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どうでもいい話。サブタイトルでLucifer/ルシファーか、
Baël/バエルで悩んだ末、ルシファーに決定。ホントにどうでもいい話でした。

バエル戦イメージBGM
BAYONETTA『The Greatest Jubilee』
傲慢の先にあったモノ ~Lucifer~
VS―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―✛
其は反逆の大罪が傲慢バエル
✛―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―VS


玉座の間を翔る三つの閃光。蒼色、桜色、虹色の三つだ。

「バエル!!」

「ハッ、先程から力のない攻撃ばかりで、つまらないぞ?」

ルシリオン一人に標的を絞り、激しい攻撃を続ける天秤崩す者(バエル)
しかしルシリオンは一向に天秤崩す者(バエル)へと大した攻撃を仕掛けない。
行っていることとと言えば、天秤崩す者(バエル)の剣を、大鎌を、魔力弾を捌き、その上で体術を駆使して姿勢を崩したりするだけに留まっている。
なぜなら、

『・・・ママ・・・パパ・・・』

今戦っている天秤崩す者(バエル)の体に原因がある。
その体とは、期間限定とはいえルシリオンの娘となったヴィヴィオのもの。
だからこそルシリオンは躊躇っていた。自分の攻撃が必要以上のダメージを与えてしまうのではないか、と。

「つまらないな・・・!」

ルシリオンが弾いた天秤崩す者(バエル)の左手に大鎌が握られる。
天秤崩す者(バエル)は虹色の光で構成された大鎌と“ルートゥス”の翼を消す。
その場で反時計回りに回転し、遠心力の乗った一撃をルシリオンの首へめがけて一気に薙ごうとする。

「ここだ・・・っ!」

ルシリオンは回避ではなく、真正面から天秤崩す者(バエル)の左前腕部に左手の掌底を中て、左腕の運動を停止させる。
ここでルシリオンは足元にミッド式の魔法陣を展開し足場とした。
そのまま左手で天秤崩す者(バエル)の左腕を取り、背負い投げのような体勢に入り、

――鉄山靠――

八極拳における技の一つ。クロスレンジでの背面からの体当たり。
“聖王の鎧”が展開されているにもかかわらず、天秤崩す者(バエル)が吹っ飛ぶ。

「っ、まただ。・・・魔力は乗せられているが、全く威力がない・・・・。
らしくないな、欠陥品。本来のお前なら命など度外視して簡単にころ――」

「黙れ!!」

怒号によって天秤崩す者(バエル)の言葉を遮るルシリオン。
再度お互いが距離を詰めるために飛行する。

「ハ・・・・っ!!」

天秤崩す者(バエル)は短く息を吐き、大鎌をルシリオンへと投げつける
ルシリオンは回転しながら飛んでくる大鎌の刃の側面を足場として踏みつけ、跳躍した。
突撃してくるルシリオンを迎撃するために、天秤崩す者(バエル)は“ルートゥス”を15本射出する。

「フッ・・・!」

ルシリオンはすぐさま“グングニル”を取り出し、迫る“ルートゥス”を弾いていく。

「なのは!!」

ルシリオンが攻撃を捌く中、天秤崩す者(バエル)の技後硬直が生まれたことで、

「うん! レイジングハート!!」

ルシリオンと共に戦う、ヴィヴィオの保護者なのはの名前を叫ぶ。
なのははそれに応え、愛機“レイジングハート”の先端を天秤崩す者(バエル)に向ける。

≪Divine buster. Extension≫

“レイジングハート”から使用魔法の名が告げられ、そして放たれた。
桜色の砲撃がルシリオンの真横を掠めるように過ぎ、天秤崩す者(バエル)へと一直線に向かう。

――聖王の鎧――

ヴィヴィオのオリジナルである聖王の防衛能力が働き、なのはの砲撃を防ぎきる。
天秤崩す者(バエル)と交戦を開始してからは、こうした攻防が何度も繰り返されていた。
なのはは攻撃が防がれるたびに徐々に威力を上げていき、肩で息をするようになった。

「・・・・やはりあの防御をどうにかしないといけないな・・・!」

「ヴィヴィオ・・・・!」

『・・・なのはママ・・・ルシルパパ・・・』

ヴィヴィオの念話は今でも届く。
その声が聞こえてくる以上はヴィヴィオの精神は無事だ。
だからこそなのはとルシリオンは諦めずに戦えている。

「そろそろこの展開も飽きてきたな。そうだ。これでもう少し楽しくなるだろう?」

「「っ!!」」

天秤崩す者(バエル)が楽しそうにそう告げ、指を鳴らす。
そしてなのはたちの前に何体もの天秤崩す者(バエル)が現れた。

――シルバーカーテンver.Σ――

幻影。それは戦闘機人(ナンバーズ)のクアットロから複製した能力シルバーカーテンによるもの。
対象の知覚を騙すことのできる能力。
天秤崩す者(バエル)はその能力に阻害の概念を加え、ルシリオンの魔術による幻影解析を妨げることに成功した。
とはいえ、それも短時間なものとなる。いつまでもルシリオンの知覚を騙し続けることが出来ない。

「「「さぁ、どれが本当の私なのか当ててみるといい」」」

ヴィヴィオの口から発せられる天秤崩す者(バエル)の声が同時に三つ。
そこにルシリオンは違和感を覚え、よく天秤崩す者(バエル)の姿を見ていく。

「・・・チッ、やってくれた・・・!」

ルシリオンは歯噛みした。視界に入る天秤崩す者(バエル)は四体。
一体は本物。そして二体は幻影。そして残りのもう一体は、

「なのは!」

なのはだ。実際には居るが、なのはと知覚出来ない。
ルシリオンは知覚を妨害され、なのはの姿を天秤崩す者(バエル)と認識してしまっている。

「ルシル君!!」

ルシリオンを呼ぶ声。しかしそれは天秤崩す者(バエル)の声で、だ。
それは本当になのはの呼びかけなのか、それとも天秤崩す者(バエル)の罠か・・・。
判別できないほどに知覚を妨害されている。

「なのは! 私が天秤崩す者(バエル)押さえている間に撃て!」

「なにっ・・・むぐっ!?」

ルシリオンは、後ろから本物の天秤崩す者(バエル)に羽交い締めにされ、口を塞がれてしまう。
そして天秤崩す者(バエル)はルシリオンの声で、なのはにそう告げたのだ。

「私諸共で構わない!」

「で、でも・・・」

「ヒット直前に離脱するから問題ない!」

「・・・・わ、分かった!」

ルシリオンの声ということで、なのはは少し躊躇いながらも砲撃の準備を行う。
なのはにはルシリオンが天秤崩す者(バエル)に見え、羽交い締めにしている天秤崩す者(バエル)がルシリオンに見えていた。

「ヴィヴィオ! 少しだけ我慢して!」

天秤崩す者(バエル)の姿をしたルシリオンに向けて、なのはが“レイジングハート”を構える。
ルシリオンには天秤崩す者(バエル)が無手で何かを構えているように見えていた。

「フフ、大事な友達とやらに撃たれるがいい、欠陥品」

「っ!! バエルーーーーーーーーーーッ!!!」

耳元で囁かれたその言葉に、無理やり口を塞いでいる手から逃れてルシリオンは吼えた。
そして、

「エクセリオン・・・・バスタァァァーーーーッ!!」

砲撃が放たれた。射線上にはルシリオンと天秤崩す者(バエル)
天秤崩す者(バエル)を“聖王の鎧”で防御準備を終えているが、ルシリオンは魔術が使えなくなっているため、防御することが出来ない状態だった。
阻害。それがルシリオンの魔術発動の妨害をしていた。
そのために魔法の念話すら妨害され、なのはに伝えることが出来ないでいた。

なのはの砲撃がルシリオンに直撃した。桜色の閃光が爆ぜる。
ヴィヴィオの体を気遣っての一撃にも関わらず、ルシリオンの意識を飛ばした。
唯一の救いは戦闘甲冑までキャンセルされなかったことだ。
戦闘甲冑までキャンセルされていたら、ルシリオンは気絶程度では済まなかった。
次第に煙が晴れていき、そしてなのはは見た。
床に倒れ伏しているルシリオンと、未だ健在な天秤崩す者(バエル)を。

「・・・え? なん・・・で・・・ルシル君・・・?」

なのはの掠れた疑問の声。床に降り立って、ルシリオンへと駆け寄る。

「ルシル君!? ルシル君!? しっかりしてルシル君!!」

『・・・パ・・・パ・・・・や・・・・やだ・・・』

なのはの悲鳴とヴィヴィオの涙声が、天秤崩す者(バエル)に笑みを浮かばせた。

「ハッ・・・ハハ・・・・アハハハハハハ・・・・!! ハァー、いい様だ!!」

天秤崩す者(バエル)型からかに笑い声を発し続ける。
そして他の幻影も同時に消滅していった。それを見たなのははようやく理解した。自分の砲撃がルシリオンを撃ったことを。

「っ、ルシル君!!」

「さて、高町なのは。お前には用はない。大人しく退くか、それともここで死ぬか、好きな方を選べ」

「っ!」

ルシリオンを抱え、天秤崩す者(バエル)を睨みつけるなのは。
たとえ睨んでいる相手がヴィヴィオだとしても、睨むことはやめれなかった。
それほどまでになのはの天秤崩す者(バエル)のへ怒りは頂点に達していた。
ヴィヴィオの体を乗っ取り、幻術を使って親友のルシリオンに攻撃させた。
その上倒れたルシリオンを見て大笑い。天秤崩す者(バエル)のそれを聞いて、なのはは自分の中に確かな怒りを感じた。

『マ・・・マ・・・にげ・・・て・・・』

「ヴィヴィオ!」

「くっ・・・ヴィヴィ・・・オを置いて・・・逃げる・・・?」

「ルシル君!」

「・・・そうでないとな」

『パ・・・パ・・・!』

ヴィヴィオの涙声の念話にルシリオンが目を覚まして、なのはの両腕から離れる。
そしてゆっくりと立とうとし、なのはに支えられながら立ち上がる。
視線はヴィヴィオへ。いや、その体の中にいる天秤崩す者(バエル)へ向ける。

「そんなこと・・・・できるわけが・・・ない・・・!!」

――傷つきし者に(コード)汝の癒しを(ラファエル)――

ルシリオンの体を包み込む蒼く優しい光。
徐々に、しかし確実にダメージを癒していく。

「ごめんなさい! ごめんなさい、ルシル君!」

両目に涙を浮かべたなのはが何度も謝る。
天秤崩す者(バエル)の策に簡単に嵌って、ルシリオンを撃ったことを。

「・・・・いや、あれは仕方ない。こちらの油断の所為もあったからな。
だからなのはが謝る必要はどこにもない」

“グングニル”が光の粒子となって消えていく。

「・・・・うん。ごめんね、ありがとうルシル君」

涙の浮かぶ両目を袖で拭ったなのはは頷いて答えた。
ルシリオンは思考する。天秤崩す者(バエル)攻略のための戦法を。
相手は知覚を阻害し、“聖王の鎧”という防衛能力を以ってなのはの攻撃を防ぐ。
その上どこから流れて来ているのか分からないが、天秤崩す者(バエル)は魔力供給を行っている。
そして最大の問題は、

「次はどうすればいい、ルシル君・・・?」

なのはのどこか辛そうな表情。原因は知れている。
このゆりかご内に展開されているAMFだ。
それがなのはの魔力と体力を必要以上に奪っている。

「・・・・・ああ。やることは大して変わらない。
ただ、さっきと同じような知覚阻害を受けた時は出来るだけ動かないこと。
その間に私が何とかして知覚妨害を解除させる」

知覚阻害は兎も角として、AMFからなのはを解放する術はある。
そして、ルシリオンはヴィヴィオを救うためにその術を使用することを決める。
それは魔術師の目指す四つの頂き“神の力ディヴァイン・ポイント”が一つ、創世結界。
使用するのは“聖天の極壁(ヒミンビョルグ)”。宝庫と居館は、さすがにヴィヴィオの体を必要以上に傷つけると考えた末の結論。

「うん。分かった。そのときはルシル君に任せるよ」

「話し合いはもういいか? なら続きと行こう。この体の持ち主もそろそろ限界だろうからな。
意識が完全に途絶えてしまう前に、欠陥品の最期を見せてあげなければ・・・!」

背にする大鎌と“ルートゥス”の形をした光の翼が砕け、再構成されていく。
骨組みのようにも見える左右非対称の翼へと変化していった。

「やってみろ。・・・ヴィヴィオ! もう少しだけ頑張ってくれ!」

「すぐに助けるからね!」

ルシリオンとなのはがヴィヴィオに声援を贈る。
負けるな、と。助けるから頑張って、と。

『ママ・・・パパ・・・・うん・・・』

「・・・・不愉快だ。もういい・・・・」

天秤崩す者(バエル)は表情を怒りに変え、歯噛みする。
背にしている骨組みのような翼が強く虹色に輝く。

『なのは。AMFの対応策をこれから行う。その方がなのはも楽だろ?』

『え? そんなことが出来るの・・・?』

ルシリオンは念話でなのはにそう告げ、なのははそれが出来るのか訊き返す。
もしそれが可能なら、なのははこれ以上自分に負担をかけさせるようなことをしなくともよくなる。
そしてルシリオンはそれを行うことで、天秤崩す者(バエル)の魔力供給をも防げると考えている。

『ああ。詳しい説明は全てが終わってからにさせてもらうが、それは可能だ。
今からこの玉座の間に黒い穴を開けることになる』

『黒い・・・穴・・・?』

念話の最中にもルシリオンは天秤崩す者(バエル)へと近づき、

「ヴィヴィオは返してもらうぞ、天秤崩す者(バエル)・・・!!」

高機動の空戦を繰り広げる。
天秤崩す者(バエル)の虹色の光を纏う拳打を捌きながら、ルシリオンは“聖天の極壁(ヒミンビョルグ)”の術式発動の準備をしていく。

『そう、黒い穴。そこにバエルを誘い込む。そして次に私が入る。
なのはは後からそこに飛び込んでくれ』

「何を企んでいる欠陥品・・・!」

「何だと思う? 当てられたらプレゼントを贈ろう・・・!」

二人の拳が衝突し、玉座の間を揺らすほどの衝撃が生まれる。
そこから拳打の応酬が始まる。天秤崩す者(バエル)は必殺の一撃を、ルシリオンはそれを裏拳で捌いていく。

≪我が手に携えしは確かなる幻想≫

ルシリオンが複製術式などを使用する際に必要な呪文(スペル)を詠唱。
それを聞いた天秤崩す者(バエル)は直感的に距離を取ろうとする。

「アクセルシューター!」

天秤崩す者(バエル)の離脱を拒むように、なのははアクセルシューター15基を展開。
だが天秤崩す者(バエル)は“聖王の鎧”を展開し無理やり突破する。

「取り込みやすいようにバラバラにしてくれる・・・!」

“ルートゥス”14本が天秤崩す者(バエル)の周囲に展開される。
そして全弾ルシリオンへと向けて射出されていく。

「その程度の速さで私の翼を落とせると思うな!」

ルシリオンの怒声。

――瞬神の飛翔(コード・ヘルモーズ)――

12枚の剣翼が背から離れ、新たなに薄く細長いひし形の翼が10枚展開された。
空戦形態ヘルモーズへと瞬時に移行し、“ルートゥス”の射線上から離脱する。

「空戦形態、それの対抗策くらいは組んでいる」

天秤崩す者(バエル)の翼の先端からジェット噴射のような閃光が噴出する。

「いくぞ!」

ルシリオンへと一気に突進していく天秤崩す者(バエル)
ここでルシリオンが笑みを浮かべながら同様に突進していく。
ルシリオンの笑み。それに気付いた天秤崩す者(バエル)が警戒する。
しかし、そのときにはすでに手遅れだった。

――聖天の極壁(ヒミンビョルグ)――

ルシリオンと天秤崩す者(バエル)の間に黒い穴が開く。

「っ!!」

天秤崩す者(バエル)は目の前で開いた穴に気づくが、今さら軌道修正が出来ないため、そのまま穴に突っ込むしかなかった。
創世結界。名は知らずともどういうものか天秤崩す者(バエル)は知っていた。
許されざる強欲(マモン)許されざる色欲(アスモデウス)を取り込んだ際に手に入れた情報からによるものだ。

「行こうか、バエル。・・・この戦いの決着の場へ」

ルシリオンと天秤崩す者(バエル)は同時に穴へと突っ込んでいき、玉座の間から姿を消した。


†††Sideなのは†††


ルシル君とバエルが、突如二人の間に出来た黒い穴に入って行って消えた。

「・・・・これに入れば・・・いいんだよね・・・?」

目の前に開いている穴に近づく。AMFをどうにか出来るらしいけど、少し不安がある。

「・・・ヴィヴィオ・・・・」

でもそんな弱気なことなんて言ってられない。
ルシル君がたぶんこの穴の向こう側で待ってるはずだ。

「・・・・よし・・・!!」

気合いを入れて、黒い穴に入る。
そして穴に入った瞬間に分かった。さっきまで辛かったAMFから解放されたことが。
穴の中を少し進んでだら、すごい光が私の視界を邪魔した。
あまりの眩しさに両腕を目の前に構えて、その光から目を守る。

「なのは!!」

私を呼ぶルシルの声。ここで光が弱くなったことで目を開ける。
すると、

「・・・・っ!? ここは・・・・どこ・・・?」

さっきまでのゆりかご内に比べてあまりに激変した光景が目の前に広がる。
そこはすごく広くて薄暗い。唯一の明かりと言えば地平線にあるものだけ。
上も下にも雲が渦巻いていて、どっちが空で陸地か分からない。

「AMFはどうだ、なのは?」

「ルシル君・・・?」

何かの文字が多く刻まれている蒼い球体の上に立っているルシル君が訊いてきた。
私はルシル君のところまで飛んで、蒼い球体の上に降り立つ。
するとさっきまでに消費していた魔力がすごい勢いで回復していくのが分かる。

「あ、えっと・・・うん、大丈夫。AMFの影響はないよ。ねぇ、ルシル君。ここって・・・?」

「話はあとだ、なのは。来るぞ」

ルシル君の視線の先、大体1km先にヴィヴィオの体を乗っ取ったバエルがいた。
いろいろと訊きたいことがたくさんあるけど、今は戦いに集中しないと・・・・。

「さすがに魔力供給を妨害出来なかったか。まぁ、AMFをどうにか出来ただけで十分か」

「魔力・・・供給・・・?」

「ああ。どこからか、おそらく駆動炉から魔力を供給しているんだろう。
AMFの中にあろうとバエルの魔力は一向に消費されてなかった。
つまりは消費してもすぐそばから回復している、と思ったわけだ」

気付かなかった。でも言われてみれば思い当たる。
私ばっかり魔力を消費して、バエルの方は全然堪えてる様子はなかった。
それがルシル君たちの言う神秘なのかな?って思っていたけど、そういうことだったんだ。

「残念だったな、欠陥品」

あんなに離れているのにハッキリと声が聞こえる。
この空間の影響なのかもしれないけど、私には分からない。
それにまただ。バエルはどうしてルシル君を欠陥品って呼ぶのかが分からない。
そしてそれに反論をしないルシル君。それは自分で認めてるから?
欠陥品。これだとルシル君がまるで作られた物みたいで・・・・。

「なのは!」

「う、うん!」

ダメだ。そんなことを考えてる場合じゃない。
“レイジングハート”の先端をバエルに向けて臨戦態勢に入る。

「確かに少し予定が狂ったが、なのはをAMFから解放することが本来の目的として発動したのがこの結界だ」

結界・・・この世界が・・・結界・・・!?
魔導師(わたし)たちが知って、そして使うものと全然違いすぎる。
これが魔術師にとっての結界ということなんだろうか・・・?

「そんななのはと、お前の神秘に対抗する術を持つ私。さっきまでの展開とはいかないぞ」

「面白い。その方が飽きないから楽しみだよ・・・!」

バエルの骨組みのような翼から、また虹色の光が噴出される。
ルシル君とバエルの間に背筋が凍るほどの殺気が満ちる。
そしてルシル君が一拍置いて、消えた。

「おおおおおおッ!!」

それは消えたように見えるほどの速い移動だった。
バエルまでの距離を一瞬で縮めたルシル君がバエルに突っ込む。
私もルシル君を追って飛ぶ。だけど、

「速い・・・!」

追いついたときには始まっていた、ルシル君とバエルの殴り合いとも言える戦いに干渉出来ない。
しかもあまりにも速い打撃の応酬。下手に撃つとさっきみたいにルシル君に中る。
でも待ってるだけじゃルシル君を手伝えないし、ヴィヴィオも救えない。

「レイジングハート。いつでも砲撃撃てるようにお願い」

≪All right. My master≫

『なのは。そこからバインドいけるか?』

ルシル君からの念話。正直あんな速いバエルにバインドをかけられるか・・・。
でも、

『やってみる! タイミングは!?』

必ずかけてみせる。やる前から出来ないなんて言えない。
パンッ!って大きな音がした。それはバエルの拳打をルシル君が掴み取った音。
そしてバエルを抱くようにして、近くにある黄色い球体へと突っ込んで叩きつけた。

『今だ!』

≪Restrict Lock≫

ルシル君の合図に合わせて使ったのは、私が一番最初に覚えた魔法。
そして私が扱える捕獲魔法の中で最高の練度を持っている。

「捕えよ、縛鎖レーディング!」

私のレストリクト・ロックとルシル君の鎖で、その球体に縫いつけられるようにして完全に動きを封じられたバエル。
これでもう動けないはずだ。あとはどうやってヴィヴィオを救い出すか・・・。
魔力ダメージでのレリック破壊って決めてたけど、出来ればヴィヴィオの体に負担はかけたくないのが私の本音。

「っく・・・これは・・・・力が・・・!?」

バエルがどうにかして脱出しようともがくけど、抜け出せるようなものじゃない。
ルシル君はそれでも警戒は解かないでバエルへと近寄る。

「今すぐにヴィヴィオを解放しろ、バエル」

「くっ・・・・ハハ、知っているか、欠陥品、そして高町なのは。
お前たちの守ろうとしているこの体の持ち主、ヴィヴィオ・・・だったか?」

『・・・やだ・・・・や・・・』

「「ヴィヴィオ!!」」

「この際だ。聞いてもらおうじゃないか」

『いやぁ・・・・・やだ・・・』

バエルが何かを言おうとするたび、ヴィヴィオの泣いている声が聞こえる。
それに合わせてヴィヴィオの目から大粒の涙が溢れてくる。

「バエル! ヴィヴィオに何をしている!?」

ルシル君がヴィヴィオの両肩を掴んで激昂している。

「この体の持ち主に教えてあげているんだ。自分(ヴィヴィオ)という存在の正体を。
ヴィヴィオは過去の存在、聖王オリヴィエ・ゼーゲブレヒトのクローン・・・」

「っ! やめて・・・」

それはヴィヴィオの知らないこと。だから言わないでほしかった。
いつかヴィヴィオが大きくなってから教えようと思っていたのに・・・・。

「高町なのはと欠陥品が、本当の親ではないと・・・」

「お願い・・・やめて・・・」

「この聖王のゆりかごと呼ばれる船を飛ばすためだけの一部品(キー)であり、自分が座する玉座を守り、ただ敵対者を滅するだけの生体兵器・・・」

「やめて・・・・お願い、もうやめてぇぇぇぇぇぇッ!!」

叫んだ。これ以上ヴィヴィオを傷つけないでほしかった。

「バエルーーーーーーッ!!」

「自らを保護してもらい、魔法のデータ収集させてくれる者を探していた。
それが偶々お前たちの居場所だったというわけだ」

私の叫びも、ルシル君の怒りも、それを無視するかのようにバエルは話を続けていく。

「そうだろう、ヴィヴィオ?」

『っ・・・・悲しい・・・のも、痛いのも・・・全部作りものの偽物・・・。
わたしは・・・この世界にいちゃ・・・ダメな子・・・なんだ・・・!』

「「っ!!」」

ヴィヴィオの涙声の念話。でも今までのものと全然違う。
言葉に籠められた感情が・・・救いを求めるものから自分の否定になっていた。

「「違う!!」」

ルシル君と重なる。お互いを見合わして、バエルに再び視線を移す。

『違わない!!・・・・・・もう・・・もういいの。なのはさん、ルシルさん。
もう全部わかったの。二人は、フェイトさんも・・・・本当の親じゃないって。
わたしは兵器・・・なんだ。ゆりかごを動かすための鍵・・・・』

「そんなことはない! ヴィヴィオ、そうじゃない!」

「そうだよヴィヴィオ! そんなの違う!!」

『そうなんだよ! わたしは・・・この世界にいない方がいいんだ・・・!
わたしがいたら、なのはさんやルシルさん、フェイトさんに・・・みんな・・・、今すごく迷惑かけてる!
わたしがいるからこの船が動いてる! だから・・・わたしなんて・・・いなくなればいいんだ!!』

ダメ。これ以上言わせたらヴィヴィオは本当にいなくなっちゃう。
自分を否定するだけの言葉。それがどれほど自分を壊していくか・・・。
それを止めようして私が口を開こうとしたとき、パンッって音が響く。

『「っ!?」』

「ルシル君・・・?」

それはルシル君がヴィヴィオの頬に平手打ちした音だった。
ルシル君は真っ直ぐヴィヴィオの涙の溢れる目を見ている。
そしてルシル君のその目に宿るのは怒りの色。
その突然の行動に私はおろか、バエルすらも目を点にしている。

「いらない? いなくなればいい? 怒るぞ、それ以上馬鹿を言えば。
私は、なのはもそう思わない。それだけは絶対にだ。
それは今までヴィヴィオと過ごしてきたみんなもきっと同じだ・・・・」

ヴィヴィオの頬を叩いた右手を強く握って、辛そうにルシル君がそう言った。

「そうだよ、ヴィヴィオ。たとえ生まれ方が違っても、今のヴィヴィオは、そうやって泣いてるヴィヴィオは偽物でも作りものでもない。
甘えんぼですぐ泣くのも、転んで一人じゃ起きられないのも、ピーマン嫌いなのも・・・』

偽物だなんてことはないんだ。生まれ方なんて関係ない。
ヴィヴィオがヴィヴィオであることに変わりないんだから。

「私が寂しいときに良い子って撫でててくれたのも。私の大事なヴィヴィオだよ・・・!」

「やめろ・・・やめ・・・っ!?」

「邪魔するなよ」

ルシル君がヴィヴィオの口を押さえて、バエルが喋れないようにした。

「私はヴィヴィオの本当のママじゃないけど、これから本当のママになっていけるように努力する。
だから、いちゃいけない子なんて言わないで・・・!!」

ヴィヴィオはここに居る。それだけは確か。だからそれを否定することは許さない。
たとえそれがヴィヴィオ本人だったとしても。

「だからヴィヴィオ。ホントの気持ち、ママとパパに教えて・・・」

ルシル君と頷き合って、しっかりと答えを聞くためにヴィヴィオを見る。

『わたしは・・・わたしは、なのはママとルシルパパが大好き・・・!
これからもずっと・・・ママとパパと・・・ずっとずっと一緒にいたい!!
・・・・ママ、パパ・・・ヴィヴィオを・・・助けて・・・!』

それが聞きたかった。自分の真実を知って、それでも私たちと一緒に居たい、って。
だから助けるよ。私が、ルシル君が、とても大切なヴィヴィオを。

「「助けるよ・・・」」

「いつだって・・・」

「どんなときでも!!」


◦―◦―◦―◦―◦―◦


聖王のゆりかごの最後部。駆動炉のある空間へ続く通路の途中、片膝をつき、息を切らしているヴィータが居た。
その体は満身創痍と言えるほどのもので、出血量が多い。

「大丈夫か、アイゼン・・・?」

≪Kein Problem.(問題ありません)≫

彼女と同じように損傷の激しい“グラーフ・アイゼン”。
ヴィータの心配の言葉にも問題ない、と答える。

「なのははもう・・・玉座の間に着いてるころだよな・・・」

≪Ja≫

「はやても・・・外で戦いながら、船が止まるのを待ってる・・・!」

≪Richtig(正しく)≫

ゆっくりと立ち上がり、通路の先から漏れている赤い光へと歩き出す。
そして通路を抜け、広い空間へと出た。

「・・・っ!」

ヴィータの視線の先、そこにあるのはあまりにも巨大な正八面体の結晶体。
それこそがこの“聖王のゆりかご”を動かすものだった。

「・・・駆動炉(コイツ)をぶっ壊して、この船を停めるんだ・・・!!」

“グラーフアイゼン”を一度振るうようにして構える。

「リミットブレイク・・・やれるよな?」

≪Jawohl. Zerstörungs form≫

ヴィータの問いに答え、カートリッジを二発ロードし、自らの形態を変形させる。
“グラーフアイゼン”の第四形態ツェアシュテールングスフォルム。
ギガントフォルムの如き大きさを持つハンマーに、ドリルとブースターが付いたもの。
破壊という意味を持つ名の通り、純粋な破壊――特に大型対象破壊――に向いている。

「っ・・・!」

ヴィータが大きく跳躍し、駆動炉を見下ろせるところでベルカ魔法陣を足元に展開。
そこに降り立ち、

「ツェアシュテールングス・・・!」

“グラーフアイゼン”を振り上げ、ハンマーヘッドをさらに巨大化させる。
そこでさらにカートリッジを一発ロードすると、ブースターが点火し、ドリルが勢いよく唸りを上げ回転し始めた。
そしてヴィータは破壊の槌を駆動炉へと一気に振り下ろす。

「ハンマァァァーーーーッッ!!!」

ドリルヘッドが駆動炉へと叩きつけられる。
ここでさらに“グラーフアイゼン”はカートリッジを二発ロードする。
そうすることでドリルの回転速度が跳ね上がり、威力を上げる。
そして起こる爆煙。大きく肩で息をするヴィータの視線の先、傷一つついていない駆動炉が健在していた。
ヴィータは驚愕する。自分の最高威力の一撃でも傷一つついていない駆動炉が信じられなかった。

≪Eine magische Reaktion wurde ausfindig gemacht.
(危険な魔力反応を検知しました)≫

駆動炉の間に響く放送。

≪Wir gehen in die Verteidigungssituation ein.
Alles, was sich dem Kern annährt, wird unbedingt zügig angegriffen.
(防衛モードに入ります。これより駆動炉に接近するものは、無条件で攻撃されます)≫

そしてその放送はこう続いた。
それを証明するかのようにヴィータの周辺に正四角形の結晶体がいくつも現れる。
その正四角形の結晶体が、侵入者であるヴィータを迎撃するための防衛システムだ。

「・・・・上等だよ・・・」

ヴィータが薄く笑みを浮かべ、その直後に防衛システムから攻撃が掃射された。
それを跳躍して回避したヴィータは、

「はあああああああッ!!!!」

裂帛の咆哮を上げ、防衛システムを破壊し、駆動炉へと一直線に振り下ろす。
しかし結果は先程と同様。傷一つつけられなかった。
そこからは防衛システムの攻撃を回避しては破壊し、駆動炉へと攻撃となっていった。
だが、それでも一向に傷をつけられないヴィータと“グラーフアイゼン”。
そして何度目かの駆動炉への攻撃。防衛システムはすでに全基破壊されていた。
ドリル部分の先端が砕け、起こった爆発の衝撃でヴィータは弾き飛ばされた。
通路へと叩きつけられて何回か転がる。そして手からは“グラーフアイゼン”が離れる。

「・・・なんでだよ・・・」

ヴィータの弱気な声。身体ダメージに馬鹿にならない魔力消費。
自分の持つ最高の威力を持つ攻撃を何度も放っても一向に壊れない駆動炉。
それがヴィータの心を折ろうとする。

「なんでだ・・・何で通らねぇ・・・!」

傍に転がっている全体にヒビの入っている“グラーフアイゼン”を手に取り、引き摺りつつも駆動炉へと歩を進める。

駆動炉(コイツ)をぶっ壊さなきゃ・・・みんなが困るんだ・・・!」

ヴィータは諦めない。折れそうな心を奮い立たせる。

「はやてのことも・・・なのはのことも守れねぇんだ!!」

限界が近い自分の体に鞭打ち、同様に限界の近い“グラーフアイゼン”を構える。

「だから・・・・、アイゼン!!」

≪Jawohl !!≫

力強く答える“グラーフアイゼン”が、残りのカートリッジを全弾ロードし尽くす。
これが最後の一撃ということが分かっているかのように。

「ぉぉぉぉおおおあああああああッ!!」

跳躍した場所にベルカ魔法陣を展開。そこに立ち大きく“グラーフアイゼン”を振り上げるヴィータ。
この一撃に全ての魔力をかけるためか、魔法陣の発光が強くなる。

「ぶち貫けぇぇぇぇーーーーーッッ!!」

今までの中でも最も威力の高い一撃が、駆動炉へと打ち下ろされた。
激しい火花。完全に砕け散るドリル。それでも勢いは止まらない。
そして爆発が起き、ヴィータが距離をとったその直後、

「・・・あ・・・・」

“グラーフアイゼン”が完全に砕け散る。
そしてヴィータは力尽きたかのように真っ逆さまに墜落し始めた。

「ダメだ・・・守れなかった・・・・。はやて・・・みんな・・・・・ごめん・・・・」

果たせなかった守るという約束。それが悔しさと悲しさとなって涙が流れる。
通路へと次の瞬間にも叩きつけられようというところで、ここに黒い羽根が舞う。
駆動炉の間に光り輝く真白の球体。
ヴィータは目を開ける。自分を抱いていてくれる優しい感触。
目に映るのは、彼女の命に代えてでも守りたい大切な存在・・・・。

「謝ることなんて・・・何もあらへん」

八神はやて。そしてリインフォースⅡ。
彼女は外のガジェット掃討戦の指揮を任せ、リインフォースⅡと合流をした後にゆりかごへと進入していた。

「はやて・・・リイン・・・」

『はいです』

「鉄槌の騎士ヴィータとグラーフアイゼンがこんなになるまで頑張って・・・」

はやては駆動炉へと視線を移す。傷一つとしてついていないと思われていた駆動炉。
しかしそれは間違い。ヴィータの決死の攻撃は確かに届いていた。
駆動炉に突き刺さる“グラーフアイゼン”のドリル部分の最先端部。
そこから全体へと亀裂が生じていく。

「それでも壊せへんもんなんて、この世のどこにもあるわけないやんか・・・!」

はやて、ヴィータ、リインフォースⅡの視線の先、駆動炉がついに破壊された。
鉄槌の騎士に破壊出来ぬもの無し、それが今証明された。

そして三人は別行動となる。はやてとリインフォースⅡは玉座の間へ。
ダメージの大きいヴィータは別働隊へと預けられる。


†††Sideルシリオン†††


ヴィヴィオの本心は聞けた。これからもずっと一緒にいたい。助けてほしいって。
助けるよ、どんな手を使ってでも。だだ、ずっと一緒というのだけは・・・。
いや、今はそんなことよりヴィヴィオを解放することが大事だ。

「・・・・実に不愉快だ。人間のくだらない心云々・・・・・・」

私が手を離したことでバエルが喋り出す。

「・・・・虫唾が走る! 反吐が出る!」

「「くっ・・・!?」」

『っ・・・ぅぅあああ・・・!?』

馬鹿な! 力、というものを例外なく封じ込める束縛のルーンである“ニード”と、制止・遅延・犠牲の必要性・望まれぬ活動力の封印のルーン“イス”が刻まれた、この減衰の球体に縛り付けているのにこの力・・・!!

「はあああああああッ!!!!」

「っ! なのは・・・・!!」

バエルの神秘の奔流から、なのはを抱きしめるようにして庇う。
直後、私の背中に叩きつけられる強大な神秘の衝撃波。

「ルシル君!?」

一瞬気を失いかけたが、なのはの私を呼ぶ声に何とか踏み止まる。
揺れる視線の先に、私たちに向かって飛んでくるバエルを視認する。
どうやら今の衝撃波でかなりの距離を飛ばされたようだ。

「下がれ、なのは・・・」

なのはを庇うようにして後ろに下がらせ、バエルと真っ向から向き合う。
蒼翼の無事を確認。助かった。バエルとの高機動戦には必要不可欠だ。

「くだらない・・・・!」

―― セイクリッドクラスター ――

バエルの周辺から七つの虹色の光球が展開され、射出される。
それにしても大した速さのないものだが・・・・・。

「あれは私の・・・!?」

後ろでなのはが驚いている。そう言えば魔法データの収集とか言っていたな。
あの言葉の意味はこういうことだったらしい。
そして、

「レイジングハート!」

≪Oval Protection≫

私たちを覆うように球体のバリアが張られた。
確かこれは防御に専念するようなときに使うものだったはず・・・。
そしてあの魔法の効果が表れた。七つの魔力弾が突如爆散し、無数の小型魔力弾となって全方位から私たちに向かって襲いかかってきた。
なるほど。なのはがオーヴァルプロテクションを選択した意味が解る。

「くっ・・・!」

なのはが苦悶の表情を浮かべた。魔力弾(コレ)を防ぎきることが難しいみたいだ。
ならば、

≪我が手に携えしは戦友が誇りし至高の幻想≫

――天花麗盾クリュスタッロス・アントス――

複製術式を“英知の書庫(アルヴィト)”から引っ張り出し発動する。
白銀色の雪結晶の盾を全方位に展開。この術式の持ち主は、当時の恋人シェフィリス・クレスケンス・ニヴルヘイム。
氷雪系最強のシェフィの、最高クラスの防性術式。
使用許可が下りていない最高位の複製術式の発動。激しい頭痛だが、なのはの負担を軽減させるためだ。
だが、

『逃げて・・・ママ! パパ!』

ヴィヴィオの焦るような念話が届く。

「遅い!!」

バエルが両手を私たちに向けて翳す。
その両手に集まるのは、見覚えのある黄緑色の閃光。

「馬鹿な・・・!?」

バエルから放たれたのはサタンのレーザー群だった。
しかも今までのような直線的なものではなく、湾曲しての全方位からの集中砲火だった。

知らしめよ(コード)汝の力(ゼルエル)!!」

発動中の術式を強化させるゼルエルを発動させる。
強化対象は私が現在発動している麗盾だ。

「うそ・・・!?」

まずは麗盾の隙間から入ったレーザーがオーヴァルプロテクションを一瞬で砕く。
開いた穴を防ぐように麗盾を追加する。迫るレーザー群を次々と弾いていき、視認できるレーザーの数は二桁台。

「やるな、さすがは欠陥品。だが・・・・ん? 許されざる色欲(アスモデウス)が敗れた・・・・?
やはり与えたのが“力”の欠片では三番には勝てなかったか・・・」

バエルが聞き捨てならない言葉を口にした。
与えた? “力”の欠片? どういう意味だ、それは?
それ以上に何故バエルがサタンの技を使えるのかが解らない。

「大丈夫か、なのは?」

疑問はあるが、とりあえずは後回しだ。
そういうものだと無理にでも納得するしかないだろう。

「う、うん・・・なんとか・・・」

「それに・・・・どうやら許されざる暴食(ベルゼブブ)がこの世界に来たらしい。
お前たちと遊んでいる場合じゃなくなった。もう終わりにさせてもらう」

今まで姿を現さなかったベルゼブブが来たことで、バエルが何故か焦っている。
詳しいことはよく分からないが、大罪(むこう)は複雑な状況にあるらしい。
だが、もう終わりにしようというのには賛成しよう。

「こちらとしても早々に終わらせて帰りたいからな・・・。
ヴィヴィオ、もう少しで帰れるから、もうひと頑張りだ」

ベルゼブブはシャルに任せておけば問題だろう。
なら私はヴィヴィオからバエルを引き摺りだし、それはもう散々苦しませてから消す。

『うん・・・!』

偉いぞ、ヴィヴィオ。意識はしっかりしているようだ。
それにしても驚きだ。人間(ヴィヴィオ)の意識がここまで保つとは・・・。
こういうのを嬉しい誤算と言うのだろう。

「なのはも。もう少しだけ付き合ってくれ」

「大丈夫だよ、ルシル君。ヴィヴィオを助けるまでは落ちないよ」

私は無手で構え、なのはは“レイジングハート”を構える。
対するバエルは構えようとせず、ただ不動だ。しかも何やら表情が硬い。

「・・・っ、おおおおおお!!」

突然の咆哮。何だ、今のバエルの様子がおかしい。
が、そのまま私達へと突撃してくるバエルを迎撃するために動く。

「いくよ、ルシル君」

「ああ・・・!」

≪Blaster 2nd≫

なのはの魔力が跳ね上がる。ブラスターモードは自己ブーストの一種とのこと。
ここに来るまでに聞いていたが、実際に目にすると随分無茶をしている方法だ。
これはシャルとフェイトに怒られるだろうか? なのはを無茶させないと約束していてこれでは・・・・。

「ブラスタービット!」

“レイジングハート”のヘッド部分みたいな遠隔操作機が二基。
それがバエルに向けて飛んでいく。

「これ以上の無茶はしないこと・・・!」

「大丈夫・・・!」

そう告げてバエルを迎え撃つ。が、なのはの“大丈夫”は信じられないんだよな、悪いが。
そんなことを考えているうちに、バエルが目前という距離となる。

「これ以上私の邪魔をするなら・・・!」

ん? どこを見て言っているんだ?
確かに視線は私に向けられているが、話している相手はおそらく私じゃない。

≪我が手に携えしは確かなる幻想≫

兎も角、まずはバエルの動きを封じる。
私とバエルの高機動戦になのはがついて来られない。

――魔法の射手(サギタ・マギカ)戒めの風矢アエール・カプトゥーラエ――

――天の鎖(エルキドゥ)――

――レストリクトロック――

ぎこちない動きで拳打を打ってきたバエルの右腕を弾き、ゼロ距離で空気による束縛を行う術式と神性あるものに効果を発揮する天の鎖を発動させる。
そしてブラスタービット二基からもバインドがかけられる。
合計32重の捕縛結界。捕えた。完璧に極まった。が、

「・・・フッ」

笑みを浮かべるバエル。何が可笑しい・・・?

『ルシルパパ! なのはママが・・・!』

ヴィヴィオの念話でようやく気づいた。
バエルの笑みの正体を。今まで私しか狙っていなかったから油断した。

「くそっ・・・・!!」

すぐさま後ろに居るなのはへと向かう。
視界に入るのは、なのはの頭上に輝く無数の黄緑色の光球と“ルートゥス”が七。
サタンのレーザーと“ルートゥス”。なのはには神秘(アレら)を防ぐことは出来ない。

「なのは!!」

私の声に、なのはもようやく自分が置かれた立場が解ったようだ。
頭上を見上げ、すぐさまそこから離脱しようとするがおそらく間に合わない。
今から防性の複製術式じゃ遅すぎる・・・・ならば、

女神の聖楯(コード・リン)!!」

制限の解かれていない上級術式を使用する。
レーザー群ならもっとランクの低い術式でもいい。
だが“ルートゥス”は別だ。アレを防ぐなら相応の神秘がないといけない。
魔力炉(システム)が軋みを上げる。だから何だと言うんだ。

『ルシルパパ!!』

胸の痛みを無視してバエルの方へと視線を戻す。
そこには捕縛結界を粉砕し、“ルートゥス”を右手にしたバエルがいた。
虹色の閃光を噴き出す翼。一気に加速してすぐ目の前に現れ、バエルは“ルートゥス”を振り上げる。

捕縛結界(アレ)をこうも簡単に・・・!?」

もう少しはイケると思っていたが、これには驚きを隠せない。
すぐさま“グングニル”を取り出し迎撃に移る。
“グングニル”を“ルートゥス”に向けて斬り上げる。
だが“グングニル”は “ルートゥス”を、そしてバエルをすり抜ける。
私は勢い余って体勢を崩してしまった。

「っ、幻影・・・!? しまっ・・・!」

気づいた時には遅く、バエルが私の懐深くに侵入し、

―― プラズマスマッシャー ――

フェイトの砲撃魔法。虹色の雷光が至近距離で爆ぜる。

「っぐぅぅぅ・・・!」

全ての魔力を防御に回す。聖楯発動の所為で上手く魔力が精製できないが、ないよりはマシだ。
本来、ただの魔法ならこうも苦労しないが、神秘が加算されている以上はこれくらいはしないと落とされる。

『ルシルパパ!』

「しぶといな・・・!」

「ルシル君!」

未だに続くレーザー斉射のなか、なのはが心配してくれる。
ヴィヴィオも自分の方が辛いというのに・・・・。

「だから・・・負けられない・・・!!」

ようやく砲撃が途切れた。なんとか耐えきることが出来た。
だが、それでバエルの攻撃(ターン)が終わったわけじゃなかった。
バエルに頭を鷲掴みされる。それを外そうとするが思っている以上に力が強い。

「潰れてしまえ!!」

私の頭を掴んだまま高速飛行に入るバエル。
これから何をするのか嫌でも解る。この“聖天の極壁(ヒミンビョルグ)”での戦い方だ。
私がよく使う、結界内に点在する球体にでも叩きつけるつもりだろう。

「高町なのはと共に逝くがいい。そのあとでゆっくりと取り込んでやる」

「っ! 逃げろ、なのは!!」

バエルは私を一度なのはに叩きつけてから、なのは共々球体に突っ込むつもりだ。
そんなことをすれば私は兎も角としてなのはが耐えられない。

「くそっ、離せ!」

「無駄だ。さぁ、もう少しで――なにっ!?」

急にバエルが停止した。浮かべる表情は苦悶、驚愕、憤怒。
ゆっくりと私の頭から右手が離れていく。

「ルシル君・・・」

なのはが私の傍へと来た。なのはへの攻撃は終わっているということだ。
なら聖楯はもう必要ないな。これ以上持続展開させておくのはまずい。

「どうなって・・・?」

なのはの疑問に答えられない。私にも判らないからだ。

『これ以上・・・なのはママとルシルパパを傷つけるなんて許さない!!』

「「ヴィヴィオ!!」」

「おのれ・・・たかが人間が、しかもさらに下等な子供に・・・・・!」

バエルが自分の頭を抱え、苦しみ始める。
まさか、バエルが動きを停めたのは、ヴィヴィオの意思によるもの・・・?

『なのはママ。ルシルパパ。今の内に・・・わたしがバエルを停めてる間に・・・!』

「ヴィヴィオ・・・・。ルシル君・・・・!」

「ああ。ヴィヴィオ、なのはママからキツイ一撃だ。耐えられるか?」

『うん・・・・耐えるよ・・・!』

強い意志だ。これならヴィヴィオは大丈夫だろう。
なら私は、私に出来ることをしよう。

≪我が手に携えしは友が誇りし至高の幻想≫

使用するのは、大戦時においては最強の捕獲結界と謳われた結界術式。
そして以前、“ジュエルシード”の暴走を抑え込んだものだ。
あのときは使用そのものを禁じられていて、その上魔力量がAAということもあり死にかけたが、今は使用の制限も受けていないし、魔力量もSSSだ。
だが、それでも圧倒的に足りていないが、前に比べればペナルティは弱くなる。

「バエル。これが人間(ヒト)の強さだ。お前は“意志(こころ)”を計り損なったんだ」

「馬鹿・・・な・・・有り得ない・・・――「わたしを返して」――・・この・・・ような・・・」

バエルの言葉の中に、少し大人びたヴィヴィオの声が混ざる。
バエルの意識が、ヴィヴィオの意識に負け始めている証拠だ。

「・・・・結界王の名に基づき具現せよ。一方通行(サンダルフォン)の聖域!!」

バエルを閉じ込める桃色の正八面体の捕獲結界。
その効果は以前と同じ。結界内に捕えた対象の魔力行使を全てキャンセル。
そして外からはいくらでも中に魔力干渉が行えるという、当時反則術式の一角を担っていたものだ。
これで一切の魔力行使は出来ない。あとはバエルの持つ神秘による防衛力だが、それに対しての策もある。

「ヴィヴィオ・・・・いくよ」

「・・・うん!」

バエルが――いや、ヴィヴィオが頷く。
ヴィヴィオの身体を支配することすらもう出来ないようだ。

「やめ・・・わた・・・なるんだ・・・亡失・・・」

亡失になる? まさか、バエルがやろうとしていたことは・・・・!
もしそうなら、ここで確実に斃さなければならない。
絶対殲滅対象(アポリュオン)の空席を埋めるような真似だけは絶対にさせない。
ナンバーⅣ亡失のアーミッティムス。・・・嫌なことを思い出してしまった。くそっ!

「レイジングハート・・・!」

≪Excellion Buster≫

“レイジングハート”、ブラスタービット二基の先端に桜色の閃光が生まれる。
カートリッジを何発かロードし、さらにその威力を高める。

「エクセリオン―――」

ここでバエルの神秘への対抗策を使う。

「神器王の名において・・・・!」

「―――バスタァァァーーーーーーッ!!!」

エクセリオンバスターが発射されたと同時に、射線上にアースガルド魔法陣を展開する。
これが対抗策。エクセリオンバスターに、私の持つ神秘を乗せる。
これは私の真技のひとつ神断福音グロリアス・エヴァンジェルに使われる術式の一つだ。
神秘と威力を加算させる魔法陣を展開する術式。今回は神秘限定としたが。

「っううううああああああああ・・・・!!!」

エクセリオンバスターの直撃。防御という術が出来ないためにクリーンヒット。
そして一方通行(サンダルフォン)の聖域内部で爆発が起き、すぐさま術式を解除する。

「「ヴィヴィオ!!」」

未だ晴れない煙の中から、煙を引きながら何かが真下にある白い球体へと落下していく。
あれはヴィヴィオで間違いない。すぐになのはが落下するヴィヴィオへと追い縋る。
そして私は落下するヴィヴィオとは違う方に飛ぶ。何故なら煙の中で輝くレリックを目にしたからだ。
バエルが健在なら、相手をしないといけない。

「ヴィヴィオは任せた」

もうなのはには聞こえないだろうが言っておく。

「何故だ・・・何故・・・こんな・・・!!」

バエルの姿を視認。所々が砕け落ちてはいるものの、確実に存在していた。
ああ、よかった。この手でお前を斃せることが出来て・・・。

「バエルーーーーッ!!」

「っ! 欠陥品・・・!」

――殲滅せよ(コード)汝の軍勢(カマエル)――

もう手加減する必要はない。後先考えずにカマエルの槍群を放つ。
もう頭の中は怒りで沸騰している。こいつだけは散々痛めつけてから消す。

「おおおおおおおッ!!」

カマエルに対抗するように“ルートゥス”が19本射出される。
同時にページによる防御や、サタンのレーザー群も来るが関係ない。

――崇め讃えよ(コード)汝の其の御名を(ミカエル)――

爆散する無数の蒼い閃光。そこに中級術式最強の連続砲撃ミカエルを発動。
背にある22枚の蒼翼をバエルに向かわせ、連続砲撃を叩きこむ。
それと同時にバエルを閉じ込める檻を形成していく。
砲撃なんて間接的な滅びではなく、この手による直接的な滅びのために。

「これで私たちの勝ちだ、バエル・・・!」

檻が完成する前に飛び込む。そして完成した檻の中で向かい合う私とバエル。

「イヤダ・・・オレハ・・・・ミトメナイ・・・・」

両腕両足を完全に砕かれ、残すところ胴体と頭部のみのバエルが囁く。

「認めない? それこそ私が認めない。バエル、貴様はやりすぎた。
私の大切な友を傷つけた罪。この世界の本来辿るべき道筋を混乱させた罪。
スカリエッティに代わって、貴様が償え・・・・・」

頭を鷲掴みにする。

「これで終幕だ・・・・・・!」

バエルの体内に、私の神秘を侵食させる。
その結果起こるのは、

「ッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・!!!」

内部からの破裂。胴体部のいたるところから破裂が連続して起きる。
そして最後は鷲掴みにしている頭部が破裂する。

「・・・・さらばだ」

レリックは完全に砕け、バエルも消滅した。


†††Sideルシリオン⇒なのは†††


ヴィヴィオが煙を引きながら白い球体に落ちていく。

「レイジングハート!」

≪Floater≫

ヴィヴィオに浮遊効果の魔法フローターを使う。
これで、あの球体に叩きつけられる心配はなくなった。

「ヴィヴィオ!」

頭上で起こっているルシル君とバエルのとんどもない戦いを余所に、白い球体の上で倒れているヴィヴィオに近づこうとした。

「来ないで・・・!」

だけどヴィヴィオは私を制止させる言葉を言った。
どうして?って思う前に、必死に立ち上がろうとするヴィヴィオを見て思い出す。
それは以前、ヴィヴィオが転んだときのこと。

「一人で・・・立てるよ・・・。強くなるって・・・・約束したから・・・」

あのときは一人で立てなくて、フェイトちゃんとシャルちゃんに起こしてもらった。
そして今、ヴィヴィオは一人で立とうとしている。

「ヴィヴィ・・・オ・・・!」

ゆっくりと立ち上がったヴィヴィオの許に急いで向かって、強く抱きしめる。

「なのはママ・・・」

「ん? なに、ヴィヴィオ・・・?」

「大好き・・・」

「っ! うん・・・うん・・・。ママも、ヴィヴィオのことが大好き・・・!」

無事で良かった。帰ってきてくれて良かった。
こんなにも辛い目に遭っても、それでも強くなってくれて良かった。

「ヴィヴィオ・・・」

「ルシルパパ・・・。ありがとう・・・」

「・・・ああ。どういたしまして・・・ヴィヴィオ」

見ればルシル君の目にも涙が浮かんでいる。
ルシル君が泣いてる姿見るの初めてかもしれないなぁ。

「さぁ、帰ろう。みんなの待つ場所へ」


†††Sideなのは⇒はやて†††


ヴィータを別働隊に預けて、ここ玉座の間に来たのに誰もおらへん。
よく見れば壁に大きな穴が開いとるから、この先におるんかと思って行ってみると、そこに居たのは戦闘機人が一人。
随分ボロボロやけど命に別状はなさそうや。その戦闘機人を背負って玉座の間に戻ってみれば、

「なのはちゃん! ルシル君! ヴィヴィオ!」

探していた三人が居った。

「三人ともどこにおったん!? 探しても居らんかったで心配し――」

≪Heiliger Kaiser...keine Reaktion. Funktionsverlust des Systems.
Alle magische Verbindung wird abgehängt.
Für die Regeneration des Kronschiffs. Alle Mann am Ort, Minifunktion!
(聖王陛下、反応ロスト。システムダウン。
艦内復旧のため、全ての魔力リンクをキャンセルします。
艦内の乗員は、休眠モードに入ってください)≫

ゆりかごの放送が流れた直後、その内容通りに魔力結合がキャンセルされた。

「っ・・・!?」

リインとのユニゾンも強制的に解除された。

「はやて、詳しい話はあとだ。まずはここか――」

私が背負っていた戦闘機人を肩に担いで、ルシル君が出口に向かおうとしたとき、

≪Alle Mann, auf seine Position! Ich wiederhole. Alle Mann,
auf seine Position!
Wir beginnen die Notregeneration des Beschädigungsschiffs.
Entfernen Sie sich von der Beschädigungsmauer sowie vom Notverschlag!
(乗員は、所定の位置に移動してください。繰り返します。
乗員は所定の位置に移動してください。これより、破損内壁の応急処置を開始します。
破損内壁・および非常隔壁から離れてください)≫

「あかん! 急いで出口へ向かうんや!」

でも間に合わんかった。出口も閉じられてしもうた。

「・・・はやて。この戦闘機人を頼む」

「え? ちょっ・・・ルシル君・・・?」

もう一度私に戦闘機人を預けて、ゆっくりと閉じられた扉に向かう。
そこで解った。この場でただ一人魔力を扱えるんがルシル君だけなんやて。

「ルシル君、無茶しないでね? この中で一番ダメージ負ってるのルシル君なんだから」

「出口の一つや二つを破壊するなんて、そんな大した――っ!?」

「「「「っ!!」」」」

なんやこれ・・・? あかん、体が震える。これは・・・恐怖・・・?


「あぁ、許されざる傲慢(ルシファー)は斃れたのですか・・・。なら、僕がここに来たことは無駄足だったというわけですね」


背後から聞こえた男の人の声。
私の震えの原因である威圧感は、その人から発せられるものや。
恐る恐る振り返ってみる。正直本能がこう告げてくる。
見るな、って。振り返った先、玉座に座っているのは神父さんの着るようなキャソックを身に纏った男の人。
そして、左手に持っているのは刀身が赤い血に染まった・・・、

「キルシュブリューテ・・・だと? 何故お前がそれを持っている!?」

ルシル君が私たちをあの人から庇うように前に躍り出る。
そしてルシル君の言うとおり、あの人が持っているのはシャルちゃんの刀やった。


散々暗躍したルシファーもようやく退場となりました。さようなら~。
実はこの対ルシファー(バエル)戦、もう少し粘りたかったんですけどね・・・。
やめました。もういいよ、ヴィヴィオを傷つけるなんて・・・と思いまして。
それだと言うのにここまで長く?なってすいませんでした。

あと、なのはのブラスター3とスターライトブレイカーex-fbの出番なし。
これは前回のフェイトと同様に理由がありますので、ご了承のほどを。

そして次回が3rd最終話にして最終決戦となります。
シャルは? ルシルは? ベルゼブブは? なのはたちは? そして世界は?

複製術式
魔法先生ネギま!:魔法の射手(サギタ・マギカ)戒めの風矢アエール・カプトゥーラエ

Fate/Stay night:天の鎖(エルキドゥ)

ANSUR:天花の麗盾クリュスタッロス・アントス
使用言語は古代ギリシャ語。クリュスタッロス:氷。アントス:花。
大戦時、最強の氷雪系魔術師と謳われた、ルシルの恋人シェフィリス・クレスケンス・ニヴルヘイムの魔術です。

ANSUR:一方通行(サンダルフォン)の聖域


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