魔王様の悩みの種(15/49)縦書き表示RDF


なんか少しシリアスです。
魔王様の悩みの種
作:イヌ教官



第15話:異界の勇者


〈???視点〉

これは人間界とも魔界とも違う世界での戦い。
その世界では魔王が人間を支配し、人間達を苦しめていた。

「はぁはぁ……くっ!」
「どうした、勇者……貴様の力は、その程度か……」

しかし、そんな人間達の中に立ち上がった者たちがいた。
彼らは、いつの間にか勇者と呼ばれ数々の困難を越えて、今、魔王と対峙しているのだ。

【キン! ドン! キン! カン! キュイーン! ドーーン!!】

剣と剣がぶつかり合い金属音、魔法と魔法がぶつかり合い相殺しあう音が魔王城の外まで響き、彼らの戦いが熾烈を極めているのがわかる。
その戦いの最中で、1人、また1人と仲間達は倒れ、4人いた仲間達も立っているのはボクだけ。仲間達は死んではいないが………今は立ち上がる力はないだろう。
そんなボクも鎧もボロボロで、かろうじで剣を杖代わりに立っている。
魔王も疲労困憊の状態で、頭からは血を流し、右腕は切り落とされ右手からはダラダラッと血が滝のように流れている。

「勇者よ……何故、そこまでして立ち上がる……そこまでして、この世界が大事か…」
「関係ない…ボクにとっては……こんな世界関係ない!!」
「なに!? では、何のために戦う?」
「ボクには夢がある!! その夢を叶えるために戦うだけだ!!」
「……ふっ……ならば、その夢を抱いたまま死んで行け!!!!!! ダークマター!!」

魔王から放たれる黒い球体が、ボクの目の前に迫ったその時

「ボクは夢を叶えるんだぁぁぁぁ!!」

ボクの持つ剣が光だし、魔王の放つ魔法を切り裂く。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「なに!?」

【グサっ!】

「ぐほっ………」
「…………」
「………見事……」

魔法を切り裂いたボクは魔王に向かって走り出し、そして最後の力を振り絞り魔王の左胸に剣を突き立てる。その一瞬と思える時が永遠と思えたとき、魔王は一言呟くと後ろへと倒れていった。

「……ったぁ……やったぁぁあああ!! ついに魔王を倒したんだぁぁぁぁぁあ!!」

ボクは倒れいく魔王を見て、その場で大声を上げる。
気絶している仲間達に聞こえるように、今まで魔王に苦しめられてきた人々に聞こえるように
そして自分に聞こえるように、その場で大声を上げた。

「これで……ボクの……ボクの夢が……」
「それはどうかしらね……」
「何!?…貴様は!?」
「遅い!! 次元の扉よ! 彼の物を異次元へと転送せよ!!」

【ゴゴゴゴゴゴゴ!】

油断した………魔王を倒して気が抜けていたせいで、さっき倒した魔王の部下が生きていたなんて……
魔王の部下が放った魔法、それは時空魔法。ボクの目の前に巨大な扉が現れる。

「くっ…貴様あああ!!」
「ふふふふふふっ……私はただでは死なないわ……貴方だけでも異世界へと飛ばしてあげる!!」

【バタン!!!】

「く、くそ………」
「ふふふふふふふふっはははははははははは…………」

そうして、ボクは扉の中へと吸い込まれていった。





…………。

「どうした!! 英雄の息子が、その程度でへこたれるな」
「これはこれは……さま……。この度は、どの様ご予定で」
「……さま。お父上のように立派になってください」



…………。



魔王さえ魔王さえ倒せば、ボクは平凡に暮らせると思えたのに……
みんなが英雄の息子のボクじゃなく…ボクを見てくれると思ったのに………

なんだよ、これ……。どうして、ボクがこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ……
どうして…どうして…どうして………





「……どうして……」

目を覚ますと、そこは見慣れない天井。ボクは体のところ所に包帯を巻きながらベットに寝かされていた。

「……ここは……いったい……いつっ!」
「あっ…目を覚ましました? よかった〜このまま目を覚まさないかと思いましたよ」

声のしたほうに顔を向けると、そこにはエプロンとバンダナが印象的な女性が、包帯やら薬の瓶やらを持って立っていた。

「あなたは……?」
「待っててくださいね……すぐに包帯を変えますから……」
「えっ…あの……大丈夫ですから……」
「ダメです! 怪我がんだら、どうするんですか!!」
「……すみません…お願いします…」

若干、女性の気迫に押されながらボクは女性が解いていく包帯をボーっと眺めていた。
女性は、手馴れた手つきで包帯を解いていく。

「よかったぁ〜だいぶ良くなってなってますよ……」
「あの…その…どうして…ここまでしてくれるんですか?」

ボクには理解できなかった。見知らぬボクに、ここまで良くしてくれるなんて……
もしかしたら、魔王の罠かもしれない…
そう思うボクに女性は笑いながら答えた。

「あははははっ。困っている人を助けるのは当たり前じゃないですか」
「えっ……当たり前……」
「そうです……当たり前です!!」

女性の何気ない一言がボクに突き刺さる。ボクは仲間以外の人以外には心を開けなかった。
彼らは、ボクを英雄の息子、勇者ということで助けたことはあったが、それ以外のことでは助けてくれることはなかった。
勇者だから英雄だから私たちを助けてくれる、ボクが死んだら魔王に従えばいい、
でも、ボクは勇者だから、英雄の息子だから、助けなくちゃいけない……助けなくちゃ……




じゃあ、ボクという存在は………誰に助けてもらえばいいんだ……





「……泣いていいですよ……」
「えっ?」
「泣きたいなら泣いていいのですよ。泣きたいときに泣くのも……」
「………ひっく…ひっく…ひっく…」
「……当たり前なのですから……」
「う、うわぁぁああああああ」

………嬉しかった。この女性の当たり前が、嬉しかった。
苦しかった傷つけるのも傷つけられるのも嫌いだった……でも、ボクは勇者だから英雄の息子だから……
ボクは女性の胸で泣いた。今まで溜め込んでいた物を吐き出すように、大声で……泣いた




「……………」
「………落ち着きましたか?」
「はっ……すみません……取り乱してしまって!!」

ボクは、とっさに女性の胸から顔を離し目をこする。情けない男だと思われたくなかったからだ。
そんなボクを見て女性はクスっと笑うと包帯を変え始めた。

「…………」
「…………」

気まずい沈黙の中で女性は黙々と包帯を変え、ボクは窓から外の景色を見る。
窓から見える景色は、人と似ているが何処か生き物や人とは違う生き物………
ボクの世界では魔族と呼ばれていた者たちが、買い物をし、話をし、笑っている。
あ〜そうか……ここは、ボクのいた世界とは違うのか……っと理解した。

「……そういえば、名前……まだ聞いてませんでしたね……」
「へっ!?」
「名前です。教えてくれません?」
「………」

女性の問いに答えるべきか、少し悩んだが……

「………キラ………アキラ・フィールドです」
「アキラさん……いい名前ですね。私はアプリコット。リコって呼んでくださいね」
「は、はい……リコさん」


その後、リコさんにこの世界の事を色々教えてもらった。
ここがボクのいた世界ではなく魔界という世界であることを、
この世界にも魔王がいることを、この世界がこんなにも平和なのは魔王のおかげある事を



そんなリコさんの話を聞いて……





ボクは、この世界の魔王に会ってみたくなった。


「………ねぇ、マー君……」
「ん!どうした…葵?」
「私たちって主人公だよね…」
「そうだが……それがどうした?」
「私たちの出番がないんだけど……それに比べてバン……リコちゃん大活躍だよね……」
「たまにはいいんじゃないのか?私は久々に休みがもらえて羽が伸ばせたぞ!」
「それじゃあ、つまらない!!私はマー君の一日一回ぶっ飛ばさないと死んじゃう!!」
「勝手に死ね!!」
「う〜う〜マー君が虐める〜」
「じゃあ、日ごろのお前の行いはなんだ?」
「あれは…スキンシップだよ!!」
「はいはい、ずいぶん危ないスキンシップですね〜」
「いや〜それほどでも〜」
「褒めてねぇよ!!いいか、お前の魔法は……(がみがみがみ)」

「なんかマー君が説教モードに入ったから帰るね!次は私たちも出るからよろしく〜」
「………(がみがみ)って待たんか!!まだ話は終わってないぞ!!」











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう