24.デュラハン
なんかこの1週間でブックマークの数がすごい増えたんですかど
なんでですか?
今俺たち3人は滅びの領域にある山を下山している。まぁ下山というより滑走と言った方が合っているかもしれないが。
あの後洞窟に用がなくなったのでロベリアを連れて街に帰る事にした。その時ジンたちにどう説明しようか考えたがいい案が思いつかなかったのでそのまま話すことにした。
そして帰りは怯えるスズを抱えながらクロは下山している。その時ロベリアは「妾も!妾も抱っこしておくれ!」などと子供のような事を言っていたが、ロベリアの実力ならここら辺の魔物なぞ虫に等しい。そんな実力を持つロベリアには普通に走らせた。その時「愛しの人を走らせるなどどんな頭をしとるんじゃ!」などといってきたが「愛しの人じゃねぇよ」と言い返しておいた。何故かスズが「ロベリアはいい子」などとロベリアを押す意見をいってきた。
滅びの領域から帰っている途中で何か違和感を感じた。何故違和感を感じたのか考えようとすると「クロ様、それは多分魔物の量が少ないからでわ?」とシルスに言われて気づいた。確かに行きではかなりの魔物に襲われた、なのに帰りは一体も姿を見かけていない。嫌な感じがする。
「スズ、ロベリア。何か嫌な感じがする。早く王都に帰りたい。スピード上げるが大丈夫か?」
「だ、大丈夫。早くここ、から、でれるのなら、我慢、する」
「きつくなったら言えよ。ロベリアは大丈夫か?」
「済まぬの。妾はこれで限界じゃ。クロは早すぎる。ついていくのに精一杯じゃ」
「しゃーない」
そう言ってロベリアの脇に手を回し持ち上げる。
「ぬ、ぬお?何をするのじゃ?」
「急ぎたいから持ち上げるんだよ」
「そ、それならこんな雑な持ち方じゃなくもっと優しい持ち方をしてはもらえぬかの?」
「すまんな、片手がスズで埋まっててこの持ち方しかなかった。我慢しろ」
ロベリアが何か言おうとしたが「舌噛むぞ」と忠告し口を閉ざせる。それを確認すると徐々にスピードを上げる。
15分ほど走ると王都が見えてきた。が、其処には出て行った時の面影などなかった。其処を表すなら戦場。巨大な魔物から小さな魔物に鎧を着た人間や獣人、ドワーフから杖を掲げるエルフまで。多種多様な種族が一丸となって戦っていた。
「なんだよこれ。どうなってんだ?」
『クロ様、あれはロベリア様が解放された時に発せられた邪気に怯え逃げてきた魔物と思われます。中にはSランク越えの魔物までいることから滅びの領域から逃げてきたものと思われます』
「は?邪気ってなんだ?そんなの気づかなかったぞ」
『それは邪神の邪気など堪えぬほどにクロ様が異常だからです。スズ様や普通の人間などが滅びの領域に対し極度の怯えを持つのは邪気のせいです。まぁ封印されて弱まった邪気ですが。魔物などはその邪気はあまり効きません。ですがそれは弱まった邪気まで、解放された邪気は魔物でも怯えるほど強いのです。だから魔物たちは邪気から逃げるために反対方向のこちらに来たのでしょう』
シルスの話を聞きもしやスズは今も怯えてるのでは?とスズに聞く。
「スズ大丈夫か?」
「え?なに、が?」
「いや、邪気が……って、そっか。シルスの声聞こえないのか」
「シルス?誰?」
「ん〜、今は落ち着いて説明できないからこの騒ぎを終わらせてから話すよ」
「お、こいつら殺るのか?なら妾も手伝おうか?」
「いや、この乱戦の中ロベリアみたいなのが乱入したら他の奴まで巻き込まれちまうからな、今回は俺がやるよ」
「そうか、数千年ぶりに体を動かせるかと思ったのじゃが、残念じゃ」
「すまんな」
「いや、いいんじゃよ。その代わり今度妾と遊んではくれまいか」
「それくらいならかまわねぇぞ。但し、周りに被害がない程度にだがな」
「わかっておるわい。クフフ、久しぶりの強者じゃ。しかも妾では手も足も出ぬような。あぁ〜楽しみじゃ!」
「戦闘狂かよ……。さて、さっさと終わらせますか。スズ、ここで待っててくれ」
「ん、わかった」
「よし、んじゃ始めるか」
クロはスズたちから離れると目を閉じ集中する。
(敵は魔物。主にランクC〜SS。お、SSS2体みっけ。数は大凡10000〜20000ってとこか。使うは広範囲型選敵殲滅攻撃。敵は喰い散らかせ。味方への影響はなし。形状は……竜の群れってかっこいいな、それでいこう)
「暴食の竜群。敵を残らず喰い尽くせ」
その瞬間クロの足元にあったクロの影が蠢く。そして魔物へと影が伸び其処から何百という竜が溢れ出る。黒き竜は魔物に近づき丸呑みする。人などには見向きもせずひたすら魔物を喰う。
その光景に先ほどまで戦っていた人達が動きを止め呆然と立ち尽くす。ランクS以上の魔物を相手にしていた冒険者は、その魔物が竜に喰われた時に安堵の表情を見せる。先ほどまで自分を殺すかもしれなかった存在が殺されたのだからそれも仕方がないだろう。
魔物たちはなすすべもなく蹂躙される。クロが出した竜は全てSSランクほどの強さを持つ。更にその竜はクロが出した魔法のようなもの。竜たちは生物でないがため死を恐れる必要もない。死に怯えながら戦う魔物と死に怯えずただ喰らう事だけを考える竜。どちらが勝つかなど明白である。
そして数分も経つと其処には残っていたのは一体の魔物、ランクSSS。竜達の攻撃をなんとか凌いで生きている状態だ。
「ほぅ、とんでもないな今の。それにしてもあれを耐えるか。……面白い、少しは耐えてくれるといいんだがな」
そう言いながら口元に笑みを浮かべながら残った魔物に近く。
鑑定の結果、魔物の名前は『首なし騎士』黒い鎧を纏い右手には黒い長剣、左手には兜をかぶった生首を持っている。
龍達を消しデュラハンに近づくとこちらを向き剣を構えた。
デュラハンの近くには細身のイケメン、ごついイケメン、クールな美女、元気そうな美少女がいた。
そいつらは驚いたような顔をしていた。そして元気そうな美少女が何か言っていたような気がするがデュラハンが先なので無視する。だが何故か何処かでその美少女を見た事がある気がしたのだが今はデュラハンの事だけ考える。
そしてデュラハンから丁度5mほど離れた場所に着くと驚く事が起きた。
「先程の竜は貴様が?」
デュラハンが話しかけてきたのだ。
(ほぉ。まさか魔物が喋るとわ)
『SSSランクの、それも人型であれば喋る事は容易です。今までの魔物はただ戦う事しか考えれませんが、強くなれば強くなるほど智能ができ、更に巧みな戦いをしてきます。ですのでSSSランクにもなれば意思の疎通も可能になるのです』
(教えてくれてありがとうシルス)
『い、いえ。これが私の存在意義ですから』
「あぁ、さっきのは俺がやった。それにしても驚いた。喋れるんだなお前」
「我程になれば人の言葉を喋るなど容易い事。そしてやはりか。あれ程の魔法、千年生きておるが見た事がない。それ程の魔法を操る術者、さぞ強いのだろうと思っていたが、まさかここまでとわ。そしてこれも何かの縁よ。我と戦ってはくれぬか?我はこの千年の間、ずっと強者を探して生きていた。だが我より強い強者はいなかった。そして今回、何やら途轍もない邪気を感じ来てみれば何やら魔物と人間が戦っているではないか。それを見て久しく戦っていなかったので血が騒いでしまった。そして突如後方からものすごい力を感じ振り返ると数百からなる龍の大群。あれは何度見ても……とてもいいものだった!狩るものから狩られるものへ変わり決死の覚悟で戦う。今まで体験した事のない程いいものだった。そして気づけばそれ以上の強者。あの龍を創り出したと言う者。そんな奴が現れたのだ!戦わずしてどうなる!頼む、我と戦ってくれ!」
デュラハンの長い話を聞き終えたクロは笑みを浮かべたまま口にする。
「わかる、わかるよお前の気持ち。強くなったがそれを全力で試せる相手がいない。それはつまらなかったな。だがそれも今日で終わりだ。俺が相手をしてやる。俺も戦う相手がいなくて暇してたとこだ。精々耐えてくれよ。俺が本気を出せば一瞬で片がつくがそんなつまらない事はしない。さぁ行くぞデュラハン、最後まで魅せてくれよ!」
その言葉を合図にクロとデュラハンは地を蹴った。
主人公戦闘狂