ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
地上の悲劇 ~後編~


「これは予想外。こうも簡単に三番を討つことが出来るなんて」

許されざる怠惰(ベルフェゴール)は壁に磔にしたシャルロッテを見据えそう口にした。
ナンバーズⅤであるチンクからの応援要請を受け、すぐさまこの場所へと転移。
そしてシャルロッテの真正面から書物のページによる視覚遮断、そして昨夜取り込んだ許されざる傲慢(ルシファー)の剣による一撃。
許されざる怠惰(ベルフェゴール)はこれで決まるとは思ってはいなかった。
もう少しシャルロッテが粘ると考えていたが、結果は今の奇襲で終了。
あまりのつまらない状況に許されざる怠惰(ベルフェゴール)は嘆息。
しかしそれも許されざる傲慢(ルシファー)の“力”を取り込んだことでの勝利だった。
もし彼女一体分だけの“力”であれば結果もまた変わっていただろう。


「ああああああああああああああッッ!!!!!」


シャルロッテに止めを刺そうとしたところで、出入り口付近から少女の絶叫が響いた。
許されざる怠惰(ベルフェゴール)は知らないが、絶叫しているのはスバルだ。
スバルたちフォワードは無事に隊長たちにデバイスを届けていた。
しかしそこで彼女たちは知った。ギンガとの通信が繋がらないことに。
そして機動六課がルーテシアたちに襲撃を受けていたことに。

前線メンバーは二手に別れて行動を開始。
なのは率いるスターズはギンガの安否確認と襲撃戦力の排除。
フェイト率いるライトニングは六課隊舎の救援へと。
そしてスバルは単独先行し、ここで姉ギンガの変わり果てた姿を見、怒り絶叫したのだ。
その怒りを表すかのように彼女の周囲には水色の魔力ではないエネルギーが噴出している。

「かえせ。・・・・ギン姉を・・・・かえせぇぇぇぇーーーーッ!!」

突撃してきたスバルを迎撃するのはナンバーズⅨ、ノーヴェ。
ノーヴェは右手に装着した籠手“ガンナックル”からエネルギー弾を撃つ。
しかしスバルは回避も防御もせず突撃を続行。

突撃の勢いのままスバルは右手の“リボルバーナックル”をノーヴェに向かって打つ。
それにノーヴェはバリアを張り防ぐ。が、スバルの戦闘機人としての能力“振動破砕”により容易くバリアが粉砕された。
ノーヴェが苦悶の表情に染まる。さきほどシャルロッテに受けたダメージの所為だ。

「どけぇぇぇーーーーッ!!」

スバルの怒りの叫びは止まらない。
半ば暴走しているスバルの“マッハキャリバー”の一撃と合わせるように、ノーヴェは足の武装“ジェットエッジ”で応戦する。
しかしその強力な一撃によって至近で爆発。二人とも後方へと吹き飛ばされた。
許されざる怠惰(ベルフェゴール)はその戦いを横目にシャルロッテの傍へと無意識(・・・)に歩み寄る。

「・・・・っ!?」

気を失っているシャルロッテの傍まで来たとき、許されざる怠惰(ベルフェゴール)は驚愕する。
いつの間にかシャルロッテの傍へと来ていたことに。明らかに自分の意志ではない行動に戸惑いを見せる。

「これは・・・一体・・・どういうこと?」

『俺を取り込んだのが失敗だった、ということだ許されざる怠惰(ベルフェゴール)

許されざる傲慢(ルシファー)!?」

許されざる怠惰(ベルフェゴール)の呟きに答えたのは、昨夜彼女に戦いを挑み敗れ、逆に彼女に取り込まれた許されざる傲慢(ルシファー)だった。

『知っているか? 傲慢は罪としては軽いが、その在り方としては重いということを・・・』

「?・・・・ぐっ!? な、なにを・・・・?」

急に意識が朦朧とし始めた許されざる怠惰(ベルフェゴール)

『俺は言った。三番だろうと四番だろうと取り込むと。
今が良い機会だ。今なら三番を取り込め、俺の力とすることが出来る』

「ばか・・・な。いくら・・・霊格が落ちて・・・ぅぐ・・・人間になっていようと・・・・界律の守護神(テスタメント)大罪(わたしたち)がどうにか出来るモノ・・・じゃない・・・あぐっ」

許されざる怠惰(ベルフェゴール)に取り込まれてもなお存在し続けた許されざる傲慢(ルシファー)
このままでは危険と判断した許されざる怠惰(ベルフェゴール)はその場から転移、退却する。
しかし、この転移が彼女の自我による最期の行動となってしまった。
許されざる怠惰(ベルフェゴール)の自我は完全に消失。彼女は許されざる傲慢(ルシファー)に完全に乗っ取られてしまった。

大罪(ペッカートゥム)”間の問題を他所に、スバルと戦闘機人(ナンバーズ)の戦いは続いていた。
スバルと現在対峙しているのはチンク。
すでにギンガはウェンディによって拉致され、ノーヴェもそれについていった。

「邪魔・・・すんなぁぁぁぁぁッ!!!」

チンクに行く手を妨害されたスバルが再度叫ぶ。
そしてスバルの足元には水色のテンプレートが展開。
チンクは己の武装である防御機構を備えた灰色のコート“シェルコート”の支援によるバリア“ハードシェル”を展開。
しかしその強力なバリアもスバルの“振動破砕”を受け粉砕、チンクは吹き飛ばされる。

「ギン姉!!」

スバルはギンガを連れ去ったウェンディたちを追いかけようとするも、チンクがそれを許さない。
チンクのもう一つの武装スローイングナイフ“スティンガー”。
スバルの前面に展開されたそれにスバルを足を止めざるを得ない。

≪Protection≫

次の瞬間に襲い来るであろう“スティンガー”に備え、スバルの相棒“マッハキャリバー”がバリアを展開する。
その瞬間、バリア目掛けて“スティンガー”が放たれた。

――ランブルデトネイター――

そして怒った爆発がスバルとチンクの二人を巻き込む。
爆発によって起きた煙の中、スバルが覚束ない足取りで姿を現す。
防護服はボロボロで、左腕に大きなダメージを受けている。
それだけでなく“マッハキャリバー”も火花が散るほどの損害を受けている。

「・・・かえせ・・・ギン姉を・・・かえせよぉぉぉぉ!!」

チンクはすぐそこまで来たスバルを見て目を瞑る。
それはスバルの激しい感情に堪えたゆえか、それとも己の死を悟ったためか・・・・。

「セインさん到着っ!」

そのとき、チンクには希望を、そしてスバルにとっては絶望を運んできた新手が現れた。
水色の髪をしたナンバーズのⅥ、セインだ。

「助かった」

チンクはセインの救援に心底安堵してそう呟いた。
そしてセインの“ディープダイバー”によって、チンクとセインがこの場から消えた。
それを見ていることしか出来なかったスバルはついに膝を折り地に跪く。

≪The main body was... The system rests≫

“マッハキャリバー”も損害レベルの激しさにより機能停止した。
戦闘によって荒れ果てたこの空間にスバルの慟哭の声が響き渡る。

「スバル!?」

ここにきてようやくティアナを抱えたなのはが現れた。
あと少し。ほんの少しなのはが早く来てくれていれば、状況は変わっていたかもしれない。
なのはとティアナは、スバルの姿とこの空間の有様を見て悟った。
すべてが終わり、間に合わなかったのだと。

「スバル・・・・」

「・・・・スバル。・・・・・?」

なのはは視覚の端に何か光ったものを捉え、ゆっくりと警戒しながら近づいていく。
“レイジングハート”を構え、いつでも戦闘に対応できるように。
ティアナもスバルに寄り添いながら、片手で“クロスミラージュ”を構える。

「・・・・っ!!」

そしてなのはは見た。腹部を剣で貫かれ、壁に串刺しにされていた大切な親友の姿を。

「あ・・ああ・・・ああああ・・・・シャルちゃん!!!」


†††Sideヴィータ†††


このおっさん強ぇ。
あたしの攻撃が通らねぇうえに、こっちは息切れしてんのに向こうはまだ全然余裕がある。

「む? オーバーSが数人動き始めている。向こうの守りはもう復活したか」

ゼストって名乗ったおっさんが構えを解いた。

『ヴィータちゃん! シグナムがこっちに!』

ああ、それはあたしも分かる。
これで形勢逆転だ。シグナムが来ればどうにか出来る。

「ここまでか。撤退するとしよう」

おっさんがユニゾンを解いた。
撤退するつもりらしいけど、それを許すあたしらじゃねぇ。
アイゼンの構えを解かずにおっさんの動きに注意する。

『ヴィータちゃん、上!!』

リインの言葉に応えて上を見上げる。
そこにあったのは馬鹿でかい炎の塊と、それを下から支えているようにいる融合騎。

――轟炎――

「あたしがここで叩いとく!」

あの炎塊はやばすぎる。あんなのを受けたら無傷(ただ)じゃ済まねぇ。

「チッ」

あの炎塊が放たれる前に潰す。あたしは融合騎を墜とすために一気に飛んだ。
だけど、それより速くおっさんが立ちはだかった。

「くっ・・・・な!?」

激突したあたしのアイゼンとおっさんの槍。
おっさんの槍があたしのアイゼンにヒビを入れる。

「はああああああ!!」

おっさんの槍はそのままアイゼンを砕いて、あたしを弾き飛ばした。
ビルの屋上に叩きつけられけど思ったよりダメージが少ない。
咄嗟にリインが防御魔法を使って助けてくれたようだ。

『野郎・・・。!? リイン? おい、リイン!?」

空を睨んだそのとき、いきなりユニゾンが解かれた。
あまりに突然だったからリインを呼んでみたけど返事がねぇ。
そして目の前にリインが倒れるようにして現れた。

「リイン! リイン!?」

何度も呼びかけるけどリインは目を開けなかった。

「シグナム・・・。リインが・・・アイゼンも・・・!」

あたしは自分の無力さに・・・・泣いた。


†††Sideヴィータ⇒フェイト†††


今、私たちライトニングは六課に向けて空を翔けていた。
ロングアーチとの通信で隊舎が襲撃を受けていることが分かったからだ。
グリフィスよると、ルシルが救援に行くと通信したものの未だ着いていないとのことだった。
それはつまりルシルのほうで何か問題が起きたということ。
だぶんそれはペッカートゥムの仕業だと私は思った。
ルシルがそいつらに行く手を妨害されているなら、私たちが六課に向かわないといけない。

「・・・・っ」

遠く離れたところに光る何か。
私はそれを瞬時に攻撃による光だと判断してバリアを展開した。
案の定それは砲撃という攻撃だった。

「戦闘機人・・・!」

視線の先には二人の戦闘機人。自由に飛んでいるところをみると、航空部隊はあの二人によって墜とされたとみていい。

「エリオ、キャロ。すぐに追いかけるから先に行って」

ここで三人が足止めを受ける必要はない。
それに空戦である以上、エリオとキャロの二人には荷が重過ぎる。
エリオもそれが解ったのか、私を心配してくれたキャロを説得して六課に向かってくれた。

「バルディッシュ。サードフォーム!」

≪Zamber Form≫

“バルディッシュ”を大剣状のサード、ザンバーフォームへと変形させる。

「スカリエッティはどこにいる!?」

私のその言葉を合図に戦闘が開始される。
紫色の髪をした戦闘機人は私の速さと大して変わらない。
そして何度目かの衝突のあとにもう一度問いただす。

「スカリエッティはどこだ!? なんでこんな事件を起こす!?」

「お望みでしたらいつでもご案内しますよ」

「もちろん、あなたが我々に協力してくれるのならですが・・・」

そんな馬鹿なことは在りえない。

「彼は犯罪者だ。それも最悪の・・・」

だからこそ協力なんて選択肢はない。

「悲しいことを言わないでください。
ドクターはあなたやあの少年の生みの親のようなものですよ?」

「あなた方の命は、ドクターがプロジェクトFの基礎を組み立てたからこそ――」

「黙れ!!」

そんなこと聞きたくない。

「・・・・仕方ありませんね」

そう告げた桃色の髪をした戦闘機人。
私たちの周辺に小さな光がいくつも立ち上っていく。

「またお会いすることにあると思います。そのときはゆっくりとお話を・・・」

「あぁ、それからもうお気づきとかもしれませんが――」

小さな光が集まって一気に発光、視界が戻ったときにはそこに戦闘機人の影はなく、私の耳に届いたのは紫色の髪をした戦闘機人の言葉。

『次はもうあなたは私たちに勝てません・・・』

逃げられた。不愉快さに歯噛みするけど、今はエリオたちを追いかけないと・・・・。


†††Sideフェイト⇒ルシリオン†††


「そぉぉらぁぁぁっ!!!」

サタンの強力なレーザーが、私の背後にある六課に向けて放たれる。
私はそれを相殺、もしくは防御して六課へ向かうそれを止める。

許されざる憤怒(サタン)ばかりに気を取られていると死ぬわよ?」

「く・・・っ!」

アスモデウスの大鎌を“グングニル”で受け止める。
この夜闇を照らし出す火花が散る中、レヴィヤタンのすみれ色の砲撃が迫る。

――Mors certa/死は確実――

――女神の聖楯(コード・リン)――

上級防性術式を展開。砲撃を真正面から受けるのではなく、逸らすようにすることで拮抗時間を減らし、聖楯の展開に必要な消費魔力を抑える。

「・・・・すごい・・・」

レヴィヤタンの呟きが聞こえる。
いやはや、驚嘆の声をありがとうレヴィヤタン。

「なかなかやるのね欠陥品!」

「それはどうも!」

「!・・・・うぐっ!」

大鎌にさらに力を加えたアスモデウス。
“グングニル”でそれを捌き、アスモデウスの腹に魔力を籠めた蹴りをかます。

「そんなことも出来るんだな欠陥品よぉ!?」

「チッ」

――知らしめよ(コード)汝の忠誠(アブディエル)――

サタンのレーザー一斉掃射を、上下の穂先から5メートルとある蒼い魔力刃を伸ばす。
全長12メートル弱となった“グングニル”を前面で回転させることでレーザーを弾く。

「ほら、そっちばかりだとお前の大切な居場所が消し飛ぶわよ?」

アスモデウスはレヴィヤタンの肩に手を置きながら告げた。
レヴィヤタンが手をかざしている方向には六課隊舎。

「貴様らぁぁぁーーーーッ!!」

先程からこの三体は私への攻撃より六課隊舎を狙うような攻撃を繰り返す。
それが私にとっての弱点と知っているためだ。
こうなれば創世結界でも展開しようかと思ったとき、私の耳に届いてほしくなった声が届いた。

「「ルシルさん!?」」

「エリオ、キャロ!?」

フリードリヒに乗ったエリオとキャロの二人が上空に滞空していた。
まずい。私と六課だけでなく、エリオとキャロまでが標的となってしまった。
そして私は見た。凶悪な笑みを浮かべたアスモデウスとサタンを・・・。

「「さぁ、どれを守る欠陥品?」」

レヴィヤタンのぬいぐるみにすみれ色の閃光が集束。狙いは・・・くそ、判らない。
サタンの前面にも黄緑色の閃光が生み出されていく。狙いは攻撃の性質上全てだ。
アスモデウスは大鎌を振り上げるように構えた。視線からして二人だ。

「どれが今宵で消えるのかな?」

「おおおおおおおおおっ!!!」

アスモデウス、レヴィヤタン、サタンの三体から攻撃が放たれた。
私はあとのことを考えずに行動。
六課に向けられたサタンのレーザー群は女神の聖楯(コード・リン)で防御。
レヴィヤタンとアスモデウスの攻撃がエリオとキャロに向けられたことを瞬時に判断。
フリードリヒを庇うようにして、術式の性質上、どうしても効果の弱くなってしまうもう一つの女神の聖楯(コード・リン)を展開。
聖盾とフリードリヒの間にこの身を挟み盾とした。そして襲い来る爆発と激痛。

「「ルシルさん!? ルシルさん!?」」

聴覚を少しやられたようで、エリオとキャロの声が聞こえづらい。
でも二人の声が聞こえるということは、二人を無事に守れたということだ。
そこだけは喜んでいいだろう。

「・・・無事か・・・二人・・・とも・・・?」

声が出しづらい。思っているよりダメージが深刻そうだ。

「僕たちは大丈夫です! でも・・・でもルシルさんが・・・!!」

「ごめんなさい、ごめんなさい・・・ルシルさん! わたしたちを・・・庇って・・・」

キャロのすすり泣く声が聞こえる。
安心させて、二人を六課に向かわせないと・・・・いけないな・・・・。

「大丈夫・・・だから。泣くな、キャロ。六課へ急ぐんだろ?
早く行ってみんなを・・・・助けてあげてくれ・・・」

私は笑えているだろうか?

「ルシル・・さん。・・・・はい、必ず! 行くよ、キャロ!」

「エリオ君・・・。うん・・・ルシルさん・・・・」

フリードリヒの翼の羽ばたき音が聞こえる。
二人はちゃんと六課へ向かったようだ。

「・・・・そんなボロボロの姿ではもう勝てないわよ?」

「その根性だけは認めてやるけどな」

黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ。
貴様たちはあの子達を狙い、そして泣かした。

「はぁはぁはぁはぁ・・・・・・っ、楽に死ねると思うなよっ!!!」

――第二級粛清執行権限、制限十五秒時限解凍――

現状において解凍を許可されていない第二級権限を、時間制限を設けての強制解凍。
使用する魔力はSSSランクの2ランク上のXランク。
二級権限の魔力で発動出来るのは、大戦時に活躍した名高い英雄たちの武装と術式、能力。

≪我が手に携えしは友が誇りし至高の幻想≫

「くたばれぇぇぇぇッ!!! 真技!!」

――雷神天震墜――

英知の書庫(アルヴィト)”から引き出したのは、私と蒼雪姫シェフィの戦天使(むすめ)の一人、プリメーラ・ランドグリーズ・ヴァルキュリアの誇る真技の一つ。
プリムの魔力光である黄金に輝く巨大な雷撃の塊を対象の頭上に落とす必殺の一撃。

「「なに!?」」

アスモデウスとサタンは驚愕の声を上げ、レヴィヤタンは静かに効果範囲から一人離脱。
そして“雷神天震墜”が海面と衝突。その瞬間、世界から音と光が消え失せた。
実際には、あまりの発光量と爆音の所為で五感が狂ってそう錯覚しているに過ぎないが。

残り七秒―――

知覚を研ぎ澄ましペッカートゥムの居場所を探る。
ギリギリでアスモデウスとサタンが回避したことは判っているからだ。

残り四秒―――

反応あり。全速力でペッカートゥムのいる居場所へと飛ぶ。

「・・・・っ!? うがぁっ!?」

捕らえたのはサタンの首。苦悶の声を上げるが知ったことか。
覚悟しろ。貴様の終焉は今この場に訪れた。

残り二秒―――

「消えろ!!」

――真技・火葬煉棺ルナティック・クリメイション――

サタンの首を鷲掴みしにしていた右手から紅蓮の業火が噴出、サタンを包み込む。
使用したのはプリムと同じ戦天使(むすめ)の一人、ティーナ・ヒルド・ヴァルキュリアの真技。
数千度の炎熱で対象を包み込み、一気に焼失させる術式だ。
それによってサタンは抵抗する暇もなく消滅した。
気づけばアスモデウスとレヴィヤタンの二体の姿がない。
どうやら撤退したようだ・・・・。あとは・・・・六課をどうにかしないといけないな。


◦―◦―◦―◦―◦―◦


エリオとキャロの乗るフリードリヒは、ルシリオンの言葉に従い六課を目指した。
そして二人の目に映るのは、赤く燃え上がる六課の隊舎だった。

「・・・・ひどい」

「・・・あれは・・・?」

その光景にキャロは悲しみの籠もった声で呟く。
キャロの後ろに座るエリオが隊舎から離れていく影を視認する。
それは召喚士ルーテシアと召喚虫ガリューを乗せたガジェットⅡ型だった。
それだけでなくガリューの腕の中にはヴィヴィオが抱かれていた。

「あの子・・・ヴィヴィオが!」

ヴィヴィオが連れ去られる光景を見たエリオは目を見開き思い出す。
かつての自分もまたああいう風に無理矢理両親から引き離されたことを。

「ストラーダ! フォルム・ツヴァイ!」

≪Düsenform≫

エリオの言葉に応え、“ストラーダ”はデューゼンフォルムへと変形した。
ブースターの数がさらに増え、限定的な空戦を行えることが出来る形態だ。

「エリオ君!?」

「キャロ、フォローをお願い!」

エリオはヴィヴィオを取り戻すために、ルーテシアとガリューへと仕掛けるつもりだ。

≪Explosion≫

フリードリヒから飛び降りたエリオは“ストラーダ”にしがみ付くように落下。

「ブースト!」

≪Start!≫

“ストラーダ2の言葉が発せられると同時にヘッドブースターが点火。
一直線にルーテシアたちの乗るガジェットⅡ型に突進していく。
ルーテシアとガリューはエリオの接近に気づき、ガリューがそれの迎撃に入った。
ガリューが繰り出してきた蹴りを、エリオは“ストラーダ”を平行に構えることで防御。
それで失った推進力を取り戻すために、その場で槍の側面部にあるサイドブースターと、石突部分にあるリアブースターを使って高速回転。
勢いをさらにつけ、再度ガジェットⅡ型へと再突進する。

「どけぇぇぇぇッ!!」

エリオとガリューの短い攻防。
その結果、エリオはガリューの左腕にあった角のような武装を折ることに成功。
だが、エリオの背後に新手が現れた。それは戦闘機人(ナンバーズ)がⅩⅡ、ディード。

「失礼」

――ツインブレイズ――

両手に携えた彼女の固有武装“ツインブレイズ”と呼ばれる双剣がエリオに振り落とされた。
エリオはティードの“ツインブレイズ”の直撃を受け海中へと沈んだ。

「エリオ君!!」

フリードリヒに乗るキャロは、エリオの名を叫ぶ。
しかしキャロにもまた戦闘機人による脅威が迫っていた。

「――キャッ!?」

キャロとフリードリヒはバインドを仕掛けられ、エリオと同様に海中へと沈んだ。
バインドを仕掛けた主、戦闘機人(ナンバーズ)がⅧ、オットー。
少年にも見える彼女は黙ってそれを見ていた。

「さっきのはFの遺産でしたか。まぁ、死んではいないでしょうが・・・」

エリオを海に叩き落したディードがそう口にする。
それを聞いたルーテシアは「うん」と短く頷いた。
ディードは“残りの始末はガジェットがする”とルーテシアに告げ、ルーテシアはガリューを率いて六課をあとにした。

キャロは気を失ったエリオを海面から訓練場へと引き上げ終えて、肩で息をしていた。
傍に倒れているエリオと本来の姿から戻り小さくなった使役竜フリードリヒ。

『これより五分後に上空ガジェットと航空戦力による施設への殲滅作戦を行います。
我々の目的は施設破壊です。人間の逃走は妨害しません。抵抗せず、速やかに避難してください』

キャロはそれを聞き、涙を流す。
“なんでわたしたちの大切な居場所を壊すのか?”と・・・。
そしてキャロを中心に召喚魔法陣が展開された。

「竜騎・・・召喚・・・・。ヴォルテーーーーーール!!!」

彼女の背後にさらに巨大な召喚魔法陣が展開。
そこから這い上がるかのように、人型のような巨大な竜“ヴォルテール”が姿を現す。

「壊さないで・・・・。わたしたちの居場所を壊さないでぇぇぇぇーーーーッ!!!」

キャロの叫びに応えるかのように“ヴォルテール”の口と両翼に集束されていく光。
そして放たれた三つの砲撃はガジェットを一瞬でなぎ払っていく。


†††Sideはやて†††


『ミッドチルダ地上の管理局員諸君、気に入ってくれたかい?』

会議室に流れるスカリエッティの映像。
私は目の前にある小型モニターに映る燃え上がる隊舎を黙って観ているしかなかった。

『ささやかながらこれは私からのプレゼントだ。
治安維持だのロストロギア規制だのといった名目の下に圧迫され、正しい技術の進化を促進したにも関わらず、罪に問われた稀代の技術者たち。
今日のプレゼントは、その恨みの一撃とでも思ってくれたまえ。
しかし私もまた人間を、命を愛する者だ。無駄な血を流さぬよう努力はしたよ。
可能な限り無血に人道的に。忌むべき敵を一方的に征圧できる技術、それは十分に証明出来たと思う。
今日はここまでにしておくとしよう。この素晴らしき力と技術が必要ならば、何時でも私宛に依頼をくれたまえ。格別の条件でお譲りする・・・』

会議室にスカリエッティの不愉快な笑い声が響く。
私は怒りでどうにかなりそうな頭を必死に落ち着かせる。

「予言は・・・覆らなかった」

隣にいるカリムがそう言うけど、私はまだそうは思わん。

「まだや。機動六課は、私たちはまだ・・・・終わってない」


†††Sideはやて⇒フェイト†††


私が六課に着いたときの光景は、たぶん二度と忘れないと思う。
エリオは気を失っているのか座り込むルシルの左腕に抱かれていて、キャロはエリオとは逆の右側で、ルシルにしがみ付いて泣いていた。
そんなルシルもまた防護服はボロボロで上半身はほとんど裸の状態だった。

「・・・エリオ・・・キャロ・・・、ルシル・・・」

「フェイトさん・・・わたし・・・わたし・・・ヴィヴィオが・・・」

泣き続けるキャロのところにまで駆け寄って、私はキャロをルシルと一緒に抱き締めた。
私が・・・私がもう少し早く来ていればこんなことにはならなかった。

「フェイト。キャロとエリオを頼む」

「ルシル!? そんな体で何するの!?」

「決まっている。六課が燃えている姿なんてもう見ていたくない」

ルシルは私たちに振り返らず、六課へと飛んだ。
そしてここから見えたのは、六課を包み込んでいた炎が全てある一箇所に吸い込まれていき、遥か上空へと炎柱となって放たれて消えていった光景だった。

――第四波動――

◦―◦―◦―◦―◦―◦

どこかの森の中、所々が砕け落ちた許されざる憤怒(サタン)がいた。
許されざる憤怒(サタン)はルシリオンの攻撃をその身に受けながらも未だに存在していたのだ。
彼は背を木に預け、もうどこにも無い右半身を崩れた目で見て、悪態をつく。

「ヤリヤガッタナ・・・・ケッカンヒンノ・・・ヤロウ・・・」

その許されざる憤怒(サタン)に近づく一つの影。

「・・・ア? ベルフェゴール・・・チョウドイイ。
オマエノ・・・サイセイノチカラデ・・・オレヲナオセ・・・・」

許されざる憤怒(サタン)の言葉に許されざる怠惰(ベルフェゴール)は答えない。
先程から微笑を浮かべているだけだ。

「オイ・・・ベルフェゴール・・・ナニカイッタラ―――オゴォアッ!?」

許されざる憤怒(サタン)の体が宙に浮く。許されざる怠惰(ベルフェゴール)の腕に貫かれて掲げ上げられているためだ

「ナンノツモリダ!?・・・・ベルフェ・・・・ルシ・・・・ファー・・・ダト!?」

先程までは許されざる怠惰(ベルフェゴール)だった姿が許されざる傲慢(ルシファー)となっていた。
左半分だけとなっている許されざる憤怒(サタン)の顔が驚愕に染まる。

「オマエハ・・・・・ベルフェゴールニ・・・・マケテ・・・・」

――死んだ。と最後まで口にすることは叶わなかった。
今度こそ許されざる憤怒(サタン)は消滅した。“力”だけを奪われて・・・。

許されざる傲慢(ルシファー)の姿が揺らぎ、次の瞬間には許されざる怠惰(ベルフェゴール)に戻っていた。
微笑みは次第に深くなり、最後は大きく口を開けて笑いだした。

「クククク・・・ンフフフフ・・・ハァーッハッハッハッハッハッハッハッ!!」

許されざる怠惰(ベルフェゴール)を模した許されざる傲慢(ルシファー)の笑い声は暫く止むことはなかった。




†◦―◦―◦―◦―◦↓シャルシル先生の魔法術講座↓◦―◦―◦―◦―◦†



ルシル
「こんな状況でもやらなければいけないとはな。
今回は休みとなるシャルに代わり、私ルシリオンがこのコーナーを取り仕切る。
そしてもう一つ。本来ならフェイトやなのはと言ったメンバーも参加するんだが、今話の事もあってみんなは不参加となった。
申し訳ないが、今回だけは私一人だけとなる。
さて、長々と男の話を着ていても面白くないだろうから本題へ行こう。
私の魔術の新出はこの三つだ。

――女神の聖楯(コード・リン)――

まず、私の有する防性術式の中でも第三位の防御力を誇る、女神の護楯コード・リン。
リンは、蒼い円の中に女神の祈る姿が描かれた軽く芸術的な盾だ。
大きさや展開できる場所は任意で決定出来るんだが、あまりに複雑な術式なため、複数展開することが非常に難しい。

――知らしめよ(コード)汝の忠誠(アブディエル)――

次は、魔力刃を生み出したり武装に装着する攻性・補助術式、知らしめよ、汝の忠誠コード・アブディエル。
展開する際の状況によっては効果を変化させられる。
防御に使いたいときは硬度を。攻撃に使いたいときは威力や貫通性・障壁破壊など。とな。

――執行権限――

最後に、私の魔力を四段階に分けて制限しているリミッター、それが執行権限だ。
00%~25%の魔力を制限する、第四級審判執行権限。
26%~50%の魔力を制限する、第三級断罪執行権限。
51%~75%の魔力を制限する、第二級粛清執行権限。
で、71%以上の魔力を制限する、第一級神罰執行権限。
第三級までの解放で、この世界における最高ランクSSSを使うことが出来る。
第二級からが、大戦時では当たり前に使っていたX-からEXランクとなる。

大体こんなところか。それではまた次回、今度はシャルやフェイト達と一緒にやろうと思う」


複製術式
雷神天震墜:ANSUR
火葬煉棺ルナティック・クリメイション:ANSUR
狂気の火葬の意味を持つ。

ANSURキャラクター

プリメーラ・ランドグリーズ・ヴァルキュリア
戦天使(ヴァルキリー)軍ランドグリーズ部隊隊長を務める女性型。
開発者であるルシリオンとシェフィリスを「お父様」、「お母様」と呼び慕う。
雷撃系においては最強の戦天使(ヴァルキリー)

ティーナ・ヒルド・ヴァルキュリア
戦天使(ヴァルキリー)軍ヒルド部隊隊長を務める女性型。
隊長でありながら特攻をかます超絶猪突猛進爆弾娘。
炎熱系においては最強の戦天使(ヴァルキリー)


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。