それぞれの思惑
†††Sideルシリオン†††
「さて、今日の朝練の前にひとつ連絡事項です。
陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹が、今日からしばらく六課に出向となります」
整列するフォワードの子達に、なのはの口からギンガの紹介がされた。
対するフォワードの子達、特にスバルが目を点にして驚いている。
聞かされていなかったこともあって当然か。
「はい。108部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です。よろしくお願いします!」
「「「「よろしくお願いしますっ!」」」」
ギンガの挨拶に四人は元気に応えた。
続いてフェイトからもう一人の紹介が始まる。
「それからもう一人。十年前から六課の隊長陣のデバイスを見てきて下さっている本局技術部の精密技術官」
「どうもー、マリエル・アテンザです」
シャルのこの世界での相棒である“トロイメライ”を作った女性だ。
それから簡単な挨拶や説明も終わり、今日の午前の訓練へと入っていく。
フェイトと私でライトイング、とはいってもフェイトが居るときはあまり手を出さない。
ヴィータはティアナと突撃型の捌き方を。なのははスバルとギンガと話をしている。
「ギンガ、ちょっとスバルの出来を見てもらっていいかな?」
「あ・・・はい」
「一対一で軽く模擬戦。スバルの成長、確かめてみて」
どうやらあっちはスバルとギンガの模擬戦から入るようだ。
なのはに応えたギンガと、やる気満々な表情を浮かべるスバル。
「ククっ」
「? どうかしたんですか、ルシルさん?」
キャロが私を見上げて不思議そうな顔をしている。
「ん? いや、ギンガが今のスバルの力量を見てどう反応するか楽しみでね」
今のスバルは、なのはとヴィータに鍛えられてなかなかのものだ。
しかしまだギンガには追いついてはいないかもしれない。
だがギンガ、それでもスバルを甘く見ていると負けるかもしれないぞ?
†††Sideルシリオン⇒スバル†††
「はああああっ!」
なのはさんから、ギン姉と模擬戦するように言われて始めたんだけど、やっぱりギン姉は強い。
ギン姉の攻撃をなんとかギリギリで避けるので精一杯で、反撃の糸口を全然つかめない。
「っ!?」
≪Storm Tooth≫
≪Protection≫
ギン姉の“リボルバーナックル”が唸りをあげながら、腰の入った強力な一撃があたしに打たれた。
あたしはそのあまりの勢いに回避じゃなくて防御を選択する。ううん、するしかなかった。
けどそれもほんの一瞬だけの拮抗で、すぐに破壊。再度ギン姉の一撃が来た。
あたしにその一撃は入る直前、ギン姉は“決まった”みたいな表情を浮かべた。
確かに以前までのあたしだったらこれで終わってたかもしれないけど、今は違う。
咄嗟に構えた左の手のひらにプロテクションを一点集中、ギン姉の一撃を防ぐことに成功。
ギン姉も防がれたことに気づいて驚いた表情を浮かべた。あ、なんかちょっと嬉しい。
そして今がチャンスだと思い、反撃に移る。
「リボルバー――」
≪Defenser≫
「――キャノン!!」
あたしの一撃をバリアで防ぐギン姉だけど、さっきのあたしと同じように簡単に破壊された。
あたしは攻撃の手を緩めないように間髪いれずにもう一度叩き込む。
「っく・・・!」
うしろに大きく弾かれたギン姉に、反撃へ移る機会を与える前に追撃。
「相棒っ!」
≪Gear Second≫
“マッハキャリバー”がモード2へと移る。出力が上がることで、さらにスピードが上昇する。
あたしはその加速とスピードを利用した飛び蹴りを放つ。
≪Wing Road≫
けどあたしの蹴りは簡単に避けられて、ギン姉はウイングロードで空に上がった。
あたしもそれに続いてウイングロードで空に上がる。
そこから何度も攻防を繰り返すけど、やっぱりギン姉は強かった。
「うあ・・・」
ギン姉の“リボルバーナックル”が、あたしの目前で止まった。
「はい、そこまでーっ!!」
なのはさんから、模擬戦終了が告げられた。
「いいね。いろいろ上手くなった」
「あー、まだまだ全然・・・」
負けちゃったけど、ギン姉との模擬戦は楽しかった。
それに少しは成長できてるってことが自分でも分かったのがちょっぴり嬉しい。
そしてみんなのところに戻ると、ヴィータ副隊長直々のお言葉が待っていた。
「反応は悪くなかったぞ。スピードがおっつかなかったか?」
「あ・・・ありがとうございますっ」
ダメなところとかいろいろ言われると思ったら、まさかの褒め言葉?だった。
さっき感じた嬉しさがさらに倍増。
このあと隊長たちと、私たちフォワードとギン姉を合わせたチーム戦を行った。
†††Sideスバル⇒ルシリオン†††
「はい、じゃあ今日はここまで」
「全員、防護服解除っ」
降下してきたなのはとヴィータが地面に座り込んでるフォワード陣に告げた。
フォワードの子達もなかなか良い線までいっていたが、やっぱりまだまだ隊長陣には及ばない。
「ふむ。惜しいところまではいったな」
「あともうちょっとだった」
確かにいいところまではいったが、それでもまだ隊長陣のほうが一枚も二枚も上手だ。
しかしそれもこのまま鍛え上げて、半年もすれば覆りそうだ。
まぁ今とは違って、リミッターを解除したなのはたち隊長陣に勝てるかどうかは不明だが。
「あー、最後のシフトが上手くいってれば逆転できたのにぃ」
「くやしい~」
「フォロー足りなかったねー、ごめんね」
「あ、いえ」
「ギンガさんは全然・・・」
その悔しい思いが成長を促す。だからその気持ちは忘れないでほしいな。
「悔しい気持ちのまま、反省レポートをまとめとけよ」
「「「「「はいっ!」」」」」
「ちょっと休んだら、クールダウンしてあがろう。お疲れさま」
「「「「「ありがとうございましたっ!」」」」」
フォワードの子達が少しの休憩を挟みストレッチをしているなか、隊長陣のもとへと向かう。
隊長陣と「おつかれ」と挨拶を交わし、そこからフォワード陣の出来だとかを話す。
「おーい!」
遠くからシャルの声が聞こえた。
まったく、今日は何をしていたのか問い詰める必要が・・・・・今日はソレかぁ。
「ママー! パパー!」
ヴィヴィオが大きく手を振りながら、私たちのもとへ徐々に近づいてくる。
そして同時に、ヴィヴィオが乗っている生き物も近づいてくる。
その後ろにはシャルとシャーリー、ザフィーラ、マリエルの四人もいる。
「今日はうさぎ?かぁ」
「わぁ、かわいい♪!」
ヴィータがチラチラとヴィヴィオの乗る生き物を見る。うさぎが好きだもんな、君は。
「かわいい♪」と声をあげるのはキャロ。
スバルやティアナ、ギンガも口には出さないが、顔には出ている。
「ルシル君の使い魔って、ホントにいろいろな子がいるよね」
「まあな。ああいう愛玩系の使い魔もいくらか居るよ」
ヴィヴィオと“異界英雄”の組み合わせは結構六課では有名になってきた気がする。
ヴィヴィオが訓練場へ来る際、そこにシャルが居合わせると“異界英雄”登場というパターン化。
最初の頃はちゃんとどれを召喚するか許可を取りに来たが、この頃は一切なし。
問題を起こさなかったこともあってそれでよし、とした。
一度だけ“侯爵級ドラゴンのクロセル”を召喚しようとしたこともあり、そのときは全力で食い止めた。
あんなものが現れたら、どうなるか少し考えれば解るだろうに・・・・。
「なぁ、セインテスト。あのうさぎっぽいのなんて言うんだ?」
「ん? あれはバーニィ。人懐っこいから害はない」
ヴィータにそう答える。人や荷物を載せてくれる、優しい奴だ。
「ママー! パパー!」
「ヴィヴィオー!」
ヴィヴィオがバーニィから降りて駆け寄ってくる。
するとバーニィは光となって消えていく。シャルが召喚を解いたらしい。
「危ないよー、転ばないでねっ」
「うん!」
駆けてくるヴィヴィオを待っていると、フィイトの注意もむなしくヴィヴィオが転んだ。
「あ! 大変!」
「待った、フェイト。大丈夫だ」
「うん。地面柔らかいし、綺麗に転んだ。ケガはしてないよ」
「それはそうだけど・・・」
転んだヴィヴィオのもとに駆け寄ろうとしたフェイトを、私となのはで止める。
私もフェイトのようにすぐに駆け寄りたい気持ちが生まれたが・・・。
だがそれを抑え、ヴィヴィオが立ち上がるのを待つ。
「ヴィヴィオ、大丈夫? ケガ、してないよね。自分で立ってみようか」
「ママ・・・パパ・・・」
涙を浮かべるヴィヴィオを見て、さらに駆け寄りたい気持ちが・・・・!
う、まずい。ここまでヴィヴィオに愛着が湧くと、後々厄介なことになりそうだ。
「ママたちとパパはここに居るぞ。さぁ、おいでヴィヴィオ」
そんなことを考えながらしゃがみ込み、両手を広げてヴィヴィオを待つ。
しかし結局ヴィヴィオは、後ろから来たシャルと我慢できなかったフェイトによって抱き起こされた。
「もう、二人とも少し厳しいんじゃない? ねぇ、フェイト」
「うん、そうだよ。ヴィヴィオはまだ小さいんだから」
「ええ? それはちょっと甘いと思うよ。ね、ルシル君」
「あ~、まぁ・・・なんだ。ヴィヴィオ、今度は頑張ってみような?」
誰だ、今「逃げた」って言ったのは?
†††Sideルシリオン⇒なのは†††
午前の訓練も終わって、みんなで食堂へと来た。
食堂で昼食を摂りながら、みんながそれぞれ雑談を始めている。
そんななか、隣のヴィヴィオがピーマンだけを残しているのに気づいた。
「ヴィヴィオ、ダメだよ、ピーマン残しちゃ」
「う~、にがいのきらーい」
ヴィヴィオがそう言うけど、お残しはなのはママが許しません。
「そんなことないよ。ピーマン美味しいよ?」
「ヴィヴィオ、好き嫌いなくしっかり食べないと、大きくなれないぞ?」
「・・・・」
同じテーブルについているフェイトちゃん、ルシル君もそう言ってくれる。
でもシャルちゃんだけは無言。あれ? シャルちゃんなら何か言ってくれると思ったんだけど。
「あー、そやなー。好き嫌い多いとママたちみたいに美人になれへんよ?」
「うぅ・・・・あ」
はやてちゃんからもフォローが入って、ヴィヴィオがピーマンを食べるかなと思ったら、ヴィヴィオが真ん前に座っているシャルちゃんのお皿を見る。
私たちもシャルちゃんのお皿を、正確にはお皿の上のある食べ物を見る。
「シャルちゃん・・・・まだダメだったのトマト?」
お皿の端っこに寄せられているのはミニトマト。
昔からトマトが嫌いだったけど、今でもそうだなんて思いもしなかった。
そして無言だった理由も分かった。そうだよね、自分を棚に上げて偉そうなこと言えないよね。
「シャルさん、のこしてるのに美人だよ?」
「わぁ♪ ありがとう、ヴィヴィオ❤」
ヴィヴィオに「美人」って言われて嬉しそうなシャルちゃんだけど、そこは違うでしょ。
「そうじゃないだろ、シャル。君が手本として嫌いなトマトを食べなさい」
「いや、ほら・・・」
ルシル君にそう言われたシャルちゃんはヴィヴィオを見て、
「「ねぇー♪」」
二人一緒に首をかしげながら微笑んだ。
可愛いけど、可愛いんだけど。でもここで折れちゃダメだよ、私っ。
「ねぇ、シャル。なんでトマトがダメなの? すごく美味しいのに・・・」
「う~ん。だってよくたとえ話とかであるでしょ? 潰れたトマトってまるで人が――むぐっ!?」
「言わせるか馬鹿っ!」
シャルちゃんの言葉の続きを防ぐようにして、ルシル君がシャルちゃんの口を塞ぐ。
ヴィヴィオは続きが気になるのか「なになに?」って言っている。
潰れたトマト? 人が・・・? ルシル君の様子からしてあまりよくない話題・・・・かな?
少し考えて頭に浮かんだのは、人が転落した結果が云々っていうたとえ話・・・・。
うわっ、想像するんじゃなかったよ。
「時と場所と、言う相手を少しは考えようなー、シャル?」
ルシル君の怖い微笑みを見て、シャルちゃんが何度も頷く。
ようやくルシル君の手から解放されたシャルちゃんは一息。
「まぁ理由は兎も角として、トマトって昔からダメなんだよー。
こればかりはどうあっても好きになりそうに―――あがっ!?」
シャルちゃんが奇声を発する。
原因はルシル君。ルシル君の右手がシャルちゃんの口を開けたままで固定して、左手でミニトマトを無理矢理口の中に突っ込んだ。
フォワード陣のテーブルから「おお」って聞こえてきた。
はやてちゃんたち八神家もフォワード陣同様、そんな感じだ。
「ほら、ヴィヴィオ。シャルさんも嫌いなトマトを美味しそうに食べてるぞ」
そう言うけど、さっきからシャルちゃんの顔にモザイクがかかって分からないんですけど。
たぶんこのモザイクはルシル君の魔術かなんかだと思う。
ホントにいろいろなことが出来る。
「美味しいだろ、シャル?」
「トマト、トテモオイシイデス」
うわっ、シャルちゃんどうなってるの?
明らかにカタコトの棒読みで怖いんだけど・・・。
でもモザイクがシャルちゃんの顔を隠して確かめられない。
最終的にヴィヴィオは、ルシル君に遊んでもらえると聞いてピーマンを食べた。
そしてシャルちゃんはしばらく気を失ってました。そこまで嫌いになるって、何か他に理由でもあるのかな?
◦―◦―◦―◦―◦―◦
――ミッドチルダ・スカリエッティラボ
黄色い灯りに染まる通路にジェイル・スカリエッティが歩を進めていた。
後ろについて歩いているのは許されざる色欲と許されざる憤怒の二体。
「スカリエッティ。地上本部とやらの襲撃の準備は出来てんのか?」
「ああ、もちろん、と言いたいところだがまだだね。
私の作品が全て完成したとは言い切れない。だが整いつつあることには違いないよ」
許されざる憤怒の問いに、スカリエッティはそう答え笑みを浮かべる。
許されざる憤怒は「そうかい」と返して黙り込んだ。
「15年前、君たちは私の夢に賛同してくれた。我々のためだけの世界の創造。
まぁ、あまりにいきなりな出会いと話の内容だったために少しばかり驚いたがね」
「確かに。今思えばよく信じられたわね、スカリエッティ。
私たちの正体に関しても世界の在り方に関しても・・・・」
「君たちの記録とやらを脳に直接流し込まれれば信じるしかないだろう?
あれを見なければ私は今でも信じられなかったはずだよ」
笑い声を上げながらスカリエッティは通路を進む。
「あぁそうそう。3rd君と4th君のどちらかでもいいから生け捕りに出来ないかい?」
「生け捕り? 随分と面白いことを考えるな、スカリエッティ」
「やはり研究者としては無視できないのだよ、許されざる憤怒。
世界の意思を代行する界律の守護神とはあれから一度も話をしていない。
私は知りたい。神と呼ばれる地位にまでいる彼らが何を思い、何を望み、何を得たいがために存在するのかを」
スカリエッティの言葉を聞いた許されざる色欲と許されざる憤怒は失笑。
二体の思うことは唯一つ。“この男は何が起ころうとも折れない”。
「それは今の人間としての奴らか、それとも守護神となっている奴らか?」
「私は彼らの話が聞けるなら、そのどれでもかまわないよ」
「だったら全て事が終わったあとでもいいでしょ。
計画途中で下手な爆弾を抱え込むと、全てが水泡に帰すことになるわ」
「ああ。ゆっくりと話が出来る環境を整える必要もあるしね」
三人の会話はそこで一旦終わり、沈黙を保ったまま通路を進む。
しばらく歩き行き着いたのは、ガジェット二型が数十機と並ぶ一室。
許されざる色欲と許されざる憤怒の二体は入らず、入り口付近で立ち止まる。
そこにはすでに先客が二名。それを見たスカリエッティは口を開く。
「祭りの日は近い。君たちも楽しみだろう?」
「あー、武装も完成したしドカンと一発暴れてみたいっスねー」
洋紅色の髪を後ろで纏めた少女。首元にある装甲にⅩⅠとある。
その少女、ウェンディの言葉にスカリエッティは答える。
「君たちは最前衛用の能力だ。存分に暴れられるとも」
「だって。楽しみだねー、ノーヴェ♪」
「別に。あたしは確かめたいことがあるだけだし。
あたしたちの王様がどんな奴か、そいつは本当にあたしたちの上に立つのに相応しい奴なのかどうか・・・」
ウェンディに話を振られたノーヴェは素っ気無く返す。
スカリエッティは、ノーヴェの言葉に小さく苦笑し、止めていた歩みを進める。
「まぁ、よく解んないけど、それすぐ解るんスよね?」
「そうとも。準備は整いつつある」
ウェンディにそう答え、スカリエッティはレリックが収められたボックスに手をかざす。
するとレリックは、まるで目覚めたかのように光を放ち周囲を照らし出す。
話の途中でこの部屋に集まったスカリエッティの作品、ナンバーズにも聞かせるように謳いだす。
「ひとつ大きな花火を打ち上げようじゃないか!
間違いなく素晴らしく楽しいひと時になる!」
スカリエッティは両腕を大きく広げ笑い声を上げる。
これから自分たちがなす、祭りとやらに酔いしれるかのように。
「ふふ、今のうちに存分に楽しんでおけばいいわ。ジェイル・スカリエッティ」
「生まれ方はどうあれ、やっぱ人間はどいつもこいつも同じってわけか」
部屋の外からスカリエッティとナンバーズを見つめる二体の“大罪”が囁く。
冷笑を浮かべた二体は、静かにゆっくりとその場から離れた。
†††Sideシャルロッテ†††
「今日、教会のほうから最新の予言解釈がきた。
やっぱり公開意見陳述会が狙われる可能性が高いそうや」
はやてに部隊長室へと呼ばれた私たちは、はやてから予言の新しい解釈を聞かされた。
「もちろん警備はいつもよりうんと厳重になる。
機動六課も、各員でそれぞれ警備に当たってもらう。
ほんまは前線丸ごとで警備させてもらえたらええんやけど、建物の中に入れるんは私たち三人だけになりそうや」
はやてはなのはとフェイトを見てそう告げた。私とルシルは黙って耳を傾ける。
「まぁ、三人揃ってれば大抵なんとかなるよ」
「前線メンバーも大丈夫。しっかり鍛えてきてる。副隊長たちも今までにないくらい万全だし」
「みんなのデバイスリミッターも明日からはサードまで上げていくしね」
「ここを抑えれば、この事件は一気に好転してくと思う」
なのはとフェイトが頷いて応える。
それじゃ私とルシルが気になるもう一つのことを聞いてみようか。
「ごめん、はやて。解読できていない予言のほうはどうなってる?」
「それについては少しだけや。今は解読できてる予言の解釈で手一杯みたいでな。
んで、我らがユーノ君の解読した予言の解釈はこの三つや。
慟哭の涙、歓喜の絶唱、憤怒の叫び・・・・あんま解らんけど、良くないことやとは思う」
「そう、ありがとう」
それはそうか。
今解読できている部分を、地上本部の壊滅と管理システムの崩壊を防ぐのが最優先。
それにその後に続く予言は、現状を防げば回避できると判断されているんだった。
「それでな、シャルちゃんとルシル君には、地上本部の外を遊撃戦力として守ってもらいたいんやけど・・・ええかな?」
「はやて、私たちに遠慮する必要はないってシャルに言われたんだろ? 私としてもそうだ。
だがまぁペッカートゥムやレーガートゥスが現れたらそっちを優先したい。すまないが」
はやてにルシルがそう答える。
ついでにペッカートゥム連中が現れたらそっちを優先させたいとも。
「だからといって、地上本部とかみんなを蔑ろにするってわけじゃないよ」
「そんなん分かっとるって。でも・・・うん、そやね。
それに対処できるんは二人だけやし、その場合はそっちを優先してもええよ」
「それまでは地上本部やフォワード陣や他の局員のフォローに全力を注ぐ」
「だから三人は中のほうをしっかりね」
「「「うん!」」」
◦―◦―◦―◦―◦―◦
――第三管理世界ヴァイゼン 9月11日 AM0:00
深い森林の中、唯一開けた場所に許されざる傲慢ともう一人の影。
そのもう一人の影が、月光の降り注いでいるその場に複雑な紋様を刻んでいる。
「Levis est fortuna. Id cito reposcit quod dedit」
その影は地面に紋様を刻みながら、片手に持つ書物のページを開きつつそう囁く。
それを聞いた許されざる傲慢は空に浮かぶ月を仰ぎ見る。
「レウィス・エスト・フォルトゥーナ。イド・キト・レポスキト・クウォド・デディト・・・。
運命は軽薄である。与えたものをすぐに返すよう求めるから、か・・・・。
確か運命様の言葉だったか、許されざる怠惰」
「ええ」
ふくらはぎほどまである白髪を背中の辺りから三つ編みにしている若い女性、許されざる怠惰がしゃがみながらそう返す。
すっと立ち上がり、許されざる傲慢へと振り向く。
白いクロークが風に靡いて翻り、それに続いて編まれた白髪も同様に翻る。
「――で、何をしに来たの? 私の仕事に何か文句でも言いに来た?」
前髪から覗く銀色の双眸が許されざる傲慢を見据える。
許されざる傲慢は月から許されざる怠惰へと視線を移す。
「明日、地上本部とやらに襲撃をかける。俺たちは三番と四番を特殊部隊の施設から引き離す役目を担った」
「それなら許されざる色欲から聞いた。私は現状のままミッドチルダ周辺世界での待機とされているけど・・・」
許されざる傲慢はそれに「怠惰にはちょうどいい」と苦笑した。
「でもまぁ、まさか私たちがフリとはいえ人間如きに手を貸すなんて思いもしなかった」
許されざる怠惰が地面に紋様の続きを刻み始める。
「だが実際、なかなかに面白い。人間と同じ時間を過ごすなんてことは今までになかった。
だからこそ様々な知識を得られる。必要なことから不必要なものまでな」
「そのタバコもその知識のひとつというわけ?」
許されざる怠惰が地面に刻んだ紋章に左手をつき、許されざる傲慢の口に銜えたタバコを見ながら問う。
「あぁこれか。人間が考えた嗜好品というのも悪くない」
「そう。Fortuna vitrea est; tum cum splendet frangitur」
地面に刻まれた紋章に左手をついている許されざる怠惰がそう告げる。
すると、そこに刻まれていた紋章が一瞬輝き、そして何もなかったかのように消滅した。
「フォルトゥーナ・ウィトレア・エスト・トゥム・クム・スプレンデ・フランギトゥル。
運命はガラスでできている。輝くときに砕け散る・・・・か。
お前のそれは“標”を刻む際に必要な詠唱なのか?」
「いいえ。単に許されざる怠惰の趣味のようなもの。深い意味はない」
許されざる怠惰は立ち上がり、月を仰ぎ見る。一息を吐いて目を閉じた。そしてゆっくりと言葉を紡いでいく。
「これで全ての準備は終了。私の仕事もようやく終わり。
あなたはどうす―――これはどういうつもり、許されざる傲慢?」
許されざる怠惰が目を開き見たのは、赤黒い四角柱の剣の先端を自分に向ける許されざる傲慢の姿だった。
「俺の目的には“力”が必要なんだ。大罪としての“力”じゃなく、な。
役目を終えたお前はもう必要ない。だからその“力”は俺が有効に使わせてもらう」
「・・・・傲慢ね。何を目的としているかは知らないけど、今なら許す。
その剣を下ろして大人しくミッドチルダへと帰りなさい。
それに万が一、あなたたちが守護神に敗れでもしたらどうするわけ?
あのお方の名を受けている私たちは本来、守護神にちょっかいを出すべきじゃなかった。
それを許されざる色欲が先走って、守護神たちに自分たちの存在を知らせて・・・。
今回の計画が失敗しでもしたら、私たちが絶対に消される。何も考えなかったのか、あなたたちは」
許されざる傲慢の剣を、許されざる怠惰は手にしていた分厚い書物で叩き落とす。
それでも許されざる傲慢は剣を構える。見据えるのは自分の糧となる贄のみ。
許されざる怠惰は、やれやれと首を横に振りながらため息を吐く。
「・・・・馬鹿ね。なら仕方ない。返り討ちにして、私があなたの“力”を頂くことにする。
ギブアップはいつでもどうぞ、許されざる傲慢?」
「万が一なんてものはない。俺が三番と四番すらも取り込むからな」
「今代の傲慢はどこまでも愚かね。呆れてものも言えなくなった。
四番の本気をその身で体感すれば、そんな戯言は吐けなくなる。だから私は、あなたにこの言葉を贈る」
許されざる怠惰の手にしている分厚い書物のページが風もなく開いていく。
「Stultum facit Fortuna, quem vult perdere」
――運命の女神は破滅させたいと思う者を愚かにする――
「なら俺からもだ、許されざる怠惰。
Misce stultitiam consiliis brevem, dulce est desipere in loco」
――僅かの愚かさを思慮に混ぜよ、時に理性を失うことも好ましい――
月光降り注ぐ地にて、傲慢と怠惰の二人だけの殺戮のダンスが始まった。
それぞれの思惑が絡まりあい、次元世界は人知れずただ滅びへと向かっていく。
異界英雄
バーニィ:スターオーシャンシリーズ
侯爵級ドラゴン・クロセル:スターオーシャン3
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。