエを幾度と無く引き戻してくれたのは彼だった。

 だから、お飾りの妻でも、構わないと思っていた。都合の良い女でいようと思っていた。

 そうして、3年の月日が流れた時、ことは起こった。
 国境の森でドラゴンが目覚め、人を襲うようになり、聖ゲオルグ騎士団が討伐へと向かったのである。そしてそこで、フリードリヒは自ら囮となって、竜の毒を受けた。
 竜の唾液や血液に流れる毒は人の皮膚を焼き、髪を溶かし、身を削る。竜は討伐され、彼は英雄となったが、美貌の影も形もない二度と見られぬ見目、立ち上がれぬ程に損傷した身体で戻ってきたフリードリヒを慮ったのは、騎士団の同僚だけだった。人間の力では浄化の叶わぬ、ドラゴンの毒である。高い熱が続き、全身の痛みを訴え続けるフリードリヒは最早、二度と健康体に戻ることはかなわない。彼に擦り寄っていた人々は遠ざかり、毒の消えぬ彼は日々苦痛に、野獣のように吠えてのたうち回るのだった。

 このままでは遠からず、彼は命を失うだろう。アウレーリエは実家の守護妖精に夫の事を相談した。とても見ていられなかったのだ。アウレーリエには冷たい夫だったけれど、初恋の人だ。それに、素晴らしい功績を立ててたくさんの人の命を救ったのに、誰からも見向きもされなくなるなんて。

 守護妖精はアウレーリエに教えた。妖精の里には、万能薬がある。妖精の秘薬と呼ばれるもので、それならばドラゴンの毒を中和し、傷ついた身体さえも癒やすだろうと。ただし、と妖精は言う。その秘薬を手に入れるには対価が必要であると。それはおそらく、お前の身にはきついものだろうと。それでもその薬がほしいのかいと。アウレーリエは欲しいと言った。そうして妖精の里の場所を教えてもらった。精霊の血を引くアウレーリエならばたどり着けるだろうと、守護妖精は言った。

 十日歩き詰めたアウレーリエがたどり着いた妖精の里は美しかった。妖精たちは精霊の血を引くアウレーリエを歓迎した。そして秘薬の対価として、アウレーリエ自身を望んだ。妖精の里のある森は、精霊の力の弱りつつある森だった。アウレーリエが新しい精霊となり、森に宿れば、森は力を取り戻すはず。そうすれば妖精たちの里も安泰となる。アウレーリエは頷いた。夫を救ったら、森に来ましょうと。里長はそれまでに精霊に渡りをつけておくと言い、アウレーリエに薬を渡した。
 十四日掛けてもどったアウレーリエは、心身共に疲れ果てていた。手足はボロボロに傷つき、美しかった髪も無残に乱れ、目はくぼんで、まるで病人のようにやつれていた。彼女はただただ、フリードリヒのためだけを思って足を動かし、帰ってきたのだ。お嬢様育ちの彼女にとっては、苦しい旅路だった。

 フリードリヒは最早、吠える力も暴れる体力も残っておらず、ほとんど死体同様になって寝台に転がっていた。アウレーリエは旅装も解かず、フリードリヒに口移しで秘薬を飲ませた。婚礼の式典でさえ交わさなかった唇が交わって、フリードリヒの身体に秘薬が染みてゆく。程なくして、彼の肌には生気が戻り、焼けただれた肌は滑らかに、失われつつあった髪もやわらかな巻き毛を取り戻した。妖精の秘薬の効果は素晴らしかった。

 フリードリヒの両親は泣いて喜んだ。アウレーリエも嬉しかった。フリードリヒはまだ意識を取り戻さないが、きっと明日には目覚めるだろう。ほっとしたアウレーリエは、眠り込んでしまう前に、フリードリヒの両親に告げた。わたしは妖精たちとの約束を果たさねばなりません。もう、人としてここに戻ってくることはないでしょう。彼が目覚めたらどうぞ、離縁なさってください。実家の両親には手紙を出しておきますからと。絶句するフリードリヒの両親に頭を下げ、実家に手紙をしたためると、アウレーリエは家を出た。

 森へ戻るのに、二十日かかった。
 気を抜けば眠ってしまいそうで、ふらふらになりながら森の端に辿り着いたアウレーリエを、森の精霊が出迎えた。彼はアウレーリエの先祖の系譜に連なる精霊で、アウレーリエのことも知っているという。アウレーリエは精霊の血が濃いので、精霊の泉に三ヶ月ほど浸かれば、人としての気が抜けて、精霊になるだろうと言った。気が抜けるに連れて、人としての記憶も失って森の精霊になるのだという。

 アウレーリエは泉まで精霊に送られて、ぽちゃんと泉に浸かった。ひどく冷たく、身を切るように辛かったが、腰を落とすと抗えぬ眠気がやってきた。精霊はアウレーリエが沈まないように術を掛けてやって、そっと泉を離れた。

 アウレーリエは夢を見ていた。フリードリヒの夢を。憎まれていたというほどではないだろうが、疎まれてはいた自分。幼いころの優しかった彼。お飾りの妻でも嬉しかったとは、ついぞ言えなかった。できるならば、たとえ触れられないままであっても、彼を眺めながら、人として歳を取りたかった。
 アウレーリエはぽつんとひとつ泣いて、また、ずぶずぶと水に沈んだ。

 フリードリヒが目覚めたのは、アウレーリエの去った翌日だった。すさまじいと言える苦痛に飲まれたはずの身体が、毒を受ける前より軽い。どうしたことだと首をひねるフリードリヒに、両親や使用人は泣いて喜んだ。彼自身も喜んだが、ふと、その環の中にアウレーリエの姿がないことに気がついた。いつも、遠巻きにフリードリヒを見ていたアウレーリエ。澄んだ青い瞳でそっと、フリードリヒを見ていたアウレーリエ。優しく神秘的な幼馴染の娘。

 フリードリヒはアウレーリエを疎んじていた。彼女の存在は、気ままに生きることの叶わぬ自分の身の上の象徴だったからだ。けれど、憎んだわけではなかった。自分の身勝手であると分かっていたし、幼いころの、元気にはしゃいでいた彼女を覚えているからこそ、どうして反発しないのだと、そんな憤りを抱いていた。そして、幸せな花嫁さんになりたいのよと微笑んでいた幼い娘を覚えているからこそ、彼女に触れたくはなかった。自分のような身勝手な男は、彼女を幸せな花嫁には出来ない。これは自分が、ましてや彼女が望んだ結婚ではないのだから。

 アウレーリエはいないのですかと問うたフリードリヒに、両親は目に見えて青褪めた。使用人達も黙りこくって、部屋の空気がずしんと重くなった。再び問うたフリードリヒに、両親は小さく言った。アウレーリエは行ってしまいました。もうここには戻ってきません。アウレーリエは実家に帰ったということかとフリードリヒは理解した。見難く崩れた姿で獣のように吠えてのたうちまわっていたのだ。彼女だって愛想を尽かしたのだろうと。いずれ、離縁のための書類が届くのだろうと。冷えた声で、そうですかと答えたフリードリヒに、両親はなにか言いたげな顔をしたけれど、グッと飲み込んだように何もいわなかった。

 しかしその夜。執事が現れてフリードリヒに告げた。アウレーリエ様は、坊ちゃまが一番苦しんでいた時に、ずっと看病なさっておいででしたと。坊ちゃまの爪がアウレーリエ様の肌をえぐっても、泣き言ひとつおっしゃいませんでしたよと。誰もが離れていったのに、アウレーリエ様は離れていかれなかったのですと。

 では何故今いないのだと、フリードリヒは目を眇めた。目覚めた今いないのでは、なんにもならないではないか。感謝のしようもない。アウレーリエが姿を消した事情を詳しくは知らない執事は言葉につまり、そんな彼をフリードリヒが追いだそうとした時、部屋に人ならざるものの気配が現れた。アウレーリエの実家の守護妖精だった。

 彼は妖精の秘薬はよく効いたようだねと微笑んだ。アウレーリエがちゃんと効いたか気にしていたから、様子を見に来たのだよと。それじゃあと去ろうとした妖精をフリードリヒは引き止めた。妖精の秘薬とはなんだ、と。妖精はただではものを教えないよと笑う彼に、フリードリヒは家で一番よい酒を差し出した。

 妖精は語る。妖精の秘薬は万病に効く。ドラゴンの毒さえも消し去る妙薬なのだと。アウレーリエはそれを手に入れるために、妖精の里へと向かったのだと。ただし、人が手に入れるためには対価が必要である。アウレーリエは対価を支払うために森へ向かったのだと。多分、二度と戻っては来ないだろうと。対価が何であるかは分からないが、おそらくは、アウレーリエを新たな精霊にしようと考えているのだろうと彼は語った。あの森の精霊は、随分力を落としている。継ぐものが必要なはずだと。

 フリードリヒは愕然とした。アウレーリエはフリードリヒのために、人としての身を捨てたのだと知ったのである。なぜだ、とわななくフリードリヒに、妖精はなんてことないように告げてしまう。そりゃあ、初恋の男を救いたいと思ったからだろうよと。

 妖精は帰り、気がつけば執事も部屋にいなかった。フリードリヒは呆然と、己の部屋を出た。向かったのはアウレーリエの部屋だ。がらんとして、人の気配のない、女の部屋。ほんの僅かに花の香りのする、清潔な、奇妙に居心地の良い部屋。

 彼女の差し出す対価に見合うような己の身ではない。自分は彼女を愛そうとしなかったし、そればかりか、押し付けられた妻だと厭って向きあおうともしなかった。彼女が少女の頃の笑みを見せなくなったのは、この結婚が不満だからだろうと思っていたし、他の女を見せつけても彼女が何も言わないのは、こちらに関心がないからだろうと思っていたのだ。

 でも、そうではなかったのだとしたら。
 考えてみれば、子爵家の彼女が伯爵家との婚姻を断れるはずもない。夫から顧みられぬ結婚で、笑顔になどなれるはずがあるだろうか。子作りさえもさせてもらえぬ正妻が、愛人になにか言うはずがあるだろうか。――あの可憐で優しい幼馴染は、黙って傷ついていたのだろうか。それなのに、自分を救ってくれたというのだろうか。

 呆然と、主のいなくなった部屋に佇むフリードリヒはふと、寝台の隅に籠が置かれていた事に気がついた。中身を広げてみると、騎士団のマントである。端に小さくフリードリヒのイニシャルと伯爵家の紋がさしてあり、裏地にはびっしりと、守りの文様が刺されていて、それは途中で止まっていた。
 ――ああ、彼女が刺していたのだ。おそらくは、夫のために。己を省みることのない、夫のために……

 翌日フリードリヒは森へと向かっていた。その身を包むのは彼女のさし掛けのマントである。共は愛馬のみ。何とかアウレーリエを取り戻したかった。身勝手だとは分かっていたが、彼女に頭を下げ、今度こそ誠実を捧げたかった。しかし、精霊や妖精の血を引かない彼に森は冷たく、彼が正しく森へとたどり着いたときには、二十日以上が過ぎていた。
 騎士団育ちの彼は見た目に反し、存外荒事に強い。野宿も野戦料理もお手のものである。森のうさぎを狩り、草木を喰らい、沢の水を飲んだ。そうして森を彷徨うこと5日、彼は精霊に出会った。
 精霊は告げた。アウレーリエはこの森で今、精霊になるための禊をしている。その姿はおそらくお前には見えないが、彼女が完全に精霊になってしまう前に見つけ出せたなら、妖精たちと交渉して、彼女を今一度人の世に返してやろう。彼女が完全に精霊になってしまうまでの期間はあと2ヶ月と少しだ、と。

 フリードリヒは二ヶ月の間、休む事なく森をさまよった。髭も髪も伸び、肌は荒れ、衣類は傷んで、防具は傷ついた。いつしか愛馬もいなくなり、彼を守るのは剣とマントだけになった。しかし、まともな物も食べられない暮らしは、坊っちゃん育ちの彼から体力を段々と奪っていった。夜中もまともに眠れぬ暮らしである。ある晩、彼はついに、泉のほとりで倒れた。何度となく喉を潤し、身体を拭ってきた泉は、清廉な空気が満ちた穏やかな場所だった。そこはこの森のなかで唯一、青年が安らげる場所だった。アウレーリエの部屋の雰囲気に似ているのだ。

 事切れるならここがいい。フリードリヒはそう思い、意識をそっと投げ出した。そのとき、ふわりと、何かが彼の頬に触れた。
 呼び戻された彼が必死に瞳を開ける。そこにいたのは、泉の精霊と思しき娘だった。白すぎるほどに白い肌、薄青の髪に碧の瞳。人のように見えるのに人の気配のない美貌が、フリードリヒを覗きこんでいる。その瞳の奥に揺れる感情を見つけて、フリードリヒは渾身の力を振り絞って身体を起こした。

 アウレーリエ?

 フリードリヒは己の口から飛び出した言葉に驚いた。けれどそれは直感だった。目の前の人外の美貌の精霊が、アウレーリエだったものだと。娘は驚いたように目を見開いて、唇を震わせた。

 アウレーリエだろう?

 そう問いかけたフリードリヒの前で、娘の眼の色がじわりと色を変える。幼いアウレーリエの美しい緑の瞳を思い出す。

 アウレーリエ。

 名を呼ぶ度にじわりじわりと色を変える瞳にきがついて、フリードリヒはアウレーリエを抱きしめ、何度も何度も名を呼んだ。
 淡青の髪が段々と色を変え、肌の色が薔薇色になり……何度名前を呼んだかわからない。
 フリードリヒの声は枯れ、娘の名前もかすれていった。
 そうしてついに、水の精霊は人の姿をとりもどす。

 昇る朝日のまばゆさに、森のすべてが照らされる。フリードリヒが気がつくと、己の腕の中では『アウレーリエ』という娘が、宝玉のような涙をこぼしていたのだった。
フォルダのお掃除してたら出てきたので。
たまにはこういうのもいいかなーと思ったんである。

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