ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
Last Episode:~A・RI・GA・TO~


†††Sideルシリオン†††


有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない・・・・。
何なんだアレは? 本当に勝てるのか? 不可能不可能不可能不可能・・・・。
界律の守護神(わたしたち)が立つのは、中世ヨーロッパのような面影のある街並。
しかし、あれ程美しかった街が燃え、城が燃え、人が燃え、そして・・・・。

「アレが・・・・最強の絶対殲滅対象(アポリュオン)・・・・!」

「うわぁ・・・。ボクたちの“干渉”が全然通じてないよ?」

「上等じゃねぇか。手を貸せ、天秤!!」

「エリザベッタお姉さま! ガブリエラお姉さま!」

傍に来た9th、7th、2nd。そしてこの世界で出逢い、親しくなった王女マリア。
マリアは今なお城に残る姉であり、私が守るべき存在エリザとリエラの名を叫ぶ。
情けない。守ると誓っておきながらこの様だ。
そんな私たちの見上げる先に、この街を、人を、そしてこの国を現在進行形で滅ぼしている人影がある。
ソレは白い薄手のノースリープの無地のワンピースを身にまとい、銀のようでいて純白である綺麗な長髪はくるぶしまで伸び、虚空を見つめている瞳の色は深い桃色、背には12枚の白翼を持つ、10歳くらいの幼い少女。

「何が・・・・何が天使(アンジェラス)だ・・・」

天使の名を持つ、究極にして最強と言われる”絶対殲滅対象(アポリュオン)・ナンバーⅦ天使アンジェラス”。
ふざけるな。天使と名乗っておきながら、やることは悪魔の所業ではないか。
私とて同じようなことを今までにも繰り返し行ってきている。
だが、だがこれは違う。殺害する必要のない生命まで、理由も無く殺すのだけは・・・あってはならないっ!

「ルシリオン様・・・・。お姉さまたちは・・・・!?」

「・・・・っ」

この世界の“界律”に召喚された“界律の守護神(テスタメント)”は五柱だった。
私、優斗、ティネウルヌス、ルフィスエル、アーク。だが、アークはすでにアンジェラスによって消された。

(ああ、これは夢だ。私の心が壊れ、絶対殲滅対象(アポリュオン)となってしまったときの・・・)

夢だと自覚する。そう、私が守護神となって、時間という概念に換算すれば約二千年目の契約。
このときにはすでに私は壊れ始めていた。そして、この契約が決定打となる。

私が今なお生きていると知った“彼女(リエラ)”からの「好きです」という告白。
守護神の正体を知り、それでも好きだと言ってくれた彼女に、私は癒されていた。
私は契約を終えても残ることは出来る。世界に私が“生きている”という概念がある限り。
だから、心のどこかでリエラと共に新たな人生を、などと思っていたときにこれだ。

そして今、私の外套にしがみ付いているのは、後に5th・テスタメントとなるマリア。
綺麗だった金糸のような髪は煤で汚れ、アメジストの瞳も泣き続けている所為で赤い。

『優斗、マリアを安全なところへと頼む。それと、城へ戻って生存者の確認を。ここは私たちで何とかする』

不可能だ。五柱束で“干渉”を撃ちこんでも無傷だったのだから。
とはいえ、最悪マリアだけでも生かす。それくらいはしなければ私は・・・・クズだ。

『・・・・了解です』

優斗にリンクでそう告げ、マリアを避難させた。
それを確認し、

「・・・第一級神罰執行権限・・・解凍・・・・!」

首のチョーカーに付いている白の南京錠に手をかけ、解錠する。
契約執行中にはまず必要のない魔力を解放。ランクは当然EX。
ありとあらゆる制限を外し、魔術師“神器王”となる私を見ながらそう思う。

「消えろ、アンジェラス・・・!」

守護神の“干渉”と、魔術師の“神秘”を合一しての一撃をお見舞いする。

(だが結果は散々だったな)

私は能力を完全解放した“グングニル”を手にし、“第四聖典”と合成する。
形状は“グングニル”のまま。しかし宿す“力”は言いようのないほどのものとなった。

上下に付いた1mはあるクリスタルの穂が、強く銀の閃光を発する。
右手をアンジェラスの居る上空へと翳し、前方に七つの魔法陣を顕現させる。
無と風嵐のアースガルド、氷雪のニブルヘイム、炎熱のムスペルヘイム、閃光のアールヴヘイム、闇黒のスヴァルトアールヴヘイム、雷撃のニダヴェリールの紋章だ。
それを立てて並べて展開しているため、それは連なる魔法陣による一種の砲塔だ。
そしてその魔法陣と術式に“干渉”を上乗せさせる。

「真技・・・・!」

“聖典グングニル”を構える。

神断(グロリアス)――」

その場で回転する。投擲する際、遠心力でさらに勢いをつけるために。
“聖典グングニル”を魔法陣の砲塔へと投げ放つ。
まずは手前のニダヴェリールの陣に穂先が中り、陣が収縮し“聖典グングニル”へと吸収される。
その現象が続く。そして最後にアースガルドの陣を吸収通過。

「――福音(エヴァンジェル)!!」

“聖典グングニル”が銀の閃光となって一気に加速。目指すはアンジェラス。
それに気づくアンジェラスだが、何もアクションを起こさない。

「・・・・・クス」

アンジェラスは、背の翼から一枚の羽根を手に取り、迫る“聖典グングニル”へと向けた。
そして衝突。それによって起こる衝撃波が一瞬で街を消滅させていく。
こちらは“干渉”によって現実と切り離されているために影響はない。
だからこそ見えた。“聖典グングニル”が粉々に砕け散るのを。

そのあとは一方的な殺戮だった。数分とせずに界律の守護神(わたしたち)は全滅した。
守るべき国は滅び、守護神となってから初めて愛したリエラは死んだ。
唯一の救いはエリザとマリア、少数とはいえ避難出来ていた民が生き残ってくれたことだ。

だがそれを知るのは、このとき召喚されていた私の分身体が“絶対殲滅対象(アポリュオン)”に堕ち、亡失アーミッティムスとなったしまったとき。
そして本体の私もまた心が壊れ、完全に塞ぎこんだときだ。
全てが嫌になった。殺し殺され、守り守れず、それが続くと思うと・・・・。

その後しばらく壊れていた。命を奪うことにも何も覚えず、ただ淡々と事を為す。
まあ、そこは神意の玉座の意志が気を遣ったのか、殺すための契約ではなく、守るための契約が増えた。
癒されていく心。随分と簡単な作りをしていると思った。

それからどれだけ経っただろう、マリアが5th・テスタメントとして玉座に現れた。
目を疑った。何故この子がここに居るのか、と。
訊けば、彼女は私と同様生きている間に守護神となったとのことだ。
目的は私のサポートだと。呆れた。守護神となる術を手にし、そして私のために・・・。
ゆえに彼女は“愚者と賢者は紙一重”なんて二つ名を持った。

それからは亡失アーミッティムスとなった私の分身体を捜し続け、なんとか斃す事に成功した。
だが、それで終わったわけじゃない。私はもう幸せを望まないようにした。
だから契約終了後に、その世界に残ろうという考えは捨てた。
それが当たり前だから。異物は残るべきではない。
私は、幸せなどを願っていい存在ではないのだから。


―――(ココロ)は砕けた信念で満ちている

信じた未来の果てに辿り着いたのは破滅へ続く道

永遠の中をただ独り  たった一度の幸福も許せず

死に逃げることさえも許せない

怨まれるのは当然の罪で、憎まれるのもまた当然の罰

故に理解されようとは思わない、それが唯一の償いなのだから

奪い去った幾多の命の十字架を背負い彷徨い続ける

彼の者はきっと壊れ果てた(ココロ)で生きていた―――


とある正義の味方の在り方を現した言葉に、私の在り方を重ねて生み出した呪文(スペル)


意識が覚醒していくのが分かる。どうやら睡眠から覚めるようだ。
嫌な記憶(ユメ)だ。何故こんな古いものを見たのか・・・。決まっている。
ベルゼブブの“力”だった“結界”。アレこそ天使アンジェラスの持つ“力”の一つだからだ。
目を開け、涙に濡れていた目を袖で擦り拭う。

「・・・・はぁ」

天井を見るに、ここはアースラ内であるのは間違いない。
どこの部屋かは知らないが、誰かがここまで運んでくれたんだろう。
上半身を起こし背伸びをする。それと同時にシーツが捲れ、そして見た。

「・・・う・・・ん・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・????????」

両目を擦る。ちょっと待て。状況が解らない。
どうしてフェイトがここに居る? 何で一緒のベッドで寝ている?
理解不能理解不能理解不能理解不能。え? 本当に理解出来ないんだが・・・・。

(何故だ? フェイトがここで寝るのを誰も止めなかったのか・・・・?)

普通は止めるはずだ。いくら付き合いが長いとはいえ、これはまずいだろう。
前にもヴィヴィオにお願いされたが、あのときは寝ずに離脱した。だからセーフ。
で、間違いが起こることは絶対にないと言い切れるが、これはアウトだ。

「・・・ん・・・すぅ・・・」

寝返りをうつフェイト。さぁ、どうしようか。
1、起こす。それはそれで気まずいことになりそうだ。
2、起きるまで放置。これがベストのようで、どこか違うような・・・。
3、誰かを呼んで、フェイト自身の部屋へと連れていく。自殺行為だ。

頭を押さえながら考える。
朝の寝起き直後からこんなことに頭をフル回転する羽目になろうとは・・・。
そのままフェイトが起きないように静かにベッドから離脱。選択したのは2だ。
時計を見る。9月20日の午前6時半前。ということは、あの事件終了の翌日だ。

(その割に体調は万全だな)

地上に降りてすぐに眠ってしまったから、身体の回復は終えているようだ。
そしてある程度部屋を見渡し、

(は?)

何故か存在しているもう一つのベッド。
確かにこの部屋は大きいから二人部屋というのも頷ける。
だが、ベッドが丸々もう一つあるというのはおかしな話だ。
普通は二段ベッドになるはずだからだ。

「ん?」

隣にあるそのベッドのシーツが膨れ上がっている。誰かが寝ている証拠。
ベッドとシーツの合間から二つの光。ゆっくりとしゃがみ込み、シーツを捲る。
そこに寝ていたのは、

「やっほー、ルシル。どう? お姫様(フェイト)の添い寝の感想は?」

デフォルメされた犬がプリントされているパジャマを着て、笑みを浮かべる馬鹿(シャル)だった。

「君がフェイトをここに連れて来たのか、ん?」

半目で睨む私を見て、シャルは手をヒラヒラと振った。否定でもするのかと思えば、

「うん♪」

肯定だった。じゃあ何だ、さっきの手の動きは?
そういうのは否定のときにするものだ。

「まさかフェイトを勝手に連れて来て寝かしたのか?」

もしそうなら、この後の私がどうなるかそう難しい話じゃない。
私へ向けられる視線が六課内――いや、さらに拡大した範囲で冷めるかもしれない。

「しーっ、あんまり大きな声出すと・・・」

シャルがシーツの中を指差す。他に誰かいるのかと思い、見てみる。
そこに寝ていたのは可愛らしい寝顔で、静かに寝息を起てているエリオとキャロ。

「あー、シャル。いくら二人が可愛いからと言って、寝込みを襲っ・・・ぅぐ・・・!」

シャルから放たれたのは懐かしきアイアンクロー。
必死に声を出さないように努める。頭蓋骨がミシミシと音を立てている気がする。
折角起きたばかりなのに、別の意味でまた眠りに落ちてしまいそうだ。

「そんなわけないでしょ」

シャルがそう言ってベッドから降りると同時に右手を私の顔から離す。
いかん。手が離れたというのに、まだ鷲掴みされているような感覚が残り、少し痛い。

「ルシルの看病をしてたフェイトが眠っちゃったから、そのままルシルのベッドで寝かせたの。
それとも何? フェイトを椅子に座らせたままで寝かせておけってわけ? だったらぶっ飛ばす」

「誰もそんな事を言ってない。というか看病? 何故私に看病が必要なんだ?」

フェイトが私のベッドで寝ていた理由は解った。
そして置いてある洗面器とタオルの理由もだ。
が、どうしてフェイトを寝かせるベッドを私のにして、シャルがたちが寝ていたベッドじゃないのか?
どうしてもう一つベッドがあるのか?などというツッコミどころ満載だが、シャルの事だ。
その方が面白いからと返ってくるに違いない。ならもう訊くまい。返すのも面倒だ。
まあ、それは兎も角、私に看病の必要性があったかどうかだが・・・。

(それは聞いておかないとな)

寝ている三人を起こさないために部屋を出る。
ここで話して、フェイト達を起こすわけにはいかないからな。
それからシャルが着替えるからということで10分かかった。待つのはもう慣れた。

「お・ま・た・せ♪」

白のシャツと水色のワンピースへと着替えて、軽く化粧をしたシャルが出てきた。
化粧道具が何故この部屋にあるのかという疑問は捨てる。
いや、捨てずに考えるべきだった。ああ、私としたことが・・・・(泣)
で、ここから近い第三レクリエーションルームを目指し、歩きながら小声で話す。

「私もよく知らないけど、ルシルが地上に降りた途端に気を失って倒れたって話。
それはもうすごい高熱だって。私が起きた時、フェイトが泣きついて来たくらいだし」

「そこまで酷かったのか、私は?」

気を失った、か。意識的には眠ってしまったという感覚だったが。
むぅ、何か無茶をしただろうか? 高熱というのはあまりない副作用だ。
だから考えてみる。高熱という副作用が出るようなマネをしたか。

(分からないな・・・)

結論はそれだ。考えてみても分からないものは分からない。
ならそういうものだ、と納得するしかない。

「フェイトが起きたらちゃんとお礼を言わないとダメだよ」

「それくらい分かっている。昨日の私は助けられてばかりだな」

「そこには私ももちろん入っているんでしょ?」

「「・・・・・・・」」

廊下に流れる静寂。腕をうしろで組み、スキップしているシャルから静かな威圧感。

「・・・髪切ったのか・・・?」

「・・・・」

本日二度目のアイアンクロー。どこを間違ってしまったのか解らない。
咄嗟にシャルの髪が短くなったのに気づいて口にしてこの有様だ。

「まあ、そこに気づいたことで許す」

「許すって問題じゃないよな、今の状況は・・・」

あまりの痛みで泣きそうだ。だから両手を挙げて降参のポーズ。
それを見て、満足そうな笑みを浮かべてシャルが離れていく。
その笑みの正体をもう少し早く気づいていれば・・・・。

「ねぇルシル、これからどうする?」

シャルが振り返って、後ろ向きで歩きながら訊いてきた。

「これから・・・か。まずはそうだな。・・・・住める家を探さないといけないだろう」

機動六課の試用期間は残り半年。それまでに本契約が終わるという確証もない。
それとペッカートゥムとの戦いが終わった時点で六課との協力関係も終止符だ。
このまま残って居座るのもまずいだろう。だから別の住居が必要になってくる。
地球に戻る、という選択肢もあるが、それはそれで面倒だ。
それに、ここミッドチルダがこの次元世界の主軸となっている。
ならここを起点として行動していくのが好ましいと思う。
だからミッドのどこかに簡単な住居でも見つけられればいいんだが。

「お、私とルシルの二人暮らし?」

「・・・・・はぁ、どうしようかなぁ・・・・?」

これからを考えた上での独り言である呟き。
だというのに、

「待てや、コラ」

本日三度目のアイアンクロー。しかも今回は幻の左。超痛い。
何故だ? 何故、今の私は頭蓋骨が握り潰されようとしている?

「こんな美少女との二人暮らしって聞いて、どうしようかなぁ?ってのはどういう了見だ。あ?」

「意味が解らなあ痛たたたたたた・・・!!」

美少女って歳でもなければ、今では義姉弟ということになっているはず。
言っていることがメチャクチャだ、この女・・・。
あ~今度こそ駄目だ。・・・・お~は~な畑ぇ~のぉ~~~・・・・♪

「フライハイト、セインテスト」

「はっ!」

意識がアッチ側へ旅立つ前に現実へと引き戻される。
背後から聞こえてきた声の主はシグナムだ。

「あ、シグナム。おはよう」

「ああ。・・・・・・その様子だと、もう大丈夫なようだなセインテスト」

シグナムに挨拶をするためにシャルのアイアンクローから逃れる。
そして私がシグナムへと振り返ると、シグナムが微妙に複雑な表情になった。

(ん? なんだ・・・?)

大して気にはせずに挨拶を返す。

「おはようシグナム。見ての通りもう大丈夫だ」

「そ、そうか・・・・」

何故か私から逸らし、一度シャルを見てからシグナムがそう返した。

「セインテスト、話がある。少し付き合ってくれ」

「あ、ああ。第三レクリエーションルームへ向かう途中だったから、そこでいいか?」

「ああ」

そう言ってシグナムが歩き出し、私たちもそれに続く。


†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††


ルシルはまだ気づいてない。そろそろ気づくだろうけど、もう少し様子を見ていよう。

「ああ」

シグナムから話があると聞いて、ルシルが頷いた。
それで私たちが行こうとしていた第三レクリエーションルームへと歩き出す。
さ~て、どうやってルシルに告げようかなぁ、レヴィヤタンのこと。
たぶんルシルは、ペッカートゥムはもう一体残らず斃したと思ってるはず。
そこにレヴィヤタンを連れてきたらどんな反応を見せるだろう?

(少し楽しみだけど、でもどっちかと言うと怖いなぁ)

顔を合わした瞬間バトルってのも有り得る。というかそうなる。
そこをどう止めて、どう説得するか・・・・。

「そう言えばお前たちはこれからどうするつもりだ?」

シグナムがそう訊いてきた。私はルシルと一度顔を見合わせて、

「えっと、今のところ決まってるのは家探しかな。
いつまでもここに残るのも悪いしね。だから早いうちに決めて出ていこうかと・・・」

「・・・・そうか。それにしても家探しか。・・・・フッ、苦労するぞ。
シャマルも我々の住む家探しに苦労していたしな。なんとかセレスの紹介で家は見つかったが」

シグナムが意地悪そうな笑みを浮かべて私たちを見る。
そういえばそうだった。あのときのシャマルは気の毒だった。
でもシグナムの言うとおり、セレスって私たち共通の友人のおかげで、良い物件が見つかったから良かったんだけどね。
そう言えばセレスは元気かなぁ。こっちに戻ってきてからというもの逢ってないや。

「なんや気になる話をしとるなぁ」

「「はやて」」「主はやて」

近くの扉が開いて、そこから出てきたのははやてだ。
その姿はシグナムと同じ制服姿。こんな朝からもう仕事を始めちゃってんのかなぁ・・・?

「さっきの出てくっていうんはホンマなんか?・・・・っ!」

両手を腰に当てたはやてがジト目で私を見て、そして次にルシルを見て絶句。
ルシルのそれを見て一瞬で理解したみたいだ。それが私の仕業だって。

「レクリエーションルームに行くんやろ?」

私たちが返す前に、はやてがそう言って前を歩きだした。
私たちは顔を見合してそれに続く。少し歩いて、第3レクリエーションルームに入り、近くのイスに座る。
人は居ない。ここに居るのは私たちの4人だけだ。
ルシルとシグナムは水を取りに行った。起きたばかりで喉が渇いているからね。

「で、さっきの続きやけど・・・」

水の入ったコップをそれぞれの前に置いて、ルシルとシグナムもイスに座る。
シグナムの話はあとになりそうだ。シグナムもそれでいいのか黙っている。

「ああ。・・・ペッカートゥムを斃した以上は協力関係も終わってしまった。
それなら局員でもなく隊員でもない私とシャルがここに残るわけにもいかないからな」

ルシルの話を聞いたはやてとシグナムが私を見てくる。
まだレヴィヤタンのことは話していないのか?という視線で。
首を縦に振って私は応えた。ルシルは水を飲んでいたせいで気づいていないみたい。

「でもそうすぐに住める家なんて見つからんよ? それまではどうするん?
海鳴市の家に戻るんか? フェイトちゃんの話やとミッドに残るって話やけど・・・?」

はやてからの立て続けに繰り出される疑問の嵐。
ルシルは若干引きながらも笑みを浮かべて答えようと口を開く。

(ルシルってフェイトにそんなことを言ってたんだ・・・)

ルシルの口が動くのを見ながらそんなことを考える。
でもそこには感情云々はないだろうな。
どうせミッドがこの次元世界の主軸だからなんだとかの理由だと思う。

「見つかるまではどこか安いホテルでも借りるよ。な、シャル?」

「・・・う、うん。そうだね」

突然話を振られたから少し詰まったけど、そう答える。
本当はもう少し居たいけど、やっぱり局員じゃないんなら留まるのはやめた方がいい。

「それはもう決定、っていうか確定なんか・・・?」

水を喉に流し込んでからはやてがそう訊いてくる。
なんだろう。はやての様子が少し・・・・変?

「確定ってわけじゃ・・・」

「ないよね・・・」

ルシルと顔を見合してそう答える。
さっき少し話してそうしようと決めただけで、絶対そうしようって言うほどじゃない。

「・・・・シャルちゃん、ルシル君。機動六課の試験運用期間の期限まであと半年。
シャルちゃんとルシル君のその半年の時間、機動六課(わたしたち)にくれへんかな?」

はやてからの申し出。それはつまり、

「私たちに残ってほしい・・・・と?」

そういうことだ。

「うん、そや。スバル、ティアナ、エリオ、キャロ・・・・フォワード陣。
シャルちゃんとルシル君はあの子たちに良い影響を与えると思ってる。
これまで通りなのはちゃんやヴィータと一緒に教導を・・・って、思ってるんやけど・・・」

「んー、そう言ってくれるのは正直嬉しいけど・・・・いいの?」

「ええよ。って、私がお願いしてるんやし、シャルちゃんが気にするんは変や」

はやてが苦笑しながら右手を差し出してくる。

「・・・・えっと・・・ルシル」

契約中行動の決定権は3rdの私じゃなくて4thのルシルが持つことになってる。
まあ、そこに不満はないから別にいいけど。

「そうだな・・・・。はやて」

「ん?」

「私とシャルは常にここに留まることはおそらく出来ない」

「それは・・・・あれやね、二年前に管理局を辞めたわけの・・・」

「そうだ。そんな私たちに残ってほしいなんて・・・・」

「それでもや」

はやての笑みも差し出された右手も戻らない。
見ればシグナムははやての手を取れって視線を私たちに向けてくる。

「ま、そのときはシャルを置いていくからいいか。
はやて、これからもよろしく頼む。そしてシグナムも」

ルシルが何やらすごいことを言いつつはやてと握手を交わして、今度はシグナムにも右手を差し出した。
シグナムがそれを見て、よく見ないと分からない程度の微笑を浮かべて、「ああ、よろしく頼む」ってルシルの手を取った。
すると今度は私に向けてはやてとシグナムが右手を差し出してきて、

「これからもよろしくね、はやて、シグナム♪」

「うん!」

「ああ」

順に手を取って握手。よかった。まだ一緒にいられる。

(感謝だよルシル)

隣に座るルシルに視線を移す。でもルシルは何か考え事をしているみたい。

「それじゃあクロノ君たちには私が話を通しとくなぁ♪」

そう言ってはやてがレクリエーションルームから出ていった。
残された私たちはコップに残った水を飲み干して、

「・・・・・でシグナム、私に話とは?」

ルシルは向かいに座るシグナムに訊ねる。
はやてと会う前はその話をするためにここに来たんだしね。

「ああ。・・・・騎士ゼスト・グランガイツのことだ」

その名前が出て、この場の雰囲気が重くなるのが分かる。

「ゼストさんが・・・なんだ?」

「亡くなった。いや、私が・・・・斬った」

「「っ!!」」

シグナムが少し溜めて、そして口にした。斬った。つまりは殺した、と。

「・・・・・シグナム。ゼストさんの最期はどうだった?
騎士としての、ゼストさんの納得のいく終わりを迎えられただろうか?」

テーブルに両肘をついて、組んだ手の甲の上に顎を乗せたルシル。
シグナムも腕を組んで、ルシルの目をしっかりと見ながら、

「私には決められることではないが、だがそう思いたい。
騎士ゼストは、戦いの中でその命の幕を引くことを選んだ。
そしてその相手が私だった。私は彼に応えることが出来のかは分からないが・・・・」

そうルシルに答えた。

「・・・シグナムのような騎士と戦い、そして逝けたのなら満足だっただろう」

「だといいんだが・・・・。これがお前に伝えておきたかったことだ。
・・・・それでは私もこれで失礼する」

そう言ってシグナムが立ち上がって、レクリエーションルームから出ていった。
残ったのは私とルシルの二人。

「・・・・本当にいいの、ルシル。ここに残っても・・・」

「いいんじゃないか? もうしばらくは楽しもう。この時間を」

「そっか。うん、そうだね。そんじゃ、まずは・・・・・」

レヴィヤタンのところに行かないとだねぇ・・・・・ハァ・・・。

『ル~シ~ル~・・・・ど~こ~?』

「「ひっ・・・!」」

この後起きるかもしれないルシルとレヴィヤタンのバトルに気を重くしていると、目の前に現れたモニターに映る幽鬼のようなフェイト。

『どこに居るのぉ~~~~~?』

今のフェイト、アリサの家で観た映画に出てくる貞○のようだ。
寝ぼけていると思いたい。思わせて。思おう。決定。
このあとフェイトに捕まったルシル。次に会ったときはゲッソリしてた。
散々お説教をくらったらしい。ご愁傷さまぁ♪

追記。私がルシルにしたイタズラ、お化粧。
綺麗にお化粧したルシルの目撃者続出。男女関係なく赤面する。
そして、それがバレた私も散々ルシルにお説教をくらった。
そのときのルシルはそれは綺麗な鬼でした・・・・まる(泣)


          §これからの時間を大切に§

はい、始まりました。最後のエピソード?
すべてに決着がつきます。つけさせます。

さて、いつかのあとがきで計五部作構成と言っておきながら、何で4thで終わり?
えー、一応真Lastである5thのエピソードの大まかな流れと結末もすでに出来てます。
メインタイトルも決定済み。
というか先に4thと5thを組んでからこの小説を始めましたので。
なのに何で4thで終わりなのか?
それはこの4thのエンディングを皆さんに読んでいただいて、その反応から続行か完結かを決めたいと思っているためです。
この終わり方でいいんでない、という反応が多ければこれで完結。
続行希望っす、という反応が多ければ、Lastから4thへと変わることになるかもです。

それでは、次から予告通りにバカ話へと突入します。
主な被害者は・・・・・やはり―――

ルシルの魔術

神断福音グロリアス・エヴァンジェル
ルシルの誇る真技の一つ。その破壊力は絶大で、聖王のゆりかごの2/3以上は消滅さえることができる。
ビフレスト絶対防衛線戦で、侵攻してきた連合主力殲滅に活躍。
第一級の権限解凍、神器王形態で使用可となる。
土石系を除いた魔力で構成されたアースガルドと各同盟世界の魔法陣で砲塔をつくり、完全開放した神槍グングニルを弾丸として射出する対軍攻性術式。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。