第19話:ウサギ参上
<マー君視点>
「マー君、マー君、マー君!! 大変、大変だよ!!」
「ワァー。ソレハタイヘンダナ」
「私、まだ何もいってないよ〜」
いつものように扉をぶち壊し、部屋に入ってくる葵。
「で、何が大変なんだ?」
どうせくだらん事だと思い、仕事を続けながら葵に話し掛けた。
「私とお姉ちゃん、しばらく魔界を留守にすることになっちゃたよ」
「ふ〜ん、そうか……」
!?
「今、なんて……?」
私は動揺しすぎて手にもっていた万年筆が落ち、それが足に刺さったことも気にせずに葵に聞き返した。
「だから、私とお姉ちゃん、家族と旅行に行くから2、3日留守にするって言ったの!!」
これは奇跡か?
悪魔の気まぐれか?
トラベルメーカーの二人が魔界からいなくなるなんて……
「そうか、そうか」
「でも、どうしようかな〜。私がいないと魔界の平和が……」
嘘つけ!! お前がいないほうが魔界は平和だ!!
「どうしようかな〜。やっぱり残ろうかな〜」
い、いかん!! このままでは私の平和が……な、なんとかせねば!!
「行ってきたらどうですか? せっかくのご家族でのご旅行ですし……皆さん、楽しみにしてるとおもいますよ」
アリス、ナイス!!
「お母様も楽しみしてたし……やっぱり、私行くね」
「そうか、そうか。寂しいなぁ〜」
ふははははははは!! とっと行け!!
「じゃあ、私、旅行の準備があるから今日は帰るね」
「ああ。楽しんでこいよ」
「うん!! じゃあ、バイバイ!!」
葵はゲートを開き、人間界へと帰っていった。
……やった。やったああああああああああ!!
これで葵たちにぶっ飛ばされることもないし、壊したものも修理する必要もない!!
私に平和が訪れたんだあああああああああああ!!
さてと、仕事をする前に……
「アリス、すまん。救急箱を……」
「はい、今すぐに」
足に刺さった万年筆が今になって痛くなってきたのだ……。
で、次の日。
葵たちがいないおかげで仕事がスラスラ進む。
「あ〜なんて幸せなんだ〜」
きっとこんな日は二度と来ないかもしれない。今のうちに堪能しとなければ……
【コンコン】
「失礼します。魔王様、お荷物が届いていますよ」
「荷物? 誰からだ?」
「え〜っと……葵さんからですね…」
「葵から?」
なんで旅行中の葵が……
「どうします?」
「そこら辺、置いといてくれ。葵のことだ。開けた瞬間、ドカーーーン!!って事もあるからな」
「わかりました」
アリスは部屋の中央のテーブルの上に荷物を置き、
「では、私は庭のお掃除をしてきますね」
「ああ。頼む」
魔王室から出て行った。
さてと、私は仕事の続きを……
ん!?
【ガタガタ!!】
な、なんだ!?テーブルの上の荷物が震えている。
【ガタガタガタ!!】
ま、まさか!? 葵のやつ、生き物を!?
い、いかんぞ!! 真夏の中、あんな小さな箱の中に生き物が………
うわあああああああああああ!?!?!?!?
私は急いで荷物のもとへ行き、結んであったリボンを解いていき、蓋に手をかける。
「よし……」
【パカッ……ヒュン!!】
「なっ!? ぐはっ!!」
蓋を開けると同時に私の顎に何かが、ぶつかり衝撃が走る。
一瞬、何が起こったか理解できなかったが、テーブルの上の物体を見て理解した。
テーブルの上にいる物体……
それは真っ白のウサギだった。
「あんたが魔王か?」
「そうだが……」
「我がマスターに代わり、あんたの世話をすることになったアルカや。宜しゅうな」
「よろしく……」
葵のやつ……何を考えてるんだ? 世話って私にはアリスがいるし。ウサギに世話って
「悪いが君に世話にはならんぞ」
「えっ、なんでや? ウサギは嫌いか?」
「いや……そういう訳では……お前は可愛いし……嫌いではないが……ウサギの君にはお世話は無理だろ?」
「あっ……確かに。そうやったな……」
「そういう事だ。だから…葵が帰ってくるまで……」
「大丈夫や……人間になればいいんやろ」
「えっ!?」
「悪いけど…ちょっと後ろ向いといて」
「ああ」
私はアルカの言うとおり後ろを向く。
【ガガガガガガ!!バババババ!!ドゴドゴ!!ボカーン!!シュルシュル!!】
あ、アルカのやつ大丈夫なのか!?変な音が聞こえてくるのだが……
「ええで。こっち向いて」
「…………はぁ〜」
「なんや、そのため息。ウチの姿が不服か?」
「いや……そういわけではないが……なんでメイド服……」
振り返ると、そこには真っ白のウサギではなく、頭から生えた長いウサギ耳、肩上まで伸ばしたウェーブのかかった黒髪、そしてアリスとは違うミニスカートのメイド服を着た少女がテーブルに座っていた。
「えへっ♪ 似合うか? 萌えたか? 発情したか?」
「するか!」
「ええ!!? なんでや!? ウサ耳やで。メイド服やで、しかもミニスカートの。魔王はメイド好きの変態ってマスターに聞いたのに!!」
葵のやつ!!!!
「で、魔王。私に何か命令してや。掃除でも料理も何でもしたるで。なんなら…夜のお・せ・わでも♪」
「いや。それなんだが、うちには……」
【コンコン!!】
「魔王様、お庭のお掃除終わりましたよ♪」
「あっ!?」
「えっ!?」
アリスとアルカの目が合う。一瞬、時が止まったように静けさが魔王室を支配する。
「魔王!! なんや、このメイドは!!」
「魔王様。どなたですか?こちらの可愛らしい方は?」
「えっと、二人同時に聞かれたら答えられんぞ」
「じゃあ、あんたが先に言い。ウチは後でええ」
「いえ。私は後でいいですから……先にどうぞ」
「先に言い」
「いえ、私は後でいいですから」
「先に言い」
「いえ、私は後でいいですから」
「先に言い」
「いえ、私は後でいいですから」
「先に言い」
「いえ、私は後でいいですから」
・
・
・
(中略)
・
・
・
「先に言い」
「いえ、私は後でいいですから」
さっきから、一時間近く同じ事を続けている。無視して仕事を続けていたが、いいかげん、ツッコムべき……
「いい加減ツッコメや!!」
【バチン!!】
「ぐはぁ!!」
私がツッコム前に、アルカが何処から出したのかわからない強大なハリセンで私の顔にツッコミを入れる。
「あかんわ!! ツッコミ役が、これじゃあ!!これからかマスターが帰ってくるまでの間、ウチがミッチリ特訓したるわ!!!」
「ええええええ!?!? 私には仕事が!!」
「そんなの後回しじゃ、ボケ!!!」
「魔王様……ガンバです……」
「あんたや!! あんたにはメイドの魂ちゅうもん教えたるわ!!」
「えええええええ!?!?!?!?」
それから二日間、私たちはミッチリと特訓をさせられた。
私の幸せが〜誰か頼むから代わってくれ〜 |