魔王様の悩みの種(5/44)縦書き表示RDF


大変、長らくお待たせしました。連載再開です。
魔王様の悩みの種
作:イヌ教官



第5話:魔王様と花見


<マー君視点>

「春だねぇ〜」
「そうですね〜日差しが気持ちいいです〜」
「……そうだな。だが、窓は閉めろ。書類が飛ぶ!」

葵とアリスは窓を開けて、春の日差しと風を感じて気持ち良さそうだが、
私は、その後ろで風によって飛ばされた書類を拾っていた。

「こんなに天気がいいと、何処か遊びに行きたいなぁ〜」
「そういえば、魔界の桜が見頃らしいですよぉ〜」
「へぇ〜。それは凄いなぁ〜」
「誰か連れて行ってくれないかなあ〜?」
「誰か連れて行ってくれませんかね〜?」

棒読みのセリフだな………。
葵とアリスは、私をチラチラ見ながら明らかに棒読みのセリフで話している。
私は集めた書類を机の上に置き、大きくため息をつく。

「はぁ〜、しかたないな。花見でも行くか」
「えっ!? ホント!?」

葵とアリスは目をキラキラさせながら私を見る。

「仕事も一段落したし。たまには息抜きも必要だしな…」
「わぁ〜い。やったね、アリスちゃん!これで、アレを使う必要がなくなったね!」
「はい。アレを使う必要がなくなりましたね!」

アレってなんだ!?



というわけで、桜を見るため外にでることにした。
向かうのは、街の中心にある広場に生えている1本の桜の木だ。
魔王室のある建物は街の端っこにあるから、広場まで少し時間が掛かるのだが
こんなに天気が良いと、そんなことも気にならない。

私達は春の日差しを受けながら、モダンな建物が立ち並ぶ街を歩いていた。

「ねぇ〜、マー君。まだ着かないの」
「もう少しだ。我慢しろ」
「じゃあ……」
「おんぶはしないからな」
「マー君のケチ!」
「はいはい。ケチで結構……」


葵の愚痴を聞き流しながら歩いているとモダンな建物を抜け、大きな広場に出た。
広場の中心には、大きな桜の木が咲き乱れ、風によって花びら舞い
多くの花見客が敷物を敷いて楽しんでいた。

「お〜い、アイス!こっちだ」

その中で、一際ひときわ大きな男が胡坐あぐらを掻きながらこっちに向かって手を振
っているので、私達はそこへ向かう。
その男は、牙や爪は鋭く、足は太く、力強く、背には翼を生やし、瞳は血のように赤い、
その姿は伝説上のベヒーモス。

普通の人間なら、その姿を見ただけで気絶しような姿をしている男に話し掛けた。

「なんだ、アレクサンドル。お前も来てたのか」
「せっかくの桜だ。1杯やらないのは勿体無いだろ」

アレクは、手に持っている一升瓶の酒をラッパ飲みをする。

「ぷはぁ〜、うめぇ〜。ん!? 何だ、葵も来ていたのか。小さくて気づかなかったな」
「む〜アレクさんが大きすぎるんです!」
「がははははははは。そう怖い顔をするな。可愛い顔が台無しだぞ」

む〜っと膨れ顔をする葵に対してアレクは豪快に笑い、酒を飲んでいる。
さすがの葵でもアレクの前では子ども扱いだ。
しかし、このまま不機嫌でいられて後で八つ当たりされるのは厄介だ。
なんとかせねばっと、周りを見渡せばチラホラと露店が出ているのに気がついた。
私はポケットからコインを取り出すと葵の手に持たせた。

「ほら、露店が出てるみたいだからこれで好きなものでも買って来い」
「えっ!? いいの? やったぁ〜。アリスちゃん、一緒に行こ!」
「はい。それでは行ってきますね」

さっきまで不機嫌そうな顔をしていた葵の顔は笑顔を変わり、アリスの手を引っ張りながら走っていった。

最近、葵の扱い方にもなれてきたなぁ………。

「さてと、お子ちゃまがいなくなったし。お前も飲め!」

アレクは私に一升瓶を差し出してきた。私は瓶を受け取り、蓋を開けると酒の香りが心地よく、香りだけでも酔ってしまいそうだった。
桜を見ながら、酒を飲む。これほどの贅沢はないだろう。
しばらく酒を楽しんでいると、ニヤニヤしながらアレクが話しかけてきた

「それで、最近どうなんだ?」
「ん!? なんのことだ」
「葵のことだ。どこまで進んだんだ?接吻でもしたか?」
「ブーーーーー! なっ!? 何を言っている!」

アレクの突然の質問に私は口に含んでいた酒を一気に噴出した。
突然、顔の体温が上がり、心臓も高鳴る。

「その様子だと、まだのようだな」
「あ、当たり前だ。私と葵は何の関係もない。あんな凶暴娘ありえん!!」

ニヤニヤするアレクに対して、私は必死になって反論する。

「そうか……まだ気づいていないようだな……自分の気持ちに……」
「アレク?」

さっきまでニヤニヤしていたアレクの顔が寂しそうな顔なるのを、
私は理解することが出来なかった。

「ガハハハハハハハハハ! 辛気臭くなってしまったな。どんどん飲むぞ!」
「……ああ。今は飲もう」

アレクは一気に酒を飲み干して行くので、私も負けじと飲み干していく。
その飲みっぷりに人が集まり、いつの間にやら飲み比べ大会となっていた。
そのバカ騒ぎは、男、女、子供、大人も関係ない。
この場所にいる全てのものが、酒を楽しみ、桜を楽しみ、今という時を楽しんでいた。



そして次の日、

「マー君〜。頭痛い〜。気持ち悪い〜」
「き、昨日、飲みすぎたみたいだ」
「完全に二日酔いですね」

この町に住む者達は二日酔いで苦しんでいた。一人を除いて………

「がはははははははは! あの程度で二日酔いとは情けない!」

アレクだけは二日酔いにならなかった。化け物め………。


年末ということもあり、更新も遅れると思いますが、
これからもよろしくお願いします。それでは皆さん、メリークリスマス!!











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう