ヴィヴィオとママと・・・・
全てが白に染まる広さも何も分からない空間。
ただその空間にあるのは、淡く碧く輝いている直系5メートル近い光球。
そして、それを囲むようにして存在しているのは11の玉座。
玉座一つ一つで色が違い、背もたれの上にそびえ立っている十字架の形も様々だ。
そしてその玉座に座っている十一の人影も、それぞれ色違いの外套を羽織っていて、玉座や外套と同じ色の仮面をつけている。
ここは“神意の玉座”、また名を“遥かに貴き至高の座”と呼ばれる最高位次元。
あらゆる世界の意思“界律”が交差する、全てが在って、全てを識る究極の根源。
「それで? 絶対殲滅対象が活発になってきたっつう話だろ?」
声に出しているのは、第二の力と呼ばれる金色の玉座に腰掛け、肘掛に肘を置いて頬杖をついている男、“死と絶望に微笑む者”の二つ名を持つティネウルヌス。
「ここ最近、一切活動を見せていなかったアレらがよく界律に引っかかる」
淡々と話すのは、第一の力と呼ばれる白銀の玉座に腰掛けている者、“心優しき始まりたる者”の二つ名を持つアーク。
仮面をつけているために性別は不明、声からして男であると思われる。
「現状において活動しているのを確認できるのは、
ナンバーⅡ自由リーベルターテム、ナンバーⅧ覚醒アギト、ナンバーⅨ支配インペリオールム。
それに、ナンバーⅩⅠ永遠アエテルニタス。そして、番外位であるナンバーEx大罪ペッカートゥムの六体となっています」
左手を挙げ、報告するように告げたのは第六の力と呼ばれる翡翠の玉座に腰掛ける少女、“舞い散る雪に踊る者”の二つ名を持つ雪姫。
仮面とフードを外しているため、その白い肌、綺麗な黒瞳と黒髪がよく見える。
「十四体、番外位を入れれば十五体中五体が活動中というわけか・・・。
それで現在、その五体には誰が当たっているんですか?」
第九の力と呼ばれる蒼穹の玉座に腰掛けている男、“果て無き幻想を追う者”の二つ名を持つ優斗がそれぞれの“界律の守護神”に問うた。
少ししてから、この六体に対処している“界律の守護神”から声が上がる。
「永遠は私が担当している」
そう告げるのは1st・テスタメント・アーク。
「はいはーいっ! 自由と支配は僕だよーっ!」
勢いよく玉座の上に立ち上がって大声で告げるのは、第七の力と呼ばれる真紅の玉座に腰掛けていた少女、“上位なる神の抹殺者”の二つ名を持つルフィスエル。
「覚醒は俺だ」
第十の力と呼ばれる銀灰の玉座に腰掛ける男、“欲望のままに詠う者”の二つ名を持つフヴェルトヴァリス。
退屈しているのか腕を組みながら、コキコキと首を鳴らしている。
「大罪は私と・・・・」
「私が担当しているわ」
そう告げた二柱の“界律の守護神”に視線が集中する。
その視線に籠められた意味は“何故?”の一つだけだ。
第四の力と呼ばれる漆黒の玉座に腰掛ける“天秤の狭間で揺れし者”ルシリオンと、第三の力と呼ばれる純白の玉座に腰掛ける“剣戟の極致に至りし者”シャルロッテは、その視線を軽く受け流して、苦笑を浮かべた。
「はぁ!? 何で番外位如きにお前らが二柱がかりで対処してんだよ? ありねぇだろうが、普通よぉ」
「うるさいわね、2nd・テスタメント・ティネウルヌス。
それに番外位だけとは限らないのよ。私の分身体から送られてきた情報によると、まだ出てくるみたいなのよ、別の絶対殲滅対象が」
「そういうことだ。私とシャルロッテの召喚された理由が、そこにあるのはまず間違いないだろう」
シャルロッテが、外している仮面をいじりながら静かに告げた。
ルシリオンもそれに続いて腕と足を組んだ状態で言葉を紡ぐ。
「二柱がかりの契約、ですか。一体誰でしょうか?」
シャルロッテの隣の、第五の力と呼ばれる桃花の玉座に腰掛ける少女、“愚者と賢者は紙一重”の二つ名を持つマリアが、人差し指をあごに当てながら口にした。
「そうですね、ルシリオン君とシャルロッテ君が召喚されるとなると大事かもしれないね・・・・」
第八の力と呼ばれる燈黄の玉座に腰掛ける、“高貴なる閃光の者”の二つ名を持つ少年、プリンス・オブ・レディエンスが考えるような仕草で、マリアに応えた。
「確認が取れていない残りの絶対殲滅対象の実力は結構レベルが高いです。
特にナンバーⅢ宇宙ウーニウェルスム、ナンバーⅥ運命フォルトゥーナ、ナンバーⅦ天使アンジェラス、ナンバーⅩⅥ終極テルミナス。
この四体が関係してくると、複数同時召喚される場合もありますし・・・・」
6th・テスタメント・雪姫の言葉に、“界律の守護神”全員が沈黙する。
確かにこの四体が相手になると、複数の“界律の守護神”が召喚される。
特にナンバーⅦの天使。これの相手のときは間違いなく最低でも五柱が召喚される。
だが、それでも勝てたことが一度もない。それほどに強力無比の存在だ。
残りの三体もまた、そこまでとはいかずとも強大な力を持っている。
「どちらにしても絶対殲滅対象がまた姿を現しているのは間違いない。
アレらに如何な目的があろうと滅ぼさなければならない。
それが我ら界律の守護神の存在意義。如何な犠牲を払おうとも確実に滅ぼせ」
今まで沈黙を保っていた第零の力と呼ばれる透明な玉座に腰掛けていた者、“創世より嘆きし者”の二つ名を持つアイオーンが、玉座内に響き渡る声で告げた。
†††Sideルシリオン†††
「はあああああっ!!」
「――――げふっ!?」
私の鳩尾に、それは綺麗に入るエリオの“ストラーダ”の一撃。
障壁も何もないため、ダイレクトに、かつクリティカルなダメージが浸透する。
「Å%☆$Я?*⊿∽・・・・・orz」
「うわぁあぁぁっ! ルシルさん!?」
「る、ルシルさんっ!?」
今は早朝訓練で、ライトニング二人との訓練の真っ最中。
そんなときに“神意の玉座”の本体とリンクしていたため、反応が遅れて一撃を受けてしまった。
「だ、大丈夫・・・・、すまなかった、エリオ・・・」
「そんな、僕のほうこそすいませんっ!」
「ルシルさん、大丈夫ですか!?」
エリオが謝り、キャロが急いで駆け寄ってきてくれた。
だがエリオ、君が謝るのは間違っている。今のは全体的に私が悪かった。
「いや、エリオは何も悪くない。だから謝るのは私だけだ。
キャロも、ありがとう。大丈夫だよ」
「「あ、はい・・・」」
ああいうのは後々に本体から情報が来るため、わざわざ本体とリンクする必要性はほぼ皆無。
しかし、現状を早く知るためにも情報が欲しかった。
それにリンク中は、別に意識を全てリンクに割かれることはない。
だから訓練中にでも問題ないだろう、と思っていたのが間違いだった。
あまりにもエリオを軽視していた。そうだ。エリオは、なのはとヴィータ、フェイトの教導を受けてきて、私も参加していたんだ。
「集合!!」
なのはから集合がかかる。なおも心配してくれているエリオとキャロの頭を撫でつつ「もう大丈夫だ」と微笑みかける。
「もうこんな時間か。それじゃ行こうか、エリオ、キャロ」
「「はいっ!」」
エリオとキャロの肩の手を置いて歩き出す。
そして、なのはとスターズと合流、そして解散した。
†††Sideルシリオン⇒なのは†††
「お疲れ様、ルシル君」
「ああ、お疲れ様、なのは。ヴィータ」
「おう、お疲れさん」
フォワード陣の早朝訓練を終えて、ヴィータちゃんとルシル君と一緒に隊舎へと向かう。
三人でそれぞれが担当した子たちの訓練の出来を報告し合いっていると、私の耳に、何か鼻歌のようなものが聞こえた。
ヴィータちゃんとルシル君も聞こえているようで、周辺を見渡している。
「ラーララ~ララーララ~~ラーララーララ~~~♪」
これって、まさか・・・・暴れん○将軍のテーマ? 少し音程がズレてるけど・・・・。
次に聞こえてきたのは、“パカラパカラ”という、まるで馬の走る音。
そして私とヴィータちゃんとルシル君は見た。黄金の鬣をした白馬を。
それに跨るシャルちゃんとヴィヴィオ。
その後ろからフェイトちゃんがオロオロしながら白馬を追っていた。
「ええええええっ!?」「うおっ? 馬だっ」
ほんの一瞬だけ思考が止まっちゃった。
再起動した私はあまりの光景に大声を上げてしまった。
「おまぇは・・・・アホかぁぁぁぁぁっ!!!」
ルシル君がそう叫びながら、シャルちゃんとヴィヴィオが跨っている白馬へと全力疾走。
その手に持っているのはピコピコハンマー、しかも大きい。
ルシル君は跳躍。そしてシャルちゃんの頭上へ一直線に落ちていく。
「あんまーーーーいっ!!」
上から降ってきたルシル君のピコハンを、シャルちゃんはこれもまた大きいハリセンで捌いた。
もうわけが分からないよ、二人とも・・・・。
そんなことを思いながら、私とヴィータちゃんもみんなのもとへと走る。
「えっと・・・シャルちゃん・・・これは?」
「なあ、セインテスト。これもお前の使い魔か?」
「ん? あ、ああ、そうだ・・・!」
シャルちゃんは白馬から降りて、ルシル君のピコハンをハリセンで捌き続けながら応えた。
ヴィータちゃんは白馬の体を撫でながら訊き、ルシル君はシャルちゃんにピコハンの一撃を入れようと頑張りながら答えてる。
「まずはおはよう、なのは。さっきの質問の答えは“馬”だよ」
そんなの見れば分かる。どこからどう見ても馬、それは分かってるんだってば。
私が聞きたいのは、どうしてこんなことになっているのかだよ?
というか余裕で捌いてるよね。さすが剣士さん。ルシル君の必死さが可哀想になってくるよ。
「シャル、なのははそういうことを聞きたいんじゃないと思うんだけど・・・」
そうだよ、フェイトちゃん。私の言いたいことをちゃんと分かってくれてありがとうだよ。
「えいっ」
“スパーン”といい音をしながら、ルシル君の顔面にハリセンがヒット。
よろめきながら後ろに退く鼻を押さえたルシル君。今のは痛そうだ。
ヴィータちゃんが「うぉ、クリティカルヒット」って笑う。
「分かってるって、なのはが言いたいことくらい。見ての通り散歩だよ、なのは。
フェイトとヴィヴィオが散歩していたのを見て、私も一緒したいな~って思ってさ」
「だ、だからって・・・何故に天駆閃馬を呼び出すかな、君は?」
ルシル君が馬の名前?と思う言葉を口にしながら、未だに馬に跨っているヴィヴィオに近づいていった。
ヴィヴィオのほうは、さっきまでのやり取りに少し怯えているようだったけど、ルシル君が頭を撫でると気持ちよさそうな表情を浮かべた。
「まあまあ、そんなことはいいじゃない。神馬より遥かにマシでしょ?
それにー、楽しかったよね、ヴィヴィオ?」
「うん♪」
ヴィヴィオもすっかりシャルちゃんに慣れたようだ。
ヴィヴィオが六課に来て数日が経っている。
人見知りが激しいヴィヴィオだけど、私やフェイトちゃん、ルシル君にはすぐに懐いてくれた。
だけどシャルちゃんは、理由は分からないんだけどヴィヴィオに怖がられていた。
でも懸命な私たちのフォローのおかげで、ヴィヴィオはシャルちゃんにも懐くようになった。
「それじゃ、ヴィヴィオ。なのはさんとルシルさんとヴィータさんにおはよう、って」
「おはよー」
ルシル君に馬から降ろされたヴィヴィオが「おはよー」って挨拶してくれた。
「「おはよう」」「おう、おはようさん」
私とヴィータちゃんとルシル君も挨拶を返す。
「なのはとルシル、ヴィータも朝ごはん、一緒に出来るよね?」
「うん」「あー、あたしはダメだ」
「あ、すまない。私は馬鹿と少し話があるから、今日は一緒できない」
たぶん馬鹿というのはシャルちゃんのことだろう。
シャルちゃんもそれが分かっているのか「失礼なっ」って言って、未だに手に持っているハリセンで、ルシル君の頭を何度も叩いている。
ちょっとシャルちゃん。ルシル君がハゲちゃうよ。
「そっか。それじゃ、仕方ないよね」
「ルシルさん・・・来ないの?」
「ごめんな、ヴィヴィオ。その代わり、お昼は一緒に食べような」
「うん。約束だよ」
「ごめんね~ヴィヴィオ。なのはとフェイトも」
そう言って、ルシル君は白馬を消して、シャルちゃんと自分たちの部屋に戻っていった。
そして最後にシャルちゃんの頭をさっきのピコピコハンマーで思いっきり殴打した。
†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††
「全く、君に低ランク限定とはいえ異界英雄召喚権限を与えたのは間違いだったよ」
ルシルの部屋で、ルシルが椅子に座りながらため息を吐いた。
「だって面白かったんだもん。それにヴィヴィオも楽しそうにしてたしね」
私がこんなに子供好きだったなんて自分自身で驚きだったりする。
でも小さい頃から結構憧れだったりしてたんだよね、子育てとかそういうのが。
もしこれを聞いた生前の同僚や部下たちはどういう反応するだろうな~?
きっと、信じられないって言って笑うかもしれない。あ、でもグレーテルとティファなら
――シャルロッテ様の御子さんなら、きっと可愛く強いですよね~――
とか言って、祝福に笑ってくれそう。
「はぁ、次からは気をつけてくれ。今回はあまりに急だったから驚いたぞ、本当に」
「は~い。ごめんなさ~い」
次からはちゃんと許可を取ってから召喚しようっと。
「それで? 私に何か話があるみたいだけど・・・・」
気持ちを切り替えて、ルシルが言っていた“話”とやらを聞いてみる。
ルシルから椅子に座るように勧められたけど、私は一番近かったベッドに座る。
別に汚れていないから、そんな「え~、そこに~?」みたいな顔しないで。
「・・・・。まぁいいか。話というのは絶対殲滅対象についてだ。
つい先程、本体とリンクして情報を得てきた」
「はぁ? わざわざそんなことしたの? そういう情報って、必要とされたときに必要なものだけ送られてくるじゃない」
現状で必要な情報だけが随時送られてくる。
だから本体とリンクする必要なんてない。
「それはそうだが、早めにペッカートゥムら絶対殲滅対象の動向が知りたかったんだ。
それで判ったんだが、絶対殲滅対象の動きが活発になってきたみたいなんだ」
「活発? 他のところにも出現してるってこと?」
「ああ。現在確認が取れているのが、ナンバーⅡ、ナンバーⅧ、ナンバーⅨ、ナンバーⅩⅠ。
そして、私たちが担当しているナンバーExの五体だ」
五体が同時活動中? 確かに気になる情報だとは思う。
だけど挙げられた連中はさほど強いわけでもない。
まぁ、斃しきれていないからこそ生き残っているわけだけど。
「そいつらに対処してるのはどの守護神なわけ?」
「アークがナンバーⅩⅠ、ルフィスエルがナンバーⅡとナンバーⅨ、フヴェルトヴァリスがナンバーⅧだ」
「ナンバーⅡとナンバーⅨの二体の消滅は確定ね。ルフィスエル相手に勝てるわけがない。
それにアークが当たっているナンバーⅩⅠも、おそらく消滅するはず。
それとナンバーⅧって確か覚醒だったっけ? あいつって結構強いけど・・・」
以前、私も覚醒と戦ったことがある。
そのときは逃げられてしまったことで決着しなかったけど、戦い続ければどうなっていたか・・・。
だから私より弱いフヴェルトヴァリスに覚醒は少し荷が重いかもしれない。
「大丈夫じゃないか?」
軽く言うけど、みんながルシルみたいな反則なわけじゃないんだから。
「問題は姿を見せていない他の絶対殲滅対象だ。
ペッカートゥムがどのナンバーをこの次元世界に呼び出すかは分からないが、私が召喚されたことを考えると、ナンバーⅢ宇宙、 ナンバーⅥ運命の可能性が高い」
ルシルは、紅茶のカップを私に渡しながらそう口にした。
私はそっとカップに口をつけて、紅茶をいただく。
確かにルシルの言うとおりかもしれない。
あの二体とルシルの因縁がもうどれくらいになるかも分からない。
「なるほどね。一度も決着していないナンバーⅢ、そして勝てたことのないナンバーⅥ。
私も一緒に召喚されたということは、後者の方が高いと思うよ、ルシル」
ナンバーⅢ宇宙とは引き分けが続いているけど、絶対に勝てないわけじゃない。
そしてナンバーⅥ運命はルシルを一度斃したことがある。
けど、それはルシルにとっての弱点を突いたからこそ勝てたものだ。
だから私がルシルの弱点――人命を人質にとられるような事――をフォローすれば勝てると思ってる。
「そうか。一応相手が運命かもしれないということは考えておこう」
「了解」
それから対運命戦のイメージを、なのはから昼食の誘いが来るまで続けた。
それにしてもやっぱ強いわ、運命(泣)
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
「なのはがヴィヴィオの保護責任者? 私は良いと思うよ。ね、ルシル?」
ヴィヴィオの待つ、私とフェイトちゃんの部屋に行く前に、シャルちゃんとルシル君の部屋に寄った。
二人と合流して、私とフェイトちゃんの部屋に向かう途中、さっきスバルに話したヴィヴィオの引き取り手が見つかるまでの間、私が面倒を見るって話をした。
「ヴィヴィオが一番懐いているのは現状じゃなのはだしな。悪くない話だと思うぞ」
シャルちゃんもルシル君も賛成してくれてる。
「そうですよねっ。ルシルさんとシャルさんも、これを聞いたヴィヴィオが喜ぶと思いますよねっ?
さっきなのはさんにそう言ったら、“う~ん、喜ぶかな~?”って言ったんですよ?」
スバルがさっき話してた同じことをシャルちゃんたちにも聞いてるけど、二人の表情からして私と同じことを思ってるみたい。
「保護責任者、なんて言ってすぐに解れというのはちょっと難しいんじゃない?」
「もっと砕けた言い方のほうがいいんじゃないか?」
「そ、そうなんですか? でも砕けた言い方なんてありますか?」
「「「う~ん・・・・」」」
私の後ろで真剣に悩んでる三人。
そうこうしてるうちに部屋の前に着いて、扉を開く。
「・・・・ぁ」
「ヴィヴィオ、良い子にしてた?」
扉が開いて、私たちに気づいたヴィヴィオが真っ直ぐに私のところまで走ってきて、勢いよく抱きついてきた。
私も抱きしめ返して、ヴィヴィオを抱え上げる。
「うんっ」
「アイナさん、ザフィーラもありがとうございます」
「いえいえ」
この寮を管理してくださっている寮母のアイナさんと、ザフィーラに感謝する。
アイナさんはヴィヴィオの世話を志願してくださった優しい女性だ。
「ヴィヴィオ、今日はね、大事なお話があるんだ。
ちょっと難しいかもしれないけど、しばらくの間は私がヴィヴィオの面倒を見る保護責任者、っていうのになったんだよ」
「??」
やっぱり難しい話だったみたいで、分かっていないみたい。
「ほら、やっぱりよく分からない」
後ろで控えてたスバルに振り向く。シャルちゃんとルシル君は微苦笑。
スバルは何か上手な説明をするためか唸ってる。
「え~と、なんて言えば解るのかなぁ。
う~ん・・・・、つまり、しばらくはなのはさんがヴィヴィオのママだよ、ってこと」
スバルが散々悩んで口にしたのが、私がママになるということ。
でもママっていうのも悪くないかもしれない。
「・・・ママ?」
「え、あ、え~と・・・いや、その・・・」
ヴィヴィオが私を見上げて「ママ?」と呼んできた。
そしてママという案を出したスバルは、“しまった”みたいな顔をしてる。
いやいや、どうしてそこでそんな顔をしちゃうのかな? 私じゃママになれないってこと?
「いいよ、ママでも。ヴィヴィオのホントのママが見つかるまで、なのはさんがママの代わり。ヴィヴィオはそれでもいい?」
床に下ろしたヴィヴィオの瞳をしっかり見るために屈む。
頑張って理解しようとしてるのか、ヴィヴィオの表情からはちょっと分からない。
「どうかな?」
「・・・ママ?」
「はい、ヴィヴィオ♪」
そう応えると、ヴィヴィオは泣き出して抱きついてきた。
それから少しの間泣き続けたヴィヴィオは宥めて、みんなで昼食を食べた。
†††Sideなのは⇒ルシリオン†††
なのはとヴィヴィオが期間限定の母子となって翌日。
「おはよう、はやて。同じ時間帯の朝食は久しぶりだな」
「はやて、おはよう♪」
シャルと一緒に朝食を取るために食堂に来ると、はやてがすでに朝食を始めていた。
だがはやての家族であるシグナム達の姿はない。
「おはよう、ルシル君、シャルちゃん。そやねー。なんや久しぶりやね」
「ヴィータたちはもう終えたのか?」
「うん。あの子らも忙しいしなぁ。ゆっくりと一緒にご飯食べたいもんやね」
はやての居るテーブルは、絶賛空席叩き売りともいえる空き具合。
シャルと一緒に空いている席に座って、はやてと一緒に朝食を摂り始める。
そこにフェイトとなのは、それにトコトコ歩くヴィヴィオの三人が来た。
「おーい。なのは、フェイト、ヴィヴィオ、こっちこっち♪」
シャルが手を挙げながら三人を呼んだ。
三人は私たちが手を振っているのに気づいて、このテーブルへと真っ直ぐに向かってくる。
フェイトたちも椅子に座り、「おはよう」とそれぞれ挨拶を交わす。
だが、最後の一人の挨拶には一同が驚愕した。
「おはよー、ルシルパパ♪」
「「ぶっ? ヴィ、ヴィヴィオっ!?」」
「ぶぅーーーーっ!!」
「な、なんやてーー!!?」
ヴィヴィオからこのテーブルに核弾頭が落とされた。
実質的な被害者は私とシャルの二人。
シャルは人が少ないとはいえ人の目のある食堂で、盛大にお茶を噴いた。
私はシャルと向かい合うように座っていたために、シャルが噴いたお茶を顔面に受けた。
(・・・・なんだこれ・・・・)
私はティーカップに口をつけたままの状態で完全にフリーズ。
シャルの噴いたお茶が雫となってテーブルに滴り落ちていく。
それにしても我ながらよくコーヒーを吹かなかったと思う。褒めてやりたいよ、本当に。
核弾頭を落とした張本人であるヴィヴィオは不思議そうな顔をしているな。
はやては立ち上がって力いっぱい叫んだし、フェイトとなのははヴィヴィオの爆弾発言に未だにオロオロしている。
「・・・・なぁ、フェイト、なのは」
「「は、はいっ」」
ハンカチで顔のお茶を拭いて、ヴィヴィオに何かを吹き込んだであろう二人の聴取を開始する。
シャルは咽ながらも朝食を再開。私の顔面にお茶を噴出した謝罪は無しか・・・・おい。
はやてもチラチラと視線を私たちに向けながら、ご飯を口に運んでいる。傍観に徹する、か。
ヴィヴィオはピラフを美味しそうに頬張っている。ヴィヴィオ、頬にご飯粒が付いているぞ。
「さて、何故ヴィヴィオが私を、パパ、と呼んだかを教えてほしいな」
ヴィヴィオの頬に付いたご飯粒を取りながら、二人に聞く。
「え、え~と・・・それには事情がありまして・・・・」
「う、うん。昨日の夜のことなんだけど・・・・」
二人から語られたのは昨夜の自室でのことだった。
保護責任者のことでフェイトが、「フェイトさんもちょっとだけヴィヴィオのママになったんだよ」と言うセリフが事の発端の始まり。
なのはとヴィヴィオの後見人がフェイトになったという話だ。
それで、二人がヴィヴィオのママになったんだよ、とここまでは本当によかった。
だが、ヴィヴィオが「パパは?」と聞いたらしい。もちろん二人に答えられるわけがない。
返答に窮した二人が口にしたのは「ルシルさんがパパ、はどうかな?」と「ルシルさんがパパだったら嬉しい?」の二つ。
ヴィヴィオはそれを聞いて「うれしい」と答えたそうだが・・・・。
「おーい。君たちはもう少し考えろー」
「「ごめんなさい」」
フェイトとなのはがすまなさそうに頭を下げるが、もう少し考えてほしいものだ。
確かに現状でヴィヴィオに懐かれている男陣は私とエリオ(父というよりは兄)、そしてザフィーラ(論外)の三人?くらいだ。
ここにユーノが居てくれれば、また変わっていたかもしれないが・・・・。
「あの・・・それじゃあ、ダメ、ってことかな?」
「急にごめんね、ルシル。気を悪くしないでもらえると―――」
「いいよ。ヴィヴィオが引き取られるまでの間の父親役、私が引き受けよう」
正直フェイトとなのはの二人の母親がいればよさそうだが、まぁ仕方ない。
ヴィヴィオのキラキラした視線がさっきから・・・。
「いいの? 本当にいいの?」
「今更それはないだろ、なのは。ヴィヴィオが私を一度でも父親として見た時点で、私に断るという選択肢がなくなった。なら最後まで付き合おうじゃないか」
「ありがとう、ルシル! ヴィヴィオ、ほら、ルシルパパだよ」
「うん。ルシルパパ」
ものすごい可愛いらしい笑顔なヴィヴィオ。
まぁ、悪くはないかもしれない。
「ほぁ~、ルシル君がパパかぁ。それでなのはちゃんとフェイトちゃんがママって、なんやすごい家族構成やね」
はやてがようやく参加してきた。空気が緩んだところで参加とは、調子のいいことで。
だがそれを言ったら、もっとすごいことになるぞ。
「あはは、なら私の義姉であるシャルは、おばあ―――」
そこから昼過ぎまでの記憶がどこにもありません。何故ですか、シャマル先生・・・・?
「それはセインテスト君が悪いわねぇ~♪」
だそうだ。
やっぱり成人男性キャラがSTRIKERSに登場すると、ヴィヴィオの父親になると
いうのが王道のような気がしてます。
ルシルもそんな一人だったりしますし・・・。
絶対殲滅対象の名称を登場させました。
ANSURについて、に一応載せておきます。
名称は全てラテン語となっています。
異界英雄
天駆閃馬:ANSUR
黄金の鬣を持つ白馬。光の鬣、輝く鬣という意味を持つ。
空を駆けることの出来る馬の一頭でもある。
北欧神話においては、昼の神ダグの乗る馬車を牽いた馬。
天を駆け、その鬣で空と地上を照らしたといわれる。
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