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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第二部 『コンティニュー・ムンドゥス』
116/223

116.黄泉の情報

 とりあえず、全員地上階の街に集合となり相談とあいなった。

 神宮寺達は去ったとはいえ油断はできない。


 和葉を一人で残していくわけにはいけなかったので、無理を言って連れてきたのだがまた七海と妙な空気になっている。


「和葉……」

「……」


 七海が声をかけても、和葉は俺の後ろにすがるようにして、そっぽを向いて答えない。

 こっちの話は、俺はもう関与しないことにした。勝手に幼馴染同士で学園ドラマでもやっててくれ。


「そういや、モジャ頭と一緒に蘇ったもう一人は誰だったんだ?」


 『再生のコイン』の仕掛けは、一人生き返されれば、もう一人が自動的に生き返らされるというものだ。

 神宮寺が、御鏡竜二を蘇らせると同時に誰か蘇ったはずなのだが、その確認がまだだった。


「蘇ったのは、ワタシと同じラビッタラビット族から派遣された僧侶デス」

「そうか、ウッサーの仲間だったか」


 神宮寺の手下でなくてまだしも幸いだったな。

 青い髪のウサ耳の女である。僧侶のローブを着ているが胸がやたらデカイ。


 俺の前に跪いた途端に、バカみたいに大きい胸がブルンと揺れる。

 こいつら兎人は、みんなチビで巨乳なのか。どうでもいいけど。


「クレアディスと申しマス」

「はいはい、お前もくだらない争いに巻き込まれて災難だったな」


「いえ、蘇らせていただいてありがとうございマス」

「俺が蘇らせたわけじゃないけど」


 礼を言われても困ると思っていると、ウッサーが口を挟んだ。


「旦那様が手に入れた『再生のコイン』で蘇ったのデスから、クレアディスも旦那様が蘇生したようなものデスよ」

「まあそうか、良かったなクレア」


「はい、ありがとうございマス」

「ちょっと待つデスよ。なんで、妻のワタシをちゃんと呼ばないで、クレアだけ正しい愛称で呼んでるんデスか!」


 誰が蘇らせたかなど、俺にとってはどうでもいいことだった。

 瀬木を蘇らせることができなかったのが残念だが、コインはいずれまた手に入る。


 そのためにクリアすべき条件は、おそらく七海の推察通り、この世界に何らかの変化をもたらすことだろうからな。

 創聖神ジ・オールがそう匂わせていたのだから間違いない。


 青髪ウサ耳の少女クレアが俺に話しかける。


「アリスディア様と、真城ワタル様は夫婦になられたと聞きました」

「まあ、そういうことになってるな……」


 そこあんまり、深く追求して欲しくないところではあるが。

 ちなみに、もう忘れかけてたがアリスディアとはウッサーの本名である。


 なんか長ったらしい名前があったと思ったがすでに忘れた。

 あと、ウッサーもこの青髪ウサミミのクレアの服にも尻尾穴というものがある。


 どうも獣人は、尻尾を出さないと気持ちが悪いようだ。

 それでウッサーの尻尾が一つであったために、すぐ俺と夫婦になったというのがバレてしまったようだ。


 ウッサーが、俺と結婚していると自慢したのかもしれないが。

 例えばクレアディスのローブからは、ピョコンと飛び出ている白い尻尾は二つ生えてるので、こいつはすぐ未婚者だとわかる。


 こうしてみると、兎人の白い尻尾は既婚、未婚の識別がわかりやすくて便利だ。

 着脱可能な結婚指輪より、よっぽど確かな情報である。これなら、浮気も少なくなるだろう。


「アリスディア様とワタル様が契りを交わされたなら、ラビッタラビット族はもはや真城様のお身内と言っても過言ではありません。このむね、しかとラビ祭祀王陛下にお伝えして、ラビ王国を真城様のお味方とすべく尽力いたしマス」

「じゃあ、よろしく頼むか」


 ウッサーの種族、ラビッタラビット族はここから南の平原にラビ王国という大きな国を作っているそうだ。

 こいつらの身体能力の高さと繁殖欲を見ればわかるように、この世界において一大種族の一つである。


 各種族の祭祀王が敵になるか味方になるかわからないこの状況で、ラビッタラビット族が味方になるメリットは大きい。

 少なくとも、俺の王国を作るとか言って奮闘しているアリアドネの助けにはなるだろう。


「さてと、それで古屋。俺にも黄泉ハデスで起きた話を聞かせてくれるか」

「ああ、それなんだが……七海達には少し話してるから繰り返しになるけど、どうか最初から聞いてくれ」


 黄泉よみからの初めての生還者。

 古屋広志ふるやひろしは、語り始めた。


 おおむね、話は神宮寺に聞いていた通りだ。

 ジェノサイド・リアリティーでの死者は、創聖神ジ・オールによって黄泉よみへと送られた。


 そこは、ゲームで言うジェノサイド・リアリティー外伝黄泉の国(ステイジアンハデス)の世界である。

 ゲームとしての難易度は高いが、数々の便利アイテムが存在する上に、死者であるがゆえに何度でも蘇りが可能。


 そんな無限の死と蘇りが繰り返される世界で、古屋達はクリアを目指して死闘ゲームを行い続けているそうだ。

 やはりその世界でもみんなが仲良く協力してとはいかず、ジェノサイド・リアリティーでの敵対関係が持ち越されていた。


 取り巻きの生徒会執行部とモジャ頭しか味方がいない神宮寺だが、ゲーム情報だけならばあいつらのほうが断然上だ。

 例えば、黄泉の国(ステイジアンハデス)では蘇生する際に、『再生コンテニュー』の他に『新生ニューライフ』を選べる。


 『新生ニューライフ』は、普通に蘇る代わりにこれまでの能力を失ってランク初心者ニュービーに戻るが、種族や性別などを設定し直せる機能だ。

 違う種族にしてやると言っても、古屋達や、ウッサーの仲間のラビッタラビット族、アリアドネのお付きであったシルフィード族の戦士達は乗らなかった。


 元の種族から変わってしまっては、生き返ったときに困るからだ。

 しかし、神宮寺達は違う。即座にそれまでのランクをかなぐり捨てて、強種族へと変更した。


「それで、神宮寺の種族はなんだ?」

「えっ、ああえっと神人ゴッドマンだったかな」


「ふうん……」

「魔法力が強かったぜ。とても俺達では倒せなかった」


 そうでもない。古屋が強いと感じたのは、アイテムを使いこなす神宮寺の知能が高かったからだ。

 神人ゴッドマンという種族。基礎能力は最強に近いが、いかんせん経験値に対するランクの上がりが十六分の一になるという弱点がある。


 いかにも高慢ちきな神宮寺が選びそうな種族だ。

 プライドの高い神宮寺は、何度も死につつ強くなるという選択肢を取れなかったのだろう。


 強キャラではあるが、神人ゴッドマンは後々になるほど成長の遅さが致命的になる。神なんて名前が付いてる割に、大した脅威ではない。

 その点、頭がおかしくなっているモジャ頭は違う。平然と気持ち悪い種族を選びやがった。


 アンデッドスライム。

 最初は糞弱いが、アンデッドならではの抵抗力の高さに加えて、スライムの無尽蔵な生命力を兼ね備える。


 その上で弱キャラ扱いされているので、経験値に対するランクの上がりが四倍。すぐにメキメキと強くなる。

 ゲームデザイナーは何を考えてるんだというレベルのチート種族である。


 どうも、本家のジェノサイド・リアリティーと違ってゲームバランスがおかしいのだ。

 和葉にむちゃくちゃに身体を焼きつくされても、アンデッドスライムなら水でもかけておけば復活するかもしれない。


 生かしておけばこの世界でも成長し続けるはずだ。

 最終的に脅威になるのは、神宮寺より人間としてのプライドをかなぐり捨てたモジャ頭かもしれない。


「あと、黄泉ハデスに堕ちているのにこんな言い方はおかしいが、瀬木は元気にしているか?」


 今は神宮寺達の対策を考えるのが先で、公私混同だとは思いつつ、俺は一番気になっていることをつい尋ねてしまう。

 そうすると、不意に古屋の顔が曇った。


「瀬木のことなんだが、なんと言っていいのか……」

「なんだ、何かあったのか?」


 待てよ、まさか瀬木だけ黄泉ハデスに行かなかったんじゃあるまいな。

 色めきたつ俺に、古屋がのけぞる。


「俺のせいなんだ。まさか、あんなことになるなんて俺だって思わなくて」

「なんだよ、もったいぶらずにハッキリ言え!」


 俺の脳裏に嫌な予感が走る。

 もしかして、瀬木だけ他の場所に飛ばされたとか、まさか瀬木の魂が消滅……。


「瀬木が女の子になっちゃったんだ」

「はぁ?」


 俺は、古屋の襟首を手で掴んだまま固まる。


「だから、瀬木が女の子になっちゃったんだよぉ。そんなに責めないでくれ、俺だってこんなことになるなんて思っても見なかったんだ!」


 うわーと、古屋は頭を抱えた。

次回6/5(日)、更新予定です。

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