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3rd後のエピソードのエンディングばかりが脳内を駆け巡る。
このままでは3rdの構成が滅茶苦茶になっていって・・・。
ホテル・アグスタ


†††Sideシャルロッテ†††


「ほんなら改めて、ここまでの流れと今日の任務のおさらいや」

私たちは今、ヴァイスの操縦するヘリ“ストームレイダー”にいる。
これからある任務へと赴くためだ。

「これまで謎やったガジェットドローンの製作者、及びレリックの蒐集者はこの男――」

私たちの前にモニターが現れて、先日私とルシルにコンタクトを取ってきた人間、ジェイル・スカリエッティの画像が映し出された。

「――違法研究で広域指名手配されている次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティと断定して捜査を進めてく」

「こっちの捜査は主に私が進めるんだけど、みんなも一応覚えておいてね」

「「「「はい!」」」」

フォワードのみんなもそれに頷いて答えた。
さて、スカリエッティはどこまでヤツらに利用されて滅ぼされるか・・・。
馬鹿な人間だ。利用されるだけされて、どうせ見捨てられるんだ。

「――で、今日これから向かう先はここ、ホテル・アグスタ!」

リインの言葉とともにスカリエッティの画像からホテル・アグスタの外観図に変わる。

「骨董美術品オークションの会場警備と人員警護、それが今日のお仕事ね」

「取引許可の出ているロストロギアがいくつも出品されるので、その反応を“レリック”と誤認したガジェットが出てきちゃう可能性が高い。
とのことでわたしたちが警備に呼ばれたですっ!」

私はガジェットに追随してくる可能性のあるレーガートゥスの対処が任務となる。
ちなみにルシルは先日のこともあって六課隊舎で待機となっている。
確率はそんなにないけど、隊舎に何かしらのアクションを起こすかもしれないから。

「この手の大型オークションだと密輸取引の隠れ蓑にもなったりするし、いろいろ油断は禁物だよ」

「現場には昨夜からシグナム副隊長とヴィータ副隊長他、数名の隊員が張ってくれてる」

隊長陣(わたしたち)は建物の中の警備に回るから、前線は副隊長の指示に従ってね」

「シャルちゃんは前線のフォローにも回ってあげてくれるか。
そしてもしレーガートゥスが現れたら、可能な限り被害を出さずに対処してな」

「ん。分かった」

はやてにそう答えて、フォワードのフォローという任務の追加に了承する。
でも訓練を見ている限りガジェット相手に遅れを取るような子達じゃないと思ってたり。
もしレーガートゥスが出てこなかったらかなり暇をするかも・・・。

「あのシャマル先生、さっきから気になってたんですけどその箱って・・・」

キャロが指をさす場所には三つの箱。
私の知る限り、ああいうのには何らかの衣装が入ってると思うんだけど・・・。

「うん? あぁこれ、うふふ、これは隊長たちのお仕事着♪」

ずいぶんと楽しそうに語るな~、シャマル。

そうこうしているうちにホテル・アグスタに到着。
ヘリポートへと降り立った私たちは、定められた役割を果たすために解散した。
んで、私はというとシャマルから仕事着のことを聞き、ケータイ片手になのはたちを待ち伏せ。
目的はもちろん、今日はお留守番をしているルシルにフェイトのドレス姿を送るためだ。
あぁ、私はなんて義弟想いな義姉なんだろう。感謝してよ、ルシル。

「何してるのシャルちゃん?」

「なんやシャルちゃん、隠し撮りはあかんで?」

「か、隠し撮り!?」

「・・・盗撮犯なんかじゃないんだけど・・・・」

扉を開けて出てきた三人から放たれる冷ややかな視線が私を貫いた。
ていうかちょっぴりショックだよ、フェイト。
まさかそんな目で見られる日が来るとは思いもしなかったよ・・・。

「そうじゃなくて、すこ~し撮らせてほしいなぁ・・・なんて」

「それは別にいいんだけど・・・悪用とかしないよね?」

「もちろん♪」

三人のドレス写真をゲットゲット。
え~とこういうときは・・・“シャルロッテはレア写真を手に入れた❤”でいいんだっけ?
そんじゃ早速送信送信っと。

<フェイトのドレス姿、率直な感想を返信せよ。つまらなかったら女装の刑に処すby義姉>

そうメールを打って送信完了っと、一体どんな感想が来るか楽しみでしょうがない。

「それじゃ三人とも中で頑張ってね~♪」

「シャルちゃんもみんなをお願いね」

「まっかせておいて❤」

さてさて、あの子たちの様子でも見に行きましょうか。
オークション会場へと向かうなのはたちを見送って、私もようやく行動を開始する。

「確かエリオとキャロにはザフィーラがついてるはずだし・・・スバルとティアナ組の方にでも行ってみようかな」


†††Sideシャルロッテ⇒ティアナ†††


『――副隊長とシャマル先生、ザフィーラは八神部隊長個人が保有している特別戦力、だってこと。
で、そこにリイン曹長を合わせて六人揃えば無敵の戦力、ってこと』

外を警備している最中、あたしはスバルに八神部隊長たちの話を聞いていた。
これまでもずっと気になっていたことだったから。

『まっ、八神部隊長たちに詳しい出自とか能力の詳細は特秘事項だから、あたしも詳しくは知らないんだけど・・・』

『レアスキル持ちの人はみんなそうよね』

『ティア、なんか気になるの?』

『別に』

『そっ。じゃまたあとでね』

『ん』

短く答えてスバルとの念話を閉じる。
あたしの隣では、シャルさんが鼻歌混じりで周囲を警戒している(ようには見えない)。
でも実際にそう見えないだけで、実はきっちりとしている(と思う)。

「どうしたの?」

「あ、いえ」

シャルさんから視線をそらして、周囲を警戒しながらも思考に入る。
思考の内容、それは今まで気になっていたことについて、だ。
あたしが思うに六課の戦力は無敵を通り越して明らかに異常だ。
八神部隊長がどんな裏技を使ったのか知らないけど、隊長格が全員オーバーS、副隊長でもニアSランク。
他の隊員たちだって前線から管制官まで未来のエリートたちばっかり。

それにあの歳でBランクを取ってるエリオと、レアで強力な竜召喚士のキャロは二人ともフェイトさんの秘蔵っ子。
この時点で、すでに二人とも将来が約束されたようなものだ。
そして危なっかしくはあっても潜在能力と可能性の塊で、優しい家族のバックアップもあるスバル。

六課の協力者として迎え入れられたシャルさんは陸戦最強とされ、若干17歳で三等陸佐にまで登り詰めた天才魔導師――ううん、騎士だ。
そしてシャルさんと同じように協力者として迎え入れられた弟のルシルさん。
空戦においては管理局最速にして最強と謳われ、17歳で一等空佐にまでなった超エリート。
それ程の実力を持ち、高い地位に就いていながら突然辞職したと結構騒ぎになっていた。

そんなすごい人たちに比べて私は何も持っていない凡人だ。
でも、それでも私は立ち止まるわけにはいかないんだ。

「ティアナ、私じゃ頼りないかもだけど、心配事があるなら相談に乗るよ?」

いつの間にか私の目の前にいたシャルさんがそう言ってきた。
あたしを覗き込むようにして見詰めてくるシャルさん。
あたしはシャルさんの綺麗な瞳の輝きに完全に魅了されていた。

「・・・いえ、何でもないんです。すいません」

でもあたしは何も言うことが出来なかった。
あたしから見て、シャルさんは隊長たち以上のエリート。
だからシャルさんが何を言っても説得力がない、って思ってしまったから。
だからごめんなさい。そんな失礼なことを思ってしまって。

「そっか。でも溜め込むより話した方がいいんだよティアナ。
一人で解決出来なくても、みんなを頼れば解決できることだってあるんだから」

「シャルさんにもあったんですか? その、シャルさんみたいなすごい人でもひとりだと出来ないことが・・・?」

それはたぶん嘘。聞いた話だと10歳になる頃には、すでにSランクに匹敵する魔導師だったという噂だ。

「あるよ。だってそれが普通なんだよティアナ。
どんなに強くたって、人一人の力なんて高が知れてる。
だから人は助け合って生きていく。だって一人じゃすぐに壊れてしまうんだから」

シャルさんは私から離れて遠い空を見上げていた。
少しだけ見えたシャルさんの横顔はとても寂しそうだった。
シャルさんにも、あたしたちの知らない何かがきっとあるのだろう。

「それじゃ私はもう行くね」

「あ、はい」

「ふんふんふふ~~ん♪」

シャルさんはまた鼻歌を歌いながら去っていった。
でもシャルさん、これだけは思ってもいいですよね?

「・・・さっきからずっと音程・・・ずれてますよ?」

シャルさんは音痴だということが分かった。
何か可愛らしい欠点だな、と思ったことは胸にしまっておこう。
そしてこのすぐあと、ロングアーチからガジェット出現の報が入った。
私は戻ってきたシャルさんと一緒にホテル・アグスタへと向かった。


◦―◦―◦―◦―◦―◦


オークション会場よりある程度離れた深い森林の中に二つの影。
その二つの影、大柄な男と小柄な少女が眼下に広がる森林に立ち上る黒煙を見ていた。
それはガジェットの迎撃に赴いた機動六課の二人の副隊長、シグナムとヴィータによるガジェット撃破の証だった。

『ごきげんよう、騎士ゼスト、ルーテシア』

その二人の目の前にモニターが現れ、一人の男が挨拶を口にした。
今回の事件の首謀者ジェイル・スカリエッティだ。
彼は大柄の男をゼストと呼び、小柄な少女をルーテシアと呼んだ。

「ごきげんよう」

「何の用だ?」

『冷たいね。近くで状況を見ているんだろう?』

ルーテシアからは挨拶を返されたが、ゼストからは素っ気無い返事のみだった。
しかしゼストのその態度にスカリエッティは大して気にもせずに話を進めていく。

『あのホテルにレリックは無さそうなんだが、実験材料として興味深い骨董が一つあるんだ。
少し協力してくれないかね? 君達なら実に雑作もないことのはずなんだが・・・』

「断る。レリックが絡まぬ限り互いに不可侵を守ると決めたはずだ」

『ルーテシアはどうだい? 頼まれてくれないかな?』

スカリエッティからの依頼を考えるまでもない、と切り捨てたゼスト。
しかしゼストのその返答にも動じず、今度はルーテシアの返答を聞いている。

「いいよ」

ルーテシアは俯いていた顔を上げてそう一言返事を返す。

『優しいなぁ、ありがとう。今度ぜひお茶とお菓子を奢らせてくれ。
君のデバイス、アスクレピオスに私の欲しい物のデータを送っておいたよ』

ルーテシアの左手に嵌められたグローブを指してそう告げた。

「うん。じゃあごきげんよう、ドクター」

『ごきげんよう・・・あぁそうだ、もう一つ言い忘れていたよルーテシア。
君の力を疑うわけじゃないが、今ホテルを守っている魔導師の中に少々厄介なのがいてね。
その魔導師の足止めとして、こちらから助っ人を用意させてもらった。
仲良くしてあげてくれると私も嬉しいな』

スカリエッティの言葉にゼストの表情に僅かだが変化が現れる。
自分が信用していない男の用意した助っ人とやらに警戒しているのだ。
それにルーテシアは気づかないのか「分かった」とだけ告げてスカリエッティとの通信を終えた。
少しの間の沈黙。その沈黙を破ったのは、ゼストのルーテシアの名前を呼ぶ声だった。

「・・・っ! ルーテシア」

ゼストはルーテシアを庇うようにして前に出る。
目の前に現れたのは波打つ空間。その空間から現れたのはルーテシアくらいの少女だった。

レースとフリルが多くあしらわれた蒼いドレスに身を包み、
頭部にも同様に蒼い大きなリボンのついたヘッドドレスを着けている。
瞳は深い翠色、髪はショートカットの紺色といった感じだろう。
そしてクジラのぬいぐるみを両手で抱えて、口元を隠していた。

一見どこからどう見てもただの少女でしかない。
一切の魔力も感じられず、それ以前に存在感すらハッキリと感じ取れることが出来ない。
人間のようであって人間ではないもの。それがこの少女だった。

「今のは転移魔法ではないな。何者だ、お前がスカリエッティの言っていた助っ人とやらか?」

ゼストは静かに、されど高圧的に目の前に現れた少女に問いかける。
少女はその問いにただ「うん」とだけ頷いた。
正直ゼストは今、スカリエッティの考えが本気で分からなくなっていた。
魔導師ですらない幼い少女に一体何が出来るのか、と。

「待ってゼスト」

ルーテシアはゼストの背後から前面へと移動して、少女ときちんと顔を合わせる。
お互いに表情が乏しいためどこか似ている二人だった。

「わたしはルーテシア、ルーテシア・アルピーノ。あなたは?」

「・・・・・許されざる嫉妬(レヴィヤタン)・・・レヴィ・・・でいい・・・」

レヴィヤタンは逡巡したあと、そう静かに告げた。
レヴィヤタンは抱いているクジラのぬいぐるみを強く抱きしめて、未だに自分に警戒しているゼストへと視線を移す。

「・・・ゼストだ」

ゼストは半ば諦めたように自分の名前を告げた。
レヴィヤタンはそれに頷いて応えた。
ゼストは二人に気づかれないほどの小さなため息を吐いた後、ルーテシアへと向き直った。

「ルーテシア、本当にいいのか?」

「うん。ゼストやアギトはドクターを嫌うけど、わたしはドクターのこと、そんなに嫌いじゃないから」

「そうか」

ルーテシアは羽織っていたコートをゼストに預け、召喚魔法陣を展開した。
ゼストとレヴィヤタンはそれを少し離れたところから見守っている。

「我は乞う、小さきもの、羽ばたくもの。言の葉に応え、我が命を果たせ。召喚、インゼクトツーク」

ルーテシアの詠唱が終わり、召喚魔法陣からどこか無機質な多数の羽虫が現れた。

「ミッション・オブジェクトコントロール。いってらっしゃい、気をつけてね」

ルーテシアの周囲に飛んでいたそれは、ルーテシアの言葉を合図に飛びだって行った。
それを確認したレヴィヤタンは静かに歩を進める。

「わたしも・・・いってくる」

「レヴィも気をつけてね」

「・・・あ、ありが・・・とう・・・」

現れたときと同じように空間が波打ち、レヴィヤタンは姿を完全に消した。


†††Sideシャルロッテ†††


「遠隔召喚、来ます!!」

私たちの目の前に四つの召喚魔法陣が浮かび、そこから何機ものガジェットが現れた。

「あれって召喚魔法陣!?」

「召喚ってあんなことも出来るの!?」

エリオとスバルがその光景に驚いている。戦闘中に一々驚いていると危険だよ二人とも。
戦場において、意識を逸らすのは一番いけないこと。咄嗟の判断と行動が出来なくなっちゃう。

「優れた召喚士は転送魔法のエキスパートでもあるんです!」

それにしても本当に変わるものだね~。
転送術式なんて昔だと結構レベルの高い術式だったのに、現在じゃポンポン使われてるし。
そんなことを思いながら、私はいつでもみんなのフォローに移れるように待機しておく。

「何でもいいわ、迎撃いくわよ」

「おうっ!」「「はいっ!」」

ティアナがこの場の指揮官として動くことになってる。
だから三人は力強く応えて臨戦態勢に入った。

「シャルさん、数が多いので左方から来るガジェットを任してもいいでしょうか?」

「了解。遠慮なんかせずに好きなように使ってくれればいいから」

「え、はい!」

ティアナにそう答えて、この世界での相棒“トロイメライ”を構える。
久々の“トロイメライ”の戦闘で俄然やる気が出てきた。
でもだからといってみんなの成長を邪魔するようなヘマはしない。

「そんじゃ久々に暴れるよトロイメライ!」

≪Jawohl. Meister≫

あぁこれこれ、これだよ~。
武器が喋って答えてくれるというのが本当にいい。
私はそっと“トロイメライ”の刀身部分を優しく撫でる。

「っとと、こんなことしてる場合じゃなかった」

気を取り直して、みんなと少し離れてしまう場所でガジェット掃討に移る。
まずは手始めに一番近いガジェットⅠ型を三機破壊して、その勢いのままⅢ型も破壊、と。
そう狙ってガジェット群へと突撃したけど、紙一重の差で回避されてしまった。

「・・・あれ?」

なるほど、確かにガジェットの動きが明らかに良くなっている。
さっき来たロングアーチからの報告どおり、というわけだ。
そのお陰でさっきの一撃で破壊するつもりだったⅠ型の三機は健在。
そして私が突っ立ていることで、ガジェットが物凄い勢いで攻撃してきた。

≪Seelisch Widerstand≫

もちろんそんな簡単に落とされる私じゃない。
対魔力障壁を四方に展開してガジェットの攻撃を防ぐ。

「そっかそっか。でも無駄な足掻きって言うんだよそれは・・・トロイメライ」

≪Eiszapfen Flügel≫

――氷牙凍羽刃アイス・ツァプフェン・フリューゲル――

刀身に冷気が纏わりついて周囲の気温が下がっていく。
そして“トロイメライ”を横一閃。氷の羽根を八つ、ガジェット群に向けて放つ。
まぁガジェットは簡単に避けたけど、まだ終わっていないんだよ。

≪Sprengen(破裂)≫

ガラスが割れたかのような音が周囲に響く。
音の原因は、八つの凍羽刃が爆発したことによるもの。
周囲に吹き飛ぶ細かい氷の弾丸がガジェットの防御を突破、そして爆散させて行く。

「それでも・・・たったの八機しか壊せなかったか。
まぁいいか、それじゃ次は回避も防御も出来ないから、そのつもりで・・・いきます」

歩法“閃駆”を使っての高速移動。
もちろん有人操作、いや有人操作だからこそガジェットは何一つ対応できない。
私は残像をハッキリと残しつつ、ガジェット群の合間を縫うようにして疾走した。

「まっ、こんなものよね」

“トロイメライ”を振るって肩に担ぐ。
肩に峰が“トンッ”と当たった瞬間、私の背後に浮いていたガジェット九機全てが爆散した。

「よし、それじゃフォワードのみんなのところへと戻りますか」

ある程度アグスタに近づいたとき、上空をウイングロードで疾走するスバルを確認した。
私は上空のスバルから、真っ直ぐ前へと視線を移す。
そこにいたのは今まさに無茶をしようとしているティアナの姿だった。

(クロスシフトAかぁ~)

ティアナの周囲には多数のスフィアが展開されている。
スバルがかく乱を担当して、ティアナの誘導操作弾の一斉射撃による対象の殲滅。
なんだけど、一体何をやっているんだか。四人が一緒にいるうちにその手は必要ない。
ティアナの選択は明らかに間違っている。
どうやら私の話はティアナには届いていなかったようだ。少し残念。

「シューットッ!!」

私が念話でティアナを止めようとした瞬間、ティアナは無数のスフィアを放った。
放たれた弾丸の第一波は見事にガジェットを捉えて破壊していく。
それでもティアナは全機自分で破壊する気なのか、手を止めることなく撃ち続ける。
そして続けざまに撃った弾丸の一つがガジェットから逸れ、ウイングロードで疾走するスバル目掛けて飛んでいくのが見えた。

――ゼーリッシュ・ヴィーターシュタント――

スバルと弾丸の間に割り込むようにして障壁を展開する。
私の障壁に弾丸は容易く防がれ消滅した。
そして自分に迫っていた弾丸を見ていたスバルは顔を青くして立ち止まり、撃った本人であるティアナは呆然としていた。

「ティアナ!! この馬鹿!! 無茶やったうえに味方を撃ってどうすんだ!!」

いつの間にか来ていたヴィータが肩で息をしながらティアナを怒鳴りつけた。

「あ、あのヴィータ副隊長、今のもコンビネーションの内で――」

「ふざけろタコ、直撃コースだよ今のはっ!
フライハイトがいなきゃお前、今頃どうなってたか分からねぇわけでもないだろ!!」

スバルの言葉を遮って再度怒鳴りつけるヴィータ。
それでもスバルはティアナを擁護するために言葉を紡ごうとしてる。

「ち、違うんです!! 今のは――「スバル」――・・・シャルさん・・・」

私もさすがにこれ以上黙っているわけにもいかない。
だからスバルの名前を呼んだ。

「ねぇスバル、気づいたときにはもう回避できないの、分かってたでしょ?」

「っ、そんなことは――」

「あなたが優しいのは分かる。ティアナを庇いたい気持ちもまぁ分かる。
でもね、今のティアナを庇うことは間違ってるし、逆にその優しさがティアナを傷つけるんだよ」

私の言葉を聞いて、スバルはティアナへと視線を移す。
そこには未だに俯いて立ち竦んでいるティアナがいた。

「ティ、ティア・・・」

「今回のミスはティアナが一番分かっているし傷ついていると思う。
何せ大切なパートナーのスバルをもう少しで自分の攻撃で傷つけていたのだから」

「はぁ、テメェら二人はすっこんでろ。ここはあたしとフライハイトで片付ける」

「っ!」

ヴィータに邪魔だから消えろ(←ここまで酷くない)と言われたスバルの肩が震えた。
まぁつまり、ヴィータが言いたいのはたぶんこういうことだろう。

「スバル、ティアナについていてあげて。今のティアナは一人だと危ないから、ね。
それにスバルならティアナを何とかできるでしょ? と我らがヴィータは仰いました」

「言ってねぇだろっ!」

「でもそう言いたかったんでしょ?」

「んなわけあるかっ!」

そこまで捻くれなくてもいいのに、ヴィータは素直じゃないですね~。
必死になるところがまだまだ甘いよ、ヴィータ。

「ヴィータ副隊長、シャルさん、 ありがとうございます!!」

「ああもう、いいからとっとと行け」

「スバル、ティアナをよろしくね~」

スバルがティアナを連れて下がって行ったのを確認した。
さてと、もう一暴れといこうかな。

『こちらライトニング2シグナム。戦闘区域にて一般市民を発見し保護。
身なりからしてオークションに参加する客の子供と思われる。
年齢は10歳前後、性別は女。誰か手の空いている者に引き取りに来てもらいたい』

シグナムからそう通信が入る。
シグナムがいるのは結構深い森の中のはずだ。
そんなところに子供がいるわけ・・・・まさか。

「こちらフライハイト。シグナム、その子に、名前を聞いてもらってもいい?」

ヤツらの反応はない。だからそれはないと思いたい。
でも一度疑ったらもう止まらない。

『・・・・レヴィヤタン、だそうだ』

最悪だ。まさか神秘を感知できないヤツがいたなんて。
さすがのシグナムでもヤツ相手じゃ話にならない。

「シグナム、すぐに撤退を! 私がそっちに向かう!」

「例のヤツか!?」

ヴィータも真剣な面持ちで聞いてきた。
私は頷いて応え、この場のガジェット掃討をヴィータに任せることにした。


†††Sideシャルロッテ⇒シグナム†††


「紫電・・・一閃!」

私の渾身の一撃を何の防御もせずにその細い体で受け止める少女。
“レヴァンティン”の炎が一瞬のうちに消えるが、そのまま力を籠めて“レヴァンティン”を押す。

(堅い? いや、違う。・・・・なんだ、この手応えは・・・?)

少女の名はレヴィヤタン。以前の会議で、此度の事件の首謀者ジェイル・スカリエッティに協力している一派の一人として挙げられた名前を持つ少女だ。

「・・・まだ・・・」

“ペッカートゥム”。人間のようであって人間ではない虚構の存在。
かつて理解に少々苦しんだ神秘という力の塊。同じ神秘でしか打倒できないモノ。
人間ではない、ということはすでに聞き及んでいるが、やはりどう見ても人間でしかない。

「くっ」

そしてその目的は不明。だがスカリエッティに何かしらの協力をしているらしい、とのことだ。

「今まで多くの敵と戦ってきたが、一切の攻撃が通用しないというのは嫌なものだな。
ここまで通用しないとは、呆れを通り越して笑いがこみ上げてくる」

距離を取り、レヴィヤタンと名乗った少女と向き合う。
ガジェットの掃討は先に撤退させたザフィーラに任せてある。
私にも撤退するようにフライハイトに言われたが、少女の目的が分からない以上はこのまま一人にさせるわけにもいくまい。

「目的はなんだ?」

“レヴァンティン”を構えなおし、視線を向けたところで、あの少女の姿がないことに気づく。

「消えた、だと・・・?」

一瞬のうちに姿を消した少女の姿を探す。まばたきの瞬間を狙われた・・・?
気配はない。がおそらくどこかにいるはずだと本能が告げてくる。

「・・・それが・・・限界」

間違いなく耳元で囁かれた。
振り返ると、そこにはクジラのぬいぐるみを私の顔へ向けて突き出した状態の少女がいた。

「・・・わたしには・・・勝てない」

――Mors certa/死は確実――

その直後にそのぬいぐるみから閃光が放たれた。
しかし魔力が一切感じられない。しかし避けろという警鐘が頭の中に鳴り響く。

「はああぁぁぁっ!!」

体を捻るようにして閃光を回避し、無駄だと知りつつ“レヴァンティン”を叩きつける。
刃は間違いなく少女の頬に当たっているものの何一つ傷が付かないうえ、逆に私の右手に鈍い痛みと痺れが襲ってきた。

『離れてシグナム!』

フライハイトからの思念通話が届く。
それに従ってすぐさま少女から離れた。

「・・・来た・・・第三の力(しろいろ)・・・」

「はあああああっ!!」

少女の背後から真紅の翼を羽ばたかせたフライハイトが突進してくる。
その手に持っているのは“トロイメライ”ではなく“キルシュブリューテ”。
神秘を宿すといわれた武器だ。だが少女はフライハイトの一撃を難なく回避した。
小さく舌打ちをしたフライハイトは私の傍へと降り立った。

「ごめん、遅くなった。あとは私に任せてガジェットの方をお願い」

「・・・ああ、任せた」

ここにいても私は何も出来はしない。
ならばここはフライハイトに託すしかないだろう。


◦―◦―◦―◦―◦―◦


「ようやく現れたと思えば、初撃を容易く回避されるとは腕が落ちたな」

ジェイル・スカリエッティのラボにて一人の男がモニターに映るシャルロッテを見、静かにそう口にした。
歳は二十代半ば、服装は白いスーツに、目立つ赤いネクタイを締めている。
茶色の髪を無造作に伸ばし、その金色の双眸でシャルロッテを見つめている。

「すまなかったね、彼女を借りて。許されざる嫉妬(レヴィヤタン)は3rd・テスタメント君に敗れてしまうのだろう?」

男の隣に立つスカリエッティは、自分の秘書であるウーノが淹れた紅茶を飲みながら男に向かって謝罪の言葉を口にした。

「気にするな。こちらとしても三番の今の力を見れたことには感謝しているんだ」

男はスカリエッティと同様に紅茶を飲みながらそう答えた。

「それに許されざる嫉妬(レヴィヤタン)なら大丈夫だろう。何せ今の三番は駄目だからな。
いくら人間の器に閉じ込められようと弱くなり過ぎだ。
あれではおそらく許されざる傲慢(オレ)にすら苦戦を強いられるだろうな」

「そうなのかい? ならこのままルーテシアたちと共に行動させてもいいかな?」

スカリエッティのその言葉を聞いた男は少し逡巡した後に「好きにしろ」と答えた。

「ドクター、お嬢様のガリューが例の物の入手に成功しました」

二人の間にモニターが現れ、そこに映るウーノが、ルーテシアがスカリエッティの依頼を無事に終えたことを報告した。

「そうかい、さすがはルーテシアとガリューだね。
では許されざる傲慢(ルシファー)許されざる嫉妬(レヴィヤタン)にルーテシアと合流するように頼んでもらってもいいかな?」

「分かった。許されざる嫉妬(レヴィヤタン)、ルーテシアと合流してしばらく同行してくれ」
 
許されざる傲慢(ルシファー)はどこを見ずともそう告げた。


◦―◦―◦―◦―◦―◦


「・・・もう・・・終わり・・・」

私の“キルシュブリューテ”の攻撃を紙一重で回避していたレヴィヤタンが呟いた。
正直甘く見ていた。簡単に勝てると思っていたのに与えられたのは八撃だけだった。
しかしどれもレヴィヤタンを消滅させるまでには至っていない。

「他の連中が帰って来い、って言っているわけね」

もちろん逃がすわけにはいかない。
ここで数を減らしておかないと、後々厄介なことになると思ったからだ。

「・・・来て・・・罪眼(レーガートゥス)・・・」

私を囲むようにして現れたレーガートゥスは約50弱。
敵じゃないけど対処しているうちにレヴィヤタンに逃げられる。

「面倒なことを・・・!」 

――凶牙波瀑刃シュヴァルツ・シュトローム――

魔法から再度魔術へと切り替えた一撃を放つ。
レーガートゥスが黒い波に飲まれていく中、レヴィヤタンの背後の空間が波打つ。

「・・・弱い・・・第三の力(しろいろ)・・」

「・・・なっ!?」

弱い・・・私が?

「・・・心が弱い・・・先代の許されざる嫉妬(わたし)が・・・そう言ってる。
今の・・・第三の力(しろいろ)・・・守護神になっても・・・きっと弱い」

レヴィヤタンはそう言い残して消えていった。
私の力じゃなくて心が弱いと・・・だから勝てないのだと。

「ふふ、あはははは」

確かに私の心はこの世界に呼ばれてから弱くなっていったと思う。
でもなのはたちと会う前の私よりかはずっと良い心になっていると胸を張って言える。
それが弱くなったというのであればそれで構わない。

「だってこれが幸せというものでしょ」

だから今の私の幸せを崩そうとするお前たちは絶対に消し去ってやる。
私はみんなと合流するために歩き出したとき、通信端末から着信音が鳴った。
おそらくルシルからの返信だと思う。通信端末を取り出しメールを確認する。
仕事中だろ?というツッコミはなし、ということで。

<一体何を企んでいるんだ?>

ルシルからのメールはたったのこれだけ・・・?
私は“感想”を返信しろと送ったのになぁ。

「・・・アウト」

ルシル、女装の刑決定。



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