第13話:魔王様が見る夢
<葵視点>
「しゅった……潜入完了……」
私が降りったったマー君の夢の世界は、観覧車やジェットコースターが立ち並ぶ遊園地だった。
「ふ〜ん。ここがマー君の夢の世界か……」
マー君の事だから、夢の世界でも仕事をしていると思ってたんだけど……
遊園地とは意外だな……あっ、でもマー君以外と子供ぽい所あるし……
そういえば夢って人の願望や過去の記憶を映し出すって聞いたことがあったけ……ということは、もしかして、この世界はマー君の記憶なのかな……?
「さてと、マー君はどこかな……」
私がキョロキョロっと周りを見渡していると、後ろから声を掛けられた。
「ねぇ…お姉ちゃん?」
「? ……!!」
「お姉ちゃん、どうしたの?迷子」
「……マー君……」
「マー君? ……違うよ。僕の名前はアイスだよ」
後ろを振り向くと、そこには子供姿のマー君が立っていた。
「…………」
「どうしたの? お腹でも痛いの?」
「……いい」
「えっ!?」
【ぎゅっ!】
「かわいい!!」
「えっ!? お姉ちゃん!?」
………か、可愛い!!!!
黙り込んでいた私を心配して、見上げるマー君の姿は現代のマー君からは想像できないほど可愛いく、私は気づいたらマー君を抱きしめていた。
「お姉ちゃん…苦しい…離して」
「あっ…ゴメンね…」
「うんうん。大丈夫だよ!!」
「………」
ニッコリと笑うマー君を見て、あまりもの可愛さにもう一度抱きしめる
【ぎゅっ!】
「お、お姉ちゃん!?」
そんなやり取りがしばらく続いた。
「ご、ゴメンね……まー…じゃなかった。アイス君、何度も抱きしめちゃって」
「だ、大丈夫だよ!」
「じゃ、遊びながら迷子になった友達でも探そうっか?」
「うん!!」
抱きしめてる途中に聞いたんだけど、アイス君は貸切にしたこの遊園地で友達と逸れちゃったらしい。さすがマー君、子供の頃からすることがリッチだなぁ……
「じゃあ、まずはアレにしようか?」
「えっ!? アレ」
私が指差す方向には、巨大なジェットコースターだ。
せっかく遊園地にいるんだから、まずはジェットコースターに乗らないと始まらないよね!
「あの〜その〜本当にジェットコースターに乗るの?」
「そうだよ。やっぱり高いところから見たほうが友達も見つけやすいだろうし」
「それなら…メリーゴーランドのほうが…」
ウキウキ気分の私とは対照的に、アイス君の顔は引きつっており少し後ずさり気味だ。
「もしかして……アイス君、怖いの?」
「そ、そんなわけないじゃん!!」
マー君は子供の頃から負けず嫌いだったみたい。
私の挑発に簡単に乗り、私の手を引っ張りながらジェットコースター乗り場へと歩いていく。
「アイス君、引き返すなら今のうちだよ」
「だ、大丈夫!」
マー君は、最初は強がっていたが発進した瞬間態度が一変した。
ガチャガチャと最初の坂を登っていくなかで恐怖を感じたのであろう。
「あの〜」
隣で声を震わせる未来の魔王。
「どうしたの?」
「降ろしてください……」
「何を今さら……」
「本当にヤバイです……」
【ガタンゴトン!】
「ほら、見て。景色がいいよ」
「景色なんて楽しんでいるぅぅぅぅぅぅ………ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
アイス君が何か言い終える前に下り坂へ入った。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!助けて、神様ぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」
未来の魔王が神頼みとは世も末だねぇ…。
「降ろせぇぇぇぇぇ!!降ろさぬなら、ボクが魔王になったら廃棄処分だぁぁぁぁぁ!!!」
職務乱用だよ、それ。
その後、泣き叫びながら到着した。
アイス君は、フラフラになりながら外にでると近くのベンチに座った。
私も、その隣に座る。
「はゎゎゎゎ、怖かったぁ……」
すごい怯え様だ。マー君とはいえ、子供をイジメてるみたいで少し罪悪感が……。
「ゴメンゴメンアイス君。次はお化け屋敷でも行こ!」
「う、うん」
お化け屋敷の中へと入ると、すぐに暗闇の中からゾンビがご挨拶してきた。
【ヴォォォォォォ】
「ひゃあああ!」
「あはははははっ! よく出来てるな!」
次は首が伸びるお化けが私たちの首に巻きついてくる。
「く、くるしぃいい」
「すごいすごい!首にぶら下がれるよ」
最後に化け猫。
「ば、化け猫だぁぁぁぁああ!」
「わぁぁぁぁぁああ!!猫耳だ!猫耳!!」
て具合で、私達はお化け屋敷を楽しんだ。
ちなみに、泣き叫んでいたのはアイス君で私は完全に楽しんでいた。
またまたフラフラとなりながら、アイス君はベンチに座り込んだ。
未来の魔王が、お化けに打ちのめされるなんて結構珍しい光景だなぁ……
でも…やり過ぎちゃったな……
「お化け…怖い…遊園地……怖い…怖い怖い怖い…お饅頭怖い…」
お饅頭は関係ないけど、これじゃあトラウマになっちゃうよね……
なんとかしないと、辺りをキョロキョロと見渡していると観覧車が目に付いた。
「あれだ……」
「えっ!?」
私はアイス君の手を引っ張りながら歩き出した。
観覧車に乗ったアイス君は目を輝かせながら窓に張りついていた。
「すごい! すごい! 街が一望できるよ!!」
……やっぱり可愛いな〜。今のマー君とは大違いだね。
「あっ、いた! お姉ちゃん、友達を見つけたよ!」
「えっ!? どこどこ?」
「あそこ! あそこだよ!」
「ホントだ!」
アイス君が指差す方向に下の方で小さくなった人影が2つ見える。
「良かったね、友達が見つかって」
「うん!」
「お姉ちゃん、早く!」
色々話しているうちにあっという間に地上へ戻ってきてしまった。アイス君は、いそいそ降りると友達のいた方へと走っていく。
私も、その後を適当に走りながら追いかける。
「アイス君……どこいったんだろう……」
「がははははは。相変わらずアプリコットは心配性だな。その内、ひょっこりっと出てくるって」
「そんな無責任な。アレクくんは心配じゃないの?」
「全然全然!」
「即答!?」
「……い。お……い」
「がはははは」
「笑ってる場合じゃないよ!」
「お〜い! アレク、リコ!」
「って、えっ!? 本当にひょっこり帰ってきた!?」
「がははははは。俺の言ったとおりだろ」
「アイス君の友達って……」
「紹介するね。アレクとアプリコットだよ」
「………」
アイス君の友達ってアレクさんは想像できたけど、もう1人がバンダナちゃんとは……
しかも、ここにきて、やっとバンダナちゃんの本名が分かるなんて!
それにしても二人とも小さいな! アレクさんなんてアイス君より小さいから私の身長の半分しかないよ!
とりあえず…
【ぎゅっ!】
「お、お姉ちゃん!? また!?」
「えっ!? 何なの!?」
「がはははは。挨拶の1つだろ?」
抱きしめた……だって、3人とも可愛いだもん!
「………」
「お姉ちゃん、痛いよ! 離して…」
「…………」
あ〜このまま、ずっと抱きしめたかったのに……もう時間なんて…残念だな…
私は足元に現れた黒い穴へと落ちていった。
〈マー君視点〉
「あっ…いかんいかん…眠ってしまったのか…」
仕事の休憩にと、息抜きのつもりでアリスに耳の掃除をしてもらっていたが、つい寝てしまったか……
「なんか懐かしい夢を見たな……そういえば遊園地に行ったのは、あれが最初で最後だったな」
「あっ…魔王様……おひゃようございます!」
「アリス…顔を洗ってこい…」
「ひゃい…わかりました……」
フラフラなりながらアリスは魔王室から出て行った。
「マー君、おはよう〜」
「なんだ、葵。お前も来てたのか」
「うん…そうだよ…」
葵が大きく伸びをすると私の隣に座る。
「マー君、いい夢みれた?」
「ん!?…なんでそんなことを…」
「別にいいじゃん。で、どうだったの?」
「そうだな……とても楽しい夢だったな」
「そう、それは良かったね!」
「何でお前が嬉しそうなんだよ?」
「教えなーい」
「……そういえばさ、なんか顔と腹が痛いんだが、お前……何か知ってるか」
「お、教えなーい」
「……ほう、そうか…この痛みはお前のせいかあああああ!」
「えっ!? 何で分かったの!?」
「こんな事するのはお前しかいねぇだろうが!!」
「に、逃げろ!」
「待たんかあああ! 葵!!」 |