レヴィヤタンvsベルゼブブ戦イメージBGM
BAYONETTA『You May Call Me Father』
誰がために君は・・・ ~Leviathan~
†††Sideエリオ†††
ルーはレヴィヤタンのおかげで止まってくれた。
よかった。一時はどうなるかと思ったけど、もう大丈夫そうだ。
それで張り詰めていた緊張が解けて、キャロと顔を見合わせて笑った。
でも、
「あぁ、君はそっち側へと寝返ったんですね、許されざる嫉妬」
「・・・許されざる暴食・・・」
僕たちの目の前に現れた男の人。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い・・・・嫌だ!
「はぁはぁはぁはぁはぁ・・・・エリオ・・・・君・・・」
呼吸が苦しい。ガチガチ、って歯が鳴る。体の震えも涙も止まらない。
見ればキャロも僕と似たような状態だ。顔色はすごく青くて、すごく震えている。
レヴィヤタンに、ベルゼブブって呼ばれた男の人の声を聞いただけで、終わった、ってことしか頭に浮かばなかった。
「・・・ぅ・・ん・・・っ!?」
レヴィヤタンに抱えられていたルーが目を覚ましたみたいだ。
だけど起きてすぐにこの状況は最悪なことだ。だからすごく怯えている。
「・・・ルーテシア・・・大丈夫・・・だから・・・。
ガリュー・・・ルーテシアを・・・お願い・・・」
レヴィヤタンがルーの頭と背中を優しく撫でて落ち着かせている。
正直羨ましい。フェイトさんとルシルさんがここにいれば僕たちも安心できるのに・・・。
ガリューはベルゼブブという男の人を警戒しながら、レヴィヤタンからルーを受け取った。
「レ・・・ヴィ・・・? わたし・・・?」
「・・・許されざる暴食、・・・放っている・・・威圧感を抑えて・・・。
みんな・・・怖がってるから・・・。早く・・・・!」
「ふぅ、随分と人間に優しくなったんですね。あぁ、それもいいでしょう。
僕に文句はありませんよ。えぇ、文句はありませんとも」
そう言い終えたら、呼吸も軽くなって震えも涙も少しずつ止まっていく。
「・・・目的はなに?・・・」
レヴィヤタンが僕たちを庇うようにして前に歩み出た。
悔しかった。いくらレヴィヤタンが人間じゃなくても、女の子に守られるというのがすごく情けなかった。
でも震えは止まっても体が自由に動かない。さっきの恐怖が抜けきっていない。
それでも何とかキャロの傍まで歩いて、キャロの手を握る。
それだけで安心できるのが分かる。キャロも僕ときっと同じ。
「目的、ですか? 大罪の目的はすでに君も知っているでしょう?
あぁ、あとは裏切り者である許されざる傲慢の抹消ですね。
いけませんねぇ、あぁ、いけません。主の目的を妨害するとは、なんと罪深い」
「・・・じゃあ・・・ルーテシアたちは・・・関係ない・・・」
「それなんですが、どうもお腹が空いていましてね。
ですので食べさせてもらおうかと思っていまして。美味しそうですし・・・」
ベルゼブブが僕たちを見回した。背筋が凍る、というのはこういうことなんだと思った。
さっきの威圧感はなくても、恐怖だけはきちんと存在していた。
「・・・させるとでも・・・?」
「・・・止められるとでも?」
見上げるレヴィヤタンに、見下ろすベルゼブブ。
レヴィヤタンは僕たちに背を向けているから見えないけど、きっとその目は怒りで満ちていると思う。
そう分かるくらいにレヴィヤタンから怒りが感じ取れた。
そしてそれは一瞬だった。レヴィヤタンが消えたと思ったら、ベルゼブブが遠く離れたビルまで吹き飛ばされていった。
「・・・逃げて・・・。許されざる暴食は・・・わたしが斃す。ガリュー・・・キャロ・・・エリオ。・・・ルーテシアを・・・お願い」
「っ! レヴィ・・・! ダメ・・・!」
ガリューに抱えられているルーが弱々しく手を伸ばして、レヴィヤタンを止めようとする。
レヴィヤタンはルーに歩み寄ってその手に、
「・・・わたしの・・・大切なリボン・・・預かって・・・約束。
これがあれば・・・また会える・・・から。・・・だから大丈夫・・・。
ちゃんと預かってて・・・わたしに・・・リボンを・・・返すまで・・・」
ヘッドドレスに付いていた蒼い大きなリボンを解いて渡した。
ルーは何か言いたそうな顔をしているけど、レヴィヤタンの笑みを見て口を閉じた。
「・・・安心して・・・。わたしは・・・絶対負けない・・・」
「・・・やく・・そく・・・だから」
「ルーテシア・・・うん、約束・・・」
「絶対・・・また会おうね・・・」
指切りをしたルーとレヴィヤタン。
そしてガリューと白天王、地雷王がここから離れて行った。
「・・・二人も・・・早く・・・」
ベルゼブブが吹き飛んで行ったビルが崩壊していくのが分かった。
僕たちがここにいても、もう何も出来ることがない。
「・・・フリード!」
「エ、エリオ君・・・!」
急いでフリードの背に乗ってルーたちの後を追った。
「・・・きっとまた会おう、レヴィヤタン・・・」
だから負けないで、と小さく声を出した。
†††Sideエリオ⇒レヴィヤタン†††
VS―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦✛
其は大罪が暴食ベルゼブブ
✛―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦VS
わたしが対峙するのは大罪最強である“暴食のベルゼブブ”。
でもわたしは負けるつもりなんてない。
「あぁ、今のが終極様から頂いた位相空間転移ですか。
しかし、扱いきれていないですね。ギリギリですが見えていましたよ?」
それは当然の話。位相転移は元々“界律の守護神”に与えられる力だから。
それを許されざる嫉妬が扱いきれるはずがない。
「・・・・」
だから反論はしない。
「・・・今代の“嫉妬”は随分と・・・いえ、関係ないですね。
御馳走だったあの子たちも逃げてしまいましたし、あなたを頂きましょうか」
わたしを取り込んでお腹を満たす気だ。
「・・・見えていても・・・避けられないなら・・・意味がない・・・」
「あぁ、確かにそうでしょうね。ですが、それは些末なことです。
何故なら“嫉妬”が“暴食”に勝てるわけがないのですから」
許されざる暴食は自信満々だ。でもだからと言って、わたしを好き勝手させるつもりなんてない。
「・・・“嫉妬”を・・・甘く見ると・・・死ぬよ?・・・」
「あぁ、いいでしょう。見せてください。その自信がどこから来るのかを」
「・・・速さを制する者こそ・・・戦いを・・・制す・・・!」
――位相空間転移、座標設定、再出現後“Mors certa/死は確実”発動――
位相空間へと入り込み、0,0001秒後に元の空間へと戻る。これがわたしの限界。
そして出現ポイントは許されざる暴食の背後。わたしはぬいぐるみを許されざる暴食の背中に押し当てて、
「・・・消えて・・・」
――Mors certa/死は確実――
砲撃、とこの世界で呼ばれる一撃を放つ。
許されざる暴食は、ぬいぐるみを背中に押し当てられて初めて気づいた。
けどもう遅い。ゼロ距離からの一撃だ。いくら最強でも無傷じゃ済まないはず。
「―――むっ!?」
直撃。砲撃に飲み込まれた許されざる暴食がまた吹き飛んだ。
いくら最強でも、わたしの攻撃を避けられず、わたしに攻撃を中てられないのなら、それは単なる障害物でしかない。
「ゲホッゲホッ・・・ふぅ。・・・あぁ、今のは効きました。
見えてはいても避けられないというのは本当に厄介ですね」
大してダメージは入っていないみたいだ。さすがは最強の罪。
「・・・なら・・・完全に斃れるまで・・・撃ち続けるだけ・・・」
一撃でダメなら二撃で、それでもダメなら三撃四撃と中てていけばいい。
不完全でも位相転移があれば、そう苦労しないはず。
あとはわたしの体が位相転移に耐えきれずに自壊してしまうまでに終わらせればいい。
そうしたらまたルーテシアに会える。
「あぁ、なるほど。攻撃力のない君が、僕に勝つにはそれしかないですね。
僕からの反撃を許さなければ、君は無傷で勝てるでしょう。転移があるのですし。
そう思えば、現状においては僕ではなく君こそが“最強”でしょうね」
そんなことはどうでもいい。今のわたしにとって重要なのはルーテシアの安全。
そしてこの世界の存続。あのエリオやキャロも・・・ううん、みんな守る。
第三の力と第四の力がいれば可能なことだ。
「ですが・・・!」
「わたしは・・・必ず勝つ・・・。だから・・・早く消えて・・・!」
“嫉妬の力”、そして“嫉妬の概念”の本体のぬいぐるみを前に突き出す。
このぬいぐるみがあるからこそわたしは戦えて、守ることができる。
「来て・・・罪眼・・・」
わたしの呼びかけに応えて現れた14体の罪眼。許されざる暴食を囲むようにして配置、狙うは集中砲火。
「おぉ、これはこれは・・・いけない。あぁ、いけないです・・・ねっ!」
「・・・撃って・・・!」
――Mors certa/死は確実――
14条の閃光が許されざる暴食を前後左右、そして上からも襲う。
そこへわたしも砲撃を放つ。回避はできない。逃れる方法は防御だけ。
でも、
「!?」
許されざる暴食は何もしないまま全ての砲撃を受けた。
わたしのすみれ色の光と罪眼の白色の光が爆ぜる。
その光に飲み込まれて自滅しないために、通常転移で別の建物の屋上に移る。
「・・・・う・・・そ・・・!?」
光が治まって、そこには服がボロボロになっている許されざる暴食が佇んでいた。
いろんなことに驚いた。何もしないで攻撃を受けたこと。
全て直撃だったのに、大したダメージはなさそうなこと。
「・・・ふむふむ、大体この程度ですか」
破けていた上着を脱ぎ捨てて、何か理解したみたいに何度か頷いた。
何を?とかは考えるまでもない。
「わたしと・・・罪眼の神秘の威力を・・・確かめた・・・?」
「ええ、そうです。で、僕の上着にダメージを与えたのは君の一撃だけです。
つまり、罪眼の攻撃は僕には通用しない、ということです」
言い終えた瞬間、許されざる暴食が一気に距離を詰めてきたから、すぐさま位相転移で離れる。
元の空間に戻って、すぐさま砲撃を四発続けて放つ。
許されざる暴食は、二つは防御、一つは回避、一つは直撃だった。
「ゲホッ・・・・むぅ、攻撃力の低さが救いですね。
防御2。回避1。直撃1。・・・・あぁ、なるほどなるほど・・・」
まさか・・・調査・・・している・・・? わたしと自分との戦力差を・・・?
もしそうなら、完全にわたしの動きを見切られる前に・・・・斃す!
罪眼を、許されざる暴食の行動を制限するバリケードに利用する。
“力”を全て攻撃に使う。これで絶対にダメージを与えられる。
――Mors certa/死は確実――
許されざる暴食に一直線へ向かう全力の一撃。この世界に来てここまで威力を高めた攻撃はこれが初めてだ。
「これは・・・!」
驚いた顔をした許されざる暴食。でも何をしてももう手遅れ。
防御出来るようなものじゃないし、回避も今からじゃ遅い。
そして砲撃が爆ぜた。視界を覆うすみれ色の閃光。
罪眼には悪いけど、許されざる暴食を斃すための犠牲になってもらった。
わたしはさっきと同じようにして通常転移。安全圏に離れて様子を見る。
「・・・・っ!?」
いない・・・。今ので斃した・・・? ううん、いくらなんでも楽観すぎる・・・。
辺りを探ろうとしたとき、直感が働いた。それに従ってすぐにその建物の屋上から離れる。
そのすぐあとに、わたしが立っていた場所に大きな穴が出来た。
それは何かが食べたような・・・・食べた・・・暴食!!
「あぁ、これは驚きました。なかなかに良い勘をしています」
穴から飛び出してきたのは、やっぱり無傷な許されざる暴食。
わたしの一撃を、建物の中に逃げることでかわしたんだ。
そしてわたしのいる場所の足元に移動して、死角になる真下からの襲撃。
「・・・・やっぱり・・・強い・・・」
こうなれば手段は選んじゃいられない。
位相転移の連続、そして出現ポイントから連続で砲撃を放つ。
――Mors certa/死は確実――
「ぐぅ! これは・・・・むぐっ・・・!!」
順調にダメージを与えられている。
塵も積もれば山となる戦法。三代前の許されざる嫉妬の考えたもの。
だけど、その分わたしの体を削っていっている。
今、右手の甲に小さくヒビが入ったのが見えた。これ以上は自壊していく。
「ぁがっ!?・・・フフ、やりますね・・・・許されざる嫉妬!」
危険危険危険。許されざる暴食が少しずつわたしの動きについてきてる。
早く決めないと・・・わたしが・・・・砕け散る。
次の転移で最後にして、出現直後にもう一度全力の一撃を放つ。
――位相空間転移、座標設定、再出現後“Mors certa/死は確実”発動――
位相空間に進入、再出現後に・・・・!!
「さぁ、捕まえましたよ」
「ぁうぐっ!」
出現ポイントを割り出された!? 許されざる暴食の左手がわたしの胸倉を掴んで持ち上げる。
「ぅくっ」
かなり危険だけど、このまま位相転移に持ち込んで離脱。
ゼロ距離から溜めたままの一撃を放てば・・・いける!
「あぁ、そうはさせません」
「っ!!」
思いっ切り建物の床に叩きつけられて、そのまま床が砕けて貫通。
一番下の階まで叩き落とされた。ここに落ちてくるまでに抜いた床は18層。
苦しい。見たら、右の小指と薬指が砕け散っていた。
それがなんだ、こんなところでわたしは・・・・死ねないんだ。
こんなときに思い出すのは、許されざる嫉妬の始まり。
気がつけばわたしは許されざる嫉妬となってた。
頭の中には知るはずもない無限の知識と、体の中には持ち得ないはずの“力”。
それがなんとなくイヤで、創り出したぬいぐるみという器に全て転写した。
だけど、頭の中にある知識だけはどうしようもなかったのを覚えてる。
そしてわたしは独りじゃなかった。暴食、色欲、強欲、憤怒、怠惰、傲慢。
そしてわたしという嫉妬。七つで一つの大罪、ペッカートゥム。
わたしの初めての仕事は、この次元世界と呼ばれる箱庭での戦いになった。
ここに来て15年、という時間の概念の中でわたしは・・・・。
「ぁ・・・く・・・はや・・く・・・立たない・・・と・・・」
今見るようなものじゃないのに・・・・・。
それに早く立ち上がって、許されざる暴食の攻撃に備えないと。
瓦礫に手をついて立ち上がる。大丈夫、まだまだ戦える。
今の内に体の損傷を治しておいたほうがいいかもしれない。
「ポテンティア・サーナト・・・」
――Potentia sanat/力は療す――
瓦礫の陰に隠れて、体中にあるヒビを治す。
許されざる怠惰の“再生”があればもっと簡単に、そして早く治る。
だけど、わたしの力は“転移”だ。無いものねだりは無意味。
それからすぐ、わたしが落ちてきた穴の床の縁を蹴る音が連続で響く。
許されざる暴食が屋上からここまで降りてきた。
「あぁ、どこにいますか?」
そう言っている許されざる暴食の靴音が近づいてくる。
確認。ダメージ率39%、身体損傷率16%、転移限界数残り2回。
少しは回復できてる。けど、位相転移が出来るのはあと2回。
通常転移だったらほぼ無数だけど、まず通用しないはず。
転移完了までの時間も掛かるし、何より出現ポイントが波打つっていう欠点がある。
残り二回の位相転移で斃さないと・・・。
「あぁ、見つけました」
「なっ!?」
いつの間に!? 違う、そんなことを考える暇があるなら回避を・・・!
迫る許されざる暴食の左手を側転で避けて、溜め無しの砲撃で迎撃する。
たぶんダメージを与えられないと思うけど、目くらましくらいにはなる。
わたしと許されざる暴食の間に閃光が爆ぜる。今すぐにここを離れないと、
「あぁ、逃がしませんよ?」
許されざる暴食の声がハッキリと聞こえた。
「・・・え・・・?」
視界が白に染まる。分かるのは、静かだけど荒々しいっていう矛盾の暴風が吹いたこと。
今のわたしは足が地面に着いていない。浮いている? 攻撃を受けた? 判らない。
「あぐっ・・・エホッエホッ・・・」
背中に衝撃が来た。攻撃じゃない。背中から地面に落ちたんだ。
受け身も何もないから咽た。両手両足の感覚はある。どこも失ってない。
「・・・一体・・・何が・・・!!」
視力が戻って、最初に見えたのは地面。そして見回して分かった更地。
「そんな・・・さっきまで・・・建物がたくさん・・・あったのに・・・」
でも直径1kmほどの空間には何も残っていなかった。
今のが許されざる暴食の攻撃・・・?
「本当ならもっとイケますよ? ですが単なる建造物を食べても意味ないですから」
「っ!!」
真後ろに許されざる暴食が立っていた。
「あぁ、驚いてくれて嬉しいですよ」
食べた。それが許されざる暴食の持つ・・・力・・・。
もし、この攻撃を初めから使われていたら、わたしはそのときに負けてる・・・。
「あぁ、お気づきでしょうか? 僕が少しだけ手を抜いていたことに。
さて、君の僕に勝てる、という自信は今どうなっているのか教えてください」
「っ・・・・約束・・・したんだ・・・!」
位相転移で許されざる暴食の頭上10m付近に移動する。
残りあと一回だけど、これで決めればそれでいいだけ。
――Deus Caedere/神殺し――
ぬいぐるみを頭上に掲げて、圧縮した神秘の塊を生み出す。
わたしの持つ最高の一撃。威力は申し分ない。直撃させれば絶対に勝てる。
「・・・消えろぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」
ぬいぐるみを振り下ろすと同時に、神秘の塊も許されざる暴食に向けて落ちる。
許されざる暴食は動かない。真っ向から迎撃するつもりだ。
「ああああああっ!!」
「おおおおおおっ!!」
わたしと許されざる暴食の咆哮。そして圧倒的なすみれ色の閃光が爆ぜた。
視界がまた光によって妨げられる。音も聞こえない。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ・・・・・」
地面に降り立って、周囲を見回して許されざる暴食の姿を探す。
地面に穴は空いてない。さっきと同じ避け方はしてないってことだ。
「・・・・勝った・・・の・・・?」
返る声はない。
「・・・やった・・・?・・・やった・・・!」
わたしが、最弱のこの許されざる嫉妬が最強の許されざる暴食に勝ったんだ。
会える。これで胸を張ってルーテシアに会えるよ・・・・嬉しい・・・。
地面にへたり込んで歓喜する。最弱だってもう言わせない。
「・・・何が嬉しいんですか、許されざる嫉妬?」
「っが・・・!?」
今一番聞きたくない声が聞こえた。次に私を襲ったのは背中に突き刺さる衝撃。
そこで解ったのは蹴り飛ばされた、ということ。吹き飛ぶ。距離は大体16m程。
それから地面に叩きつけられて、何度もバウンドしながらさらに吹き飛ばされ続ける。
痛みとかそういうのはもう分からない。視界が回る。空と地と・・・。
遠くに見えたはずの建物の壁を突き破って、柱に叩きつけられて、ようやく止まった。
「ぁ・・・・あ・・・・ぁ・・・」
うまく喋れない。ダメージが深刻すぎる。でも・・・・わたしは・・・諦めない!
わたしは叩きつけられた柱に手をついて立ち上がる。
そこで分かったのは、わたしの右腕の肘から先が完全に砕けて消えていたこと。
確認。ダメージ率69%、身体損傷率46%。
――Potentia sanat/力は療す――
気休め程度でしかないけど、損傷を回復させる。
だってわたしの意思はまだ折れてない。戦えるんだから・・・。
「・・・待ってて・・・ルー・・・テ・・・シア・・・」
傍に落ちていたぬいぐるみを手に取って、支柱に背中を預けてしゃがみ込む。
徐々に右腕が再構成されてく。よかった。
右腕がないなんて見っとも無い姿を、ルーテシアに見せられないもんね。
ここでまた過去が頭の中に浮かぶ。
スカリエッティに頼まれて、初めてルーテシアとゼストに会ったあの日の事。
わたしが第三の力のところへ向かうとき、「気をつけて」って言って心配してくれた。
嬉しかった。戸惑った。その短い言葉に、何故か泣きそうになった。
それからは許されざる傲慢に頼まれて、ルーテシアたちと行動を一緒にした。
途中で小さいの、アギトが合流した。初めの内、アギトはいつもケンカ腰だった。
それがルーテシアとゼストを想っての事だと思えば、全然気にならなかった。
しばらくしてその態度も変わってきた。わたしとルーテシアが仲良くしてたから、と今は思う。
アギトから料理を教わった。それは何となくの行動、ううん、それは・・・・、
「わたしの・・・生きてた頃の・・・記憶の所為・・・だ・・・」
その頃からわたしは、自分が人間だったときの記憶が蘇り始めた。
お母さんとお父さん、わたし・・・三人家族・・・。
どこにでも在る普通の家族だった・・・ような気がする。
そんなルーテシアたちは、レリックって呼ばれてる赤い石を探していた。
それがあればルーテシアのお母さんが目を覚ます、って聞いた。
スカリエッティのラボに呼ばれて、初めてルーテシアのお母さんを見た。
激しい頭痛だった。そこで全部思い出した。
わたしは・・・殺されたんだ、お父さんに。お母さんの目の前で。
そう、わたしの家族は普通じゃなかった。いつもケンカばかりの両親。
いつも怯えていたわたし。わたしは望んでいたんだ。普通の家族を。
でも、結局それは叶わないで、わたしは殺されて・・・嫉妬になった・・・。
「・・・それから・・・だった・・・。わたしが・・・ルーテシアを・・・好きになったのは・・・。ゼストも・・・アギトも・・・大好き・・・」
独り言が静まりかえる建物の中に響く。気がつけば、右腕の再構成が終わっていた。
許されざる暴食は・・・・まだ来ない。だけど油断はできない。さっきからその油断で追いつめられてる。
確認。ダメージ率45%、身体損傷率21%。
「っ!」
姿は見えない。だけど間違いなく近い。意識を許されざる暴食捕捉に傾ける。
後の先を取って、カウンターで撃破する。これが最後の接敵になるはず。
(近い。5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・!)
柱の陰から出て、許されざる暴食を視認する。
向こうもわたしに気がついた。少し驚いてる感じ。なんかスッキリした。
「いい度胸です!」
両手をわたしに翳した許されざる暴食。
そしてわたしは見た。両手の間に、幾何学模様で構成された光の口が出来ていたのを。
あれが許されざる暴食の“力”で攻撃方法なんだ。
不可視の暴風が、風の流れが何故か見える。
「・・・づっ!」
疑問は横に置いて回避運動。そして避けた。避けれた。避けきれた。
そのまま最後の位相転移。出現ポイントは許されざる暴食の体と口の間。
一気に懐に入り込んで必殺の一撃を放つ。それでわたしの勝利だ。
「・・・・くらえぇぇーーーーッ!!」
――Mors certa/死は確実――
「あ」
許されざる暴食の顔面にぬいぐるみを押し当てて一撃。
神秘の爆発が起きる。そして吹き飛ぶ。自分の防御なんて捨てていたから当然。
次に目を開けたら、太陽の光がわたしに降り注いでいた。
建物の外まで吹き飛ばされたようだ。倒れていた上半身を起こして見渡す。
そこに許されざる暴食はいた。左腕が根元からない許されざる暴食が。
斃しきれなかった。もう位相転移は使えない。
「や・・・て・・・くれまし・・・ね・・・」
顔面左側部、特に口のあたりが削れて無くなってる。
それでも喋れるのだから恐ろしい。
「わたしは・・・誓った・・・守るって・・・。
わたしは・・・約束した・・・また会えるって・・・・
その二つが・・・ある限り・・・わたしは・・・負けない、諦めない・・・!」
それが今のわたしを支える大切な柱。
この二つがあるからこそわたしは何度でも立って見せる。
ぬいぐるみに最後の力を集束させる。これが本当に最後の一撃になる。一切の手加減なし。
“界律”はこの程度じゃ動かないのは解ってる。許されざる怠惰がいくつもの世界に刻んだ紋様がある限りは。
だからこそのこの一撃を。
「・・・生まれて早々・・・さよなら・・・許されざる暴食・・・」
たぶんあの許されざる暴食は生まれてから一日も経ってないはず。
あまりに短いその存在、わたしの大切なもののために・・・ここで・・・。
「斃す!!」
――Deus Caedere/神殺し――
撃った。止めの一撃を。一直線に許されざる暴食へ飛んでいく神秘の塊。
これで決着だ。だけど油断はしない。最後の最後まで、許されざる暴食が消えるまでは。
そしてそれは起きた。わたしの一撃と、許されざる暴食の一撃が衝突した。
あんな状態でもあの攻撃が出来るなんて予想外だ。
てっきり両手がないと使えないって思っていたから。
相殺されたわたしの一撃。けどすぐに行動を移す。
油断せずに身構えていたことが良かった。
「まだ・・・終わりではありませんよ・・・!」
わたしに向かって疾走してくる許されざる暴食。
位相転移は使えない。使ったら自壊していくしかないから。
だから自分の足で回避を行う。けど、向こうのほうが圧倒的に速い。
「いきますよ!!」
「っぐ・・・!」
右拳がわたしのお腹に突き刺さる。お腹付近からヒビが入った音が聞こえた。
吹き飛ばされる前に、左腕を絡めてしがみ付く。そして再度ゼロ距離砲撃を放つ。
ぬいぐるみからすみれ色の閃光。それがわたしと許されざる暴食を覆う。
「きゃぁ・・・!」
何度目かの爆発を受けてお互いに吹き飛ぶ。
わたしは体を捻って着地。あっちも同じように着地、次の瞬間には走ってきた。
許されざる暴食に向けて連続砲撃。威力はほとんどないけど。
それを避けては直撃を受ける許されざる暴食の上半身は裸だ。変態め。
「あぁ、痛いですね。これは痛いです・・・よ!」
幾何学模様の口が開いた。風の流れがまた見える。安全圏は許されざる暴食の左側面。
「ん!」
全力でその安全圏に体を滑り込ませる。直後、
「っが!?」
右頬に許されざる暴食の強烈な蹴りが入った。
今の口はわたしを誘導するためのフェイント・・・?
意識が飛ぶのを耐える。だけど吹き飛ぶのだけは防げない。それほどの威力。
――Mors certa/死は確実――
宙を滑空する間にも砲撃を放つ。チャンスがあればどれだけでも撃とう。
それを回避して、許されざる暴食はわたしに向かって再度疾走。
再構成を終えた左腕がわたしの右足首を掴み取って、
「砕けてしまいなさい!!」
全力で地面に叩きつけてきた。右足からバキッって音がした。
今のでどこかが砕かれたかもしれない。さすがにそれは困る。
歩けない、立つことさえ出来なかったらどうしようもない。
「くっ・・・あ゛ぅ!」
両手をついて、上半身を起こそうとしたとき、許されざる暴食がわたしの背中を踏みつけてきた。
それでお腹と背中からメキッって音がした。もうわたしの体は限界が近い。
「はぁはぁはぁはぁ・・・・どうです? もう止めましょう。
大人しく僕の空腹を満たす贄となってください。
何せ君は誰も守れない。自分の存在すらも守れないのですから・・・ね?」
「ぅあ゛っ!」
わたしの背中を踏みつけている許されざる暴食の足にさらに力が入った。
何とかして体を起こそうとするけど、この小さな体じゃ無理だ。
わたしはここで消えるのかな・・・・?
誓いは? 果たせない。約束は? 守れない。諦める? 否。
――弱音を吐く暇があれば意志を高める咆哮にしろ。
自分の最期を考える頭があれば勝つための道筋を考えろ。
震える力があるならば戦う力に変えろ――
先代の許されざる嫉妬の声が聞こえた。
そのとおりだ。何を弱気になっている。わたしはルーテシアとまた会うんだ!
「っくぅぅぅぅああああああああッ!!」
「なんと・・・・!!」
――Mors certa/死は確実――
力を振り絞って放つ、強力な神秘の全方位砲撃。
光が爆ぜ、地面を覆っていた石が砕け散って砂煙を巻き起こす。
背中にあった重みが消える。許されざる暴食は砲撃の直撃を受けて吹っ飛ばされていたからだ。でも、
「無駄な足掻きはもう止めましょう、と言っているんです」
何の苦もなく着地した許されざる暴食がまたわたしへと突進してくる。
わたしは右足が無事なのが分かってふらついてでも立ち上がる。
そして真っ向から迎撃するために、ぬいぐるみへと神秘を圧縮した力を籠める。
「わたしは・・・・帰るんだ・・・ルーテシアのところに!!!」
すれ違いざまにぬいぐるみごと右拳を叩きつける。それは向こうも同じだった。
攻撃の重み、神秘の威力、身体能力差、それが導く結果は決まってた。
「・・・・ごめん・・・ね・・・」
わたしは空高く舞った。許されざる暴食の強烈な拳の一撃によって。
お腹が完全に砕けた音がして、わたしを構成する概念が服の隙間から粒子となって漏れていく。
体の崩壊が先か、許されざる暴食に食べられるのが先か・・・。
どちらにしてもわたしは・・・・終わった・・・。
また過去を見る。これって走馬灯と呼ばれるものなのかな・・・・?
それは料理をしている中、間違ってアギトを鍋に突っ込んだこと。
完成したのはアギトシチュー。アギト出汁入りのなんか危険物な料理。
食べたら花火をしたくなって、メラメラ燃えて、騒ぎたくなる効果付き。
「・・・クス・・・」
こんなときでも笑ってしまう。
アギトと行った模擬戦。勝ったのはもちろんわたし。
位相転移なんて卑怯だって怒ったアギト。なんか可愛かった。
これも良い思い出。わたしは得ることが出来た、幸せというのを。
――レヴィ、気をつけてね――
――友達。うん、いいよ友達――
――レヴィの料理、美味しかった――
――約束、絶対また会おうね――
わたしの大好きなルーテシアの声。
――この世界は滅びるんだから関係ねぇよ――
「ほろ・・・び・・・!」
ダメだ。まだ終われない。せめて相討ちになってでも許されざる暴食はここで斃す。
それがわたしに出来るせめてもの・・・・。
「守るんだ・・・この世界を・・・・絶対に!!」
――Deus Caedere/神殺し――
“界律”が動けば世界は滅びない。だって最強の第四の力がいるんだから。
きっと守ってくれる。ルーテシアたちの生きるこの世界を。
「・・・・生きて・・・・ルーテシア・・・・」
わたしと許されざる暴食の至近距離での大爆発。
目が熱いと思ったら、わたしは泣いていた。これで、最期なんだね・・・。
もし生まれ変われたら、ルーテシアとゼストにアギト、四人でまた旅をしたいな。
「大好き・・・だよ・・・ルーテシ―――」
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦
ゼストを追って地上本部へと進入したシグナムとリイン。
そのゼストが向かったと思われるレジアス中将の執務室へと急ぐ。
「ここから先は通行止めだ!」
廊下いっぱいに障壁を張って、シグナムたちの行く手を拒むのはアギトだ。
「ダンナは酷いことなんてしねぇ! ただ、昔の友達と話がしたいだけなんだ!」
――ブレネン・クリューガー――
アギトの周囲にいくつかの炎が生み出される。アギトは涙を流し訴える。
「ダンナにはもう時間がねぇんだ。そいつを邪魔するってんなら・・・!!」
シグナムは“レヴァンティン”を振り上げ、そして一閃。
するとアギトの張った障壁が真っ二つに両断され砕け散った。
“レヴァンティン”が振り下ろされた瞬間に目を瞑ったアギトは、自分に襲いかかるはずだった刃が来ないことに目を開け、“レヴァンティン”を鞘に納めるシグナムを見た。
「こちらは元より事情を訊くことが目的だ」
シグナムはリインとのユニゾンをも解除し、戦う意思がないことを示す。
「事件の根幹に関わるのなら、尚更聞かせてもらわねばならん」
そして三人はゼストとレジアス中将のいる執務室へと向かう。
廊下を走る中、三人は無言。もうすぐで執務室へとたどり着くというところで、轟音と揺れが襲う。
さらに速度を上げ、執務室へと入ったシグナムたちが目にしたのは、本棚にもたれかかるようにして座り込んで気を失っているレジアス中将の副官にして実娘のオーリス・ゲイズ。
執務デスクに伏せているすでにこと切れたレジアス中将。
そしてゼストと、そして・・・・
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦
それは、シグナムたちがここに来るまでに起こった悲劇の結末だった。
ゼストはレジアスに語った。自分たちの目指した正義はどこで違えてしまい、何故歪んしまったのか、と。
重みのあるゼストの言葉にレジアスが答えようとしたとき、それは起きた。
先程まで震えていただけの女性局員が、右手に装着されているグローブの指先にある三本の爪でレジアスを貫いた。
そしてゼストは身動きが取れないようにバインドをかけられた。
レジアスをその爪で貫いた女性局員こそが戦闘機人のⅡドゥーエだった。
彼女は最高評議会の殺害という任務を終え、もう用済みとなったレジアス中将を殺害するために、変身偽装能力“ライアーズ・マスク”によって女性局員へと変装し、ずっと機会を窺っていたのだ。
そしてそれは実行に移された。固有武装“ピアッシングネイル”という暗殺特化の刺突用武装を使い、親指、人差し指、中指にある爪でレジアスの胸を背後から貫いた。
それを見たオーリスは、父レジアスの許へと駆け寄ろうとした。
しかしドゥーエは空いている左手をオーリスへと翳し衝撃波を放った。
それをまともに受け、本棚へと叩きつけられたことでオーリスは完全に気を失った。
「お役目ご苦労様です」
変装が解け、本来の顔へと戻ったドゥーエ。
ゆっくりとレジアスを貫いている“ピアッシングネイル”を引き抜く。
「あなたはもうドクターの今後にとってお邪魔ですので」
彼女の着ている職員の制服が戦闘機人のスーツへと変化する。レジアスは執務デスクへと倒れ伏し、
「ゼスト・・・俺は・・・俺は・・・」
最後の力を振り絞って上半身を起こし、ゼストへと手を伸ばして言葉を紡ごうとする。
ミッドチルダの地上の平和のために力を尽くし、そのために罪をも犯した中将レジアス。
正義。その言葉に踊らされたレジアスは、親友に何も言えぬままその生涯を終えた。
「さぁ、これにてあなたの役目も復讐も終わりです」
「・・・いつでもそうだ。俺はいつも・・・遅すぎる」
俯いていたゼストはそう苦々しく呟き、ドゥーエにかけられたバインドを破壊する。
ドゥーエは自由となったゼストによって破壊された。
そのときの一撃こそが、シグナムたちの聞いた轟音と揺れの正体だった。
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦
「ダンナ・・・」
死に伏したドゥーエを見下ろしていたゼストに、たった今この場に来たアギトが近寄る。
シグナムもまたゼストの傍へと駆け寄り、
「っ! これは・・・・あなたが・・・!?」
死しているドゥーエを見たシグナムがゼストへと訊ねる。
「・・・そうだ。俺が殺した。俺が弱く・・・遅すぎた」
ゼストは後悔に染まる表情でそう答えた。
「・・・同行を願います」
シグナムは自分の仕事を全うする。今は何も言うべきことがないからだ。
「断る。ルーテシアを救いに戻り、スカリエッティを止めねばならん」
「スカリエッティと戦闘機人たちはすでに逮捕、ルーテシア・アルピーノも私の部下たちが保護するべく動いています」
アジトに向かったフェイトとシャルロッテからスカリエッティを逮捕したと、シグナムとリインはすでに報せを受けていた。
「そうか。ならば、俺の為すべきことは、もうあと一つだけか・・・」
槍を構えたゼスト。彼は戦う気だった。自分の終わりを迎えるために。
「ダンナ!? なんで・・・!?」
「じっとしていろ!」
ゼストに怒鳴られたアギトは押し黙った。
そしてゼスト最期の相手として、彼に見定められたシグナムもまた“レヴァンティン”を構える。
騎士としての最期を迎えようとするゼストの想いに応えるように。
「夢を描いて未来を見つめたはずが、いつの間にか随分と道を違えてしまった。
本当に守りたいものを守る、ただそれだけのことの何と難しいことか」
静まる執務室にアギトの嗚咽だけが流れる。二人の騎士は互いを見つめ・・・・動く。
先手はゼスト。彼の振るった槍がシグナムの髪を結っていたリボンを斬り裂く。
髪が解けながらもシグナムは槍をかわし、反転。“レヴァンティン”を振り下ろす。
ゼストはその一撃を、槍を水平に掲げることによって防ごうとしたが、シグナムの体重がかけられた一撃に耐えきれずに槍が両断された。
それでもゼストは止まらない。無手でシグナムへと殴りかかる。
「紫電一閃・・・」
それを見たシグナムは止めとなる一撃を準備する。
カートリッジをロードした“レヴァンティン”の刀身に紅蓮の炎が噴きあがる。
「ダンナぁぁぁぁッ!!」
アギトの叫びが響き渡る。そして、シグナムの火炎の一閃はゼストを討った。
ゆっくりと倒れていくゼスト。アギトはすぐに近寄って何度も「ダンナ」と涙ながらに名前を叫び続ける。
シグナムもまた歩み寄ってゼストを抱え起こす。
「俺が知る限りの事件の真相がここに納めてある」
右手の指に嵌められた指輪をシグナムに見せるようにして掲げたゼスト。
事件の真相、もちろんそこには大罪に関する情報はない。
「お預かりします」
「ルーテシアとアギト、そしてレヴィヤタンのことを頼めるか?」
シグナムは即答できなかった。ルーテシアとアギトについては大丈夫だ。
しかし、レヴィヤタンだけに関してはシグナムに決定権はないのだから。
「巡り会うべき相手に会えずにいた不幸な子供だ」
アギトは「ダンナ」と泣きながら、ゼストの前へと移動する。
「アギト、お前やルーテシア、レヴィヤタンと過ごした日々、そんなに悪くはなかった」
アギトの頭を撫で、これまでの過ごした時間に満足していると告げた。
「良い空だな」
「はい・・・」
「俺やレジアスが守りたかった世界。お前たちは間違えずに進んでくれ・・・」
こうして騎士ゼストの旅路は終わった。
後の者に世界を託し、この世界の平和を願いながら。
そしてシグナムとアギトは空へと上がる。ゼストが願ったこの世界の平和のために。
†††Sideレヴィヤタン†††
わたしはどうなったんだろう・・・?
相討ち覚悟の一撃を放って・・・・それから・・・・?
おかしい。何でこんなことを考えられるの?
「・・・わた・・・し・・・いきて・・・る・・・?」
声が出た。掠れているけど確かに聞こえた。どうしてか理解できない。
あのときのわたしはもうボロボロで、自分の攻撃の衝撃だけで消えそうだったのに。
目を動かす。見えるのはさっきまで許されざる暴食と戦ってた更地。
そこには許されざる暴食が立っていた。今度こそダメだ。わたしは食べられて終わる。
「・・・・」
その許されざる暴食がわたしを見ている・・・?
違う。わたしと同じ方向にいる誰かを見ているんだ。
首を動かす。メキ、とか、バキ、って音がするけど・・・。
そこでわたしは、信じられないものを見た。
「え・・・・なん・・・で・・・・?」
「・・・・レヴィ・・・また・・・会えたよ」
ここにいるはずのない、涙を流してても笑ってくれてるルーテシアがいた。
それにガリューも一緒だった。キャロとエリオという第三の力の友達・・・。
それだけじゃなかった。あと二人がそこにいた。
「それじゃあフェイト。みんなを安全な場所にお願い」
「うん、分かった。気をつけてね、シャル」
第三の力とフェイトという人間。
わたしは助けられたみたいだ、第三の力たちに。
また涙が溢れる。だけど今度は悲しいんじゃなくて嬉しいから。
「・・・・・それじゃ始めようか、ベルゼブブ」
どうでしたでしょうか、今回。
結局レヴィヤタンは生かしました。当初はこの戦いで死んでもらう予定でしたが。
何故かここで死なすのは勿体なく思ったんですよね・・・すいません。
出番がこれからもあるかどうかは後々考えます。
そしてシグナムたちの話はとっとと終わらせるに限ると思い、一気に進めました。
さよならゼスト。黙祷!!
そしてシャルとフェイトvsアスモデウスは入りきらないと思ったために次回。
もう予告しないとか言って守らないってどうよ?って突っ込みはご勘弁を。
さぁ残りわずかとなった3rdエピソード。もうしばらくお付き合いください。
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