第20話:魔王様のご両親
<葵視点>
【ズゴォォォン!!】
「ヤッホー、マー君!! 遊びに……あれ?」
「あっ、みなさん。こんにちわ〜」
今日もお姉ちゃんとアルカを連れて魔王室に遊びに来たんだけど……魔王室にいたのはソファーに座りながらお茶を飲んでいたアリスちゃんだけだった。
「なんや、アリス……あんただけかいな。魔王は、どないしたん?」
「魔王様はお墓参りに……」
「お墓参り? 誰のお墓参りですの〜?」
「………。先代の魔王様……アイス様のお父様です……」
<マー君視点>
「ここに来るのも久しぶりだな……」
魔王室のある街から少し離れた丘の上に、小さな墓標がある。
その墓標に刻まれている名前……アルシェ・エルハンス……私の父だ。享年:1850歳。
あまりにも、あまりにも…早すぎる死だった……
<葵視点>
私たちはアリスちゃんの用意してくれたお茶を飲みながらお喋りしてたんだけど……アルカは日向でお昼寝。話題はいつの間にかマー君のお父さんの事になっていた。
「ねえねえ、マー君のお父さんってどんな人だったの?」
「やっぱり、マー君と一緒で「私に仕事をさせろ!!」って、仕事バカな方でしたの〜?」
「仕事バカって……ゴホン! えっとですね。先代の魔王様……アルシェ様は、仕事よりもアイス様と遊ぶ事を優先されるお方でした」
〜約600年前〜
<小さいころのマー君視点>
「アイス! アイスは何処だ!!」
「ん……ん〜。なあに〜父さん……」
ボクが自分の部屋で寝ていると部屋の外で父さんが部屋の外で騒いでいる。ほっといても良かったんだけど、後で拗ねられると鬱陶しいので、眠い目を擦りながら部屋の外へと出た。
「見ろ、アイス!! ツチノコだぞ。人間界で見つけてきたんだ。お前にやろう!!」
「……いらない……」
「な、なんだと!? いらない!! な、なぜだ!!」
「ボク、爬虫類怖いもん……」
「そうか………爬虫類め!!! アイスを怖がらせるなど万死に値する!! 今すぐ絶滅さ……」
「止めなさい………!!」
「ぐはああああああああああ!!」
爬虫類を絶滅させようと人間界に行こうとする父さんに、ドレスの来た女性のドロップキックが腰に炸裂し、父さんは吹っ飛ばされ壁に激突する。
「まったく……仕事をほったらかして、何処をほつき歩いていると思えば、人間界でツチノコ狩り!? あなたは、バカですか!? てか、バカね!! バカは死にさらしなさい!!」
父さんにドロップキックをかまして、暴言を吐いている女性……ボクの母さんである。
「アイス……あんたはわかっていると思うけど……父さんみたいになっちゃいけませんよ……もし、仕事をほったらかして遊んでいるなら……ドロップキックですからね♪」
「はい!! わかっています!!」
楽しそうに言っているが、目がぜんぜん笑っていない……きっと、マジでやる気だ……
「アフィー、何をするんだ!?」
「ちっ……生きてましたか!! そのまま死んどけばよかったのに!!」
「な、何だと!! このアマあああ!! 表出ろや!!」
「上等です!!! 今すぐ止めを、さしてあげますわ!!」
【パリン!! シュタ】
「死ね!! 暴力女!!」
【ゴゴゴゴン!!】
「あなたが死になさい、ハゲ魔王」
【ズガアアアアアン!!】
「まだハゲてませ〜ん!! お前の目は節穴か!!」
【バゴオオオオン!!】
「鏡の前で……「そろそろ、やばいな〜」ってところ見てるんです〜!! それと人間界で秘密裏に育毛剤買ってるじゃありませんよ〜!!」
【ビビビビビビビ!!】
「お前だって毎日、毎日、牛乳ばっか飲んで……今更遅いんだよ!! 貧乳チビ女!! 自分の歳を考えろってんだ」
【ドゴォォォォン!!】
「な、なんですと。こら!!!」
「ま、魔王様!! 王妃様!! 落ち着いてください!! このままでは、街の被害g……ぎゃあああああああああああああ!!」
5階の窓を蹴破り外へ出ると、お互いに魔法を連発し街や部下を巻き込みながら夫婦喧嘩をする二人。
………どうして、この人たち……結婚したんだろ……。
「アイス様………」
「あっ、スライム君……」
「ご友人がお見えです」
「うん……今すぐ行く……」
まぁ、いいや。
夕食までには帰ってくると思い、ボクはアレクと遊びに行くことにした。
<アリス(スライム君)視点>
で、夕食。
【チャキ! シャキン!! ガチャガチャ!!】
「でね、アレクのやつが言ったんだ。「俺の……屍を超えていけ!!」って」
「ははははは!! 相変わらず、アレク君は面白いな。……アフィー死ね……」
「アイス……あまり無茶はしちゃだめよ……あなたは体が弱いんだから……で、アルシェ…貴方が死になさい……」
【バシバシバシバシバシバシ!! カキン!!】
「あの〜」
「どうした、スライム君…」
「どうしましたの、スライム君……」
「……お二人ともお食事の時くらい、仲良くできませんか?」
「無理♪」×2
「…………」
外で壮大な夫婦喧嘩をしてきた魔王様たちは、夕食の時間に帰ってきたので
アイス様と一緒に夕食を楽しそうに食べていますが……
今、最後に残った唐揚げをめぐり、お箸を使った目にもの留まらぬ速さで攻防戦が繰り広げられている。
【キン! ガキイン! ギギギギギギギ!!】
「いい加減、譲ったらどうだ?私は仕事で疲れているんだ」
「仕事? あなたがいつ仕事をしたのかしら……毎日、毎日、アイスと遊ぶことばかり…仕事は全部、部下任せのあなたが」
「アイスと遊ぶのが私の仕事だあああ!!」
「開き直るんじゃありません!!」
【シャリン!!ガキン!!】
「この!!」
「なんの!!」
【バシ!バシ!バチイン!!】
「食らえ!! 100連突き!!」
「それなら、こっちは1000連突き!!」
【キンキンキン!!】
「なら、こっちは10000連突き」
「なんの!! 無限突き」
「それなら……わぁあわあああ……」
「こっちこそ……わあわあわあわ……」
まったく、子供ですか……貴方たちは……
しばらくの間、激しい攻防戦が繰り広げられている。
時計を見れば、10時を過ぎていた。
「スライム君……眠い……」
「では、ベットに参りましょう。眠るご用意は出来てますので」
「うん……じゃあ、父さん。母さん。おやすみ〜」
「おはやみ、アイス。いい夢を見ろよ」
「おやすみ、アイス」
魔王様たちは、箸での攻防戦を止めアイス様にニコリと微笑むが……
「ふはははははは! 聞いたか、アフィー!! 私のほうが先に呼ばれたぞ!! 羨ましいか!!」
「くっ……」
「ふははははははははははは!! いいだろ!! いいだろ!!」
「うるさい!!この!!」
「ははははははは………ぐはぁ!! こ、この痛いではないか、この!!」
「ごはぁ!! お、女に手をあげるなんて……最低ですわよ、えい!!」
「ぐはぁ!! お前が先に手を出したんだろ!!」
「ぐへぇ!! あなたがしつこく自慢するからでしょ!!」
あ〜あ〜ついには殴りあいになってしまいました。
「…………」
「…………」
「………私たちは行きましょうか……」
「……そうだね……」
こうなっては誰にも止められない。私たちは、二人をほったらかして寝室へと向かうことにした。
で、次の日の朝。
「アイス! アイスは何処だ!!」
「ん……ん〜。なあに〜父さん……」
アイス様が自分の部屋で寝ていると部屋の外で魔王様が部屋の外で騒いでいるので、私たちは眠い目を擦りながら部屋の外へと出た。
「見ろ、アイス!! 今度はチュパカブラだ! ……こ、こいつ私の血を!!」
「あはははははははは!! そのまま干からびて死んでしまえばいいのに……」
「アフィー!! 貴様あああああ!!」
「あははははははは!!」
魔王様たちが楽しそうに? 夫婦喧嘩をし、その光景を呆れながらも楽しんでいるアイス様……こんな日が、ずっと、ずっと続くと思っていましたが、別れは突然やってきた。
〜ある日の深夜〜
………。
「すぅ〜すぅ〜ふみゅ〜」
………やっと眠ってくれましたか。さっきまで散々遊びまわっていたアイス様も、今は天使のような寝顔で眠っている。
「う、うん〜スライム君〜大好きだよ〜」
…………。た、確かに魔王様たちが溺愛する気持ちがわかります……。
「さてと……」
私はアイス様を起こさぬように、そっと部屋をでた。薄暗い廊下を歩き、私は魔王室へと向かう。
「魔王様、スライムです……」
「入ってくれ」
「はい…」
魔王室に入ると、魔王様がソファーに座りながら待っていた。
私は、魔王様の向かい側のソファーに座る。
「すまぬ、こんな夜遅くに…」
「いえ……で、ご用件というのは……」
「………アイス……をお主に頼みたいのだ……」
「………。それは、どうゆう意味ですか……」
「カイザードラゴン……を知っているか……」
カイザードラゴン……その名を知らぬものは、この魔界にはいないだろう。
ドラゴン族の頂点。強靭なる肉体はあらゆる攻撃を弾き飛ばし、口から吐かれる炎は一瞬にして国一つを火の海にしたという生きる伝説。
かつて、魔王様が軍隊を率いて何とか撃退することに成功したと聞いたことがあるが……
「私には、そのカイザードラゴンの心臓がほしい」
「何をバカなことを!! それはカイザードラゴンを殺すということですよ!! そんな事が出来るはずが……」
「出来なくと私はしなければならない!! アイスのために!!」
「……………」
「……………」
「……すみません。出すぎたことを……ですが、教えてくれませんか?アイス様の為とは」
「……アイスは、魔族としては生まれつき体が弱い。このままでは、数十年と経たずに深い眠りにつくだろう。だが、それはあまりにも不憫すぎる……あの子には、いろいろなものを見て感じて欲しいのだ……」
「だから、カイザードラゴンの心臓を……」
「カイザードラゴンの心臓を食えば、強靭なる肉体を得られるだろう。私はアイスのためにやつを……殺す……」
「…………」
「…………」
魔王様の顔は、普段のふざけている顔でも魔王の顔でもなく、アイス様の父親の顔だった。
「……出発は、何時に……」
「現在、部下数名とアフィーがカイザードラゴンを捜索中だ……発見しだい、私は出発する……」
「………わかりました……ご武運を……」
今の魔王様の意志は、誰がなんと言うと揺るがない。だから、私に出来ることは祈ることだけだった。
「スライム君……アイスを頼む……」
「はい……」
私は魔王室から出て、自分の寝室へと向かった。
そして、数日後カイザードラゴンの発見、討伐、そして魔王様の死、アフィー様の行方不明の報告が届いた。
<葵視点>
「……マー君にも、そんな過去が……」
「そうなんですよ……その後、魔王様すごくふさぎ込んじゃって、大変でしたよね、アレク君」
「そうだな……魔王室に引きこもって何百年も出てこずに、仕事ばかり」
「へっ〜そうなんだ……って、リコちゃん、アレクさんいつの間に!?」
「がはははははは!!細かいことは気にするな!!」
「そうですよ!久々の出番なんですから!!」
「……あの〜ボクもいますよ…」
「あっ、アーちゃんもいたんだ……」
「ひどっ!!」
【ガチャ!】
「なんだ、お前ら。来ていたのか?」
「あっ! マー君お帰り〜」
「な、何だ急に!? はっ、離さんか!! 鬱陶しいわ!!」
マー君が部屋に入ってくると同時に私はマー君へと飛びついた。
「やだよ〜」
「お、お前ら!! 見てないで助けろ!!」
「えっ!? マー君、顔は嫌そうな顔はしてないですわよ〜」
「がはははははは! めんどくさい!!」
「魔王様、頑張ってください!」
「ボクって……影薄いのかな……」
「アキラさん…そんなことないですよ…昔の私に比べたら……」
「ふみゅ〜もう人参食べられへんわ〜」
「お前ら!!!」
………………。
「ねぇ、マー君……」
「なんだ? 離れる気になったか?」
「マー君は………今、幸せ?」
「…………」
「…………」
「………。さぁな……まぁ、退屈せんな」
「えへっ! そう!!」
「だけど、いい加減離れろおおおお!!」
「ヤダ!!」
その日、私は一日中マー君にへばり付いた。だって、この温もりが、もしかしたら味わえなかったかもしれないから…… |