良いサブタイトルが思いつかない。
もしかしたら後々に変更するかもしれません。
開戦
聖王のゆりかご周辺に無数といるガジェット群。そして尚も増え続けていく。
それに対処していた航空魔導師部隊は、その圧倒的な数と弱いながらも展開されているAMFの効果によって苦戦を強いられていた。
それでも耐えられていたのは、援軍として機動六課の魔導師が――かの有名なエースオブエース・高町なのはを始めとした高ランク魔導師が来てくれると分かっていたから。
それまでは何としても耐える。その空域で戦う魔導師たちの思いがそれだった。
この空域に到着し、交戦に入ったなのはとヴィータとルシリオンの三人と、臨時指揮官として指示を出すはやてによって、ようやくまともな戦いになりだした。
そしてここはゆりかごより一番離れた第18密集点。
そこにはエースたちの戦いに見惚れる第1124航空隊第4小隊の魔導師たちがいた。
「すげぇ。やっぱ強ぇよなぁ、エースオブエース高町一尉!」
「ああ。俺たちがあんな苦戦にしていたガジェットを次々撃墜してく」
小型モニターに映るなのはとヴィータとルシリオンを見ながら感嘆の声を上げる魔導師たち。
そんな彼らは射撃魔法でガジェットに対処しながらも器用にモニターを見、話をしている。
そんなことが出来ている時点で彼らも十分すごかったりする。
それもそのはず。彼らはなのはの教導を受けたことのある魔導師なのだ。
あの地獄の教導に比べれば、現状の苦戦など、どういったものでもなかった。
「――ていうか、この黒い人、メチャクチャ凄いですよ!?
交戦開始からたった2分でガジェット撃破数が三桁に届きましたよ!」
彼はごく最近、航空隊に配属された新人魔導師。
故に見たことがない。かつて空戦最強と謳われた空戦魔導師のことを。
モニターに映るルシリオンの圧倒的な戦闘能力に、新人魔導師はあまりの驚きに大声で叫ぶ。
「なんだ新人? “空戦の王子様”を知らねぇのか?」
新人の驚きに答えるこの部隊の隊長。
外見年齢でいえば20代後半くらいの茶色い短髪の隊長だ。
「空戦の王子様? 聞いたことはありますよ・・・。
何でも空戦においては管理局最強にして最速・・・・って、まさか!」
「そいつがそうだ。ルシリオン・セインテスト・フォン・フライハイト元一等空佐。
武装隊、医療局、無限書庫っつう複数の部署を兼任してたとんでもねぇやつだ。
二年ほど前にSSランク魔導師二人が突然管理局を辞めたって騒ぎがあったろ?
その当事者の片方で、空戦SSランク。もう片方はそいつの姉で陸戦SSランクだ」
空戦SSランクの魔導師。それを聞いた新人は鳥肌が立つのが分かった。
あのエースオブエース、高町一尉でもS+だというのに、と。
そしてその姉もまた陸戦のSSランク。新人の胸は高まり興奮しつつあった。
「そ、そんな凄い人だったなんて・・・! でも辞めたのにどうして・・・・?」
「さあな。なんでいるのか分からねぇが、そんなことは小せぇことだ、新人。
理由はどうあれミッドの地上と空を守ろうとしている。それだけで十分さ」
隊長の言葉に「おおお」と声を上げるその場にいる彼の部下たち。
そんなとき、その場に別のガジェット群が襲撃してきた。
しかし部隊は対応が遅れ、なす術がないままガジェット群から攻撃を加えられようとしたとき、
「随分と余裕があるじゃないですか、ヒルマン二尉?」
――殲滅せよ、汝の軍勢――
その声と共にガジェット群へと様々な属性の槍が降り注ぎ、全機を貫いて爆散させた。
爆散していくガジェット群を横目に新人は見た。自分たちを守ってくれた魔導師を。
細長いひし形の翼が十枚、その間に剣のような翼が十二枚、蒼く輝いている。
実際にこの目で見てみると、それはまるで天使のような姿だ、と新人は思った。
「おお、久しぶりだな、ルシリオン。それと今は一尉だ」
「それは失礼しました、ヒルマン一尉」
久しぶりの再会に隊長ヒルマンとルシリオンは笑みを浮かべる。
「隊長、お知り合いなんですか?」
親しそうにしている二人を見た新人は訊ねる。
「ああ。こいつは局を辞める直前まで俺と組んでいたんだ。相棒ってやつだな」
「相棒と言っても二ヶ月くらいでしたか」
――デスペアー・フライト ver.Ω――
新人の疑問に答えながら、ルシリオンは迫ってくるガジェットを、星填銃二挺から複数の追尾弾を射出。
そして着弾した端からガジェットは凍結、破砕、撃破されていく。
新人はその光景にただ「すごい」とだけしか言えなかった。
「どうだ、ルシリオン? この状況は?」
「最悪ですね。せっかくの空が狭い。窮屈で仕方がないですよ」
「なるほど、お前らしい。じゃあさっさと片付けねぇと・・・な!!」
ヒルマンとルシリオンが背を向けあい、次々とガジェットを撃破していく。
それを黙って見ていた他の隊員たちも続いてガジェットへと攻撃を放っていく。
新人もそれを見ながらストレージデバイスを構えて射撃魔法を放ち続ける。
「まったく。玩具相手に、なのは、はやて、ヴィータとは贅沢すぎるな」
ルシリオンの呟きが聞こえる。しかし、そこには自分の名前を入れなかった。
それを聞いたヒルマンは「お前の場合の謙遜は嫌味でしかねぇよ」と言い放った。
『スターズ1からスターズ5へ! 第11、第12密集点への援護をお願いします!!』
「スターズ5、了解した」
なのはからルシリオンへの援護要請。
ルシリオンは短く答えて、この第18密集点のガジェット群の殲滅を確認した。
「行くのか」
「ええ」
「気をつけて行けよ、相棒」
そうして二人は拳を突き合わせる。
それを合図としてルシリオンは空の彼方へと飛んでいった。
新人は思う。いつか自分もあんな魔導師になりたいと。
静かになったこの場所で、思い思いに語り始める第1124航空隊第4小隊の魔導師たち。
「カッコいいっすね」
そうしみじみ呟く新人。
しかし彼の感動も、他の隊員たちの発言で半減することになる。
「そうでもねぇぜ。昔は男泣かせって呼ばれてたしな」
「お、男泣かせ? 女泣かせじゃなくて・・・?」
「そうそう。当時の外見はどう見ても背の高い少女。本当は男なのにな。
そうとも知らず告って来たヤツを片っ端から撃墜したっつう伝説がある」
「同様にレディの告白も断ってるって話だ」
「ホモ疑惑」
「ああ。でもさ、テスタロッサ執務官とデキてるって噂だ」
「なに!? 俺は高町一尉とデキてるって聞いたぞ!!」
「「「「「「死ねや、コラぁぁぁぁっ!!!!」」」」」」
悲しい男たちの叫びがこだまする。
新人は大きくため息。
「よっしゃ! 俺は今日ツイてる! ヴィータ三尉の可愛らしい下着が見えた!!」
「あぁ、もう少しでも見えそうなんだけどなぁ、高町一尉の・・・・」
また別のところでは妙なことで盛り上がっている変態がいた。
「・・・・・おい、誰か。そこの阿呆どもと変態どもを黙らせろ」
ヒルマンの一声で、馬鹿発言をした男たちにはデバイスによる殴打という制裁が与えられた。
緊迫下にあるこの空域の中、第1124航空隊第4小隊の魔導師たちの、ごく一部の頭の中は季節はずれの春だった。
†††Sideはやて†††
ゆりかごの砲門から放たれた砲撃がまた味方を墜とした。
火力も数も何から何まで向こうが圧倒的に上や。
「防御陣形! 隊立、乱したらあかんよ!!」
「は、はい!!」
ここで乱れたら立て直すんは難しい。
それほどまでに追い詰められとる感じや。
それにしても聖王のゆりかご、ほんま大きい。
外からやと魔導師が何人集まろうとどうにもなれへんな。
それやのにまたゆりかごから何十機とガジェットが出てきた。
「24番射出口より小型機出現!」
『南からも機影百! 市街地降下ルートです!』
どれだけ撃墜してもそれを上回る数が出てくる。
でも、だからと言って弱音なんて言ってられへん。
「みんな落ち着いて! 拡散されたら手が回らへん!
叩ける小型機は空で叩く。潰せる砲門は今のうちに潰す!
ミッド地上航空魔導師隊。勇気と力の見せ所やで!!」
「「はい!!」」
“夜天の書”を開いて、魔法発動の準備に入る。
なのはちゃんやヴィータ、ルシル君が頑張ってくれとる。
私もここが踏ん張りどころや。狙うんは砲門と射線上におるガジェット群。
それを撃ち落すために使うんは、リインフォース・初代が私の友達から複製してもうた魔法。
「いくよ! 壮麗なる聖雪の蒼槍・・・・コード・シャルギエル!!」
氷結の槍を20本展開、一斉に射出した。
†††Sideはやて⇒なのは†††
『高町一尉、奥へ進めそうな突入口が見つかりました! 突入隊二十名が先行しています!』
ゆりかご側面をヴィータちゃんと飛んで、ガジェットや砲門を破壊していたとき、待ちに待っていた報せが私たちに届いた。
「はやてちゃん!」
突入の許可をもらうために、はやてちゃんに通信を繋げる。
『外周警戒は私が引き受ける! なのはちゃん、ヴィータ、ルシル君、行ってくれるか?』
「了解!」「おう!」
『了解した。なのは、ヴィータ、先に行っていてくれ。
はやて、突入前にゆりかご上方のガジェットを叩いておく。部隊を下がらせてくれ』
『了解や!』
私とヴィータちゃんに続いて、ルシル君からの通信も入る。
ルシル君にはガジェットの掃討を任せていたから少し遅れてしまっている。
私とヴィータちゃんが報告のあった突入口へと降り立ったとき、
――その身に刻め 神技ニーベルン・ヴァレスティ――
私たちの遥か頭上にいるガジェット群へと一直線に進んだ槍が、蒼い閃光となって爆ぜた。
閃光が収まると、そこにはガジェットが一機もなくて、代わりに無数の羽根が舞っていた。
「たった一発で殲滅って、やっぱあいつすげぇよな」
ヴィータちゃんが呟きを聞いて、私は同感した。
ルシル君には敵わないな~。と思いながら突入口となる内壁を破壊して、ゆりかご内に突入した。
「機動六課スターズ1、2、内部通路突入!」
ある程度降下したとき、いきなり魔力結合に異常が発生。
魔力結合を解除された原因はもちろん、
「AMF!!」
ヴィータちゃんの言うとおりAMFによるものだ。
私とヴィータちゃんは降下じゃなくて落下し始めた。
「内部空間全部に・・・・?」
この一帯だけ、ということはないはずだ。
出力を上げて一時的にアクセルフィンの効果を持続、着地と同時にアクセルフィンを解除する。
そんな簡単なことですら魔力の消費が多かった。
ゆりかご内を軽く見渡す。ここに、この中のどこかにヴィヴィオが待ってる。
「スターズ5、スターズ1、2に続き内部通路に突入完了」
上からルシル君がゆっくりと降りてきた。
AMFがあることを教えるために口に出そうとしたけど、
「AMFか。結構濃度が高いが・・・二人は大丈夫か?」
言葉は出なかった。何故なら、ルシル君はAMFの中でもなんら変わらなかったからだ。
「大丈夫だけど・・・・ルシル君は・・・?」
「魔導師のリンカーコアと魔術師の魔力炉は質が違うからな。
この程度のAMFなら影響は受けることはないよ」
そう言って、ルシル君は22枚の翼を無数の羽根にして消していった。
でもこれは嬉しい誤算・・・なのかな?
魔導師にとってAMFは厄介だけど、ルシル君たち魔術師は関係ないってことだ。
「呑気に話してる場合じゃねぇみてぇだぞ」
ヴィータちゃんの視線の先、そこには私たちを迎撃しに来たガジェットがいた。
ヴィータちゃんがアイゼンを構えて、私たちを庇うようにして前に立つ。
「なのはは魔力を温存してろ。こいつらはあた――「待て、ヴィータ」――んだよ・・・?」
ルシル君がさらにヴィータちゃんの前に出る。
少し不機嫌そうなヴィータちゃんだけど、私はルシル君に賛成する。
「このAMFだとヴィータも辛いだろう? ならここは影響の少ない私がやろう」
「ちょっと待てよ! お前だってペッカートゥムと戦わなくちゃいけねぇんだろ!?
なのに、こんなことで無駄な魔力を消費していいのかよ!?」
ヴィータちゃんの言うことも正しい。
私たちじゃ敵わない存在、ペッカートゥム。その内の一人がヴィヴィオの傍にいる。
でも魔力消費のことを考えたら、やっぱりルシル君に頼るしかない。
「こんなこと、って・・・・。ヴィータとなのはを守るのも大切な私の役目だ。
それに消費の少ない術式を選択すればいいだけだよ」
≪我が手に携えしは友が誇りし至高の幻想≫
「そうだ二人とも、私から離れないように」
そう言ったルシル君は私たちに近づいて指を鳴らした。
直後、“ギンッ”っていう鈍い音が聞こえた。
「シャルが居ないなら使ってもいいよな。墜ちろ。圧戒」
そしてそれは起こった。私たちに迫っていた十数機のガジェットが墜落。
軋みを挙げながら、最後は潰れて次々と爆散していった。
「何したんだよ?」
私とヴィータちゃんの間に立つルシル君を見る。
何をした? それは私も同じことを考えてた。でもなんとなく解ってる。
「私を中心とした半径30m範囲に六倍の重力をかけた。
ガジェットはそれに耐えられず地面とキス、バッドエンドというわけだ」
やっぱりそうだ。ガジェットは重力によって墜落していた。
「お前らって本当に何者なんだよ? 魔術師って重力なんてものも操れんのかよ?」
通路を歩き出したルシル君について行きながら、ヴィータちゃんがそう訊く。
私もそれに続いてルシル君の後を追う。ガジェットみたいにペチャンコになりたくないから。
「今は私だけだ」
次々と現れるガジェットは六倍の重力圏に自ら進入して墜落、自滅していく。
これで魔力消費の少ない術式? 対人で使われたら、誰もルシル君に勝つことが出来ないかも。
「今は、ってことは前はいたのかよ?」
ヴィータちゃんは少し早歩きでルシル君の隣を歩く。
「妹がそうだった。もういないけどな」
ルシル君の血の繋がった本当の家族はもう誰一人としていない。
それはヴィータちゃんも知っていることだ。
だからヴィータちゃんは気まずい顔をして「すまねぇ」って謝った。
ルシル君は笑みを浮かべて「気にするな」と言って、ヴィータちゃんの頭を撫でた。
それからガジェットの潰れていく様を何度も見ながら通路を進む。
そして、
『突入隊、機動六課スターズ分隊へ』
「はい!」
『駆動炉と玉座の間、詳細ルートが判明しました』
ようやくこの聖王のゆりかごのマップが判明した。
私たちが居るのはちょうど中央辺り。そして駆動炉と玉座の間の位置は、
「真逆方向・・・?」
その二つはゆりかごの最前方と最後方に位置していた。
「突入隊のメンバーはまだ揃わねぇか?」
『各地から緊急招聘していますが、あと40分は・・・』
それだと遅すぎる。もう突入隊を当てにすることは出来ない。
こうなれば残る手は一つだけになる。
「仕方ねぇ。スターズ1と5は玉座、スターズ2は駆動炉。別行動で行く」
『了解しました。急いで応援を揃えます』
それは二手に分かれて、それぞれに対処すること。
「ヴィータちゃん・・・」
「そんな心配そうな顔すんなよ。ここまでセインテストのおかげで全然魔力を使ってねぇ。
だから万全だ。それに忘れたのかよ。あたしとアイゼンの得意分野は破壊と粉砕。
鉄槌の騎士ヴィータと鉄の伯爵グラーフアイゼンに砕けねぇものはこの世にねぇよ」
そんなことを言われたら、もう何も言えないよ。
私はルシル君に振り向いてみるけど、ルシル君はヴィータちゃんの意思を尊重するようだ。
黙ってヴィータちゃんを送り出そうとしてる。
「ありがとな、セインテスト。とっとと終わらせてくっから、なのはとセインテストもちゃんとヴィヴィオを助けろよ。
そんでこいつの上昇を止めて、表のはやてに合流。
あたしが終わってても、そっちが終わってねぇようなら承知しねぇかんな」
ヴィータちゃんもルシル君も覚悟を決めてる。
だったら私も覚悟を決めないとダメだ。
「うん。気をつけてね、ヴィータちゃん。絶対に、すぐに合流だからね!」
「当たり前だっつうの! セインテスト、あたしの代わりにちゃんとなのはを守れよ!!」
「ああ。約束だ」
こうして、私とルシル君はヴィヴィオのいる玉座の間に。
そしてヴィータちゃんは一人駆動炉の破壊へと向かった。
†††Sideなのは⇒フェイト†††
なのはたちと別れた私とシャルは、スカリエッティのアジトへと到着。
そこでシスター・シャッハと合流して、アジト内の捜索を始めた。
「烈風一迅! 斬り裂け、ヴィンデルシャフト!!」
「トロイメライ!」
≪Gefrieren unt Blitz≫
――双牙氷雷刃――
シスターとシャルの魔法によって、私たちを迎撃しに来たガジェットは反撃することが出来ないまま、ただの鉄塊へと姿を変えていく。
「すごいですね、騎士シャルロッテ。複数の魔力資質変換なんて・・・!」
「シスターもなかなかの腕。一度手合わせをしてみたいです」
「いいのですか!? 私も一度あなたと戦ってみたいと・・・・!」
二人の後ろをただ歩いて続く。さっきから私は何もしていない状態だ。
だって私が攻撃に入る前に全部シスターとシャルが片付けちゃうから。
二人は二人で何やら盛り上がっているし、ちょっと淋しいです。
「新手が来ました!」
シスターの声に反応した私はザンバーを構えていざ、というときに・・・・
「しつこいっての!」
――風牙烈風刃・弐連――
シャルがツヴィリンゲ・フォルムとなっている“トロイメライ”二刀を振り、吹き荒れた風の壁を起こしてガジェットへと放った。結果は当然の如く全滅だ。
「フェイトもシスターもAMFの中じゃ辛いんだから、私に任せておけばいいの♪」
≪Schwert form≫
また一つの長刀になった“トロイメライ”。それを肩に担いでシャルが笑みを浮かべる。
そう。魔術師は魔導師にとっては面倒なAMF内でも大して堪えていない。
さっき訊いたけど、魔術師の魔力炉の性質上、AMFは脅威にならない、とのことだった。
「あ、アコース査察官の・・・」
シャルの視線の先にはアコース査察官の猟犬たちが居た。
近寄ってきた猟犬たちにシャルは頭を撫でてあげている。
『別働隊、通路確認。危険物の順次封印を行います』
「了解。各突入ルートはアコース査察官の指示通りに」
『はい!』
別の突入隊からの報告。その辺りの指示はアコース査察官に任せてある。
私たちは主犯のスカリエッティに限定しての捜索を主としているからだ。
「んじゃ行こうか」
シャルの言葉に頷いて、さらに奥へと進む。
奥へと辿り着くまでに何度もガジェットが現れたけど、シャルが次々と対処していった。
シャルが魔法を使ったのは初めのうちだけ。
それからは純粋な身体能力と剣技だけで破壊していく。
強かった。強すぎた。私は今までシャルの戦いを何度も見てきた。
だからこそ私は改めてシャルの実力を思い知った。
「・・・・爆発音・・・?」
前を歩いていたシャルが球に立ち止まって耳を澄まし始めた。
私とシスターも同じように耳を澄ますけど何も聞こえ・・・・あ、聞こえた。
遠くのほうで爆発音。誰かが戦闘をしている・・・・?
「・・・・来る!!」
シャルが叫んで、私とシスターのお腹に手を回して抱えながらそこから離脱。
次の瞬間、壁を突き破って人が飛び出してきた。その人には見覚えがある。
「ぅぐ・・・・。フェイト・・・お嬢様・・・!」
先日戦った、紫色の髪をした戦闘機人。だけど彼女の体はボロボロだった。
「トーレ姉!!・・・管理局!? もうこんなところまで・・・・!」
紫色の髪をした戦闘機人をトーレと呼んだもう一人の水色の髪をした戦闘機人。
続いて出てきたのはトーレと同じ、先日戦った桃色の髪をした戦闘機人。
他の二機もトーレよりかはマシだけどボロボロだ。
「あなたたち・・・・一体何が・・・?」
シスターも予想外の事態に混乱を示している。
私だってそうだ。戦闘機人を相手にしてここまで追い詰めることの出来る味方はいない。
「・・・・久しぶりね、レヴィヤタン。リベンジしに来たよ」
シャルが私たちを庇うようにして前に出た。
壁の孔からゆっくりと出てきたのはレヴィヤタンという小さな女の子。
その子はペッカートゥムの一人で、その速さは私やシャル以上。
「トーレ、とか言ったっけ? あなたたちをそんなのにしたのはアレ?」
立ち上がったトーレに、シャルは振り向かずに訊いた。
トーレは少し間を置いて、衝撃的なことを口にした。
「・・・・いや、私たちが今戦っているのは・・・・ドクターだ」
「そんな・・・!?」
私は信じられずにそう叫んでしまった。
スカリエッティと戦闘機人が戦う? もうわけが分からない。
他の戦闘機人二人も俯いて、沈黙という形で肯定を示している。
「さっさと白黒つけたいけど。その前にスカリエッティはどうしたわけ? いよいよ狂った?」
「・・・・もう解っているはず・・・」
シャルの問いに静かに答えたレヴィヤタン。
解っている? シャルにはこの状況の原因を知っているだろうか?
「おや? ごきげんよう、フェイト・テスタロッサ執務官。それと3rd君」
「「「ドクター!!」」」
続けて孔から出てきたのは、私がずっと追い続けていた男ジェイル・スカリエッティ。
ゆっくりとレヴィヤタンの隣に並んだスカリエッティは、トーレたち戦闘機人へと目を向けた。
それにしても、3rd君って・・・シャルのこと・・・? シャルが三番目ってなに?
「まだ動いていたのかい? 今の一撃で止めを刺したと思ったんだが・・・?」
「何故ですかドクター!? 何故このようなことを!?」
トーレの叫びへの答えは、スカリエッティの攻撃だった。
右手に装着しているグローブを操作して、作り出された赤い糸をトーレに放った。
「だから、利用されて裏切られる間に手を切れ、って言ったのに・・・・。ねぇ、スカリエッティ?」
トーレの前に飛び出たシャルがその赤い糸を切断する。
シャルが手にしているのは“トロイメライ”じゃなくて“キルシュブリューテ”だ。
“キルシュブリューテ”の切っ先と鋭い眼光をスカリエッティに向けている。
「スカリエッティの目の色は確か金。なのに今は真紅。
体を乗っ取られたわけね、アスモデウスに・・・」
「「「「っ!?」」」」
「え? どういうこと? アスモデウスがなに?」
シャルの言葉に絶句する私たち。
けど水色の髪の戦闘機人は解っていないみたいだ。
「・・・・本当は髪も真紅にしたかったのだけど、瞳だけで我慢したわ」
男性の声とは違う女性特有の高い声が、スカリエッティの口からこぼれた。
それを聞いた私たちは無意識に後ろへと退いた。
「何が目的なのか答えなさいアスモデウス。スカリエッティの体を乗っ取った理由は?
そしてお前たちペッカートゥムの狙いは?」
「すべては許されざる傲慢の目的のままに」
スカリエッティの左手に大鎌が現れた。それを掴んで軽々振り回している。
「シャル・・・どうしたら・・・?」
私に対処法はない。それはシスターや戦闘機人も同様のはず。
だからペッカートゥムを知るシャルなら何とかできるだろうと思い訊いてみる。
「スカリエッティごと乗っ取っているアスモデウスを殺す」
シャルの答えは無慈悲だった。
「ドクターを殺すなど認めんぞ!!」
シャルの背後にいたトーレが勢いよくシャルの右肩を掴んで無理矢理振り向かせる。
だけどシャルの鋭い眼光を見たトーレは肩から手を離して後ずさった。
「別にこの体ごと殺してもいいわよ? でも出来るかしら?
甘々な法の下に動く管理局は、いくら重犯罪者でも殺しを良しとしないのでしょう?」
どんな犯罪者でも殺害することを禁止されているのは間違いない。
だからこそ局員や一般市民に犠牲者が出ることもしばしばある。
「私はもう管理局員じゃない。それに世界と人間一人の命、天秤にかけて量る以前の問題。
お前一人を犠牲にして世界を救う。悪いけど、それが一番手っ取り早い」
「なるほどね。それはそれは界律の守護神そのままの腐った考え方ね」
「貴様ら絶対殲滅対象のように丸ごと滅ぼす連中に言われたくない」
シャルとアスモデウスの会話が全然理解できない。
テスタメントとかアポリュオンとか丸ごと滅ぼすとか・・・・一体何を言ってるの・・・?
疑問は尽きない。でも今はそれより、
「シャル、ごめん。やっぱり殺害は許可できないよ」
私は私の仕事を全うする。そのためにはシャルちゃんを抑えることからだ。
話の内容は未だに理解できないけど、スカリエッティは逮捕、そして法の下に裁く。
それを絶対として事を進めていかないとダメだ。
「・・・・はぁ、解ってる。今のは単なる冗談だよ。冗談三割、本気七割」
シャル、人はそれを本気と捉えると思う。
「それに・・・・アスモデウス。お前は大きなミスを犯してるからね。
スカリエッティを殺す必要性はどこにもない」
「なに・・・?」
シャルは“キルシュブリューテ”を持つ右手の逆、左手に再度“トロイメライ”を握りなおした。
「その体に答えを刻んであげる・・・・。フェイト、シスター、悪いけど手伝って。
そんで戦闘機人三機。スカリエッティを救いたいなら手伝いなさい」
“キルシュブルーテ”を逆手に持ち替えて二刀流の構えを取ったシャルに、私たちは協力することを選択した。
あとは戦闘機人たちの返答を待つのみだった。
†††Sideフェイト⇒ヴィータ†††
「アイゼン!!」
≪Komet Fliegen≫
コメート・フリーゲンで次々と沸いて出てくるガジェットをまた潰した。
「ったく、テメェらはゴキブリかっつうの」
あたしは、なのはとセインテストと別れて駆動炉を目指している。
「にしても、どれだけ歩かせりゃあいいんだよ」
ここに来るまでにどれだけガジェットを潰したのか思い出せねぇ。
セインテストが別れる手前までガジェットを相手にしてくれたから正直助かった。
もしセインテストがいなかったらもっと魔力を消費していたかもしれねぇ。
「カートリッジはあと・・・・9発。十分。駆動炉相手じゃ楽勝だ・・・・っ!?」
歩き出そうとしたところで、あたしの体に異変が起きた。
それはあたしの胸から伸びる刃。油断とか余裕とかじゃなくて、全く気配がなかった。
痛みとか言う前にそのことに対する驚きが頭ん中を占める。
あたしは振り向いて、この刃の主を目にした。
そこに居たのは、8年前になのはとセインテストを撃墜した機械兵器に似たやつだった。
「ああ・・・ああ・・・・・ああああああああッッ!!!!」
さっきまであった驚きが全部吹き飛んで怒りに変わるのが分かる。
その怒りのまま、あたしはギガントフォルムのアイゼンをそいつに叩きつけた。
そいつの爆散の衝撃で吹き飛ばされて、通路の床を何度か転がる。
痛覚は遮断したおかげでなんとか耐えられる。
「はぁはぁはぁはぁ・・・・・」
それでも胸に孔が開いてることには変わりはねぇ。
吐血しながらもアイゼンを杖代わりにして起き上がって、あたしは見た。
今潰したやつとおんなじのが群れを成して、通路の向こうから押し寄せてくるのを。
「あのとき・・・なのはとセインテストを落としたのは、テメェらの同類か!?」
機械相手に答えが返ってくるわけねぇか・・・。
「ざっけんなよ。一機残らずぶっ壊してやらぁぁぁぁッ!!!」
こいつら全部ぶっ壊して、とっとと終わらせてやる。
シリアスな戦いだというのに冒頭部分が馬鹿ですいません。
どうしても今話で使いたかったセリフがあったもので・・・。
「空が狭い」、知っている人は知っていると思うんですが、このセリフをルシルに、
このゆりかご周辺空域ガジェット掃討戦で使いたかったんです。
名作(自分だけがそう思っている可能性有)ACE COMBAT ZEROで使われるセリフです。
全く関係ないですが大好きですACEシリーズ。
ルシルの複製術式
デスペアー・フライト:ヴァルキリープロファイル2
複製したこの技を、弾数増加、追尾距離増長、複数ターゲッティングとオリジナル効果のためにver,Ωとしています。
ニーベルン・ヴァレスティ:スターオーシャン3
ヴァルキリープロファイルのより、↑のほうが気に入っているので。
圧戒:ANSUR
+注意+
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