魔王様の悩みの種(32/47)縦書き表示RDF


今回は番外編として、少し時間を早めて本編では秋ですが、今回のお話では冬という設定です。それを踏まえた上でお楽しみください。
魔王様の悩みの種
作:イヌ教官



番外編:魔王様とドッキリ


<アリス視点>

……今日は、なんだか家の皆に避けられているような気がします。

「おはようございます〜魔王様」
「あ、ああ! おはよう! それじゃ、私は仕事があるから……」

魔王様は逃げるように魔王室へと走っていってしまうし。

「おはようございます、アレク様」
「お、おはようさんだな。それじゃ俺はちょっと用事を思い出したから……」

アレクさんは何故か窓から外でと出て行かれましたし。

「葵さん、おはようございます」
「あ、アリスちゃん。今日もいい朝だね。では私はこの辺で……」

あの葵さんですら私を見るなり逃げ出すように客室へと飛び込んでしまいました。
おまけにいつも来るアキラさんですら姿を現さない。

……一体、何がどうなっているのでしょうか。全くさっぱり皆目見当がつかないのですが。




「それで、私のところへ」
「はい……ご迷惑でした?」
「いえいえ。そんなことはないです!!私みたいな者を頼っていただいて嬉しいです!!」

私は今、葵さんたちが通うの魔法学校の理事長室でお茶を飲んでいました。

あのあと、朝食をどうするかと魔王室を訪ねると、そこには魔王様の姿はなかった。
どうしようかと悩んでいると、前にアイさんが何時でも来ていいと言われたのを思い出し、ここにやって来ました。

「それで、どう考えているのですか?」
「今までには無かったことですから……少し考えかねてます」

窓から外へ出て行ったアレクさんはともかく、何故か葵さんまでが魔王邸から消えていたのですから。

「……すみませんです。私の魔法でも探知できません」
「……そうですか、困りましたね」
「もっとあの三人の行動に詳しい人物に聞くのがいいと思うのです。例えば葵さんとか」
「……なるほど、確かに葵さんなら何か知っているかもしれない。ありがとうございまいます」
「いえ、力になれて何よりです」

あの三人に詳しい人物といえば……やっぱり葵さん、杏さんあたりでしょうか。
単純に考えて、葵さんのほうが聞き出しやすいですね。
二人とも同じ場所に住んでいるからそんなのはどうでもいいといえばどうでもいいのですが。

「はぁ……ごめんさいです。嘘をついてしまって……」

私が理事長室を後にするとき、アイさんが何か呟いたように思えるが、私は気にせず、外へ出た。

「……ですが、今日くらいはいいでしょう。記念日らしいですからね」

<マー君視点>


【ざわざわ……】

「はあー、どうしてこう、ここはいつも人が多いのかね」
「まったくだよ。このクソ寒い中よく出歩く気になるね」
「それは私たちも一緒だろ」

私、葵、アレクの三人は朝食も取らずに家を抜け出して人間界まで来ていた。
この時間は通勤のサラリーマンや通学の学生などで一番混雑する時間帯の一つであり、
私たちみたいなのは明らかに浮いている。とくにあの二人。当の二人は全く気にしていないけれど。
ちなみに、今現在のアレクの姿は人間の姿である。
大柄な体系に、黒いジャケットに黒のジーンズ。髪の毛を立てているので、意外とカッコいい

「あれ?アレクは」
「アレクさんなら、あっちの方へと歩いて行っちゃたよ」

突然、さっきまでいたアレクがいなくなったので、葵に聞いてみる。
葵が指差すほうには、大きな音と派手なネオン……パチンコだ。



「よし、いいぞ。よし。がははははは!!きたぁぁぁぁああああ!!」
「おい……」
「ん!? おう、アイス、葵。みろ、たった数十分でボロ儲けだ!!」
「…………」
「…………」
「おい、何をする!! 今から激熱なのだーーーー!!俺の確変がぁぁぁぁぁああああああ」

私と葵はがしっ、と両手を掴み、外へと引っ張り出していく。
ちなみに、課金だけはすることにした。アレクがあまりにも頼むために……

<マー君視点>

「アレクさん、こんなのはどう?」
「んー……そんなに凝る必要はないと思うが……」
「いいの、いいの。どうせマー君が払ってくれるんだし」
「ちょっと待てお前等、人の金だからといって好き勝手に使うな」

私、葵、アレクさんの三人はパチンコ屋を出てとりあえず適当な店で朝食を取り、
デパートっていう建物の中に入っていった。

「がははははは!!いいじゃないか、お前だって乗り気だったくせに」
「う……それはそうだが、だからといってだな」
「安心しろ。さっき、俺も儲けたことだし、そんなに何でもかんでもお前に頼ろうとは思ってない」

買い物を終えて両手に袋を提げている私等の会話である。
一通りデパートを一周して美味しそうな匂いが……。
時間もちょうどいいし、ここらで昼食をとろうかな。

「ちょっと飯食べていかんか?」
「そうだな。時間も時間だ、混む前に行こう」
「その前に言っておくが今回は奢ら……」
「わぁい!マー君の奢りだ!!」
「がはははは!!食うぞ!!」
「人の話を聞けぇぇ!!」

私を無視して入っていく二人。
言いだしっぺし、私も渋々後に後について行き、三人で奥のテーブルに陣取った。

「ふぅ、これで買い物は終了か?」
「うん、全部買ったよ」
「そうか……後は、準備だけか」
「がはははははは!!夜が楽しみだ」


私たちは夜を楽しみに昼食を取るのであった。


<アリス視点>

「えっと、確かここらへんのはず……」

私は人に道を聞きながら、何とかここまでたどり着いた。
とりあえず、玄関のインターホンを鳴らす。
ピンポーンという音の後に足音が玄関に向かって疾走してきた。おそらく、アルカさんでしょうか。

「アリス! どどどどうしたん?」

……なんだか、あからさまに怪しい動揺を見せているのは気のでしょうか。

「いえ、葵さんに用事があるんですが…」
「あ、葵か!?葵なら知らんで。その代わりに私が答えるで」

葵さん、家にも帰ってませんか。仕方ありません。アルカさんも何か知ってるかも知れないし

「実は朝ね、魔王様と葵さんが……」
「あ、あの二人がどどうかしたん……?」
「いや、アレク様も含めた三人が朝から行方知らずで。アルカさんは何か知らないですか?」
「な、ないない! 絶対知らん! あの三人が葵の……」

なるほど、アルカは何かを知ってるみたいですね。
このまま行けば、口を滑らせそうな勢い。
しかし、いつどの時代でもやっぱり、ここぞ、というときにこそ邪魔者は入るものです。

「こんの、バカウサギーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「うげぇえええ!!」

杏さんの飛び膝蹴りの乱入によって、アルカさんから聞き出す計画は全て台無しになってしまうのでした。アルカさんは飛び膝蹴りを喰らい、玄関の扉を突き破って外へと放り出された。

「まったく、あの子は……」

そして残ったのが杏さんではうっかり口を滑らせたりすることもないだろうし、
まして私が聞きだすことなど出来るはずもない。
だけど、一様聞いてみますか……

「杏さん」
「ん、そういえば葵に何か用があったんでしょ? 代わりに聞いときますわよ〜」
「……えっと…実は」

【ぐ〜】

っと私が話す前にお腹の音が。あまりにも恥ずかしくて赤面する。

「あー、上がってく?」
「……はい」

私は杏さんに言われるままに屋敷に上がり、居間で待つ。
その部屋で何をするでもなくしばらく待っていると、杏さんがお盆に昼食を乗せて運んで来てくれた。

「ごめんね〜こんなのしかなくて…」
「いえ、出してくれるだけでもありがたいです。後でお礼を言いに行かなくては」
「い、いいよいいよ、お礼なんかいらないって言ってたから」
「しかし……」
「いいですわ〜。アリスちゃんは早く食べて魔王室に戻ってなさいって〜」

なんだかやけに私をせかす辺り、非常に怪しいのですが……。
それでも、突っついてもボロは出さないでしょうね、アルカさんと違って。

「はい……」

とりあえずの生返事を返しつつ、私は運ばれてきた料理に箸を伸ばす。
……うん、美味しい。
しかし、どこかで食べたことのあるような味なのは気のせい。

―――リコさん! 焦げてますよ!!―――
―――アキラさん落ち着いてください! 振り回すと危なきゃああっ!?―――

「…………」
「…………」

そういえばコレはリコさんの作った料理と同じ味。ということはコレはリコさんが作ったもの?
なぜリコさんとアキラさんがこの家にいるのかは謎ですが。

「……杏さん」
「あ、あははは……実は今日ね、アーちゃんとリコちゃんが遊びに来てますのよ〜」
「……そうですか」

それを私に隠そうとする理由が見当たらないのだけど、まあいいです。
二人のプライベートにまで口を出すつもりはさらさらありませんから。

「ご馳走様でした……では、私はこれで。皆さんによろしく言っておいてください」
「う、うん! じゃあまたね〜!」

ですから、そうやって私を押すほど早く帰って欲しい理由でもあるのでしょうか。
なんだか私だけのけ者にされているみたいで少し悲しいですね……。

「では! ごきげんよ〜!」
「ええ。それでは」

私は里原邸の玄関を出ると、空を見上げた。
そこには、私の心中などお構いなしで青く澄んだ空が広がっている。
一つ、周りの人たちに気付かれないように溜息をつくと、私は魔界へと戻るのであった。

<マー君視点>

「バスに乗ればよかったね……」
「だな」
「がはははは!!まったく、誰だ、歩いて行こうなどと言った馬鹿者は」
「お前だ、お前。」

私たち三人は昼食後の買い足しを終え、バスを使わずに歩いて戻ってきたおかげで
大分余計な時間を食ってしまった。
といってもまだ余裕はあるし、このまま何の問題もなく行ければとくにマズイこともないのだが。

「しかし、どこで用意するのだ?」
「お前昨日の話何も聞いてなかったのか」
「ふ、俺が聞いているわけないだろ」
「威張るな、馬鹿……葵の家でやるんだよ」

まったく…こんので大丈夫なのか? 少し不安になりつつも葵の家へと急ぐのであった。

<アリス視点>

「まだ帰ってないですか」

魔界に帰ってきて、すぐに魔王室の扉を開けるが中には誰もいず中はしーんっとしていた。
夕食はどうしましょうか……もう、今日はいいですね……。
私はソファーに寝転がった

<マー君視点>

「マー君、遅いですわよ!」
「悪い悪い! その分がんばるから小言は後にしてくれ」

葵の家についた私たちは間髪いれずにそれぞれの持ち場へと散らばった。
私は料理組みのアキラとリコに、アレクとアキラは会場係の杏、アルカにそれぞれ合流。

料理のほうは仕込みのほうはほとんど終わっていて、あとは仕上げるだけなのだが、
肝心のものがまだ何も始まっていない。
といっても、私等の買い物待ちだったのだからしょうがないけれど。

「よっしゃ、気合入れていくぞ!」

ぱんぱんと頬を叩いて気合を入れると、私は小麦粉を手に取った。

<アキラ視点>

「そうそう、それはそっちね!」
「はい。わかりました」

ボクとアレクさんは宴会会場である里原邸の大広間にて、杏さんとアルカさんに合流していた。
予定図を片手にてきぱきと指示を出す杏さんに従い、効率的に飾っていく。
細かい飾りつけ等は終わっていたのだが、大掛かりなものはまだ何も手をつけていない状態だ。
まあ、ボク等が買ってきたものを使うのだし、どうしても人手が必要になるから仕方ない事ですし。

「おいアキラ! こっちを持ってくれ!」
「はい!!今行きます〜」

ボクのいた世界では、こうやって何かを祝うことはなかった。
だから、今こうして準備を進められることを本気で楽しかった。

<アリス視点>

【コッチ……コッチ……コッチ……】

【ボーンボーンボーンボーンボーンボーン】

「午後、六時、ですか……」

いつもの間にか寝てしまった私は、時計の音で目を覚ます。

いつもなら……

「アリスちゃん!!お腹すいた!!」
「がははははは!!今日はなんだ?」
「お前ら!!またアリスの飯を集りに来よって帰れぇぇぇええええ!!」

っと騒がしい魔王室も今はシーンとしている。

「ひっく……ひっく……」

魔王様たちがいないだけ……こんなに寂しいとは。
私の目には涙が溜まっていた。


その時、扉が開く音が。私は急いで涙を拭く。


【ガチャ……】

「ただいまー……アリスいるか」
「魔王様……?」
「よし、とりあえず葵の家まで来てくれ」

それだけ言うと魔王様は私の手を取って問答無用で歩き出しました。

「ちょ、ちょっと魔王様!?」
「いいからいいから」

……普段はあれだけ押しが弱いのに、どうしてここぞというときだけはこう、強いのでしょう。
これでは言いたくても何も言えません。
私たちはゲートを潜り、人間界の葵さんの家の前へと来ていた。

「魔王様? 一体何を……」
「いいから、それと何も言わずにこいつをつけてくれ」

そう言って魔王様が渡してきたのは……目隠し、ですか?

「魔王様?」
「あー……理由は言えないんだ。別に変なことは考えてないから大丈夫、すぐに分かる」
「……分かりました。魔王様がそこまで言うのであれば」

私は目隠しをつける。とたん、世界は暗闇に覆われて何一つ見えなくなる。
近くにいる魔王様の気配と繋がった手のぬくもりだけを頼りに私は魔王様についていく。

「あ、そこで靴脱いで」
「はい」

どうやら葵の家に上がったようです。
先ほど歩いた廊下と同じ感触の場所をずかずかと歩く魔王様にはどうやら向かっている場所があるみたいです。
アキラさんやリコさんもここにいたことを考えると、なにかをたくらんでいるのだとは思うのですが……。

「さてここだ。アリス、準備はいいか?」
「はい……いいです」
「よし、入るぞ。入って合図したら目隠しを取ってくれ」
「分かりました」

魔王様が襖を開ける音がする。すると中にはいくつもの気配があった。
目が見えないので詳しいことは分かりませんが、五人以上は確実にいるようだ。

「手、離すぞ。まだ目隠しは取らないでくれ」
「分かりました……」

すっ、と魔王様の手が離れる。途端、私は言いようのない不安に襲われた。
暗闇の世界でこちらをじっと見ているであろう無数の気配。
本当に……大丈夫なのだろうか……

「……よし、準備OKだ。アリス、目隠しを取ってもいいぞ」

たかだか一分にも満たない時間がこんなに長く感じられるとは思わなかったほどの時間が過ぎ、魔王様の合図が耳に届いた。
私は慎重に慎重に自身の光を遮っていた目隠しを取っていく。
外の部屋はどうやら煌々と明かりがついていたようで、それに慣れていない目は突然の光に戸惑い、視界を失う。

「…………っ」

手で光を遮りつつ、薄っすらと目を空けていく。
するとそこには……。




「「「「ハッピーバースデー!! アリスーーーー!!!!」」」」




【パン! パパパパパン!!】

「え……」

訳が分からず呆然と立ちすくむ私を取り囲むように、
魔王様、葵さん、杏さん、アレク様、アキラさん、リコさん、アルカさん、アイさん、智也さんや桜さんまでもが手に何かを持っていた。

「アリスちゃんおめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとうございます」

皆は何故か私を祝いつつ、かわるがわる手を握っていく。

「ちょ、ちょっと待ってください。これは一体……」
「アリスちゃんの誕生日パーティーよ。それがどうかしたの?」
「誕生日って……私は」

そこで私は以前、体を作り変えたときの影響か、自分の誕生日をよく覚えていないと言ったはずなのですが……。

「アリス、自分の誕生日を覚えてないって言ってだろ?」
「ええ……ですからこのパーティーは……」
「いいんだよ、今日で。今日が何の日かも忘れてしまったのか?」

はて……今日は何の日だったでしょうか?
『バレンタイン』とかいう日もまだ先のようですし……。

「すみません……私にはわかりません」
「ま、あの状況じゃそんなこと確認してる余裕もなかったからな」

魔王様はぽりぽりと頭をかきながら、今日が何の日なのかを教えてくれた。

「今日はさ、お前がアリスとして生まれ変わって、ちょうど一年目の日なんだ。だからちょうどいいかなって思ったんだが」

そういえば……もうそんな時期でしたか……。
最近すっかりそういったことを忘れていました。

「でしたら……前もって教えていただければ……」
「せっかくなんだしね。こういったことは本人に内緒でやるのが面白いのですわよ〜」
「そうですよ。そのために私も杏さんも今日の朝は行かなかったんですから」
「全く、アイスの思い付きには振り回されまくりだな。今朝も危なかったのだから」
「お前にだけは言われたくないわ!!」

私なんかのために、ここまでしてくれる人たちがいるなんて……。

「……アリス?」
「どうしたアリス、食事が素晴らしすぎて声も出ないのか」
「まだ食べ始めてないやんけ」
「いえ……そうではありません。嬉しくて……なんて言っていいのか……」
「別に何でもいいんじゃない? 素直に思ったこと言えば」

素直に……。

「皆……本当にありがとうございます、私なんかのために……」
「何言ってんだよ。アリスは家族だ、だったら当たり前じゃないか」
「魔王様……」
「さーて皆、主役が理解したところで盛り上がって行こー!」

魔王様の言葉につられる様にテーブルを見ると、山盛りの料理に大量の酒類、そして特大のケーキまでが準備してあった。
おまけに、広間の上の部分には大きな幕がかけてあり、そこにはでかでかと

『アリス一歳おめでとう』

なんて書かれていたりする。

スライムとして生きたのを含めば500歳を超えていたりするのですが……まあいいです。

「さてさて、主役が食べなきゃ始まらないぜ」
「そうだよアリスちゃん、私もうおなかすいてしょうがないんだから早く食べ始めよーよー」

もちろんです、朝も昼も量が少なかった私はこれでもかというくらいにお腹がすいているのですから。
まして、自分のために用意されたとあってはためらう理由がありません。

「では……いただきます」
「いっただっきまーす!」
「いただくぞ」

私が食べ始めると、各々が好き勝手に挨拶をして我先にと料理に箸を伸ばしていく。
大皿十枚近くに山盛りにされていた料理が見る見るうちに減っていってしまう。

「わはははー!!」
「ちょっとちょっと、それ私にも飲ませなさいよ!」
「飲みたければ自分で取ってこればいいだろ。これはもう空だ」
「あー! ふざけんじゃないわよこの馬鹿お兄様ぁぁあああああ!!」
「ぎゃああっ! 何をする、服が焦げるじゃないかぁぁあああ!」

「…………」

なんで、飲み物が酒しかないのでしょうか。
ビールやチューハイから始まり、シャンパン、ワイン、ウィスキー等々が所狭しと置いてあるのですが、
水やお茶といったいわゆるソフトドリンクは影も形も見当たりません。

「いや、皆盛り上がってるな」
「あれはやりすぎなのではありませんか?」
「いいのいいの、年に一回のお祭なんだから騒がなきゃ損だぞ」
「しかし……って、魔王様も結構飲んでいるのですか」
「まぁ、酒は嫌いじゃないし。ほらほら、アリスも飲め飲め」
「あ、あの……」

言葉で拒否しつつも、勧められるままにごくごくと飲み干す。
これは白ワインですか、とても飲みやすい味に程よいアルコールが喉に心地いい。

「お、イケルくちやな〜、ほらもっともっと〜」
「少しペースが早すぎませんか?」
「そんなことはないぞー」
「では……もう少しだけ」

実際のところ私も酒は嫌いではない、というよりむしろ好きな部類に入る。
魔王様やアルカさんにどんどん飲まされ、私も程よく酔い始めて……程よく、ではありませんね。頭が痛いんですが。

「はふぅ……魔王様、少し休ませてくらはい……」
「アリス顔真っ赤だぞ。大丈夫か?」
「なんとか……少し調子に乗りすぎました……」

周りには私に飲まれた酒の残骸が転がっています。
ワインの瓶が二本、缶チューハイの空き缶が三本、ビールの空き缶が四本、ウィスキーの空ボトル一本。
……これはどう考えても飲みすぎなのではないでしょうか。

「すまん、調子に乗って飲ませすぎた」
「……全くです」
「ここには酒しかないからな……外行くか。ほらしっかり」
「はい……」

ふらふらとおぼつかない足取りながら、魔王様に引っ張られるように何とかその場を抜け出して縁側に行く。
少し夜風に当たって涼んでいると、大分落ち着いてきました。

「大丈夫か? ほら、冷たい水」
「ありがとうございます」

酒で火照った全身に冷たい水は本当に気持ちがいい。

―――がはははははは!! 脱げ脱げ!!―――
――−アレクさん、ボクまで巻き込まないで―――
―――何やってんのよ馬鹿コンビ!!―――
―――ぎゃあああっ! 桜!!馬鹿はお前だ! こんなところで火を使うな!!―――
―――あらあら! 引火しちゃいましたわ〜―――
―――杏さん!!のん気に見てないで消すの手伝って……きゃあああ―――

どかーん! ばしゃーん! ばたばたばた……!! がしゃーーん!!


「…………」
「…………」

どこをどう考えてもやりすぎだと思うのですが。

「魔王様」
「あー……まあ、何とかなるだろ」

楽観的過ぎます、と突っ込みたいところですが……。まあいいでしょう。
せっかく魔王様と二人きりなのですから。もう少し、この時間を楽しんでいたい。

「魔王様」
「……戻りたいのか?」
「そうではありません。今日は本当にありがとうと、そう言いたかったのです」
「なんだ。さっきも言っただろ? アリスは家族なんだから当然のことだって」
「それでも……ありがとうございます。本当に嬉しいです」
「そうか。じゃあ、来年も、再来年も、ずっと続けていこう」
「……ハイ。もちろん私だけでなく、魔王様や葵さんの生誕日にもやるんですよ?」

私だけいつも驚かされっぱなしというのは不公平ですから。

「当たり前だ。私や葵だけじゃない、アレクや杏の誕生日もこうやって派手にやるつもりだ」
「それは良かった。その際はぜひ、今回以上に派手にやりましょう」
「ああ、そうだな」

私と魔王様は並んで夜空を見上げる。すると、星々に混じって一際明るく輝く満月が視界に飛び込んできました。
冬は空気が澄んでいるせいなのかいつもより星や月がきれいに輝いているように見えます。

こんな日常がずっと続くように、そして来年も、再来年も同じような今日を迎えられるように、私は冬空に浮かぶ満月に祈ったのでした。


たまには、ギャグを少なめに、ほのぼのでいきましたが、満足いただけましたか?なんか、最近ラブコメ要素が多いですね。そろそろネタも尽きてきたし…なんとかせねば……まぁとりあえず頑張りますので、これからも温かい目でお見送りください!!











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