ジェイル・スカリエッティ
†††SideリインフォースⅡ†††
5月13日、部隊の正式稼動後、初の緊急任務がありました。
密輸ルートで運び込まれたロストロギア“レリック”をガジェットが発見。
輸送中のリニアレールを襲撃、それを阻止。
“レリックを回収するという任務でした、がそこで予想外のことが起こりましたです。
新たなガジェットと一緒に、人の眼のようなアンノウンが現れたましたです。
スターズ隊長のなのはさんと、ライトニング隊長のフェイトさんが交戦するも能力が不明なそれに防戦一方となってしまったです。
ですがその窮地を救ったのが、2年前に管理局を辞めたはやてちゃんたちのお友達、シャルさんとルシルさんだったのです。
そしてそのお二人、そして六課のメンバーの活躍もあって任務は無事に終了したです。
そのあと六課に案内されたシャルさんとルシルさんからあの眼、レーガートゥスと呼ばれるモノの説明を受けました。
魔導師では倒せないと知ったはやてちゃんたちは、シャルさんとルシルさんに協力を要請。
その日の内にシャルさんとルシルさんは機動六課の協力者となりました、と。
キーボードを叩く指を止めて一息です。
すると、
「リイン曹長」
「あ、シャーリー、シャルさん、おつかれさまですー♪」
声をかけられたので顔を上げてみると、そこにはシャーリーとシャルさんが一緒にいました。
「どうしたのリイン、こんなところで仕事?」
「お仕事半分、休憩半分。個人日誌をつけてたですよー!」
シャルさんにそう答えて、ソファからシャルさんの前へと飛ぶ。
するとシャルさんはわたしを肩に乗せてくれたです。
シャルさんがとても嬉しそう顔をして「癒される、癒されるよー♪」って言ってくれたので、わたしもなんだか嬉しくなりました。
でもなんだかずいぶんとお疲れのようですねー? 何かあったのでしょうか?
「シャーリーとシャルさんはどうしたですか?」
「私は新しいデバイスたちの調子を見に、訓練場のほうに行ってきたんですよ」
まずはシャーリーが答えてくれた。
フォワードのみなさんの使うデバイスの設計主任はシャーリーですから、それに責任を持っているのです。
まるでデバイスのお母さんみたいな存在ですねー。
「そうですかー! みなさん元気でしたー?」
「はい! フォワード陣もデバイスたちももう絶好調っ!」
シャーリーが満足そうに答えてくれたです。
けど、わたしのいるシャルさんからは相変わらず何か沈んだものが・・・。
「私は・・・一生懸命逃亡中。シグナムが模擬戦ってしつこくて。
確かに私だってシグナムと戦うのは好きだけど、だからと言ってこうしつこいと・・・」
「そ、そうなのですかー。大変ですねーシャルさん・・・」
どうりで疲れた顔をしていると思ったです。
シグナムはシャルさんと純粋な剣の腕をいつも競いたがってます。
それに付き合わされるシャルさんのことも考えてほしいですねー。
「でもルシルの槍の腕前を教えたうえで、ルシルの方にも模擬戦を申し込んでくれるようシグナムに頼んだから、少しは私に来る回数が減るはず・・・よかったよかった」
シャルさんのその言葉に数秒間の沈黙が流れたです。
そしてその沈黙を破ったのはシャーリー。
「・・・・シャルさん、ルシリオンさんを売ったんですね」
「・・・・・テヘッ♪」
「ルシルさんも、大変ですねー」
†††SideリインフォースⅡ⇒ルシリオン†††
私は大してやることもなく、訓練場の見える岸へと来た。
ここでの私の仕事は、医務班長のシャマルの補佐と遊撃戦力だ。
しかし今はどちらからも必要というわけじゃない。
だから、たまにこうして訓練場の見える場所へと赴いている。
「ん? 今日は先客がいるようだな」
そこにはすでに先客がいて、フォワード陣の訓練模様をモニターで見ていた。
「シグナム、ヴァイス、君たちも暇そうだな」
「お、ルシルじゃねぇか。つか暇ってなんだよ。俺だって忙しいっつうの」
「暇をしているのではない。こうして訓練を見守るのも仕事のうちだ」
シグナムの返答には納得だが、ヴァイスに関してはまず暇をしているのは間違いない。
まぁヘリのパイロットなんて出撃以外はほとんど待機状態だ。
忙しそうにしろ、というのもかえって酷なことか。
「フォワード陣の訓練の様子、か」
私も合い席させてもらいモニターを眺める。
映っているのはヴィータの一撃を受けながらもバリアを破壊されなかったスバル。
しかし踏ん張りが足りなかったのか弾き飛ばされている。足腰を鍛える必要あり、だな。
そしてフェイトの教導による回避訓練を行っているエリオとキャロ。
まずは基礎を重点的に教え込んでいるようだ。まだ幼い二人だから当然のことか。
そしてなのはとティアナの精密射撃の訓練。
狙いや動きはまだまだ甘いが、それでもなかなかの腕をしている。
しかしこうして訓練の様子を見ていると、人間だったころを思い出してしまうな。
「どうしたセインテスト、そんな難しい顔をして」
「いや、何でもない」
シグナムにかぶりを振ってそう答え、ゆっくりと自分の両手を見る。
私としてもああして誰かに教える立場になったことはある。
だがそれはなのはたちとは違い、完全に人を殺すためだけの技術だった。
「それにしてもいいっすね。若い連中は・・・」
「若いだけあって成長も早い。まだしばらくの間は危なっかしいだろうがな」
ヴァイスとシグナムの会話に現実へと引き戻される。
最近はこんなことが多々ある。しばらく過去の記憶を遮断しておいたほうがいいかもな。
いや、それは逃げだ。私に、逃げる、という選択肢は無い。在ってはならない。
「さて、話は変わるがセインテスト、暇なら私と少々付き合え」
「シグナム姐さん?」
シグナムの言葉にヴァイスが目を見開き、だらしなく口を開けている。
おそらく「付き合え」という言葉に反応したんだろうが、絶対にそういう意味じゃない。
「仕事か何かか? 私に許されている限りでの――「模擬戦だ」――はい?」
いつの間にやら“レヴァンティン”を手にシグナムが私を見据えている。
ヴァイスは笑いを堪えながら手を振っている。「さよならお達者で」ってかこの野郎。
「すでに主はやてには模擬戦の許可は取ってある。
昼休憩までの残り一時間、私と模擬戦をしてもらおう」
「いや、少し待ってくれ。訓練を見守るのも仕事と言ったよな。
だったらこのまま――」
「模擬戦は大切なことだ。何せ私が出撃ることはなかなかないからな。
腕を鈍らせないようにするには相応の相手と競わねばなるまい?」
“レヴァンティン”の切っ先を私に向けながら微笑みを浮かべるシグナム。
相応の相手って、シャルがいるだろうに・・・。
「それならシャルの方がいいんじゃないのか?
私のような砲撃支援タイプではつまらない戦いになると思うが・・・」
「それなら問題ない。お前が槍の使い手としてかなりの腕を持っていることは聞いている」
槍の腕前を聞いているって、そんなこと知っているのはシャルだけのはず・・・。
そこまで考えてようやく理解した。
「売りやがったなシャルロッテーーーーーーーーッッ!!」
シャルはシグナムに模擬戦をするように言い寄られていた。
それはシャルの剣の実力をシグナムが買っているからだ。
当然だ。シャルは生前、我が義姉である風迅王イヴィリシリアと並ぶ最強とされた剣士だ。
当時の体型に戻ったシャルの今の剣士としての腕は最早最強だ。
まぁそれは置いといて、そんなシグナムから解放されるにはどうすればいいか。
決まっている、身代わりを用意すればいいだけのことだ。
しかもそれが自分に匹敵する実力者と言えば、シグナムも乗ってくるだろう。
それで白羽の矢が立ったのが私、というわけだ。やってくれるあの女。
「おいおいルシル、そんなことを言うもんじゃないぜ。
きっとこれはシャルさんの心遣いだよ。羨ましいねシグナム姐さんと模擬戦なんてよ」
口を押さえながらヴァイスがそう言うが、どんな心遣いだよ!?
というかそんなに今の私が可笑しいか!?
「そういうわけだ。場所も確保してある」
「そういうわけってどういうわけだよ!?」
最早聞く耳持たずといった感じでシグナムが私の襟首を掴む。
「なにすぐだ。少し相手をしてくれるだけでいい」
「そんじゃなー!」
くそっ、良い顔で手を振りやがって。覚えていろヴァイス・グランセニック。
このあと私は模擬戦という名のイジメを受けた。
†††Sideルシリオン⇒はやて†††
「何やお疲れのようやなぁルシル君」
108部隊隊舎へと出掛けようと準備し始めたところで、隊舎の出入り口から戻ってきたシグナムとルシル君。
シグナムの方は何や満足そうな顔しとるけど、ルシル君の方はえらい疲れようや。
ルシル君は「まぁ、ちょっとな」って首をコキコキ鳴らす。
「主はやて、外回りですか?」
「え、うん。108部隊にちょっとな。それにしてもシグナムとルシル君の2ショットって珍しいけど何しとったん?」
なんとなくやけど予想は出来る。
模擬戦の相手がシャルちゃんじゃなくてルシル君やったってことや。
そういえばシャルちゃん、隊舎内をコソコソしとったけど、こういうことやったんやね。
ルシル君を売っちゃったんやなぁ~。
「フライハイトに代わりセインテストに模擬戦の相手になってもらいました。
セインテストはフライハイトの言っていたとおりの実に腕のいい槍の使い手でした」
「シグナムがそこまで褒めるなんて珍しいですねー。
ルシルさんってそんなに槍を使うと強いのですかー?」
リインが首を傾げながらそう聞いてる。
それは私も気になるなぁ。ルシル君が“グングニル”を実際に使って戦っとるとこは見たことない。
「ああ、強い。何故今まで槍を使わなかったのか信じられないほどにな。
あの戦いの最中にセインテスト本来の戦法が加わると、おそらく近接戦でも私では勝てん」
私たちの視線を受けて、ルシル君がようやく反応。
虚ろやけど、ほんまに大丈夫やろか? うつ病とか発症したりせぇへんよな?
「あれは――グングニルはデバイスではなく正真正銘の生命を傷つけるための武器だ。
だからそう易々と使ってはいけない。今回のシグナムの模擬戦でも使うつもりはなかったが、どうしてもって頼まれたから魔力で刃をコーティングして、殺傷性を限りなく少なくしてから使わせてもらった」
「そのおかげで私は大きな傷を付けられることがなかったが・・・。
しかし勿体ないな。あれほどの槍術が常に使えないのは・・・」
シグナムは模擬戦のことでも思い出しとるんか腕を組んで「むぅ」と唸る。
ルシル君たちの使う神器とゆうのは、どれも質量兵器に抵触してしまう物や。
だからこそ、そんな容易く公に出せるものものやないし、それに能力からして下手するとロストロギアに認定されてしまうかもしれへん。
「それ以前に私はどちらかといえばなのはと同じ砲撃戦タイプだ。
グングニルの使用はまずない。だからデバイスは必要ない。
それにシグナムのそれは単に私と模擬戦したいだけからだろ?」
ルシル君はそう言って、やれやれといった感じで首を横に振った。
「む、確かにそれもあるが、槍のデバイスを持つエリオに何かしら教授できることがあるかもしれんだろう?」
「あぁ確かにそやなぁ。同じ槍使いなら通じるものもあるやろし。
ほんならルシル君には、シャマルの補佐の他にエリオの教導にも参加してもらおか」
ルシル君はかつて本局の医療局ではシャマルの補佐として働いとった。
だからこの六課でもシャマルの補佐として動いてもらっとる。
そこにエリオの教導を追加、以前のルシル君からすれば大して問題にはならんやろ。
「了解した、八神部隊長」
「ん。それじゃ私とリインは出掛けてくるな。
あ、そやそやルシル君、ナカジマ三佐のトコやけど、何か伝言とかあるか?」
数日前にルシル君がナカジマ三佐たちと知り合いやって初めて知った。
だから何か伝言あるか聞いてみたんやけど、
「ん~、元気にやってますっと伝えてくれ」
「そんなんでええんか?」
あまりに質素すぎな伝言に私は聞き返した。
ルシル君は「下手な言い回よりかはマシ」って言って笑った。
「まぁそれでええんならそう伝えとくわ」
私もルシル君に笑みを返して、その場を後にした。
†††Sideはやて⇒シャルロッテ†††
シグナムから散々逃げ回ってお昼となった頃、私は訓練を終えて食堂へとやってきたフォワードのみんなとシャーリーと一緒に昼食を摂っていた。
「そういえば気になってたんだけど、スバルの名前の響き、もしかして日本・・・地球の島国なんだけど、何か関係とかあるの?」
「あ、はい。ウチのお父さんのご先祖さまがいた世界みたいなんです。
でもその世界には行ったことがないですし、よく分かんないんですけど・・・」
「なるほどね」
世界って思っていたより結構狭いのね。
それにしてもなのはといい、はやてといい、地球にはやっぱり何かあるのかも?
「そういえばエリオは出身どこだっけ?」
「僕は本局育ちなんで・・・」
「管理局本局? 住宅エリアってこと?」
スバルの何気ない質問が空気を一変させた。
唯一その空気に気づいていないスバルは会話を続ける。
「本局の、特別保護施設育ちなんです。8歳までそこにいました」
すべては後の祭り、スバルの顔が“しまった”というものに変わった。
それを察知したのかエリオが必死にスバルのフォローに入る。
私はそれを聞きながら山盛りのスパゲッティを頬張っていると、私の――守護神としての感覚器が六課隊舎付近に招かれざる訪問者を捉えた。
「っ!」
魔力云々の存在感ではなく、概念や神秘といったモノに近い存在感だ。
どうやら罪眼ではなく、“ヤツ”自ら来てくれたようだ。
「あの、シャルさん?」
シャーリーが私の様子に気づいたのか声をかけてきてくれたけど、今の私には届いていなかった。
「ごめん、やること出来たから先に失礼させてもらうね」
「あ、はい」
みんなからの戸惑いの視線を背に受けながら、私はルシルとリンクで連絡を取る。
『ルシル、今どこ!?』
『シャル!? 君が私を売ったから、私がシグナムの標的にされただろうが!』
『バカッ! 気づかないの!? 周囲探査!』
今はそんな話をしている時間はない。
だから怒鳴るようにしてルシルに六課隊舎の周囲を確認させる。
『これは・・・了解した。昼休憩終了まで残り40分、か。それまでに終わらせる』
ようやくルシルも気づいたのか、意識を戦闘モードに移行したのがリンクを通じて分かる。
私も意識を全て“ヤツ”へと集中させて、六課隊舎から人知れずに出撃する。
なのはたちに連絡はしない。
連絡して仮に出撃させたとしても人間では勝てないからだ。
私は“ヤツ”と戦うために“界律の守護神”の能力“干渉”を使おうとして気づく。
「うそ・・・干渉が・・・使えない?」
それだけじゃなくてこのミッドチルダの“界律”からも何も言ってこない。
今更そんなことに気づくなんて私もどうかしている。なのはたちとの再会に浮かれ過ぎてた。
それにこれじゃまるで“界律”が“ヤツ”の存在を認可しているみたいだ。
「シャル!」
私のもとへと走ってきたルシルに振り返った。
「ルシル・・・干渉が使えないし契約要請も来ない」
私の言葉を聞いたルシルは「今更?」みたいな顔をしてため息を吐いた。
「おそらく今の“ヤツ”が体を分けた状態になっているからだと私は推測している。
それゆえに界律は“ヤツ”を危険な存在だと認識していないのだろう。
まぁミッドの界律も危険と判断したら私たちに契約を求めてくるはずだ。
そうなったら干渉を使って残らず消滅させてやればいい」
そういうことか。認めているんじゃなくて危険と判断していないわけね。
というかよく“界律”に引っかかることなく次元世界に来れたものだ。
「まぁこうなっては干渉なしで戦闘するしかない」
「うん。ルシル、創世結界に取り込める?」
「・・・ああ、確認次第英雄の居館に取り込む。そこで一気に決めるぞ、シャル」
「異界英雄との共闘で瞬殺、今打てる最高の手はそれだね、了解だよ」
本当なら干渉を使って閉じ込めた領域で戦うのがベストだけど、使えないのならルシルの創世結界に取り込むしかない。
私たちは“ヤツ”の反応がある場所へと歩みを進めて、たどり着いたのは自然の多い公園。
人も疎らにいて平和そのものといった感じだ。
そして “ヤツ”の反応は未だにこの公園内にある。
「あのお姉ちゃん、お兄ちゃん・・・」
「「っ!」」
振り返ってみると、そこいたのは幼い少女が一人。
ルシルと一度顔を見合してから、その少女と視線を合わせるためにしゃがみ込む。
そして気づいた。この子から“ヤツ”の神秘を感知できる。だけどこの子は人間だ。
「どうしたのかな? お姉ちゃんたちに何か御用かな?」
「あのね、お姉ちゃんたちが来たら、これ渡してほしいって赤いお姉ちゃんが言ってたの」
赤いお姉ちゃん、か。“ヤツ”の分裂体の中にはいなかったはずだ。
おそらく私が知らないうちに代替わりした新入りだろう。
全く、どれだけ消滅させても次々と湧いて出てくる面倒な“ヤツ”だ。
「ありがとう♪」
「うん!」
少女は私の言葉に頷いて走り去っていった。
あの少女から受け取ったのは小型の受信専用の通信機。
「どう思う、これ?」
「どうもこうもハッキリと“ヤツ”特有の神秘を感知できる。
コールが来るまで待つしか・・・言ってるそばから、か」
通信機から鳴り響く呼び出しコール。
そのタイミングの良さから見られているんじゃないか、とルシルが周囲を探査している。
私はそれを横目にコールに応え繋ぐ。
『お初にお目に掛かる』
小型のモニターが現れて、一人の男がそう口にした。
ルシルもモニターへと視線を移してその男の顔をじっくりと見る。
この男は・・・違う。“ヤツ”でもなくその分裂体でもない単なる人間だ。
だけど繋がりがあるのは間違いないはず。
「何者だ?」
『私はジェイル・スカリエッティ』
ジェイル・スカリエッティ・・・・聞き覚えのない名前だ。
私の隣でルシルが難しい顔をしてる。知っているけど思い出せないって感じだ。
「・・・で? そのスパゲッティが何の用?」
「『・・・・・・』」
沈黙。しまった。素で間違えた。
さっきまでスパゲッティを食べていたから、響きが似ているせいで本気で間違った。
「で? そのスカリエッティが何の用?」
さっきの事を無かったことにして言い直す。
『・・・君たちと一度話をしたいと思っていてね。
本当ならこちらに招いてゆっくりと時間をかけて話がしたかったんだが・・・』
スカリエッティは何も言わずに本題に入ってくれた。
何気に良い奴なのかもしれない。
で、スカリエッティの意識はしっかりしているみたいだ。
どうやら操作されているというわけではなさそうだ。
「広域指名手配中の・・・一級捜索指定次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティ、だな?」
ルシルは確認するかのように告げた。
広域指名手配、しかも一級捜索指定の次元犯罪者って・・一体何したのこいつ。
『私のような者を知っていてくれるとは嬉しい限りだよ4th・テスタメント君』
確定。この男は“ヤツ”らの内の誰かと繋がっている。
そして私たちのことを聞いているんだ。
「ガジェットを製作して“レリック”を集めているのも貴様だな?」
ルシルは“ヤツ”らの情報を引き出すんじゃなくて、敢えて“レリック”関連から攻めてく。
ここはルシルに任せておこうかな。
『その通りだよ』
その表情と目からウソではないことは分かる。
もしこれが演技だとしたら大した役者だ。
「意外と簡単に白状するんだな。自分の首を絞めるようなものだと思うが・・・」
『いやいや、そちらの執務官は優秀だからね。
おそらく私の残した手掛かりを見つけ、今頃私が関与していることに気付いているかもしれないよ?』
手掛かりをわざと残したってわけか、随分と挑発的な行為ね。
この男はよほど自己顕示欲が強いみたいだ。
私が思うにスカリエッティの傍にいるのは“許されざる傲慢”か、もしくは“許されざる強欲”のどちらかだろう。
私がスカリエッティに抱いた印象からそう考える。
「そうか、ならその話はもういい。さて、これからが本題だジェイル・スカリエッティ。
今すぐその場所を教えろ。すぐさま貴様の傍にいるであろう“ペッカートゥム”を消す」
“大罪”。それが罪眼の主の名だ。ルシファーもマモンも、“ペッカートゥム”が七つに分裂した際に独立して活動する概念存在の一体だ。
『それは困る。彼女たちの知識にはとても楽しませてもらっているからね。
それに協力関係である以上は私も彼女たちを守る義務があるのさ』
「協力? 何を馬鹿なことを。貴様は単に利用されているだけに過ぎない。
後悔する前に“ペッカートゥム”と手を切れ。そして大人しく投降しろ」
モニター越しにでも分かるだろう殺気を放ちながらそう口にするルシル。
対するスカリエッティは動じることなく話を続ける。
『断る、と言ったら君たちはどうするんだい?』
「力ずくで見つけ出し、そのうえで力ずくで滅ぼさせてもらう」
『出来るのかい? 世界からの許可がないと、界律の守護神としての力が使えないのだろう?
そんな状態で本当に勝てるのかい?』
まぁそれくらいのことは聞いているよね、やっぱり。
だけど残念、勝てるんだなぁ、これが。
分裂している今なら、私とルシルの持つ神器で対抗できる。
それに本来の姿“ペッカートゥム”に戻ったりしたらミッドの“界律”から契約が来るだろう。
この世界の敵“ペッカートゥム”を滅ぼせ、と。
そうなったら“界律の守護神”の干渉で容易く滅ぼされることになる。
どちらにしても、分裂体であろうと真の姿であろうと私とルシルには敵わない、ということだ。
「どうだろうな。やってみないことには判らないが、たとえ勝てないとしても戦わないわけにはいかないだろう?
それが界律の守護神の役目なのだから」
敢えて勝敗が分からないと誤魔化すルシル。
まぁご丁寧に教える必要もないか、“どちらにしても勝つのはこっちです”なんて。
『それは残念だ。なら・・・っともうこんな時間か。もっと有意義な話がしたかったのだね。
すまないね、今日はこのくらいにしておくよ。またこうして話し合える日を楽しみにしているよ、3rd・テスタメント君、4th・テスタメント君』
モニターが消え、静まり返る付近一帯。
おそらくこの通信機が繋がることはないだろうけど、一応はやてたちに調べてもらおう。
「ルシル、ペッカートゥムを倒すことが本契約だと思う?」
「ないな。ヤツ一体だけなら我々の中でも最弱とされている第五の力一人で十分だ。
わざわざ第四の力と第三の力が呼ばれることはない」
「そっか、そうだよね」
大罪ペッカートゥム。“絶対殲滅対象”において最弱の番外位。
そんなヤツ相手に私は兎も角、最強のルシルが呼ばれるはずがない。
ならやっぱり、本契約の内容は・・・・。
「帰ろうかシャル。昼休憩が終わるまでそう時間はない。
遅刻でもしたらシグナムから何を言われ・・・もとい何をされるか判らない」
「お疲れ様、ルシル。大変だね~」
「よく言うよ。私を売ったことに対する罰は受けてもらうからな」
そして私とルシルは六課隊舎へと歩を進めた。
この夜、隊長陣の会議に参加させてもらい、この日起こったことを話した。
まぁ守護神云々はもちろん黙っていたけど。
そしてスカリエッティの言っていた通り、フェイトはガジェットから手掛かりを発見、スカリエッティへと辿り着いていた。
首謀者をジェイル・スカリエッティと断定して、今日の会議はお開きになった。
お開きとなって解散するとき、最後にはやてがルシルに対してあることを告げた。
「ルシル君、ナカジマ三佐からの伝言。ちゃんと面を出して挨拶に来い馬鹿息子、やって」
「息子? どういう意味だ?」
「・・・ナカジマ三佐はギンガかスバルをルシル君に嫁がせたいみたいやね」
「何だそれ? セインテストが結婚すんのか?」
「ダメだよルシル君。フェイトちゃんがいるんだから」
「えええーーーーーッ!!?」
「落ち着けテスタロッサ」
「結婚式には呼んでくださいね♪」
「しないっつうの!」
「ちょっとそこまで全力で否定しなくてもいいんじゃない?」
「・・・え? 何で私が全面的に悪いって感じになっているんだ?」
『ルシル、スバルに手を出したら犯罪だよ』
『出さないっつうの!』
結構簡単にシャルシルとドクターを邂逅させました。散々迷っていたんですけどね。
そして“ヤツ”こと大罪が名前のみ登場。
どういうキャラかは「ANSURについて」の絶対殲滅対象の項に掲載です。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。