天秤の狭間で揺れし者
†††Sideシャルロッテ†††
ロストロギア“ジュエルシード”を狙って現れた新たな黒の魔導師。
機動力に特化したその少女は、なのはと同じくらいの幼さをだというのに、なかなかの戦闘能力を保有していた。
私はなのはに実戦を感じてもらうために半ば無理やり手伝わせた。
結果は私たちの勝利。まぁ当然だ。
いくら能力が制限されていても、この身はかつて騎士だったのだ、敗北は決して許されない。
それに戦闘の素人とはいえ、なのはとの二人掛りでの戦いだ。
これで負けたら私はもう生きていけない(だから死んでるって)。
ユーノに捕縛魔法チェーンバインドを使わせて、黒衣の少女を捕える。
私は少女に話を聞く為に近づこうとした。思えばそれは油断の何者でもない。
相手が一人で現れたからといって、敵が一人とは限らない。らしくないミスだ。
少女と私の間に何かがズドン!と突き刺さり、その衝撃で吹き飛ばされる。
「シャルちゃん!?」
「シャル!?」
なのはとユーノがそんな私を見て叫ぶ。大丈夫よ、二人とも。
私は優雅に、かつ華麗に着地する。内心ドキドキものだったが、顔には出さない。
吹き飛ばされる刹那、この目に見えたのは・・・・クリスタルのような穂を持つ槍。
それは私が知っているものだった。
なにせ生前、この槍の担い手と二度戦い、一度は引き分け、二度目は負けたから。
信じたくはなかった。けど、それは見間違いではないはずだ。
だってあれは“彼”の・・・“彼”だけの神器・・・そう、“神槍グングニル”なのだ。
今の私の顔は驚くほど青いのだろう、そんな気がしてならない。
「大丈夫かい、フェイト?」
土煙の向こうから女の声が聞こえる。フェイト、それがあの少女の名前なのだろう。
土煙が晴れていく。現れたのはオレンジの毛色を持つ大きな狼。
そして、黒の外套と神父服に身を包み、漆黒の仮面で顔を覆い隠している子供。
私と同じように小さな子供になってしまっているけれど、“彼”の気配だけは永い時間共に存在しているので嫌というほど分かる。
其は漆黒を担いたる最強の第四の力、“天秤の狭間で揺れし者”。
御名を4th・テスタメント・ルシリオン・セインテスト・フォン・シュゼルヴァロード。
まさかこんな形で契約中のルシルと会うことになるなんて・・・
(最悪としか言いようがないわ)
敵対しての邂逅は今回が初めてじゃないけど、今回の契約のように“力”が制限されている中での出遭いはまさしく最悪としか言いようがない。
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
シャルちゃんは動こうとしない。明らかに様子が変だ。
「・・・シャル・・・ちゃん・・・?」
傍に行きたい、けどここから先へ向かおうとすると、どうしても足が動かない。
(お願い動いて、動いてよ・・・!)
相手が三人になったら、いくらシャルちゃんでもきっと勝てないはず。
自分の動かない体と格闘していると、仮面の子が黒い女の子へと声をかけた。
「頑張ったけど少し惜しかったね。
戦場で焦って冷静な判断が出来なくなると意図も容易く崩れ去る、忘れないように」
声はそう大きくないのに恐ろしく響く女の子の声。
私は、何故かその声に畏敬の念を感じてしまうのでした。
†††Sideなのは⇒黒の少女†††
「大丈夫かい、フェイト?」
アルフが私を背に乗せながら聞いてくる。正直危なかった。
白い子に関しては敵じゃないけど、水色の子は桁違いに強い。
私の攻撃が全てあの剣によって切り捨てられてしまった。
しかも、私を自然と白い子が放つ魔力弾の射程圏へと誘導するあの動き、おそらく私じゃ勝つことは不可能だろう。
バインドに縛られたところを、すごく良いタイミングで助けてくれたアルフと、新しく仲間になったルシルに助けられた。
ルシルはわざわざ変声の魔術を使ってまで、私に労いとダメ出しの言葉をかける。
声と名前を変えることにしたのは、ルシルが前から決めていたことけど。
あんまり自分という存在が明るみに出るのはよくないって話だった。
(でも今はダメ出しの方はあまり聞きたくないかも)
少し落ち込みながらそんなことを思う。
私の使い魔であるアルフにバインド引き千切ってもらい、ようやく解放される。
『ごめん、アルフ、ルシル。一人で大丈夫って言ったのに・・・』
『気にすることはないよフェイト。私は使い魔なんだから、そうだろルシル?』
『ん? 当然だな。俺はフェイトとアルフを手伝うと決めているから、助け合うのは当たり前だよ、フェイト』
『うん、ありがとう』
二人の思いに心がすごく温かくなる。
さて、アルフとルシルが来たからもう負けないよ。
「今度こそジュエルシード、いただいていきます」
何故かは知らないけど呆けてしまっている水色の子に再戦を申し込む。
†††Side黒の少女⇒シャルロッテ†††
まずい! ルシルが敵に回ったとなると悠長に構えてはいられない。
「なのは! ユーノ! 悪いけど金髪と狼のほうは任せる!
おそらく私は仮面の奴で手一杯になるはずだから!!」
二人の返事を聞く前に、私はなのはと同じように変身する。
私服から全体的に白となったフレアードレス。
インナースーツも白で統一されており、前立てのラインは蒼。
上まで閉められたファスナーの飾りには桜の花弁が施されている。
アウターは前立てのない白いショートジャケット。白銀の籠手と具足。
現代で言うバリアジャケットである戦闘甲冑を具現化させた。
生前参加していた大戦における、魔術師としての戦闘用の衣服だ。
「シャルちゃん、ソレ・・・バリアジャケット・・・!?」
「魔術師にもそういうのがあったんだ」
なのはとユーノがその姿にとても驚いているようだが気にしていられない。
そして間違っても“界律の守護神”の外套と神父服は具現化させない。
今そんなことをしたら、とんでもないことになるに違いないから。
ルシルは変声魔術を使っていることから自分の正体をこちらに明かすことを嫌っているようだし、私も彼の仲間と思われてなのはたちに嫌われるのはどうしても避けたい。
全くもって面倒事ばかりが現れる。
(それにしても・・・どう戦おうかしらね?)
彼は大戦当時、あらゆる神器を複製し操ったことから“神器王”と謳われ、そのうえ、彼個人の有する火力があまりにも絶大ゆえ“孤人戦争”とも恐れられた。
そして今は“界律に守護神”十一柱の内、最強とされる黒き第四の力の座にいる。
だけど私と同様、たぶんルシルも世界から何らかの制限を受けているはずだ。
その証拠に私の目の前に突き刺さる“グングニル”からは微弱な魔力しか感じられない。
形を似せているだけの“神器”ですらない魔道具と言ったところだろう。
まぁルシルは反則の塊であるから尚更幾重にも能力が封印されていると思いたい。
思考を巡らせる中、ルシルが私たちに向かって声をかけてくる。
「残念だけど君たちは私一人で相手をするね。
フェイトとアルフはジュエルシードの封印を優先すること、いいね?」
きちんと女の子喋りだ。演技も徹底しているわね。
ルシルも私と同じ考えのようだ。魔導師は魔導師、魔術師は魔術師で。
「(やはりそうくるわけね。ならこちらも・・・)なのはとユーノも封印に向かって!!」
「でも・・「いいから早く!」・・気をつけてねシャルちゃん! 行こ、ユーノ君!」
「う、うん!」
なのはが何か言おうとしたけど、ピシャリと制する。
するとなのはは、納得は出来ていないけど、という風でも頷いて、黒の娘とオレンジ狼のもとへと向かう。
二人が行くのを見届けようとしたところで、
≪我が手に携えしは確かなる幻想≫
そんな言葉が脳に浸透する。
ルシルが今まで召喚されて、その世界で気に入り複製してきた武装、もしくは術式を使用する際に発する呪文だ。
なのはたちは足元に大きな光の紋様が現れたことに気付く。
けどいつの間に移動したのか不明だが、真後ろに立っているルシルには気付いていない。
それはダメだ。防御なしでのルシルの技は極悪な威力を持つ。
――緋炎の揺曳――
私は全力でなのはたちの盾となるべく疾走するが間に合わない。
紋様から細い光柱が波打つように噴き出して来た。
ならば、と中心へと向かう光の波が少し邪魔だが、
「ごめん、なのは! ユーノ!」
――風牙烈風刃――
「「え・・・っ?」」
なのはたちを紋様上から退かす為に風の壁をぶつける。
未だになのはたちを射程圏内から退かしていないというのに、ルシルは複製したものであろう能力の術式名を告げる。
「聖なる鎖に抗って見せよ・・・シャイニング・バインド!」
目が眩むほどの光の柱と、それに合わせて舞う羽が周辺を照らし出す。
なのはとユーノは、私の放った風の壁に吹き飛ばされたおかげで、痛そうにしているけどギリギリ紋様から吹き上げる閃光から回避出来ていた。
あの程度の打撲なら、あんなものを受けるよりははるかにマシだ。
「・・・・ま、間に合った~」
安堵の思いで腰が抜けそうになるが、ルシルは待ってはくれないだろう。
さすがの私も、ルシルの使用した高ランクと思われる複製術式に頭に来た。
本格的に戦闘するために“キルシュブリューテ”を構える。
「ありがとうシャルちゃん、助かったよ」
「あれが・・・魔術・・・?」
なのはは感謝の言葉を、ユーノは魔術の力に驚愕している。
けど、さっきのアレは私たちが扱う魔術とは別物だ。
ルシルはアレをどこの世界で複製してきたかは不明だけれど、説明している暇がない。
「そんな手で今のを回避するんだ」
「あんなものが直撃したら、なのはとユーノがどうなっていたか分かるでしょ!?」
あれほどの高濃度の魔力流をなのはのような素人に放つなんてどうかしている。
明らかに今の一撃でなのはを再起不能にするつもりだったのだ。
するとルシルから、
『心配する必要はないぞシャル。この世界の魔法独自の非殺傷設定という術式をすでに取り込んでいる。
それゆえに、身体的な傷は負わないようになっている』
『テスタメント間用のリンク!? どういうつもりルシル!?』
“界律の守護神”間での思念通信が来た。
そんな突然のルシルの行動に驚きを隠せない。
「どういうことシャルちゃん? 私がどうなっていたって?」
「確か魔術って僕たちが使う魔法のように非殺傷設定がないって話じゃ・・・?
え? つまり今の魔術を受けていたら、僕となのはは・・・!」
「ごめん、今は話し込んでいる暇がないの。あいつも私と同じ魔術師。
しかも私よりたぶん強い。ユーノ、今回のジュエルシードは諦めて」
「・・・わかった。今は無事にこの場を乗り切ることが大事ということだね」
さすが考古学を生業とする部族生まれのユーノだ、理解力と決断力がある。
なのはは今ひとつ理解していないようだけれど、“ジュエルシード”を諦めるということだけは分かっているみたいだ。
「さて、もう少し付き合ってもらいましょうか? 白いのと水色のとフェレット君」
「わ、私はなのは! 高町なのは! そしてユーノ君! フェレットじゃないよ!? そしてこの子は・・・!」
「シャルロッテ・フライハイト」
なのは、あなたって・・・全く、こんなときにすごい子だ。
私はルシルとは六千年以上の付き合いだから今更名乗るなんておかしいけどね。
「あなたは!? あなたの名前は!?」
「・・・・・ゼフィ」
ゼフィ? もしかしてルシルの姉“ゼフィランサス”から取っているのだろうか?
名前と声も変えるとは、徹底した偽造っぷりだ。ルシル、という愛称だけでも十分女の子っぽい響きなのにね。
「ゼフィ、ちゃん」
「私の扱う魔術には、そちらの魔法と同じ非殺傷設定が組み込んであるんだ。
だから、安心して・・・・受けなさい!!」
ルシルはそう言い、後ろに立つ樹へと飛び上がって張り付き、
「行くよ・・・! 堕獄・・・必定・・・!」
――夜魔判決――
小さな言葉と共に私へと突撃してきた。
私はカウンターを撃つために紙一重で回避する。だがそれがダメだった。
ルシルが地面へ着弾した瞬間、大爆発を起こし、私はその爆風によって吹き飛ばされる。
だが、それで私は終わるつもりはない。
「甘いっ!!」
――風牙真空刃――
使用したのは風嵐系の攻性術式。
先程なのはとユーノを助けるために放った風の壁を撃つ烈風刃とは違い、鋭利な真空の刃を放つ魔術だ。
『なのは! さっきと同じように誘導するから砲撃をぶっ放して!!』
私は念話で、なのはにディバイン・バスターによる攻撃の準備させる。
さぁ、ルシル。私の友人の一撃を受けてみなさい!!
「どこまで耐えられるか見せてもらいましょうか、ゼフィ!」
――双牙炎雷刃――
ルシルが口にした偽名であるゼフィと名指し。
次は炎熱系と雷撃系を使用した刃を同時に四閃放つ。
ルシルは回避行動を取った後、
≪我が手に携えしは確かなる幻想≫
再度、大技を使うつもりなのだろう。また複製術式・武装使用のための呪文を口にした。
そしてルシルの手に魔力が集まり、ソレは形を現す。
『なのは、準備はいい!?』
『うん! いつでもいけるよシャルちゃん!!』
よし、準備は終わった。
(ルシル、今のあなたは昔と違って力押しが目立つようになったのに気付いてる?)
全く、強すぎる力を持つと自己の鍛錬を怠るのは誰も一緒ということだ。
現に私も“界律の守護神”となり、召喚された世界では力押しだけで契約を執行してきた。
そしてルシルは左手に携える七色の光を放つ槍を投擲する準備に入った。
『ユーノ! これから私は魔術の盾を出すから、あなたも私の盾に重ねてシールドを張ってちょうだい!』
『わ、分かった! やってみるよ!!』
『なのは! ゼフィの攻撃を私とユーノが防ぐから、攻撃が途切れたらあいつに大きいの一発当てちゃって!!』
『うん、わかった!!』
ルシルが術名を宣告する
「邪竜一殺・・・・竜殺の聖槍!!」
彼の者より放たれるは竜を一撃のもとに滅する神聖なる槍。
竜と言う種を例外なく葬り去る、対竜種における最強の一撃だ。
(やっぱり制限されているわね。威力が全然ない)
生前に見たこの魔術の威力はこんなものじゃなかった。
このランクくらいの一撃ならおそらく受けきることが可能だ。
『ユーノ!』
『シャル!』
覚悟しなさいよ、ルシル!!
「我が心は拒絶する!!」
「ラウンドシールド!」
私は魔力をすべて、今発動できる制限されていない防性術式の盾に送り続ける。
そしてユーノが私の盾に重ねるようにシールドを張る。
七色の槍の一撃が盾に衝突して停止する。
「ぅく・・・! でもやっぱり強い・・・! でも・・・!」
よしっ! 順調に耐えている。これなら防ぎきれる!
想定していたより少し威力のあったゲオルギウスの槍。
だけど私とユーノのデュアル障壁の前に、徐々に威力が衰えていくルシルの一撃。
「なのは!!」
「いくよ、レイジングハート!
ディバイィィーーン・・・バスタァァーーーーーッ!!!」
砲撃特化のシューティングモードへと変形した“レイジングハート”から放たれる桜色の砲撃。
それが技後硬直で動くことのできないルシルへと一直線に突き進んでいく。
「ハハ、すごいな・・・」
ルシルはただ一言、そう口にする。
そしてなのはの放った桃色の閃光ディバイン・バスターの直撃を受けた。
「「「どうだ!!」」」
私たちはルシルに一撃を入れることに成功した。
もうもうと立ち上る土煙へ向かって吼える。
(けど、倒せてはいないのよね、きっと)
そう、あのルシルが何もしないまま、終わるわけがなかった。
†††Sideシャルロッテ⇒黒の少女†††
私とアルフが“ジュエルシード”を封印し終えて戻ってきたときに見たのは、ルシルが白い子の放った砲撃の直撃を受ける姿だった。
「ルシルのやつ、ちょっとヤバくないかい?
あんな砲撃の直撃を受けたら、さすがにマズイよ」
白い子の砲撃を受けたルシルを見て、アルフが心配している。
けど、私は初めてルシルと出会ってから起きたことを思い出し確信する。
「ううん、ルシルは大丈夫だよ。だってあんなに強かったんだから。
さ、アルフ。ルシルを迎えに行こう」
「あいよ」
そして土煙が晴れていく。
そこには少し疲れたような感じで立っているルシルが現れる。
ほら、やっぱり無事だった。私とアルフは顔を見合わせて頷きあい、ルシルのもとへと歩いていく。
†††Side黒の少女⇒なのは†††
「その歳でこの威力はかなりすごいよ」
「・・・そ、そんな・・・馬鹿な・・・」
今の私が撃てる最高の一撃だったのに、ゼフィちゃんは無傷だった。
ユーノ君がとてつもなく驚いている。私もだけど声が出ない。
「・・・シャルちゃん」
「・・・今回は私たちの負けね。なのは、ユーノ・・・ごめん」
「そんな!? シャルちゃんの所為じゃないよ!!」
シャルちゃんが謝るのは絶対に間違ってる!
こればっかりは、きっとどうしようもなかったんだ。
「ゼフィ、ジュエルシードの封印が終わった。早く帰ろう。」
いつの間にか傍に来ていた黒い女の子と狼さんがゼフィちゃんに向かって、“ジュエルシード”の封印完了の報告をした。
「ん、分かった。それではこれで失礼するよ」
「待ちなさい!・・・今度は負けないからね、ゼフィ。
『ルシル、話がある。明朝、海鳴公園という場所で待ってる。必ず来て』」
シャルちゃんはゼフィちゃんにそう強く誓った。
そしてゼフィちゃんもそれに答えた。
「上等です。『了解した。では明朝、また会おう』」
黒い女の子とオレンジ色の狼さん、唯一名前を教えてもらったゼフィちゃんが去っていく。
私はただ、あの子達を見ていることしか出来なかった。
「・・・ユーノ君、シャルちゃん」
「どうしたのなのは?」
「ん?」
「・・・私、強くなりたい。今度は、今度こそは負けないように。だから、手伝ってくれるかな?」
「「当たり前だよ」」
私は決意を新たに、未だに待たせているすずかちゃんとアリサちゃんのもとへと戻っていった。
†††Sideなのは⇒黒の少女†††
「改めてありがとうルシル。ルシルのおかげで、邪魔されずに二つ目のジュエルシードを封印できた」
今、私たちはこの世界でのアジトである高層マンションの一室で休んでいる。
「いいよ、気にしなくても。さっきも言ったとおり、わた・・・俺は好きで手伝っているんだ。
だからわざわざお礼なんて言わなくてもいいんだよ」
ルシルは未だに慣れない一人称“俺”に苦戦しながらもそう言ってくれた。
ルシルは最初、“私”という一人称だったんだけど、ルシルの女の子のような外見から、私、と言うといろいろと認識が甘くなってしまう。
男の子なのに、女の子って思えてしまって、何かまずい問題が起きたり、とか。
だから男の子であるということを常に認識し続けられるように一人称を変えてもらった。
「そうだよフェイト。こいつは好きでやってんだからさ。とことん使ってやればいいよ」
「君は少し遠慮って言葉を学びなさい」
それから二人はお互いに文句を言いながら、ルシルが用意してくれた夕御飯を食べている。
うん、今日もルシルの御飯は格別だ。
気が付くとアルフとルシルが私を見て微笑んでいた。
なんか恥ずかしい。
「うんうん。フェイトの笑顔は最高だね~!」
なんてアルフが言ってきたので顔が熱くなる。そんなに見ないで二人とも~。
†◦―◦―◦―◦―◦↓ミニコーナー↓◦―◦―◦―◦―◦†
シャル
「あら? いらっしゃい。ここから先は、その回に使われた魔術を紹介するコーナーよ。
コーナー名はそうね・・・シャル先生の魔術講座、にしようかしら」
なのは
「あれ? どうしたのシャルちゃん? そんなスーツなんか着て」
ユーノ
「しかもメガネをかけてるし。シャルって目が悪かったっけ?」
シャル
「形から入ってるの。それと、なのは。どうしたの?って、私が今し方説明したよね?
このシャル先生の魔術講座は、魔術を紹介するコーナーだって」
なのは
「にゃはは。うん、聞いてた。でもユーノ君は嬉しいんじゃない?
魔術にすごく興味ありそうだし。私は難しくてあまり憶えられないけど」
ユーノ
「うん。でもなのはに魔術は扱えないものらしいから、僕みたいに興味が無ければ憶える必要もないんじゃないかな?」
シャル
「そうね。無理に憶える必要はないと思うわ。
さて、それでは早速始めようかしら。今回、使われた魔術は3つ。
――風牙真空刃――
――風牙烈風刃――
――我が心は拒絶する--
真空の刃を放って対象を切り裂く、風牙真空刃レーレ。
風圧の壁を対象に叩きつけて、吹き飛ばすことで強制移動させたり押し潰したりする、風牙烈風刃ヴィント・シュトゥース。
対魔力用の円形の盾を創り出す、我が心は拒絶するゼーリッシュ・ヴィーダー・シュタント。
上二つは、魔術的にすると攻性術式と言われ、下は防性術式と言われているわね」
なのは
「レーレ、とか、ヴィント・シュトゥース、ゼーリッシュなんとかって英語じゃないよね?
えっと、もしかしてシャルちゃんの国ドイツ語だったりする?」
シャル
「まあ、そんな感じね。レーレは独語で真空という意味よ。
で、ヴィント・シュトゥースは、突風という意味。受けてみて解っているでしょ?
そしてゼーリッシュ・ヴィーダー・シュタントだけど、ゼーリッシュは心の、精神の、魂の、という意味よ。
ヴィーター・シュタントは抵抗、反抗の意味で、実は拒絶じゃないの。
ちなみに拒絶はヴァイゲルングと言うのよ?」
ユーノ
「うん、確かにすごい風圧で、訳も解らないまま押し出されるように吹き飛ばされたね。
けどそのおかげで、ゼフィってこの魔術を受けることが無くて良かったんだけど」
なのは
「ゼフィちゃんの魔術もすごかったね。光がキラキラだし。
でもすごく危ないんだよね? シャルちゃん、魔術を使ったゼフィちゃんにすごく怒ってたし」
シャル
「えっと、あの子の事に関してはまた追々ね。
でも、そうね。あの時、ゼフィ(ルシル)の攻撃に非殺傷設定があるなんて知らなかったし。
大切な友達であるなのはとユーノが、私と同じ魔術師であるゼフィ(ルシル)に傷つけられると思ったらやっぱりね」
なのは
「シャルちゃん・・・ありがと」
シャル
「コホン(テレ隠し)。それじゃ、第一回のシャル先生の魔術講座はこれで終了よ。
良かったらまた来なさい。今度は美味しいお茶(淹れられないけど)を用意して待っているわ」
なのは&ユーノ
「ばいばーい♪」
重要キャラクター紹介
“4th・テスタメント・ルシリオン・セインテスト・フォン・シュゼルヴァロード”
両親譲りの、男と言っても信じてもらえないような外見をしている。
髪型はインテークのロングストレートで銀髪。うなじ辺りで縛っている。
右目はラピスラズリ、左目がルビーレッドのオッドアイ。
“天秤の狭間で揺れし者”の二つ名を持っていて、界律の守護神の中でも最強とされる“力”。
主な契約は、世界・文明の破壊、人類淘汰、文明の開拓など様々なことを任されている。
本来の守護神と違って、死んでいない内に守護神となったことでトラブルが多い。
全く関係のない世界に事故で召喚されたり、人間の意志によって召喚されてしまうことが多々ある。
使用武装
神器・神造兵装第一位“神槍グングニル”
“揺れ動くもの”っていう意味を持つ、投擲すれば必ず対象に当てることが出来る必中必殺の槍。
20cm程度の柄の上下に1m近いクリスタルのような穂が付いた大槍。
先天性の力、固有能力の“複製”を保有している。
それゆえに一度見た魔法・魔術・技・知識などを、自らの能力として扱うことができる。
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