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他人の不幸は蜜の味という興味深い論について
「クラールヴィント、お願いね」

≪Ja. Lüftchen behandeln≫

「大丈夫? セインテスト君。かなり酷い音がしていたけど・・・・」

機動六課の隊舎のある一室、医務室のベッドに横たわるルシリオン。
古代ベルカの治癒魔法・優しき癒風をかける医務官のシャマルが、患者であるルシリオンへと訊ねる。

「ああ、なんとか・・・。何度もありがとうシャマル。楽になった」

シャマルの治癒魔法を受け回復したルシリオンが礼を口にする。
そんな彼の満身創痍なダメージもついでに完全回復されていた。

「ヴィヴィオに悪気がないのは解っているが、さすがに効いた」

ルシリオンは苦笑しつつ、彼を撫で、医務室送りにしたヴィヴィオの事を思い出す。
一応は父と娘という関係のルシリオンとヴィヴィオ。
そのヴィヴィオが何を思ったのかルシリオンを撫でた。
理由はどうであれ小さい娘が父とスキンシップを取る。
それだけなら可愛らしい絵柄だが、撫でたヴィヴィオが巨大というのが最大の問題だった。
巨大化した原因は、まぁいろいろな事が起きたわけだが・・・・。

そんな巨大な、あまり力加減が出来ていない手で撫でられれば首にダメージを負う。
しかも、ルシリオンはすでに首にダメージを負っていた。
そこに追撃がくれば、誰でもダメージを負うのは間違いなかった。

「うふふ。あの子も可愛い事するのね。それで、どうだったセインテスト君?
可愛い娘のヴィヴィオに撫でられて、感無量かしら?」

楽しそうにコロコロと可愛らしい笑みを浮かべるシャマル。
彼女は何かとルシリオンにおちょくる。
内容としては、花嫁や結婚などの女性関係ネタでよく攻めてきていた。
その都度ルシリオンは精神的ダメージを負っていって、シャマルからのそういう振りは苦手となってしまっていた。

「いや、シャマ――」

「そうそうセインテスト君。テスタロッサちゃんとはどうなの?
あ、それになのはちゃんは? ヴィヴィオの事もあるし・・・」

「あのシャ――」

「どっちとお付き合いするかきちんとしておかないとダメよ?」

「その――」

「あー言わなくてもいいのよ? きっとセインテスト君の事だからきちんと考えていると思うから」

「だ――」

「いっそのこと二人とも・・・。うふふ、罪なお・と・こ♪」

ルシリオンが今まで出会ってきた最も苦手――いろんな意味で――とする女性ランキングの上位シャマルの単独トークは、なのはたちが見舞いに来るまで続き、その結果ルシリオンはゲッソリとしていた。


†††Sideシャルロッテ†††


「ホントごめんね~、ルシル。・・・・ていうか大丈夫?」

シャマルのどうしようもないマシンガントークでノックアウト寸前のルシルがベッドでゲッソリしてた。
もし私たちが来なかったら、ルシルはシャマルに洗脳されてとんでもないことになっていたかもしれない。
それも何だか見てみたい気もするけど、まぁ今はお見舞いってことで。

「ルシル、これ・・・私の作った料理なんだけど・・・・」

「お見舞いだよ、ルシル君。これで元気になること間違いなし!」

「大丈夫、ルシルパパ・・・?」

「ありあとう、フェイト、なのは、ヴィヴィオ。私は大丈夫だから。
それで、フェイトの料理が見舞いの品ということか・・・・。正直助かったよ。
昼はまだ済ませてないから、ありがたくいただくことにするよ」

「って私は無視かぁぁーーーーい!!」

一番最初に部屋に入って、一番最初に話しかけたのに、私をあっさりシカトしやがった。

「まあまあフライハイトちゃん。落ち着いて落ち着いて」

「うぅぅぅ・・・!」

なんか納得いかない。けど、

「それじゃあ、いただきます」

「うん、どうぞ♪」

ルシルとフェイトがちょっと良い雰囲気だし、まあいっか。
今日のところは許してあげよう。

「・・・・うん、おいしい。さすがだな、フェイト」

「よかったぁ。でもそれは食材のおかげだよ、きっと。
それにルシルの料理に比べればまだまだだよ」

うんうん。いいよいいよ、二人とも。
これなら案外簡単にルシルとフェイトをくっつけられそうだ。

「ルシルパパ、あ~ん❤」

私たちの合作ケーキ、(シュヴァルツヴェルダー・)キルシュトルテ。
ルシルが帰って来てから一緒にみんなで食べようと思っていたものだ。
ヴィヴィオがそれを一口サイズに切り取って、ルシルの口の前に運んだ。
ああもう可愛いなぁ。ヴィヴィオがホントに可愛いすぎる。羨ましいなぁ、ルシル。

「・・・・・あ、あ~~ん。・・・・うん、おいしい。
この口の中に広がるサクランボの味が何とも・・・・・さ、サクランボ・・・だと」

ルシルの表情が凍った。

「ルシルパパ・・・?」

「ルシル、どうかした?」

ルシルがわなわなと震えだした。

「え、なに? ルシル君・・・?」

「セインテスト君・・・?」

答えない。答える余裕すらなさそうな勢いでガタガタと震えだした。
これは本格的にまずい気がする。ううん、もしかしたら美味しさと嬉しさからの震えかもしれない。

「そこまで震えるほどおいしいんだ。やったね、なのは、フェイト」

「え、あー・・・うん」

「そういう震えじゃないような・・・・」

うっ、やっぱりそうだよね。明らかに様子がおかしいし。
それにさっきサクランボって言ってから震えだしたような・・・・・。

(サクランボ?・・・・サクランボ・・・・サクラ・・・あ)

しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
スーパーキ〇コ以外に研究用保管区画から取り出したのって確かサクランボだ!!
いやいや、だってサクランボがどこにもなかったから、つい保管区画から・・・ってどう聞いても言い訳だ、これ!

「・・・・シャル・・・。このケーキに使ったサクランボ、まさか蔵のじゃないよな?」

怖い。私限定に向けられた何とも言えない殺気。

「あー・・・・まぁおいしかったから問題なし☆」

「っっっ問題しかね―――」

ポンっ☆

「「「「「っ!!?」」」」」

ルシルがポンっ☆って可愛らしい音と一緒に煙に包まれた。

「「「「「・・・・・・・」」」」」

煙が晴れて、ルシルがその姿を現した。現したんだけど、

「「「か・・・・」」」

今度はなのはとフェイトとシャマルがわなわなと震えだした。
その視線の先にはベッドの上にいるルシル。

「「「可愛い❤!!」」」

ルシルを見てそう一言。

「ルシルパパが小さくなっちゃった・・・?」

ヴィヴィオが不思議そうに、小さく――ううん、子供(・・)になったルシルを見て呟いた。

(うわぁ、やっちゃった。あのサクランボ食べたら子供になっちゃうんだ)

「あ、あの・・・だ、誰ですか・・・?」

「「「「・・・・え?」」」」

「ルシルパパ・・・?」

いやぁ、ちょーっと待って。今私たちを見て、誰ですか、と言いましたかルシル。

「あの・・・ルシル・・・?」

「みなさんは誰なんですか?」

ベッドの端まで下がっていって、ギュっとシーツを抱きしめる子供ルシル。
それに巨大化の時とは違って服は大きいままだから、シャツが肌蹴ている状態。
だからエリオやキャロとヴィヴィオの間くらいだというのにどこか色っぽい。
陶器のような白い肌。若干涙に潤んだ紅と蒼の瞳。ベッドの上に波打つ綺麗な――どうして戻ったのか分からないけど――長い銀髪。

くそっ、可愛いとか思ってしまったじゃん。
まるで女の子のようだ。う~ん、10年前を思い出すね、これは。
ううん、10年前以上に幼いから可愛くて女の子っぽい。

「・・・シャルちゃん、このケーキに何入れたの?」

怯えたルシルから私に視線を移したなのはの目が少し怖い。

「キ、巨大化キノコがあった区画からサクランボを・・・ね」

なのはの視線に若干怯えつつもそう答えた。
だってキルシュトルテに使うサクランボが食堂に置いてなかったんだから、だったら蔵から調達するしかないじゃん。
まぁキルシュトルテを作らないで、別のケーキにするっていう選択肢もあったけどね~。

「はぁ。シャルちゃんだからもう諦めるよ」

「でも反省はした方がいいね」

なのはに次いでフェイトまで冷たい視線を向けてくる。
でもルシルをチラチラと何度も見るからそれほど怖くはないんだけどね。

「え~っと、セインテスト君。あなたは自分の事やここがどこかは分かる?」

「うん」

自分と六課のことは覚えているわけか・・・。
それにしては何か男らしくないというか本当に女の子みたいというか・・・。

「じゃあ私の事は分かるかしら?」

「ううん。・・・・お姉さん誰?」

で他の人のことは覚えていないと・・・。
子供化に記憶障害。思っていた以上に最悪なサクランボだ。
ルシルの食べた時のリアクションの意味がやっと理解できた。
確かに震えるほどだ、これは。

「お姉さん、かぁ・・・。ねぇセインテスト君、シャマルお姉ちゃんって言ってくれる?」

ていうか、おーい、シャマル。ルシルに何言わせようとしてんの。
それ以前にメッチャ綻んだその恍惚とした表情やめた方がいいよ、絶対。
捕まるところだと捕まること間違いなしだから。

「シャマルお姉ちゃん・・・?」

「っく!! ごめんなさいはやてちゃん。私は一足先に初代リインのところへ逝きます」

「「「ええええええっ!!!?」」」

子供ルシルにシャマルお姉ちゃんと呼ばれた瞬間、思いっ切り仰け反ってフラフラと医務室を徘徊、そのまま逝ってしまいそうになっているシャマル。
今のシャマルは本当に幸せそうだ。

「ねえねえルシル。今度はシャルお姉ちゃんって言ってみて!」

「ちょ、シャルちゃん!?」

幸せMAXなシャマルの様子に、不思議そうに首を傾げている子供ルシルとコンタクト。
なのはが何か言っているけど、今は子供ルシルで楽しむことを先決としよう。

「?・・・シャルお姉ちゃん・・・?」

子供ルシルは頬を赤らめながら、私の頼んだ通りに言ってくれた。

「っくはぁっ! これは思っていた以上にすごい!
シャマルが旅立とうとした気持ちが今ならハッキリと解るよ!」

はぁはぁはぁはぁ・・・まずい。これはまずい。こんなルシル知らない(当然だけど)。
可愛いなんてものじゃない。可愛過ぎる。
以前アリサが言っていたことだけど、ルシルは絶対生まれてくる性別を間違えてる。
今日ほどそう思ったことはない。

「シャルちゃん・・・?」

「大丈夫?」

「な、なんとかね。それにしてもまいった。ルシルのお姉ちゃん口撃は下手すれば必殺だよ。
もし今のルシルが男共相手にお兄ちゃんって言ったら、間違いなく男共は犯罪行為に走るね、絶対」

こんなルシルを男共の前に出したら、同性だろうが何だろうが関係なく犯罪に走る。
そういう自信がある。自慢なんて出来ない自信だけど。

「「さすがにそれは・・・」」

ない、とは言い切れないみたいだね二人ともー。

「ねぇルシル。今度はこのお姉ちゃんたちも、なのはお姉ちゃん、フェイトお姉ちゃんって呼んであげて」

「「えっ!?」」

「??・・・なのはお姉ちゃん、フェイトお姉ちゃん」

「「っ!!!!!」」

ルシルのお姉ちゃん口撃を受けて、なのはとフェイトも深刻なダメージを負った。
ルシルに抱きつこうとしているのをなんとか理性で押し止めているのが手に取るように分かる。

「どう二人とも」

「す、すごかった」

「う、うん。確かにお姉ちゃん口撃は必殺かも」

なのはとフェイトが完全に落ちた。

「えっと・・・あの・・・」

子供ルシルが少し戸惑いながら声をかけてきたんだけど・・・

(さて、どうしたものか。一刻も早くサクランボの効果を打ち消す方法を見つけるのが先決か。
それともしばらく子供ルシルで楽しむべきか・・・)

「・・・ふぅ、究極の二択ね」

「??? シャルお姉ちゃん?」

「ぐはぁっ!」

思わぬ奇襲口撃にクリティカルダメージ、かいしんのいちげき、こうかはばつぐんだ。

「はぁはぁはぁはぁ・・・」

「??」

そ、そんな潤んだ瞳で見つめてこないで、ルシル。
お姉ちゃん耐えられないよ・・・・。

「どうするの、フライハイトちゃん?」

「あ、シャマル先生おかえりなさい」

ルシルの可愛さに悶えていたシャマルが復活して、そう訊いてくる。

「か、解決法を探す。時間はかかるかもしれないけど、ね。
今のルシルは最高だけど、隊舎で遊ばせていたら女子は悶絶、男共は犯罪に走るかもしれないし」

さすがに記憶がとんでいる最中に貞操の危機というのも可哀想だ。
まぁ襲うのが男共だけとは限らないけど。どの道危険であることには間違いない。

「じゃあヴィヴィオと一緒にアイナさんに預ける?」

「う~ん、その方がいいかも」

「わ、私もお仕事できます! っうぁっ!?」

左手を全力で上げたことで上の服がズレ落ちそうになり、それを慌てて直そうとするから勢い余ってコテンと転倒。
すぐさま起き上がるんだけど、恥ずかしさの所為か顔が真っ赤。

「「「「くはぁっ!」」」」

強烈すぎる。HPが10%切ってピコンピコン鳴り始めやがった。
くぁ~、こんな子供ルシルのドジっぷリを見て鼻血を吹かない私たちは勇者だ。

「なのはママ!? フェイトママ!?」

「だ、大丈夫だよヴィヴィオ。なのはママは強いから」

何に強いから大丈夫なのかはツッコまない。

「う、うん。ヴィヴィオもすごく可愛いから大丈夫」

内容がどこか飛んでるよフェイト。

「ね、ねぇセインテスト君。シャマルお姉ちゃんと二人でお仕事しようか~」

シャマルはもう危険域(レッドゾーン)に一歩も二歩も大きく踏み込んでいるようだ。
犯罪者予備軍に仲間入りしていると見ていいかもしれない。
ていうかどこからナースウェアなんて取り出した?
それ以前に女物じゃん。・・・・・・あ、女装・・・か。フフフフフ。

「シャマルはダメ。なんか危ないから」

「ああん、ひどーい!」

「ルシル君。そのー、お仕事できるってことだけど・・・」

「うん、なんでも出来る!」

可愛いなぁこんちくしょー!!
これで男だっていうんだから世の中絶対おかしい!!

「まずは、はやてちゃんたちに説明・・・だね」

「簡単な仕事ならいいのかな・・・?」

それから私たちは子供ルシルを連れて、はやての居る部隊長室まで行くことになった。

「えっと・・・よろしくね、ヴィヴィオ・・・」

「え、あ、うん・・・」

子供ルシルとヴィヴィオの初コンタクト。
やっぱりヴィヴィオは戸惑っているようだ。
まぁいきなりパパが自分より少し年上の子供になれば当然かな。

「・・・・あ、シャマルはお仕事がんばってね~!!」

「フライハイトちゃん、ひど~い」

本気で涙目なシャマルとは一度ここでお別れ。
だって仕方ない。ここは医務室で、シャマルは医務官なんだし。

「あの・・・服・・・どうすれば・・・?」

「あ、そっか。ちょっと待って。我が手にたず――」

シーツに包まった子供ルシルを見て卒倒するかと思ったけど、そこをなんとか耐えて、魔力で服を作りだそうとしたとき、

「シャマルお姉ちゃんが用意し―――」

興奮しているシャマルを本気で危険と判断、手刀で強制睡眠の刑に処した。

「「・・・・」」

なのはもフェイトも仕方ないって顔してるし、このまま放っておこう。

「我が手に携えしは確かなる幻想」

魔力を好きなように編め、物質化出来る術式を使用。
作るのはもちろん、

「シャルちゃん、なんでこんなフリフリでゴスロリチックな服を・・・?」

女の子用の服。銀髪オッドアイなルシルには絶対似合うゴスロリ。
色はもちろん黒一色。アクセントは胸元の赤い大きなリボン。

「じゃあこれ着て~♪」

「え、あ、はい・・・・」

フフフ、まさか何の抵抗もなく受け取るなんて・・・わぁ~い!

「か、髪型はどうしようか・・・?」

ツインテール? ポニー? 縦ロール? サイドアップ? それともツーサイドアップ?

「なのはママ。シャルさんがこわい・・・」

「シャルもシャマル先生に負けじ劣らずの危険人物かも」

「あはは・・・」

結局以前したようにツインテール。そして今日分かったことがある。
それは子供としての視点と大人としての視点では違いが生まれるということ。
10年前、ルシルを強制的に女装させたときとは違う高揚感が今はあるからだ。

「ルシル君可愛い・・・」

「ひ、否定できない。ルシル・・・本当に可愛いよ」

ほら、なのはとフェイトもメロメロになってるし。
昔と今じゃ感性が違うということだ。そして医務室を出て、部隊長室に向かう途中・・・・

「きゃあああああああ!! 誰ですかその可愛い子はぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!」

いきなり見つかった。

「可愛い! この子、もしかしてルシルさんの妹さんか何かですか!?」

「見て、このサラサラな銀髪! 羨ましい!!」

「も、もしかしてフェイトさんとルシルさんのお子さんですか!?」

「違っ、あの、えっと、この子は・・・だから、その・・・あー・・・『どうしよう。教えた方がいい・・・?』・・・そのね・・・」

ゴスロリルシルに群がるのは、シャーリーとアルトとルキノのトリオだ。
そのトリオから怒濤の質問攻めを受け始めたフェイトからのSOS念話。
というかシャーリーが何気にすごいことを言ってるよ。ルシルとフェイトの子供だとか。

『う~ん、巨大化についても知ってるし、ルシル君が子供になったって言ってもいい気も・・・』

『うん、今さら小さくなったって言っても動じないかもね』

「『じゃあそうしようか』・・・実は―――」

かくかくしかじか。

「うっそ! この子がルシルさんなんですか!?」

「巨大化の次は子供化ですか!? あーでも可愛いから何でもいい!!」

「ちょっと二人とも! どんなに可愛くてもルシルさんなんだよ!? 失礼過ぎ!!」

トリオもゴスロリルシルにメロメロ。
もしかして誘惑の呪とか使ってるんじゃないかってくらいに。

「いや、でもどうかなぁ? 今のルシル記憶飛んでるし」

「「「・・・・・記憶喪失!?」」」

はい、盛大なリアクションありがとうございます。
記憶障害についても説明。

「なるほど。だから女装させられても怒らないんですねぇ」

「あれ? でも自分の事を憶えているんでしたら、やっぱり怒るんじゃないんですか?」

「そうですよねぇ。もしかすると別のところで記憶に障害があるんじゃないんですか?」

「「「あ」」」

言われてみればそうだ。さっきシャマルが質問して返ってきて答えをそのままにしていたけど、もしかしたらルシルにはまだ他の記憶が飛んでいる可能性がある。
だからこんな女の子っぽい言動とかしているんだ。

「えっと、ルシル。自分の事で何を知ってる?」

「?? ルシリオン・セインテスト・ア――」

急いでルシルの口を塞ぐ。契約(メンタルリンク)の儀式の時とは違って、今“アースガルド”を名乗らせるのは少しまずい気がするからだ。
何せ昔――子供時代とは違って、今のなのはたちなら調べられるはずだ。
まだバレたくない。もう少しこのままで、みんなと一緒に過ごしたい。

「ど、どうしたの?」

「え? あー・・・なんでもないなんでもない。
コホン、えっと・・・じゃあルシル。その他には・・・?
分かっている事を全部教えてほしいなぁ」

名前に関しての記憶はかなり古いと見ていい。
まさかの“フォン・シュゼルヴァロード”じゃなくて“アースガルド”だから。
つまりは、あの双子と出会う前の記憶となったら大体2,3千年くらい前ということだ。
いや、もしかしたら守護神としての記憶すらないかもしれない。
あー、なんかそっちの方の可能性が高い気がしてきた。

「・・・・六課で仕事」

「・・・・・え、それだけ?」

「うん」

二つ。ルシルが自分の事で憶えているのはたったその二つだけ
これで納得。名前と六課で仕事。これしか憶えていないから平気で女装出来るんだ。

「ま、まぁこれで解決だね。さて、予定通りはやてのトコに行こうか」

実際何も解決してないけど、今はそれで良しとしよう。

「じゃあルシル。シャーリーお姉ちゃんとアルトお姉ちゃんとルキノお姉ちゃんにバイバイって」

「うん。シャーリーお姉ちゃん、アルトお姉ちゃん、ルキノお姉ちゃん、バイバイ」

「「「っくはぁっ!!」」」

トリオ、完全陥落。
それからはやてのいる部隊長室に着くまでの間、ゴスロリルシルが落とした隊員は数知れず。
女性隊員はもうメロメロ。男性隊員は本気でやばい目をした連中もいた。
このルシルを一人にすると間違いなく最悪な事が起こりそうだ。

「――にしてもホンマ可愛ええなぁ。大体7、8歳くらいか?」

「そうですねー。本当に可愛いですー❤」

はやてとリインも、事の経緯説明途中ですで陥落済み。
それほどまでに強烈なのだ、今のゴスロリルシルは。

「はぁ。マジでセインテストには同情しか出来ねぇな」

「ルシル。ヴィータに例の言葉を」

そう言うヴィータにも同情以外のものを湧かせてあげましょう。

「うん。ヴィータお姉ちゃん」

「っ!!?」

フッ、どうよヴィータ。今のは効いたでしょう?

「お、お姉ちゃん・・・?」

「うん、ヴィータお姉ちゃん」

「くおっ!」

ゆっくりと崩れ落ちて四つん這いになって、「お姉ちゃんお姉ちゃん」ってうわ言を発するヴィータ。
今までそういう経験がないからこその大ダメージ。
小さい子供にお姉ちゃんって呼ばれると、それなりの歳の女子には堪える。
いわゆる妹萌えみたいな?

「何の騒ぎだ、部隊長室で」

お、シグナム副隊長のご降臨ですよ。
どれ、ここはシグナムにも一撃与えてみようかなぁっと。

「む? 何だ、そのセインテストを縮めたような子供は?」

まさしくその通り。

「ルシル、ゴー」

「あの・・・シグナムお姉ちゃん」

「ん、なんだ?」

あれ? シグナムにはこういうのは効かないのかな?

「えっと・・・」

「あー、えっとなぁシグナム。その子はな――」

はやてからシグナムにかくかくしかじか。

「・・・・セインテスト。お前という男はどこまで・・・」

はい、シグナムからルシルに同情一丁入りました~。
シグナムの同情、プライスレス。
それからゴスロリルシルには働きたいっていう意思があることをみんなに話す。
私が元に戻す方法を探すから、それまでゴスロリルシルの言動には目を瞑ってほしいという事を話した。

「まぁ大丈夫やろ。なのはちゃんとフェイトちゃんから聞いたところやと、他の隊員たちももうメロメロやって話やし」

「ま、まぁそうだね」

「護衛付きが絶対条件になると思うけど・・・」

「なんだ、そこまでセインテストの人気はすごいのか?」

「それはもうすごいよ。女性隊員は目を❤にしてメロメロになって、男共も犯罪者一歩手間の目になったやつも居たし」

「じ、じゃああたしがセインテストの護衛になってやるよ。
あたしなら一人で十分だろ? なにせ副隊長だからな」

「なんやヴィータ。ルシル君のお姉ちゃん口撃にメロメロなんか?」

「ち、違っ――」

「ヴィータちゃんも女の子ですねー。ねぇヴィータお姉ちゃん♪」

「――リイン!!」

ヴィータのダメージは深刻そうだ。

「じゃあルシルの姉として、ヴィータにお願いしよっかな」

こうして昇級祝いパーティから始まった喜劇の続行が決定した。


◦―◦―◦―◦―◦―◦


――ルシルちゃん親衛隊(非公式)活動記録書(ボロボロかつ赤いシミがある)――

読みますか?

→yes
no

4月7日:快晴

我々、機動六課男性隊員地位向上委員会(非公式)の前に天使が現れた。
なのは隊長とフェイト隊長、その御息女である高町ヴィヴィオ嬢。
そして我らが機動六課に協力者として籍を置いているシャルロッテ様と共に現れた天使。

雪のように白い肌、足元近くまで流れる美しい銀の髪、瞳は紅と蒼のオッドアイ。
シャルロッテ様と同様に籍を置いている、身長と髪の長さを除けばルシリオン氏と同じである。
その愛くるしく幼い外見からしてフライハイト姉弟の末っ娘と判断。
何と可愛らしい事だろう。あの純粋無垢そうな瞳に見つめられては、我々男は虜になること間違いない。

いつしか我々機動六課男性隊員地位向上委員会は、名も知らぬ彼の少女を敬い護る為の組織へと変わった。
その時間わずか1時間30分。天使(仮名)ちゃんの目撃情報が出回る頃にはすでに親衛隊(非公式)となっていた。
『機動六課男性隊員地位向上委員会』改め『天使(仮名)ちゃん親衛隊』の誕生である。

まずは天使(仮名)ちゃんを真の名を知ることから始めることにした。
なのは隊長たちはファーストネームを呼んでいるようだが聞き取れないからだ。

そして、この重大任務は当初容易なものであると思われた。
何せあの小さな愛くるしい体で、隊の仕事を手伝うというのだからだ。
なんと健気なロリッ娘だろうか。お兄さんたちは涙で視界がボヤけてしまっているよ。

さて、あらゆる部署の同志に手を回し、天使(仮名)ちゃんが働いているところの隠し撮りを実行。
しかしその任務はまさに命がけといえよう。
何故なら天使(仮名)ちゃんには、あの外見が幼女な副隊長ヴィータ三尉がついているのだから。
もしこの任務がヴィータ副隊長にバレれば、文字通り・・・・いや、忘れよう。
親衛隊内からは、むしろスリルがあって楽しいかも、という意見も出てきてもいるし、ヴィータ副隊長からお仕置き・・・グヘヘ、という同志もいることだしな。

まずはトテトテと歩きながら、お茶の入ったコップをいくつかトレイに載せてオフィスを歩く。
ただその行為だけで、我々男性隊員はもちろん女性隊員も落ちた。
女性隊員にお菓子を貰って喜ぶ姿がもう堪らない。

この隊にはヴィータ副隊長、リインフォースⅡ曹長、キャロ三等陸士、ヴィヴィオ嬢の四人の幼女がいるが、そんな彼女たちにはないモノを、あの天使(仮名)ちゃんは持っている。
それは御奉仕精神。それだけでお兄さんはもう・・・・いっぱいいっぱいだよ。

それにしてもヴィータ副隊長、先程から天使(仮名)ちゃんをセインテストとしか呼ばない。
まったく、使えない幼じ――ゲフンゲフン、いやいや、そんなヴィータ副隊長も素晴らしいものを持っているので許そうと思う。

オフィスでのお茶くみを手伝った後、天使(仮名)ちゃんはこの隊のフォワードの午後訓練へと向かった。
問題発生だ。親衛隊の手を回せない。
天使(仮名)ちゃんが汗をかいているフォワード陣にタオルと水を渡すというシーンが見れない。
何ということだろう。くそっ、私もフォワードとして訓練に参加出来ればよかったのに。

親衛隊員からの報告があった。
なんと前述のフォワードの一人、ライトニング3であるエリオ三等陸士と天使(仮名)ちゃんが男性浴場へと向かったというではないか。
どういうことだ? 何故天使(仮名)ちゃんは男性浴場へと、エリオ三等陸士と共に・・・?

こうしてはいられない。事の真偽を確かめるために、私も浴場へと赴き、天使(仮名)ちゃんと一緒に・・・。
エへへ、いいではないか、いいではないか。
ちなみに私はロリ〇ンではない。断じてない。絶対にない。神に誓おう。
私はロ〇コンではない!!!!!!!

一応仕事中ということで上司(男)に注意されたが、そんな事知ったものか。
適当に嘘をつき、男性浴場へと向かう。
もうすぐでたどり着くというところで、件の男性浴場から悲鳴らしきものが。
まさか、エリオ三等陸士、天使(仮名)ちゃんの愛くるしさに我慢できずに襲ったのか!?
許せん、断じて許せん、絶対に許せぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!

私が着いたときには、すでになのは隊長たちがその場にいた。
今発見されるのは非常にまずいので、陰に身を潜めることにした。
エリオ三等陸士がかなり慌てながらフェイト副隊長に説明しているようだ。
上手くは聞き取れないが「ルシルさん」、「女の子」、「子供化」、「記憶」などが聞こえる。
エリオ三等陸士の説明を聞き終えたなのは隊長たちは青褪め、天使(仮名)ちゃんを連れて寮へと走っていった。
あの慌てよう、かなり気にはなるがこの場に残り続けるのは危険と判断し、オフィスへと戻った。

親衛隊員から信じたくない情報が届いた。
あの天使(仮名)ちゃんの正体についてである。
彼女の名前はルシリオン。そう、ここ数時間姿を見ないルシリオン氏と同じ名前である。
そしてもう一つ。そのルシリオン氏こそが、我々が親衛隊として護ろうとした天使(仮名)ちゃんだったのである。
ショックである。泣きたいのである。下手すれば自殺ものである。
というかもう死んじゃおうかなぁ。

だが、天は、神は、我々を裏切らなかった。
今のルシリオン氏には記憶がないということ。
そして性別が男性から女性に変わってしまっているということである。
元々はシャルロッテ様の料理が原因ということらしい。
数時間前に起きた隊員の一部が巨大化したという話。
アレの今度は逆で、幼児化&記憶障害&性別転換という笑えないモノだ。

私は仕事でフォワードの昇級祝いパーティに出れなかった。
最初は出たかったという気持ちがあったが、ルシリオン氏の事を聞くと行かなくて良かったと思う。

いや、そんなことはどうでもいい。
天使ちゃん・・・違う、今からはルシルちゃんと呼ばせていただこう。あぁいい響きだ。
ルシルちゃんが女の子であるのであれば、親衛隊として活動するのに問題はない。
親衛隊員も満場一致で、ルシルちゃんの為の活動を良しとした。
誇り高き同志よ諸君、そんな君たちに私は感動を覚えた。ありがとう。


4月8日:快晴

親衛隊発足二日目。
今日もルシルちゃんが元気にオフィスで仕事を頑張っている。
なんと微笑ましいことだろうか、なぁ諸君。
そして服装はフリルの多い白のエプロンドレス。おとぎ話に出るような愛らしさ。
服装を決めているのはどうやらシャルロッテ様らしい。
ナイスチョイスでございます、シャルロッテ様。一生ついていく所存でございます。

しかし新たな問題が発生した。
なんとルシルちゃんの姉君シャルロッテ様が、ルシルちゃんを元に戻すために何かしら行動しているというではないか。
さっきの尊敬の念を粉々に砕かれてしましました。実に残念ですシャルロッテ様。

いや、それ以前にどうする? 本来ならお手伝いするべきだ。
しかし、我々にはルシルちゃんのような刺激がまだ欲しいというのもある。
あの可愛い幼女を愛でるというこの職場での生きがいを失いたくはない。

昼休み、恒例の格納庫会議で採決。
ルシルちゃんを元に戻すことに賛成か否か。
分かれた。やはり偽物の幼女ではいつか破綻するという意見や、六課の解散日4月28日まで何とか今のままでいてもらおうという意見。

結局この日は意見が分かれたままだった。

格納庫会議を終え、食堂へと同志と共に赴いた。
そこでは、シャルロッテ様がルシルちゃんを元に戻すために動いていた。
何でも、ルシルちゃんが幼児化した原因であるサクランボの効果を消すための料理を作っているということだ。
どうすればいい? 今から邪魔をするか? しかしそんな事をすれば、この場にいる隊長たちを全員敵に回すことになるかもしれない。
さすがに命は惜しい。くそっ、ここまでか。さようならルシルちゃん。好きだったよ。
あ、俺はロリ〇ンじゃないですよ。本当です、誓います。ロリコ○じゃないっす。

ここからは食堂で繰り広げられた会話が記録されています。
聞きますか?

yes←
no

「よぉッし出来た! カースドチェリーの効果を打ち消す食材リセットベリーのタルト!」

「シャルちゃん、今度は大丈夫?」

「絶対大丈夫! 何せ英知の書庫(アルヴィト)の資料を読み漁ったんだから!
見て、この目の下のクマ。あんまり寝てない証拠だよ」

「まぁ何はともあれ解決か」

「ほう、少し寂しそうじゃないかヴィータ。もう少しお姉ちゃんと呼ばれたかったか?」

「そうじゃねぇよ!」

「ヴィータちゃんは素直じゃないですねー」

「うっせぇ」

「じゃあルシル。これ食べて」

「あ、はい。いただきます。・・・・・・・」

「「「「「「・・・・・・・・・・・・??」」」」」」

「ねぇシャル。ルシルが元に戻らないんだけど・・・」

「おかしいなぁ。これ食べれば元に戻るはずなんだけど」

「ルシルさん・・・?」

「ルシルパパ?」

ドサッ

「きゃぁぁぁぁ! 大丈夫ですかルシルさん!!」

「は、早く医務室へ!」

ここで音声記録は終わっています。

シャルロッテ様の目論見は潰えた。
やはり天は我々を見捨てるつもりはないようだ。

そのまま昼休みは終わりとなり、我々もオフィスへと戻った。
オフィスで書類を整理していると、我らがルシルちゃんが私のいる区画へと来た。
ルシルちゃんは何も手に持っていない。この場合、頼めばお茶を運んでくるということだ。
だから私は天使のような可愛いルシルちゃんにお茶をお願いした。
すると、

「は? お茶? わたくしに頼みたいのなら跪いて乞うがいいわ、この豚」

女王様ぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!
あの純粋無垢で可憐で穢れを知らないルシルちゃんが女王様に!?
何故だ!? 午前中は確かに昨日と同じ天使ちゃんだったのに・・・・。
ここで気づく。先程のシャルロッテ様の料理。あれこそが原因だ。

「どうしたの? 跪くの? 跪かないの?
ていうか話しかけないで、この豚。次話しかけたらお仕置きよ?」

そう言って去ろうとしたので、つい私は声をかけた。
すると、

「あら、失礼で下賤で野蛮なクセしてわたくしの行く手を邪魔するの?
いいわ、今すぐそこに跪きなさいな、この豚。ぶーぶーと鳴いてごらんなさいな、ほら」

今までにない威圧感に飲まれ、私は跪いた。
周囲の視線は何故か気にならない。何故なら今、私は、私とルシルちゃんだけの世界にいるのだから。

そしてルシルちゃんに足蹴にされる私の頭。
これはこれでいい。最高です!!

「せ、セインテスト君!? な、なななな何してるの!?」

「あ、シャマル先生! 何でもないですよー♪!」

あぁ、私の頭からルシルちゃんの足が離れていく。
結局、この日はもうルシルちゃんが隊舎を闊歩することはなかった。


4月9日:曇り

今日のルシルちゃんは男装のようだ。
水色の帽子にシャツ、青色のハーフパンツ。なかなか似合っていますよ。

ん? 少し待ちたまえ。それ以前に今日のルシルちゃんはおかしい。
何故なら頭の横から動物の耳のようなものが生えている。
その耳のようなものを揺らしながら廊下の奥からトテトテ駆け寄ってくるルシルちゃん。
その姿が愛らしく、ただ私は挨拶をしようとした。
おはよう、と。ただそれだけを言った。
そしてルシルちゃんは、

「ワッフー! ワッフー! ルプルドゥー!」

ものすごい勢いで走り去っていった。
それからエリオ三等陸士とキャロ三等陸士とリインフォースⅡ曹長がルシルちゃんに続いて走り去っていった。
次は小さく丸い赤い生物が「ムゥムゥ」鳴きながら、大群でルシルちゃんたちを追って行った。

そして今度はスバル二等陸士とティアナ二等陸士だ。
彼女たちは、私に気づくと、ルシルちゃんがどこへ行ったかと訊ねてきた。
私は正直にルシルちゃんの向かった先を指差し、彼女たちを見送った。

何とも騒がしい朝だが、ルシルちゃんを見れただけで十分だ。
それからオフィスへと向かおうとした時、今度はエリオ、キャロの両三等陸士、スバル、ティアナの両二等陸士、そして最後にリイン曹長が逆走してきた。
その表情は必死ともいえる険しいものだった。

そして地響きとともに廊下の奥からやってきたのはルシルちゃん。
と、ルシルちゃんが乗る大きなサル?の群れ。

――オコリザル×20&猿回しルシルが現れた――

「ワフィ ユゥートゥ リラナ ワフィ ルプー ルラナ セアヴィドゥ♪」

ものすごい勢いで迫る歌うルシルちゃんとサルの群れ。
私は群れに飲まれる寸前で回避、難を逃れた。
その日、ルシルちゃんは一日寮で休んだとさ(泣)


4月10日:雨

朝起きて、元気よく隊舎に出勤。雨だろうが雪だろうが嵐だろうが関係ない。
何故なら今日もルシルちゃんが見れるから。
だから苦手な早起きも容易だ。

おはよう!と元気にオフィスへ到着。
さぁ今日もルシルちゃんと会えるかなぁっと思っていた時、見てはいけないモノを見た。
信じたくはないもの。あってはいけないもの。

「よかったねぇ、ルシル君。元に戻れて♪」

「とは言ってもここ数日の記憶はないけどな」

ルシリオン氏がなのは隊長と一緒にいた。
大人の、男のルシリオン氏が目の前にいる。
それはつまり、

「ルシルちゃぁぁぁぁーーーーーーーーーん!!!!!」

「「っ!?」」

いない。あの子がいない。あの可憐な幼女がどこにもいない。
嘘だ。挨拶をしていない。別れも言っていない。私だけお兄ちゃんと呼ばれてない。

走る。ルシルちゃんを探して。さっき見たルシリオン氏は幻だ、偽物だ。
それからどれだけ走っただろう。もう分かっている。あの子はもういないんだ。
外に出て雨に打たれる。頭がスッキリする。

「さようならルシルちゃん」

泣いてなんかいない。そして私はロリコ〇じゃない。

『マーク・クオリス一等陸士。至急ヘリ格納庫まで来てください。
繰り返します。マーク・クオリス―――』

放送が流れる。リインフォースⅡ曹長が私を呼んでいる。
何だろうか? 制服や体が濡れてしまっているが、至急ということは急ぎの用事だ。

仕方がない。急いで格納庫に・・・・あれ? ない。
ルシルちゃん親衛隊(非公式)活動記録書がどこにもない。
確かに朝はちゃんと手に持って出勤・・・・あ。

落とした。あのとき・・・落としてしまった。
ルシリオン氏を認めたくなくて走り出した時、そういえば手荷物すべてポイっと。

まさかアレが拾われて、だから呼ばれた・・・?
血の気が引く。何せ記録書にはルシルちゃんだけでなくそれまでの活動記録(映像&音声)のディスクが・・・。

重い足取りで格納庫へ向かい、そこで私は地獄を見た。
機動六課男性隊員地位向上委員会、機動六課解散予定日より早くに崩壊。


†††Sideシャルロッテ†††


「なんや、ホンマ災難やったなぁ、ルシル君」

「・・・・・私はもう生きていけない(泣)」

「げ、元気出してルシル。その、すごく可愛かったし可愛かったし可愛かったし」

「ちょ、フェイトちゃん!? ルシル君が、ルシル君の顔が!」

「セインテスト君。女王様になってる映像観てみる?」

『黙りなさい、この豚ども』

「っ!」

「おい、ヤベェぞ! セインテストが本格的にへこみ始めた!!」

「哀れを通り越していっそ清々しいな」

「・・・・(号泣)」

「うわぁっ!? ルシルさんがシグナムの一言でマジ泣きです!!」

「えっと、ルシルさん! 僕たちすぐに忘れますから!」

「そ、そうです! ルシルさんが女の子になった事なんて忘れます!」

「いかなる努力でさえも出来ない事はある」

「・・・・(血涙)」

「こらザフィーラ!!」

「これなんかはどうや?」

『お姉ちゃん♪』

「「「「「「「ぐはぁっ!」」」」」」」

「わっ!? ルシルさんの口から何か出てきてはいけないモノが出てきてます!」

マーク・クオリス一等陸士及び機動六課男性隊員地位向上委員会から徴収したデータディスクの大鑑賞会。
いやぁ、なかなかに良い仕事をしているなぁ。
コピーしてもらおうかなぁ♪

「元はと言えば・・・・」

「ん?」

「お前の所為だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

「うわあっ!!」

ルシルが本気で襲いかかってきた。
まずい。これはこっちも本気でかからないと狩られる!

「あかん! みんなルシル君を押さえて!!」

「「「「「ムリ!!!」」」」」

「そうやな、無理やな。ちゅうことで失礼!」

「え? うそ・・・!」

「シャルロッテェェェェェェーーーーーーッッ!!!!!」

「わ、私がルシルを止めるの手伝うよ!」

「あ、ありがとうフェイト~!!」

「ゴスロリにしてやるーーーーーーー!!!!」

「フェイト以外が総逃げってありなぁぁぁーーーーい!!」

「はぁはぁはぁはぁ・・・・。フェイト、今すぐシャルを切ったら何でも言う事を聞こう」

「はぁ? フェイトは私のなか――「シャル、覚悟してね」――裏切り者ぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

この後ボロボロにされた私は、その日をゴスロリで過ごしました。
クスン(泣)
































♫~♩~♬~♫~♬~♩~

オルゴールの音色が周囲に満ちる。

♫~♩~♬~♫~♬~♩~

「クスクス。あー楽しかったぁ♪」

その音色は、かつて機動六課を混乱に陥れた時のものと同じ。

♫~♩~♬~♫~♬~♩~

「クスクス。もう十分夢は見れたよね・・・?」

精神転換という大混乱の元凶たるオルゴール。

♫~♩~♬~♫~♬~♩~

「クスクス。もう十分良い思い出をつくれたよね・・・?」

♫~♩~♬~♫~♬~♩~

そのオルゴールを手に、笑みを浮かべる少女が一人。
外見としては10代後半。大体16、7歳くらいだろう。
髪はローズピンクのロングストレート。瞳はエメラルドグリーン。
服装は黒のタートルネックトップにケルト十字が背に描かれている。
そして黒のプリーツスカート、白のサイハイソックス、黒のブーツだ。

♫~♩~♬~♫~♬~♩~

「ねぇ、ルシリオン。早くあなたに会いたい。会いたい。早く会いたいなぁ。
クスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクス・・・・・」

♫~♩~♬~♫~♬~♩~

・・・・・・シャルシルが巻き起こしたバカの数々どうでしたでしょうか?
私なりに結構頑張ったとは思うんですけど・・・。
さて、次回から本編とも言えるストーリーへと行きます。
とはいっても、現予定では六話だけですが・・・。


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