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アクタ・エスト・ファーブラ/芝居は終わりだ。という意味のラテン語です。
Acta est fabula.
『聖王の器とゆりかごは安定状態に入ったわ。
クアットロとディエチはゆりかご内部に。私と交代を』

『はいー』

『了解』

“アインヘリヤル”より撤収し、地上本部へと向かうナンバーズ各人に、ウーノからモニター越しにそれぞれに指示が飛ぶ。

『トーレとセッテ、セインはラボでドクターの警護を』

「心得た」

『ノーヴェはディードとウェンディ、13番目と一緒に』

『もう向かってる』

ナンバーズの三者三様の返答。

『ゆりかごが完全浮上して、主砲を撃てる位置に――』

『アーンド、二つの月の魔力を受けられて、地上攻撃を出来る軌道位置まで辿り着ければ、ゆりかごは正に無敵』

ウーノの言葉に割り込むかのように、クアットロの映るモニターが浮かび、ウーノが口にしようとしていた言葉を代わりに口にする。

「ミッドの地上全てが人質だ。その状態なら、本局の主力艦隊とも渡り合える」

セッテ、そしてガジェットⅡ型に乗るセインに並んで飛行するトーレがそう口にする。
この広い世界の全てが自分たちの手中に収まり、尚且つ管理局の主力とも戦えると。
 
『そういや、一個疑問があるんスけど・・・?』

ウェンディの疑問を促すように、トーレが「なんだ?」と訊きかえす。
それを聞きウェンディは、自分の思ったことを口にしていく。

『ゆりかごの中にいる聖王の器とかいう女の子って、ぶっちゃけなに・・・?』

『フフフ、私が教えようか?』

スカリエッティの映るモニターが、四分割にされていたモニターの中心に展開された。
そのスカリエッティの背後に映るのは許されざる色欲(アスモデウス)
トーレは一瞬だけモニターに映る許されざる色欲(アスモデウス)の様子に何かを感じ取る。
だがトーレはそれを気のせいとした。・・・・してしまった。

『今から十年ばかり前になるかね。聖王教会にある司祭がいてね。
彼は敬虔にして高潔な人格者だった。それゆえに聖遺物管理という重職に就いていたんだよ』

スカリエッティから告げられていくある過去の話。

『せいいぶつ?』

『聖王教会の信仰の対象、古代ベルカ時代の聖なる王様、聖王陛下の持ち物だったものとか遺骨とかのことよ』

『へぇ~』

スカリエッティの話の腰を折るかのようなウェンディに、クアットロが聖遺物についてのことをウェンディに教える。 
ウェンディはクアットロのそれに感心の声をあげる。

『だが、司祭といえど人の子だ。彼はある女性への愛からそれに手をつけてしまったんだよ。
そして、聖骸布にごく僅か含まれていた血液から遺伝子情報が取り出された。
古代ベルカを統べた偉大な王、聖王の遺伝子データがね。
そうして聖王の遺伝子(タネ)は各地に点在する研究機関で、極秘裏に複製され再生を待った』

『あたしたちの王様になるために、だろ?』

ノーヴェはスカリエッティの話をそう捉えている。

『生きて動いている聖王は、あのゆりかごの起動キーなんだよ。
動いていると言ってもただの器さ』

スカリエッティにとって、聖王の器であるヴィヴィオも単なる計画完遂のための部品でしかなかった。

「はい、ドクター、質問」

『どうぞ、セイン』

セインが手を挙げてスカリエッティに訊ね、スカリエッティはセインの問いを促す。

「レジアスのおっちゃんはまぁいいとしてさ、最高評議会だっけ? あっちの方はいいの?
ガジェットの量産とか人造魔導師計画の支援とかしてくれたのってあの人たちなんだよね?」

『ああ、そうとも』

「ゼスト様とかルーお嬢様も評議会の発注で復活させたんでしょ?
評議会には評議会で、なんかプランとか思惑があったんじゃ・・・」

最高評議会。それがスカリエッティを支援していた者たち。
旧暦の時代に次元世界を平定、そして時空管理局を設立した三人。
管理局設立後、一線を退(しりぞ)いたその三人が、その後の次元世界を見守るために発足させた組織、それが管理局最高評議会。

その評議会の指示で、八年前に死んだゼストは蘇生された。
ルーテシアの場合は復活ではなく、捕らわれ、レリックウェポンの処置を施された。
そしてそのうえで洗脳されたという形だ。

『レジアスも最高評議会も希望は一緒さ。地上と次元世界の平和と安全。
そのためにレジアスは頓挫させられた戦闘機人に拘り、最高評議会はレリックウェポンと人造魔導師計画に拘った。
平和を守り正義を貫くためなら罪もない人々に犠牲を出してもいい、と。
なかなか傲慢な矛盾を抱えておいでだ』

少数より多数を。それはどこの世界でも同じ真理。
当然この次元世界においても例外ではなく。
最高評議会もレジアス中将も、その真理に捕らわれ、スカリエッティを支援した。
その結果がスカリエッティと、その作品であるナンバーズによるテロとなってしまっていた。
スカリエッティの話も終わり、訊ねたセイン、そしてウェンディは、その話の内容の濃さに理解不能を示した。

「ともかくスポンサーである評議会のこと無視して、あんなでっかいおもちゃを呼び出したりしたら、怒られるんじゃないの?って、わたしは心配・・・」

『あはは・・・。ちゃんと怒られないようにしてあるさ』

セインの心配を他所に笑みを浮かべるスカリエッティ。
彼はすでに手を打っている状態だ。それもはるか前より。
 
『君たちは何も気にせずに楽しく遊んできてくれればいい。
遊び終わったら我らの新しい家、ゆりかごに帰ろう。
そうすれば、世界の全てが我々の遊び場だ』


◦―◦―◦―◦―◦―◦


「世界全てが遊び場、ね」

ナンバーズとの通信を終えたスカリエッティの背後、許されざる色欲(アスモデウス)が笑みを浮かべる。
その呟きを耳にしたスカリエッティは振り向き、彼もまた笑みを浮かべた。

「そうだとも。我らの夢を叶え、素晴らしい世界となれば全てが大切な実験(あそび)場だ」

スカリエッティは許されざる色欲(アスモデウス)から前面に展開されているモニターへと視線を戻す。
映し出されているのはゆりかご、ナンバーズの面々。
スカリエッティはこれから起こる楽しい時間に思いを馳せていた。
しかし彼は気づかない。今、背後で凶悪な笑みを浮かべている許されざる色欲(アスモデウス)に。

「―――ん?」

黄色い明かりしかないこの空間に、赤い明かりが入り込む。
スカリエッティはそれを疑問に思い、周囲、そして背後へと視線を移した。

「っ! どうしてそれを君が持っているのだね・・・?」

「これ? これは大罪(わたしたち)が独自で探し当てたレリックよ」
 
スカリエッティの視線の先、レリックを手にした許されざる色欲(アスモデウス)が居る。
許されざる色欲(アスモデウス)はそう答え、レリックを両手で覆うように胸に抱えた。
一瞬の閃光。許されざる色欲(アスモデウス)の手にしていたレリックが、まるでオニキスのように漆黒の輝きを放つものとなっていた。
その変わり果てたレリックを見たスカリエッティは呆然、そして笑みへと変わっていく。

「それはなんだい? レリックとはもう違うモノなのかな?」

スカリエッティの内にあるのは興味と探求心。
レリックの輝きが漆黒に染まったことが、彼の探求心に火をつけた。

「フフ、これは・・・・こういう使い方をするのよ。・・・・無限の欲望・・・・!」

「っ!?」

許されざる色欲(アスモデウス)姿が掻き消え、スカリエッティは一歩引き、周囲を見渡す。
そして次の瞬間、スカリエッティの表情が凍る。
漆黒のレリックを無理やり自分の体に埋め込まれていくことで、だ。

「あ・・・がぁはっ・・・!!?」

強烈な痛みがスカリエッティの全身を襲う。
今まで他者にレリックを埋め込む処置をしてきたスカリエッティ。
しかし、彼自身がその被検体になるということはなかった。
それが今、協力者だったはずの許されざる色欲(アスモデウス)の手によって行われている。

「人間たる器。界律を誤魔化すにはちょうどいい隠れ蓑なのよ。
あぁ、それにもう十分夢を見ることが出来たでしょ?
だからここからは俺たちの時間だ。無限の欲望・・・ジェイル・スカリエッティ」

「っ!? ルシフ――ああああああああああああ・・・・・・!!!!!」


†††Sideシャルロッテ†††


『――理由はどうあれ、レジアス中将や最高評議会は偉業の天才犯罪者、ジェイル・スカリエッティを利用しようとした。そやけど逆に利用されて裏切られた』

会議室に集められた私たちは、三提督の一人ミゼット統幕議長とクロノから多くの話を聞いた。
レジアス中将のこと、最高評議会のことなどを。

『どこからどこまでが誰の計画で、何が誰の思惑なのかそれは判らへん。
そやけど今、巨大船が空を飛んで、街中にガジェットと戦闘機人が現れて、市民の安全を脅かしてる。これは事実。
私たちはそれをなんとしても止めなあかん』

そう。そして私とルシルはその上でペッカートゥムを殲滅しないといけない。
ヤツらを野放しにしておくことは、スカリエッティを放って置くこと以上に危険だから。

「ゆりかごには本局の艦隊が向かってるし、地上の戦闘機人たちやガジェットも各部隊が協力して対応に当たる」

巨大船“聖王のゆりかご”は、すでに危険度の高いロストロギアとして本局は認定。
クロノを含めた艦隊はそれを撃沈するために、もう動いているということだ。
それにしても“聖王のゆりかご”。
大戦時に恐れられた“スキーズブラズニル”、“ナグルファル”、“フリングホルニ”らの主要戦艦と艦戦させたらどっちが強いだろう?と思う私・・・・。

「だけど、高レベルなAMF戦を出来る魔導師はそう多くない。
私たちは3グループに分かれて、各部署に協力することになる」

なのはの提示したグループは、ゆりかご攻略、スカリエッティのアジト、首都防衛の三つ。
会議の結果、シグナムとフォワードの子たちは首都防衛、戦闘機人戦となる。
シグナムはゼストとかいう騎士のところだけど。
スカリエッティのアジトへは、現状フェイト一人のみ・・・・。
ゆりかごへは、現状なのはとヴィータの二人。はやては外でガジェット掃討部隊指揮だ。

『それでシャルちゃん、ルシル君。二人の出動場所やけど・・・・』

ブリッジに居るはやてからそう訊かれる。
独自判断になるけど、もう決まってる。ゆりかごへはルシル、地上へは私が行くと。

「・・・ルシルはなのはたちと一緒。私はフェイトと一緒に行かせてほしい」

「・・・・それでいいんならそれでいこう」

ルシルは反対せず賛成してくれた。最初からゆりかごに行くつもりだったから当然か。
何せ白髪の女からのご指名だ。十分罠の可能性があるけど、私かルシルのどちらかが行かないといけないことには変わらない。
そして私はスカリエッティのアジト。おそらくそこに間違いなく他のペッカートゥムが居る。
そんなところにフェイト一人で行かせられない。
それではやてたちも異論はないみたいで、私の意見に頷くことで許可を示してくれた。

『決まりやな。あとそれと今回の作戦だけになるんやけど、シャルちゃんとルシル君のコールサインを決めとくな。
シャルちゃんはライトニング5、ルシル君はスターズ5になるっちゅうことで。それでええか?』

コールサイン・・・・・ちょっと嬉しいかも。

「あ、うん。それでいいよ」

「スターズ5・・・・か。了解だ」

『よし。それじゃみんな、すぐにでも作戦決行やから準備してな』

会議室に「了解」と響く。ブリーフィングが終わって、それぞれ会議室をあとにしていく。
私はフェイトに一言謝っておかないとって思って駆け寄る。

「フェイト」

「どうしたの、シャル?」

私の小声でもフェイトは振り向いてくれた。

「ルシルをフェイトのトコじゃなくて、ゆりかごに行かせてごめん」

フェイトはやっぱりルシルと一緒に行きたかったんだと勝手に思い込む。
私の謝罪を聞いたフェイトはきょとんとして、そして微笑んだ。

「謝ることじゃないよ。シャルが言わなかったら私が言ってたから・・・」

「「フェイトさん?」」

そばに来ていたエリオとキャロの頭を撫でるフェイト。
二人もさっきのフェイトのようにきょとん。

「ヴィヴィオが待ってる。パパって・・・。だからヴィヴィオを助けに行くのはなのはとルシル。
それにね。シャルと一緒が嫌って、そんなことあるわけないよ。シャルも大好きなんだから」

「大人だね~、フェイト」

「えっへん」

感心の声を出したらフェイトが胸を張ってえっへん。懐かしいなぁ、それ。
でも、うん。そう言ってくれるなら助かるよ。

「ねぇ、シャル」

「ん?」

さっきの柔らかな表情から神妙な面持ちと変わった。

「欠陥品って・・・・なに?」

フェイトの質問が私の静かだった心を揺らした。
やっぱり聞いていたんだ。白髪の女の言葉を。

「あの白髪の人、ペッカートゥムなんだよね・・・・?
じゃあ、欠陥品ってやっぱりルシルかシャルの・・・・」

「ごめん、答えられない。それは・・・きっといつか話すことになると思う。
それまではお願い。忘れろなんて言わないから、しばらく胸の奥に仕舞っておいて」

「え? あ、うん・・・変なこと訊いてごめんね」

それはフェイトが謝ることじゃない。

「こっちこそごめん」

私はペッカートゥムと邂逅したことで、みんなとの別れが近いことを気にし始めていた。
別れだけは必ずする。けど、正体云々は・・・話すときが来る・・・のだろうか・・・・。

「・・・えっと・・・エリオ、キャロ。フェイトは私がちゃんと守るから安心して。
だから二人も気をつけて行っておいで」

この沈黙をどうにかするためにエリオとキャロへと話題を変える。

「「はい! フェイトさんをお願いします!!」」

エリオとキャロの笑顔を見てちょびっと罪悪感。
ごめんねぇ、二人ともぉ。悪いお姉さんで・・・・(泣)

「シャルに先に言われちゃったけど、私はシャルやシスター・シャッハ、アコース査察官も一緒だから大丈夫。
だからエリオとキャロも無茶はしないようにね」

そう言ってフェイトはエリオとキャロを抱きしめる。
なのはもそうだけどフェイトも良い母親になれるよ。


†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††


「セインテスト」

みんなに続き会議室を後にしようとしたところで、シグナムに呼び止められた。

「どうかしたか?」

「ゼスト・グランガイツに何か伝えることはあるか?」

そうか。シグナムは地上でゼストさんと・・・。
ゼストさんに伝えること、か。かつて世話になっておきながら浮かばない。
それ以前に私なんかを覚えているだろうか。八年前、そのうえ短期間での研修だった。

「・・・・もし私のことを覚えているようだったら、そうだな・・・・。
バカな真似だけはしないでください、と」

「分かった」

シグナムは短く答え、リインと一緒に出て行った。
それからそれぞれ準備を整え、私とシャルを含めた隊長陣、フォワードの子達の乗るヘリの降下ポイントまであと三分となった。
そして今、なのはとヴィータ、私の三人の前にフォワードの子達が整列している。

「今回の出動は今までの中で一番ハードになると思う」

「それになのはもあたしもセインテストも、お前らがピンチになっても助けに行けねぇ」

「「「「・・・・・」」」」

フォワードの子達も上等と言ったところか。
この数ヶ月間で随分と頼もしくなったな。

「だけど、ちょっと目を瞑って今までの訓練のことを思い出してみて」

なのはにそう言われた四人が目を瞑っていく。

「ずっと繰り返してきた基礎スキル。磨きに磨いたそれぞれの得意技。
痛い思いをした防御練習。全身筋肉痛になっても繰り返したフォーメーション。
いつもボロボロになるまで、隊長陣(わたしたち)と繰り返した模擬戦」

後半になるにつれて四人の表情が苦痛の色に歪んでいく。
あの苦しい特訓の日々を思い出しているんだろう。

「・・・・目、開けていいよ」

それぞれが目を開けて一息。
思い出すだけでそこまで疲れるって・・・・そんなに辛かったか?

「私が言うのもなんだけどキツかったよね」

「それでも、ここまで四人ともよくついてきた」
 
「四人とも誰よりも強くなった、とはまだちょっと言えないけど・・・」

そこで四人の期待を潰すような発言はどうかと思うが。

「だけど、どんな相手が来ても、どんな状況でも絶対負けないように教えてきた。
守るべきものを守る力。救うべきものを救える力。絶望的な状況に立ち向かっていける力。
ここまで頑張ってきたみんなはそれがしっかり身についてる。
夢見て憧れて、必死に積み重ねた時間。どんなに辛くても止めなかった努力の時間は絶対自分を裏切らない。それだけは忘れないで」

まったく、なのはには恐れ入る。

「キツい状況をビシッとこなして見せてこその“ストライカー”だからな」

ストライカー。“エース”と同じ魔導師における尊称の一つだ。
その人がいれば、困難な状況を打破できると言われるほどの信頼を得た者につけられる。
なのはたちは、この子達をストライカーに育てることを前提として教えている。

「「「「はい!!」」」」

「それじゃあ、ルシル君。みんなに何か言っておきたいことある?」

なのはにそう話を振られ、一斉に六人の視線が集まる。

「ほとんどなのはとヴィータに言われたよ。だが、そうだな・・・・・・・ない」

「ないのかよ・・・」

なのはの「にゃはは」を久しぶりに聞いた。
そんな私となのはとヴィータのやり取りを見て、緊張感が漂っていた四人の肩から余分な力が抜けたのが判る。
今の私にはこれくらいしか出来ないだろう。少しでも緊張を和らげてあげることくらいしかな。

「・・・それじゃあ、機動六課フォワード隊出動!」

「行って来い!」

「帰ったら祝杯だ」

「「「「はい!」」」」

敬礼をして走り去っていく三人。
残りの一人、スバルはそこに佇んだまま俯いていた。
なのはと話があるのだろう。なら私たちは先に行くとしようか。

「先行ってるぞ」

二人に気を遣ってかヴィータが歩き出し、私もそれについていった。

「墜とされんなよ、セインテスト」

降下ハッチへと続く廊下を歩く中、ヴィータが呟いた。

「珍しい。私のことを心配してくれるのか。・・・・優しいな、ヴィータ」

「バッ―――違ぇよ! お前が墜とされたらいろいろと面倒だろうが!!」

顔を真っ赤にするほど怒らなくてもいいだろうに。
というか怒っている所為ではなく照れているのか・・・・?

「はぁ、聞けよセインテスト。ペッカートゥムってやばい連中なんだろ?
あたしはそいつらと戦ったことねぇからハッキリと分かんねぇけどさ。
でもあたしのカンが告げてんだ。あの白髪の女は絶対やばいってな・・・・」

「歴戦の騎士としてのカンか」

「・・・病み上がりのお前がいきなり実戦。しかも相手はあたしでも感じ取れるくらいのとんでもねぇ化け物だ。
あたしは・・・ああもう! 心配してやってんだ、ありがたく思えよ!」

そう言ってヴィータは、その小さな歩幅を大股で歩くことで大きくした。
心配してくれるというのなら、ありがたくその思いを受け取ろう。
私も少し歩く速度を上げてヴィータに追いつく。

「ありがとう」

そう言ってヴィータの頭を撫でる。
撫でられた直後はきょとんとしていたヴィータ。
撫でられたことに気づいたヴィータが私の手を払いのけるかと思っていたが、

「今日だけだかんな」

と、私の手を受け入れた。随分と素直になったものだ。
そして降下ポイントへと着き、最後の一人なのはが来たことで、私たちも出撃となる。
首都防衛となるシグナムとリイン、フォワードも飛び立ったと報告が入る。

「ほんなら隊長陣も出撃や!!」

はやての号令が下り、開放された降下ハッチへと身を投げ出す。
防護服なし、生身でのスカイダイビングだ。

『機動六課隊長、副隊長一同。能力限定完全解除』


†††Sideルシリオン⇒なのは†††


『はやて、シグナム、ヴィータ、なのはさん、フェイトさん。
そしてこれまで協力をしてくださったシャルロッテさん、ルシリオンさん。みなさん、どうか・・・』

騎士カリムからの直々のお願い。思いはみんな同じ。
ゆりかごを止めて、奪われたものを取り返して、スカリエッティを捕まえる。
私たちの世界を守るために・・・。

「しっかりやるよ!」

「迅速に解決します!」

「お任せください!」

はやてちゃんとフェイトちゃんに続いて答える。

「ご期待に添えれるよう」

「必ず終わらせます」

ルシル君とシャルちゃんも答えた。

『はい、お願いします。では、リミットリリース!』

騎士カリムの言葉と同時に私たちのリミッターが解除された。
ようやく戻ってきた私たちの本当の力。

「エクシードドライブ!!」

≪Ignition≫

バリアジャケットへと変身して、私は“レイジングハート”をフルドライブモードのエクシードへと変形させる。
エクセリオンより負担を少なく、それでいて射撃や砲撃を徹底的に強化したこのエクシード。

「なのは」

「フェイトちゃん?」

私に並んで飛ぶフェイトちゃんに呼ばれた。
何か神妙な顔をしているけど、なんだろう・・・?

「なのはとレイジングハートのリミットブレイク“ブラスターモード”。
なのはは言っても聞かないだろうから使っちゃダメ、とは言わないけど、お願いだから無理だけはしないで」

リミットブレイク“ブラスターモード”。
自己ブーストを利用した私の最後の切り札。ブラスター1から3まで段階的に強化していけるけど、それに比例するように負担も強くなっていく形態だ。
その他にもブラスタービットっていう切り札も付く。
フェイトちゃんの心配は嬉しいけど、それはフェイトちゃんにも言えることだよ。 

「私はフェイトちゃんのほうが心配。
フェイトちゃんとバルディッシュのリミットブレイクだってすごい性能な分、危険も負担も大きいんだからね」

「私は平気。大丈夫」

「もう。フェイトちゃんは相変わらず頑固だな~」

そこのところは昔から変わってないよ。

「な、なのはだっていつも危ないことばっかり・・・!」

顔を赤くして攻め立ててくるフェイトちゃん。
少しは自覚があるみたいだ。よかった。無自覚だったらどうしようかと。

「だって航空魔導師だよ? 危ないのも仕事だもん」

危険は覚悟のうえ。それでも私は空を飛びたい。だから辞めない。
フェイトちゃんはもちろんみんなも知ってることだ。

「だからってなのはは無茶が多すぎるの! ルシル、なのはが無茶しようとしたら力ずくで止めてあげて!」

そこでルシル君を引っ張り出すあたりがフェイトちゃんらしい。
けど、それを言ったら私だって最終兵器を出しちゃうもんね。

「シャルちゃん、フェイトちゃんが馬鹿しそうになったら止めてあげて!」

「ば、馬鹿!? それはあんまりだよ、なのは!!」

フィイトちゃんとちょっとばかり言い争う。
すると、私の頭に重い衝撃が襲ってきた。

「「あいたっ!?」」

見ればフェイトちゃんも頭を押さえて少し涙目。
私とフェイトちゃんを襲った衝撃の正体、それはルシル君の鉄拳制裁。

「どっちもどっちだよ、二人とも」

「うぅ、脳が揺れたよ、ルシル・・・(涙)」

未だに頭を押さえてジト目でルシル君を見つめるフェイトちゃん。
ルシル君はため息ひとつ吐いて、私とフェイトちゃんの頭を撫でた。

「まったく、二人はこんなときでも相変わらずだな。
安心しろ、フェイト。なのはが無茶をしないようにちゃんと見ている。
だから君も無茶をせず、そしてシャルが馬鹿しないように見張っていてくれ」

「そこで私を出すのはおかしいでしょうが!!」

ルシル君の上から、シャルちゃんの鉄拳がルシル君の頭を襲撃。
だけどルシル君はそれをバレルロールで回避。んー、鮮やか。

「お互い無茶をせず、ちゃんと帰ってくる。そうだろ?」

「うん。そうだね。大丈夫だよ、フェイトちゃん。
ちゃんとヴィヴィオと一緒に、元気に帰ってくるから。だからフェイトちゃんも、ね?」

ルシル君に答えるように、フェイトちゃんと向き合う。

「うん!」

フェイトちゃんも強く頷いて約束してくれた。
みんな一緒に、元気で帰ってくると。

「あのー、フェイトちゃん。そろそろ・・・」

私たち四人のさらに上を飛ぶはやてちゃんからお呼びがかかる。
フィイトちゃんとシャルちゃんは、スカリエッティのアジトへと向かう。
だからここで一度お別れだ。

「あ、うん・・・」

「フェイト隊長も無茶すんなよ。地上と空はあたしらできっちり抑えるからな。
フライハイト、ちゃんと守ってやれよ」

「うん、大丈夫!」

「言われなくとも!」

「フェイトちゃん。頑張ろうね」

「うん、なのは。頑張ろう」

右拳を突き出す。フェイトちゃんは左拳を突き出して、お互いの拳を突き合わせる。
よくシャルちゃんとルシル君がしていたことの真似だ。
でもこれって結構いいことだと思う。なんか格好良いし。

「シャル。本当に馬鹿だけはするなよ?」

「そっちこそ」

シャルちゃんとルシル君も拳を突き合わせてる。
フェイトちゃんとシャルちゃんは、スカリエッティのアジトへと進路を取った。

「行こう、はやてちゃん。ヴィータちゃん」

「ああ」「うんっ」

悲しい出来事。理不尽な痛み。どうしようもない運命。
そんなのは嫌いで、認められなくて、打ち抜く力が欲しくて、私はこの道を選んで、同じ思いを持った子達に技術と力を伝えていく仕事を選んだ。

この手の魔法は大切なものを守れる力。思いを貫き通すために必要な力。
目指すは大切なヴィヴィオのいるゆりかご。

「待ってて、ヴィヴィオ。今迎えに行くから」


◦―◦―◦―◦―◦―◦


「ドクター、アスモデウスはどこへ・・・?」

ゆりかごからラボへと帰ってきたウーノが辺りを見回す。
自分たちナンバーズが空けている際、スカリエッティの護衛としてラボに留まるはずの許されざる色欲(アスモデウス)が居ないことを不審に思ったことからによる疑問。

「彼女は別室だよ」

「そうですか。・・・トーレとセイン、セッテも戻りました。迎撃準備完了です。
クアットロとディエチはゆりかご内部に。他の妹たちはそれぞれのミッションポイントと地上本部に向かっています」

スカリエッティがそう言うなら信じるしかないウーノは、ナンバーズの現状を報告する。

「ルーテシアにもお願いをしたよ。上手く動いてもらうとする」

モニターに映るのはガジェットⅡ型に乗るルーテシアとガリュー、そしてオットー。
しかしそこには許されざる嫉妬(レヴィヤタン)の姿はない。
先程、許されざる色欲(アスモデウス)がこのラボに来るように指示をしたためだ。
あと数分、いや、数十秒でこのラボへと到着するだろう。

「騎士ゼストも動かれていますね。予想外の動きをされたら・・・」

「問題ないさ。現在の任務を完了次第、ドゥーエが地上本部へ向かってくれる」

スカリエッティの口から出た新たなナンバーズの名、ナンバーⅡドゥーエ。
彼女こそがスカリエッティが最高評議会への対策として送り込んでいたスパイ。
現在の任務とは最高評議会の抹殺だ。すでに用済みとなった最高評議会を消すためにいる。

最高評議会も予定外だろう。
自らが失われた地“アルハザード”の叡智と技術を以って生み出した存在、無限の欲望の開発コードを持つジェイル・スカリエッティによって滅ぼされることになろうとは、と。
こちらが利用し、向こうが利用される。その立場を信じてしまっていたことが過ちだった。

「そうでしたね。・・・・あの、ドクター?
先程から何故私のほうへと振り向いてくださらないのですか?」

ウーノの何気ない疑問。そう、スカリエッティは一度としてウーノに振り向かない。
何故なら・・・・。

「?・・・ドクター、その目はどうなさったのですか?」

ウーノは、こちらに顔を向けたスカリエッティの異変に気づく。
スカリエッティの目の色は金だったはず。だが今は真紅に染まっていた。
真紅。それは許されざる色欲(アスモデウス)を象徴する色だった。

「この目かい? これはね・・・・・」

「っ!?」

ウーノの意識はそこで途絶えた。

ああああっ、戦闘に入れなかった!!
前半部分がやはり余計でしたか!? そうですか!
次こそ戦闘へと入っていきますので・・・!


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