3rd Episode:高き破滅より来たる大罪
新暦75年 5月4日 とある有人世界
次元世界を管理する“時空管理局”にとっては管理外世界となるある一国で今、未曾有の災害が発生している。
しかしそれは自然による天災ではなく、その地に住む人間による人災でもない。
それは世界が遣わした絶対なる抑止力による神罰という名の災害だった。
其れらは人の姿をしておきながら、神の如き力を振るい、悪魔の如き行いを成す者たち。
白き者は、同じく白く輝く十字架を振るいて、この国を侵略した他世界の人間を蹂躙し、黒き者は何もない宙より、無数の武器を呼び寄せては侵略者の兵器を破壊していく。
「大丈夫? ここは危ないから避難しなさい」
「あ、あり・・・がとう、ありがとう白いお姉ちゃん!」
白き者が傷ついた少女を癒し避難させる。
それを見ていた黒き者が侵略者たちへと仮面の内から再度視線を向ける。
その向けられた目からの見えない視線に侵略者たちは慄いた。
「残りは貴様たちだけのようだな」
「はぁはぁはぁ―――おおおおおおッ!!」
為す術もなくその生を奪われていく侵略者たちは、それでも必死に死に抗おうと得物を取る。
だが侵略者たちの攻撃は確かに白き者と黒き者に当たっているものの、何一つとしてその存在に傷を与えていない。
「ば、化け物め・・・・この化け物めぇぇぇーーーーーッッ!!」
おそらく戦いを挑んでくる者達の中で最も実力のあるであろう青年が叫ぶ。
手にする剣はすでに折れて、その体も満身創痍だ。
「・・・・化け物で結構だ。侵略者はこの世界の怒りを買った。それゆえの滅びだと覚悟せよ」
「怨みたいのなら怨みなさい」
その言葉を最後として白き者は消える。
その場に残った黒き者はゆっくりと左腕を天へと伸ばし、そして小さく囁いた。
「凶竜の殲牙」
天より現れたるのは、先程まで多くの侵略者たちの兵器を破壊していた無数の武器。
今度は雨あられのように降ってくるのではなく、無数の武器が集まり“竜”のような姿をとっている。
「残念だがアウトだ」
黒き者は指を鳴らして無数の武器で構成された“竜”を逃げ惑う侵略者たちに放つ。
一瞬の阿鼻叫喚の果て、この一国より侵略者は誰一人としていなくなった。
「契約執行完了」
黒き者、4th・テスタメント・ルシリオンは静かに告げて、この世界から消えた。
†††Sideシャルロッテ†††
――とある無人世界
「はぁ、こんな契約でわざわざ界律の守護神を呼ばないでほしいよ」
私とルシルが管理局を辞めてもう二年は経つ。
管理局を辞めたことで守護神としての“契約”を多くこなすことが出来るようになった。
その分、本当に下らない契約内容も増えてしまったけど。
その世界が持つ抑止力でも十分なことにすら“界律の守護神”が呼ばれる。
これでは本当に何でも屋になってしまうかもしれない。今更な気もするけど・・・。
「なのはたち・・・元気かなぁ?」
頭の中に浮かぶのは親友たちの顔。
二年前に別れてから、当然の如く会っていない。
一応メールのやり取りはしているけど、ミッドから遠のくと通信端末が繋がらなくなる。
回数としてはこの二年でたったの八回、一度繋がると膨大なメールが一気に届いたりする。
それに対処するのは大変だけど、でもみんなと繋がっていると思うと嬉しくなる。
「あの子達なら元気に決まってるだろ」
私の背後に突如として現れたルシル。
私は振り返って労いと謝罪の言葉を口にする。
「お疲れ様ルシル。ごめんね、最後を任せちゃって」
「構わない。これが第四の力の役目だ」
そう言ってルシルも私の隣に座り込む。
眼下に広がるのは、私たちには勿体ないほどの美しい天然の花畑。
その綺麗な景色が私の心にグッとくる。
「気持ちいいね」
「ああ。私たちには勿体ないほどの心地よさだ」
この二年、私たちは多くの命を奪ってきた。
それが滅ぼされる側にとって自業自得なことであろうと理不尽なことであろうと、だ。
だから私は、なのはたちと友達だということに負い目を感じ始めていた。
「一度会いに行くか、みんなに?」
ルシルがなのはたちに会いに行くかと訊いてくる。
本音を言えば会いに行きたい。でも今の私たちに、みんなと会える資格はあるのだろうか。
こんな血に塗れ、多くの命を奪い取ってきた私に。
「・・・・時間、考える時間を―――!!」
私の通信端末からメールの着信音が鳴り響く。
そうか、この世界はミッドからさほど離れていないのか。
「メールの確認、したほうがいいんじゃないか?」
「うん」
通信端末を開いてメールの内容を確認する。
一番古いメールから一件一件読んでいったら、最近のメールまでに一時間もかかった。
『シャルちゃん、ルシル君、元気? 私はすごく元気だよ!!
このメールを読んでいるとき、二人は何をしているのかな?
今、私ははやてちゃんが設立した部隊“機動六課”の新人演習を終えたとこだよ。
それでね――』
「そっか、はやてはちゃんと自分の部隊を持てたんだね」
なのはのメールを読んで、自然と笑みがこぼれる。
はやてが部隊を設立したのはごく最近とのことだった。
本当なら私もその“機動六課”の一員になる予定だったんだけどね。
「ほぉ、それにしてもメンバーはかなり豪勢だな。
お、スバルとエリオ、キャロも・・・はは、ヴァイスもいるのか!
ん? ティアナ・ランスター・・・ランスターってまさか・・・」
ルシルにも通信端末の画面を見せてメールを読ませる。
するとティアナって子のことで、何か深く考え込んじゃった。
それにしてもこのメンバーには私もさすがに驚いた。
なのは、フェイト、はやてにシグナムたち守護騎士。
この“機動六課”は明らかに過剰戦力だ。
私も入っていたらさらにすごいことになっていた。
一体どうしてそこまでのメンバーを集めるのか理由が分からない。
何か嫌な予感がする。
『――それで、もしよかったら一度帰ってきてほしいな、ってみんなで話してるの。
それじゃまたメールするから。二人と再会できるの楽しみにしてるよ!』
なのはのメールはそう締めくくられていた。
再会を楽しみにしている、か。
「現時点において界律との契約はもう残っていない。
しばらくは解放されるはずだ。どうする、やはり一度帰って会っておくか?」
ルシルは立ち上がって私に左手を差し出す。
私はその手を取って立ち上がった。
「でも、私にはもう友達としての資格があるかどうか・・・」
「素直になればいい。会いたいなら会いに行く。
会いたくないならこのまま次の契約が発生するまで待機だ」
ルシルも自分の通信端末に送られてきたメールを読み終え、広い空へと視線を移す。
「・・・じゃあ―――」
私も青く広がる空を見上げた。
§再会§
――新暦75年 5月13日 ミッドチルダ・エーリム山岳丘陵地区
機動六課保有ヘリ内――
†††Sideなのは†††
「ヴァイス君! 私も出るよ! フェイト隊長と一緒に空を抑える!!」
私たちは今、機動六課初任務の現場であるエーリム山岳丘陵地区へと来ている。
私はヘリのパイロットである陸曹のヴァイス君に声をかけた。
六課の初任務は、ここエーリム山岳丘陵地区を走る貨物車両に積まれているロストロギア“レリック”の回収。
でもその“レリック”を狙った機械兵器“ガジェット”が貨物車両を占拠しているとのこと。
それを排除して暴走している貨物車両を停止させることも私たちの任務だ。
本当なら私も、新人たちスバル、ティアナ、エリオ、キャロの四人と一緒に貨物車両へと行きたかったんだけど、航空型の“ガジェットⅡ型”が現れたために空に上がることになった。
「うっす、なのはさん。お願いします」
ヘリのメインハッチが開き、私は新人たちに声をかける。
「じゃ、ちょっと出てくるけど、みんなも頑張ってズバッとやっつけちゃおう!」
「「「はい!!」」」
「は、はい・・・!」
スバル、ティアナ、エリオは少し緊張気味だけど元気よく返事をした。
だけどキャロは三人より遅れて返事をした。三人よりずっと緊張している所為だ。
私はキャロのそばまで歩み寄って、キャロの頬にそっと両手を添える。
「キャロ、大丈夫、そんなに緊張しなくても。
離れてても通信で繋がってる。独りじゃないからピンチのときは助け合えるし、キャロの魔法はみんな守ってあげられる優しくて強い力なんだから、ね?
だからきっと大丈夫だよ」
「なのはさん・・・はい!!」
うん、これで心配はない。
今のキャロの顔は本当にいい顔になっている。
「それじゃ行ってくるね」
私はヘリから飛び降り、長年のパートナーである“レイジングハート”を起動させる。
≪Stanby Ready≫
「レイジングハート、セーットアップ!!」
≪Barrier Jacket, Aggressive Mode≫
バリアジャケットへの変身を終えて――
「スターズ1 高町なのは、いきます!」
臨戦態勢に移る。そして“ガジェット”を掃討するため、少し遅れて来たフェイトちゃんと合流する。
『同じ空は久しぶりだねフェイトちゃん』
『うん、なのは』
一緒に空を飛ぶのは本当に久しぶりだ。
でも嬉しさの反面少し悲しい。一緒に飛ぶということは有事が起きたことを意味するから。
それでも嬉しさのほうが上回るんだけどね。
『来た。こっちは任せてなのは』
『うん。それじゃ私はこっち担当ってことで』
それぞれにアプローチしてきたガジェットⅡ型との戦闘に、私とフェイトちゃんは入った。
†††Sideなのは⇒リインフォースⅡ†††
なのはさんも出撃したことですし、わたしも任された仕事をするです。
「任務は二つ。ガジェットを逃走させずに全機破壊すること。
そして“レリック”を安全に確保することです」
新人のみなさんに分かりやすいように小型のモニターを出して説明を続ける。
「ですからスターズ分隊とライトニング分隊、二人ずつのコンビでガジェットを破壊しながら車両の前後から中央に向かうです。
“レリック”はここ、7両目の重要貨物室。スターズかライトニング、先に到達した方が確保するですよ!」
「「「「はい!!」」」」
モニターに詳しい場所を表示させてみなさんに教える。
わたしの任務の説明をみなさんは強く頷いて応えた。
「で、わたしも現場に降りて管制を担当するです♪」
騎士甲冑へと変身して、みなさんと一緒に降りる準備をする。
『さぁて新人ども。隊長さんたちが空を抑えてくれてるおかげで安全無事に降下ポイントまで到着だ。準備はいいか!?』
「「「「はい!!」」」」
ヘリのパイロットを務めるヴァイス陸曹の言葉にみなさんが答える。
まずハッチに立つのはスターズのお二人、スバルとティアナ。
「スターズ3! スバル・ナカジマ!」
「スターズ4! ティアナ・ランスター!」
「「いきます!!」」
顔を見合わせたお二人がヘリから飛び降りる。
変身を終えた二人が無事に貨物車両へと降り立ったのを確認した。
『次ライトニング! チビども、気ィつけてな!』
「「はい!!」」
貨物車両の反対側へと移動して、ヴァイス陸曹の激励がとぶ。
次はライトニングの二人、エリオとキャロ。
このお人が出たあとにわたしも出撃するです。
「・・・一緒に降りようか?」
「え、うん!」
飛び降りることに戸惑っているキャロに、優しくエリオが手を差し出す。
エリオはすごく優しいですねぇ。ジェントルマンってやつですか?
キャロは差し出された手を取って覚悟を決めたみたいです。
「ライトニング3! エリオ・モンディアル!」
「ライトニング4! キャロ・ル・ルシエとフリードリヒ!」
「「いきます!!」」
新人のみなさんの出撃はこれで完了ですぅ。
『リイン曹長もお気をつけて!』
「はいですぅ!!」
わたしもみなさんを追うようにヘリから飛び立った。
†††SideリインフォースⅡ⇒フェイト†††
『スターズF、ライトニングF、降下完了しました』
みんなの降下が完了したことをロングアーチから報告を受けた。
なら私となのはがやることは、ガジェットⅡ型が貨物車両へと向かうのを阻止することだ。
私となのはは次々と増えてくるガジェットⅡ型を破壊しながら空を翔る。
そのとき、
『こちらロングアーチ! 新たなガジェット30機と・・・それと、何・・・これ?』
ロングアーチからガジェットⅡ型増援の報が入る。
けど少し様子がおかしい。「ガジェットと」と言ったシャーリー。
でもすぐにシャーリーの気持ちが分かった。
『フェイトちゃん。あれって・・・眼?』
『う、うん。たぶんだけど・・・まるで人の眼みたい』
私となのはが相手にしていたガジェットⅡ型に追随するかのように、人の眼のような形をした未確認が飛んでいる。
数は2メートルほどの眼が1、1メートルほどの眼が35といった感じだ。
『とりあえず敵であることは間違いないと思う』
「『そうだね』こちらスターズ1、増援ガジェット及び未確認と交戦に入ります!」
「ライトニング1、同じく交戦に入ります! 新人たちの方は任せるよ!」
『了解しました。お気をつけて!!』
なのはと二人で再度交戦に入った。
まずはガジェットⅡ型への攻撃を放ったけど、ガジェットⅡ型へと当たる直前で小さい眼の内の4つが十字の盾となってそれを防ぐ。
さっきまでの動きと違い、かなり速く動く。
≪Haken Slash≫
ならば、と私は大きい方の大型眼へと斬り掛かる。
何故なら大きいのはこの一つだけ。おそらくこれが大型眼のリーダーだと推測出来る。
ならこの一つを落とせば、小さい方に何らかの影響が出ると判断しての攻撃だった。
「はああああッ!!」
私の攻撃に対して大型眼は何の抵抗もせず、“バルディッシュ”の刃を受け入れた。
「・・・え?」
確かに何かが描かれた瞳孔部分に攻撃が入っているのに、全くダメージを受けた様子がない。
私はそれに何かを感じて無意識に距離を取った。
そして次の瞬間、その大きい大型眼から白い砲撃が放たれた。
≪Sonic Move≫
すぐさま射線上から離脱して難を逃れた。
もしあのまま止まっていたらどうなっていたか分からない。
『ダメ! 逃げてフェイトちゃん!!』
ガジェットⅡ型を相手にしているなのはからの叫びが頭の中に響く。
私は考えるよりも先に体を動かして、その場から再度離脱した。
するとさっきまで私がいた場所に白い砲撃が通過していった。
「一体・・・・な!?」
何故回避したはずの砲撃が再度私のもとへと戻ってきたか、その理由を見た私は驚愕した。
「くっ・・・!」
再び私のもとへといくつもの砲撃が襲い掛かってきた。
その砲撃の数は次々と増えていき、襲い掛かってくる角度もまた増えてくる。
私は動きを止めることなく砲撃を回避し続ける。
何故なら、
『フェイトちゃん! まずは砲撃を反射する小さいのから落とさないとダメかも!!』
そう、小さい小型眼が反射板の役割として動いていたのだ。
反射した砲撃は幾条にも分かれて数を増やし、さらに別のk型眼に反射してさらに数を、角度を増やしていく。
それはまるで私を捕らえるための、砲撃による檻のようなものだった。
『(これは結構キツイかも・・・)うん!』
リミッターを掛けられている私にとって、この眼たちは厄介だった。
――護り給え、汝の万盾――
増援として現れたガジェットⅡ型を掃討し終えて、私はフェイトちゃんのもとへと翔ける。
フェイトちゃんは目にも留まらぬ速さで、今なお続く幾条もの砲撃を回避しては小さい小型眼を斬りつける。
「レイジングハート!
≪Short Buster≫
「シューーット!!」
私も反射砲撃の要である小さい小型眼へと砲撃を放つ。
さっきはシューターを完全に防いだことから、今度は威力の高いバスターを食らわせる。
でも、
「うそっ!?」
小さい小型眼は、私の砲撃をも反射して自らの攻撃として利用し始めた。
「なのは! 大きい方をお願い! 小さいのは私が引き付けるから!」
「フェイトちゃん・・・・分かった!!」
フェイトちゃんへの攻撃を行っているのは小さい小型眼だけ。
大きい方は白い砲撃を放ってからは一切の動きを見せていない。
もしかすると、小さいのを操作しているから動きが取れないのだろうか、と推測する。
だったら今こそ破壊するチャンスだ。
「レイジングハート、今出せる魔力でディバインバスター、いくよ」
≪All right, My Master. Devine Buster≫
“レイジングハート”を大きい大型眼へと向けたところで、瞳孔部分の前面に周囲の魔力が集束していく。
間違いない、アレは集束砲だ。
「集束砲!? そんなものまで!?」
さすがにこれには驚きを隠せない。もし放たれてしまったら今の私たちに防ぐ術はない。
≪Devine Buster≫
何としても集束砲のチャージを妨害するためにバスターを放つ。
でも大型眼はあろうことかチャージ中にも関わらず、転移してバスターを回避した。
「はやてちゃん! リミッ―――!!」
最後まで口にすることが出来ずに、大型眼から集束砲が放たれた。
おそらくSランクはあろだろう、かなり大きい砲撃だった。
集束砲が向かう先にはリインとフォワード四人のいる貨物車両。
リイン、スバルとティアナは車両内。エリオとキャロは車両の屋根の上。
エリオは球体型ガジェットを破壊し終えて、キャロはフリードリヒの背にいる。
エリオとキャロは砲撃に気がついているけど、今からだともう全てが間に合わない。
こんなことって・・・・
『心配するな。私が防いでみせる』
頭の中に響いたのは、2年前に別れて以来会うことのなかった幼なじみの一人の声。
どうして?だとかそんなことを考えるより先に、私の中に安堵が広がっていく。
――護り給え、汝の万盾――
そして貨物車両の側面に、蒼く輝く巨大な円盾が現れた。
大型眼が放った砲撃を容易く防いで、砲撃が途切れた後、盾は無数の蒼い羽根になって散っていった。
「ほらっ、ボサッとしない。なのは、フェイト」
上空から聞こえたのは、もう一人の別れていた幼なじみの声。
次の瞬間、上空から下方へと何かが通り過ぎたように見えた。
遅れてフェイトちゃんを襲っていた小さい小型眼のいくつがが真っ二つに斬り裂かれて消滅していく。
それは一瞬の出来事。私はその何かを確認するため、地上にある森林の方へと視線を向ける。
木々の上、桜色の刀身を持つ長刀を肩に担いで、背中から真紅の一対の翼を生やした――
「シャルちゃん!!」
「シャル!!」
シャルちゃんが居た。フェイトちゃんも、シャルちゃんによって小型眼のいくつかが破壊されたことで、反射砲撃から解放されたからのようで、シャルちゃんの名前を呼んだ。
「お久さっ! ってあれ? 二人とも随分と魔力低くない?」
シャルちゃんは小首を傾げて。でも表情は可愛い笑顔だった。
†††Sideなのは⇒????†††
「一閃必中!!」
――メッサー・アングリフ――
キャロの補助魔法によってフィールド貫通と強化が施された“ストラーダ”を構えて、ガジェットに突撃する。
ブースターの推進力によって加速された“ストラーダ”の一撃は、容易くガジェットを貫いた。
「でぇぇぇりゃぁぁぁぁッ!!」
もちろんそれだけで倒せるガジェットじゃない。
完全に止めを刺すために、“ストラーダ”を上へと振りぬいて切断して、爆散させた。
「やったね、エリオ君!!」
フリードの背にいるキャロが笑いかけてくれる。僕はそれに応えようとして・・・見た。
この貨物車両へと砲撃が迫ってきていたのを。
僕の表情を見て、キャロも後ろに迫ってきている砲撃に気づいた。
でもそれだけだ。僕たちにそれを防ぐ手立てはなかった。
「そんな・・・」
諦めるしかない、とそう思ったとき、
「心配するな。私が防いでみせる」
「「え?」」
突如聞こえた声に、キャロと二人して辺りを見回す。
そして見つけた。長い銀髪を靡かせて、背中から蒼い剣の形をした10枚の翼を伸ばした宙に浮く人影を。
その人には何度かフェイトさんと一緒に遊びに連れて行ってもらったことがある。
僕にとってお兄さんのような存在。
「「ルシルさん!!」」
キャロと声が重なる。どうやらキャロもルシルさんと面識があるみたいだ。
「久しぶりだな、エリオ、キャロ」
――護り給え、汝の万盾――
ルシルさんは微笑んだあと、左手をかざして蒼く輝く大きなシールドを張った。
そのシールドを良く見ると、無数の小さな円い盾が折り重なって一つの大きな盾となってる。
そしてそのシールドはいとも容易く砲撃を防いだ後、小さな羽根のようになって散っていった。
『ちょ、ルシル君!? どうしてここにおるん!? それにシャルちゃんも何で!?』
八神部隊長から通信が来た。モニターに映る八神部隊長は少し混乱気味のようだけど。
ルシルさんは気軽に「久しぶりだな、はやて」って挨拶。
「何でって、ひどいな。はやて。久しぶりなのだから挨拶してほしかった」
『え? あ、あーごめんな、ルシル君。久しぶりや、元気してた?・・・・やなくてっ!』
「すまん。すぐに答えた方が良かったな。質問は、何故ここに居るのか?だったな。
答えは、時間が空いたから戻ってきた、だよ。場所については魔力探査というものを使って探し当てた。
魔力を使用しているなのはとフェイトの居場所はハッキリ判ったからな。
だからそのままここへと来たというわけだ」
ルシルさんはそう言うと、砲撃が放たれた場所へと視線を向ける。
僕とキャロもそれにつられて、その場所へと視線を向けた。
『そういうこと! そんじゃ罪眼は私とルシルで破壊するから』
なのはさんとフェイトさんの傍にいる紅い翼を持つ女の人から念話が来た。
『シャルちゃんとルシル君、あの眼のようなモノのこと知ってるんか!?』
『まぁ知っているといえば知っている、かな。
詳しいことはまた話すから、今は戦闘に集中させてね、はやて』
「そうだな。まずは罪眼を破壊することを優先するべきだ」
完全に置いてけぼりを食らっている僕とキャロ。
そんなところに、“レリック”が収められているのであろうケースを抱えるスバルさん。
そしてティアナさんとリイン曹長が現れた。
「「ルシルさん!?」」
スバルさんとリイン曹長が、ルシルさんの姿を見て驚愕の声を上げる。
それに気づいたルシルさんも振り返って、
「ん? おお、 久しぶりだな、リイン、スバル。
二年も見ない内に大きくなったなスバル。ナカジマ三佐とギンガは元気か?」
「はい! お父さんもギン姉も元気ですよルシルさん!」
スバルさんに声をかけ、スバルさんもそれに元気よく答えた。
「それはなによりだ。っとそれと、すまないな。クイントさんの墓参りにここ二年行けなかった」
「いえっ、そんな!」
『ちょっとルシル! 挨拶は後! 防御お願い!』
「は? シャル、君に防御なんていらないだろ?」
シャルと呼ばれた人の念話に、素っ気無くルシルさんは答えた。
そういえばフェイトさんから聞いたことのある名前だ。
確か幼なじみの大親友、シャルロッテ・フライハイト元二佐さん。
『私じゃなくてその子達の防御! そっちに攻撃が流れたら危ないでしょ!?』
その言葉を合図として、シャルロッテさんが空を物凄い速さで翔る。
こんな遠くからでも分かるくらいの無数の閃光が入り乱れている激しい戦闘だ。
『ルシル、援護射撃!』
「了解」
ルシルさんが腰にあるホルスターから金色に輝く銃を二挺抜いて構えた。
ティアナさんのデバイス、“クロスミラージュ”より少し銃身が長い。
そして、
「いくぞシャル・・・!」
――燃え焼け、汝の火拳――
続けざまに二挺の銃から火炎の砲撃が放たれた。
ここからだと、どれがシャルロッテさんなのかも分からないのに、ルシルさんは火炎砲を撃ち続ける。
撃ち終えたルシルさんは軽く息を吐いてから二挺の銃をホルスターに収めた。
『よし! 殲滅完了っと』
シャルロッテさんからはそう一言。
す、すごい。ルシルさんは見ただけで強力だって分かるほどの砲撃を連射した。
僕を始めたとしたスバルさんたちも、そのすごい魔法に驚きのあまりにポカンとした。
†††Sideエリオ⇒はやて†††
――機動六課隊舎司令部
「はぁ、相変わらずの反則やなぁ。シャルちゃんとルシル君は・・・」
六課隊舎内にある司令部の指揮官席に座りながら、先程繰り広げられた戦闘に呆れ果てる。
いくらリミッターが掛けられているとはいえ、なのはちゃんとフェイトちゃんの魔導師としての腕は確かや。
その二人が苦戦したあの眼のようなモノを数十秒で片付けたシャルちゃんとルシル君。
「あはは、そうですね~。見てください八神部隊長。シャルさんとルシリオンさんのランク、SSSに届いてますよ?」
シャーリーの言葉に司令部が一気にざわめき始める。
それもそのはずや。SSSランクの魔導師なんてそう簡単に目にすることが出来るモノやない。
それが二人、しかも二人とも知り合いというんがまたすごい。
「どうします八神部隊長。レリックの回収も完了、車両も停止していますし・・・」
「そやねぇ・・・うん、スターズの三人とリインはヘリに回収してもらって、中央のラボまでレリックを護送してもらおか」
『お任せです!』
私の指示にリインが元気よく答えた。
「ライトニングはどうします?」
「現場待機やね。現地の局員に事後処理の引継ぎ。
そのあとシャルロッテ元三等陸佐とルシリオン元一等空佐をここに案内してもらおか」
指揮官補佐を務めるグリフィス君にそう告げる。
あの二人にはあの眼のことを聞いておきたいし、何より久しぶりの再会や。
やっぱりちゃんと会っておきたい。2年も別れとった親友たちとな。
◦―◦―◦―◦―◦―◦
――ミッドチルダ某所
「刻印ナンバーⅨ、護送態勢に入りました」
巨大なモニターを前に一人佇む男。名をジェイル・スカリエッティ。
後に、忌み名としてミッド史にその名を刻むことになる男だ。
「ふむ」
その男の傍にある小さなモニターに映る女性の口からそう告げられた。
男はモニターを見据えたまま、それに短く答える。
「追撃戦力を送りますか?」
「やめておこう。レリックは惜しいが、彼女たちのデータが取れただけでも十分さ」
巨大なモニターが別の画面へと切り替わる。
そこに映るのは機動六課の魔導師たち。
「それにしても、この案件はやはり素晴らしい。
私にとって興味深い素材が揃っているうえに・・・」
モニターに今度は映像として、フェイトとエリオが映し出された。
「この子達を、生きて動いている“プロジェクトF”の残滓を手に入れるチャンスがあるのだからね。それに」
さらにモニターの画面が切り替わる。
映し出されたのは、今回の任務に乱入してきたシャルロッテとルシリオンだった。
「この世の中は実に面白い。世界の意思の代行者・・・・界律の守護神テスタメント、か。
この二人にも何らかのアプローチを行っていきたいね」
不敵な笑みを浮かべた後、彼は背後に現れた存在と今後について話し始めた。
自分がこれから一体何を相手にしようとしているのかを分かっていながらの愚考だった。
†◦―◦―◦―◦―◦↓シャルシル先生の魔法術講座↓◦―◦―◦―◦―◦†
シャル
「私は・・・・・帰って・・・・来ぃたぁぞぉぉーーーーーーーーーッッ!!」
ルシル
「やぁかましいぃぃーーーーーーーーーッ! もう少し声量を下げろっ馬鹿姉!」
シャル
「これがローテンションでいられますかっ! 2年ぶりにになのはたちに再会できたんだよっ。
というかルシルのテンションも似たようなもんじゃん! 良かったね、フェイトと再会できて!」
ルシル
「君の大きな声に負けないためだっ! まったく。もう19の女性なのだから、少しは落ち着け」
シャル
「19歳はまだ少女だよっ! でも落ち着かない。だって嬉しいからっ!」
ルシル
「あーはいはい。判ったから、ちょっと落ち着こう」
シャル
「すぅはぁすぅはぁ・・・。うん、よしっ。では改めて。私は帰ってきた」
ルシル
「私も帰って来たぞ」
シャル
「だね。さて。第三章の一発目、シャルシル先生の魔法術講座を始めますっ」
ルシル
「ん? フェイトとなのは、それにアルフとユーノは居ないんだな」
シャル
「あれ? ホントだ。次回からだね、きっと」
ルシル
「そうか。なら、今回は私と君の二人だけでするんだな」
シャル
「私と二人っきりじゃいや?」
ルシル
「まさか。どれだけの間、君とパートナーを組んでいると思ってる?」
シャル
「ん、ありがと。じゃあ早速始めようか。
――凶竜の殲牙――
――護り給え、汝の万盾――
――燃え焼け、汝の火拳――
――魔力探査――
ってルシルの魔術オンリーだね」
ルシル
「サーチは違うだろう。これは魔術師共通術式だ。君も使えるだろうが」
シャル
「そうでした。んじゃ紹介に行こうか。
まずは、複数の神器で巨大な飛竜の形作り、対象に突撃させる、凶竜の殲牙コード・ニーズホッグ。
小さな円い盾を重ねることによって大きな円い盾とする、護り給え、汝の万盾コード・ケムエル。
貫通性の高い火炎熱砲撃の燃え焼け、汝の火拳コード・セラティエル。
魔力の波形から特定の対象を探す術式、魔力探査サーチ」
ルシル
「上級術式ニーズホッグは、非殺傷など出来ない神器による攻撃だから、殺傷性は極めて高い」
シャル
「しかも解放された神器だから神秘満載。対神秘においては抜群の破壊力を発揮するんだよね」
ルシル
「だな。で、ケムエルは私が有する数少ない防性術式の一つだ。
小さいとはいえ一つ一つが防御力の高い円盾だ。
それが複数折り重なってさらに強固な大きな円盾となる。それがケムエルだ」
シャル
「かったいよねぇ、ケムエルって。中級術式のくせに。なのはのスターライトブレイカーも防げるんじゃない?」
ルシル
「どうだろうな。私としては、なのはの砲撃は向けられたくないな」
シャル
「同感」
ルシル
「炎熱砲セラティエルだが、今回は標的が素早いために速度と追尾性を高めてある」
シャル
「そう言えばいつもよりは速かったよね。まぁそのおかげで私もちっちゃいレーガートゥスを気にせずに戦えたんだけどね」
ルシル
「それは良かった。最後に、魔力探査サーチのことについてだが、これは説明する必要はないな」
シャル
「だね~。見つけたい人の居場所を探るもいいし、敵を見つけたい時にも重宝するし。
私は基本的に敵発見のために使うのが多いかな」
ルシル
「君だけじゃなく、大戦に参加した魔術師の大半はそうだろうな」
シャル
「そうだったね。さて、今回のシャルシル先生の魔法術講座はこれにて終わり。また次回♪」
はい、今回から3rd本編へと入っていきます。
そしていきなりすいません(謝罪してばっかですが)。
アニメ1話から4話までをごそっと丸ごと省略。
シャルシルがいないとどうしようもないためです。
そして今回はオリジナルキャラを入れていきます。
この世界での最高ランク(と思っています)SSSへと到達したシャルシルを相手にナンバーズやガジェットが勝てるわけがない。
そのための敵(ANSURキャラ)ですね、それを出していく次第です。
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