第17話:慌てん坊の………
これは夏に起きた、ちょっと不思議な不思議な物語。
〈葵視点〉
どうも、葵です〜
私は今、林のある公園で………木漏れ日が差し込む中、太い木を背もたれにしてまったり今日はどうやってマー君をイジメるか考えていた。
地面は柔らかい草で覆われていて気持ちがいい………
それにしても最近暇だな……何か面白いこと……
【リン〜リン〜】
えっ、鈴の音……
【リン〜リン〜】
「も、もしかして、これって!? と、とにかくマー君に伝えないと」
私は目の前の光景を伝えるためにマー君のもとへと走り出した。
〈マー君視点〉
青い空、白い雲、さんさんと降り注ぐ太陽。本日の魔界の気温:32℃。
【カリカリカリ】
「今日も外は暑いですね」
「そうだな」
だが、私たちには関係ないことだ。なぜなら魔王邸は、外がどんなに暑かろうが、寒かろうが
常に適温を保つように設計されているのだ。
【カリカリカリ】
この快適空間と葵もいないおかげで、仕事もサクサクと進むし。あ〜なんて幸せなんだ〜
こんな日が……ずっと続く……
【ドォォォォン!!】
「マー君!! マー君!! 大変だよ!!」
わけがないよな………。
今日も葵の手によってぶち破られた扉。修理費が………はぁ〜。
「どうしたのですか? そんなに慌てて?」
「二人とも外見て!! 外!!」
「外? 外がどうしたのいうのだ?」
「いいから!! 見て!!」
「はいはい。見ればいいのだろ」
葵に急かされながら、しぶしぶ外を見ると……雪が降っていた。
………。
う〜ん。きっと疲れているんだな……夏に雪なんて……
目をこすり、目を開ければ……雪が降っていた。
「葵、貴様あああ!!」
「違う。違う! 今回は知らないよ!!」
「……本当か?」
「本当、本当。それにいくら私でも天候を操ることなんて出来ないよ」
……………。
嘘をついているようには見えないし………。
「じゃあ……何故雪が?」
「わかんない」
「ふ〜ん、とにかく原因を調査せねば……」
「じゃあさ、遊びながら調査しようよ」
「一人で行け……」
「え〜マー君来ないの?」
「当たり前だ!! 私に仕事が……」
「そんなの後でいいじゃん!! ほら、行こ行こ!!」
「や、止めろ!! 私は寒いのは苦手なのだ!!」
「マー君なら大丈夫だよ!! だって、アイスって名前なんでしょ!!」
「名前は関係ない!!!!!」
「いいから行くよ!!」
「イヤだああああ!!」
私の抵抗はむなしくズルズルっと引きずられて外へと連れ出された。
【ヒューーー】
「うわ!! さむ!!」
アリスの用意してくれた防寒服に着替えて外に出たのに、風が吹くたびに体が凍りつきそうなくらい寒い。
それなのに葵ときたら、
「マー君、雪合戦しようよ!!」
なんでこんなに元気なのだ。
「ねえ、雪合戦しようよ〜」
「誰がするか!! 私は、この雪の調査を!!」
私が魔王室に戻ろうと振り返ったその時、
「魔王様!! 危ないです!!」
【ヒュン! …バシュ!!】
頭に雪の塊がぶつけられた。
「………………」
「あはははは!! マー君、敵に背を向けるなんてバカだね!!」
あ〜ムカついたぞ。どうやら本気で私を怒らせたいようだな……
「……………アリス…………」
「はい………」
「今すぐ雪玉を用意しろ!!!」
「はい!!!」
〜数分後〜
「魔王様、準備が整いました」
「よしアリス、お前は下がってろ……うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃああああ!!!」
「負けないよ!! とりゃとりゃとりゃとりゃああああああ!!!」
【ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュングシャヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!!!!】
アリスを後ろに下げ、私たちはひたすら雪玉を投げ合う。
「あははははは! あたらな……ふげっ!!」
「ははははは!! 油断してるからだ!! 馬鹿者め!! はははは……ごはっ!!」
「誰が馬鹿者だって……ハゲハゲマー君!!」
「誰が誰が……ハゲだああ、コラぁああああ!!!!!」
【ドシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ! ドシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!!! ドシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!!!!!!】
「この貧乳魔法使いがぁぁぁ!!!」
「みがぁぁぁぁ!!! 誰が貧乳だぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」
「貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳!!!!!」
「ハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲ!!!!」
「貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳貧乳!!!!!!!!!」
「ハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲ!!!!!!!!!!!」
【ドシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ! ドシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!!! ドシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!!!】
私たちはひたすら雪の玉を投げあった。
〈アリス視点〉
「よし、完成!!」
魔王様と葵さんが雪合戦を開戦してから数時間、私は安全な位置で雪だるまを作って遊んでいます。
それにしても、二人の戦いは激しいですね……
【ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュングシャヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!!!!】
「この幼児体型がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「なにをぉぉぉぉぉぉ!! その幼児体型に惚れてるくせに!! このロリコンハゲハゲマー君!!」
「だ、誰がお前なんかに惚れるかぁぁぁぁぁぁ!! 証拠でもあるのかあああああ!! 何時、何分、何曜日、アリスのスカートが何回捲れたときだぁぁぁぁぁぁああ!!」
「知るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」
…………。
さってと、私はもう一体雪だるまを作りましょうかね。
〈マー君視点〉
雪合戦開戦から数十時間、私たちは疲れ切って大の字になり寝転がっていた。
「はぁはぁはぁはぁ…………」
「はぁはぁはぁはぁ…………」
雪合戦開戦から数十時間、雪が静かに降ってきている中、うっすらと雲の中に浮かぶ月から発せられた青い光が、雪に反射してキラキラ光っている………
あ〜疲れた。なんで、こんな事で体力を使わねばならんのだ……
このまま眠ってしまおうかっと目を閉じようとしたとき……葵が月に向かって指を指している。
「マー君、あれ!!!」
「ん……あれは……」
【リン〜リン〜リン〜】
「あれって……もしかして……」
「ああ………」
そこで私は目を閉じた。
これは夏に起きた、ちょっと不思議な不思議な物語。 |