3rd Episode:プロローグ
――第162観測指定世界
†††Sideなのは†††
今、私とシャルちゃんとフェイトちゃんとはやてちゃんの四人は、ある世界での任務に赴いています。
『じゃ改めて今日の任務の説明ね。そこの世界にある遺跡発掘先を二つ回って、発見されたロストロギアを確保。
最寄の基地で詳しい場所を聞いて、モノを受け取りアースラへ帰艦、本局まで護送!』
アースラのエイミィさんから、今日の任務の説明を聞いた私は「平和な任務ですねぇ」って素直に思ったことを口にした。
『あはは、でもモノがロストロギアだから油断は禁物だよ~!』
『そういうことだ。平和だからと言って油断はするなよ、なのは。
フェイトたちも気をつけてくれ。頼んだぞ』
「「「「了解!」」」」
クロノ君に窘められて反省。そうだよね。
油断がもっとも危ないことは私がよく知っている。
「それにしてもよかったんシャルちゃん?
せっかくの休日やのに、私らの任務につき合ってもらって?」
「全然オーケー♪ アースラで待ってるのも退屈だし、久々にみんなと飛べるんだから最高の休日の過ごし方だよ!」
颯ちゃんに尋ねられたシャルちゃんがニコニコ笑顔で答える。
シャルちゃんの所属はミッドチルダの地上部隊だ。
だから私たちと同じ任務に就くことはほとのどない。
今回の任務も本当はシャルちゃんが参加する必要はないんだけど、シャルちゃんがそれで良いって言うなら、その厚意に甘えることにしよう。
「こうしてシャルと一緒に飛ぶのは結構久しぶりだよね」
「あぁそうかも。もう二年くらい一緒じゃないよね確か」
「もうそんなになるんか?」
「みんな見事に所属している部署がバラバラだもんね。
シャルちゃんとは本当に久しぶりだよ。でもルシル君とはたまに飛ぶよ」
空戦最速にして最強って噂のルシル君。
一緒の任務に就くとその噂の真相が良く分かったりする。
本当に強いんだよね、ルシル君。子供のころより数段に。
私たちは近況報告をしながら飛んで、目的の定置観測基地へと到着。
早速基地へと入ると、
「遠路お疲れ様です! 本局管理補佐官グリフィス・ロウランです!」
「シャリオ・フィニーノ通信士です!」
の二人がお出迎え。まだあどけなさが残る子たちだ。
「ご休憩の準備をしてありますのでこちらへどうぞ」
「あ、平気だよ。すぐに出るから」
気遣いには感謝だけど、私たちならこの程度の飛行はなんでもない。
「私らこれくらいの飛行じゃ疲れたりせーへんよ。グリフィス君は知ってるやろ?」
ん? 何でグリフィス君は知ってるの?
フェイトちゃんも、私と同じような不思議そうな顔をしている。
「もしかして、君ってレティ提督の・・・ご子息?」
シャルちゃんが首を傾げながらそう口にする。
そういえばさっき「グリフィス・ロウラン」って言ってた。
「あ、はい、そうです。フライハイト一等陸尉」
「「あー! 似てる!」」
「はじめまして! 母からよく聞いています!」
フェイトちゃんと声が重なる。よく見るとレティ提督とそっくりだ。
「フィニーノ通信士とは初めてだよね?」
「はい! でもみなさんのことはよーく知ってます!
本局次元航行部隊のエリート魔導師“フェイト・T・ハラオウン執務官”!
いくつもの事件を解決に導いた本局地上部隊の切り札“八神はやて捜査官”!
陸上警備隊において最強と名高い陸戦魔導師“シャルロッテ・フライハイト一等陸尉”!
武装隊のトップ航空戦技教導隊所属! 不屈のエース“高町なのは二等空尉”!」
私たちってそんな風に言われてるんだ。
エースだとかエリートだとか、全然知らなかったな~。
「陸海空の若手トップエースの皆さんとお会いできるなんて光栄です~~~!!」
「あはは」
どう応えていいのか分からないから、とりあえず笑っておこう。
「リインフォースさんのことも聞いてますよー。とっても優秀なデバイスだって」
「ありがとうございますぅ♪」
リインフォースさんの後継機として生まれたユニゾンデバイス、リインフォースⅡ。
私たちは“リイン”という愛称で呼んでいる、はやてちゃんの大事なパートナーだ。
フィニーノ通信士に優秀だと褒められてリインちゃんはすごく嬉しそう。
それから幼馴染の話とかして、私たちは観測基地から飛び立った。
†††Sideなのは⇒ルシリオン†††
――時空管理局本局・無限書庫
『ユーノ、ルシル。そっちのデータはどうだ?』
アースラのクロノから、俺とユーノへと通信が来た。
今俺たちが調査しているのは“レリック”と名づけられた秘匿級ロストロギアだ。
「もう解析を進めてる。なのはたちが戻る頃には出揃うよ。
でもやっぱりルシルが居るか居ないかで結構変わってくるよ」
『そうなのか? ユーノだけで十分な気がするが、なぁルシル?』
「んん? あぁそうだな。ユーノは優秀過ぎるからな。俺はあまり必要ないかも」
好き勝手言ってくれるクロノだが、ユーノが優秀なのは確かだ。
正直俺がいなくても大した問題はないと思う。
俺は無限書庫所属だというのに、武装隊か医療班としての時間の方がはるかに多い。
司書のクセして二等空佐なんて階級を持つ俺は、書庫内では結構浮いている気がする。
「はは、そんなことはないよ。ルシルの知識にはいつも助けられてる」
「そう言ってもらえると嬉しいよユーノ」
持つべきものはやはり男友達だ。
「はいよルシル、ユーノ」
アルフが俺たちのもとへと、何冊もの書物を抱えて運んできた。
「ありがとうアルフ」
「それにしてもその子供姿が完全に定着してしまったな」
その小さな体に抱えている書物を受け取って、アルフの頭を撫でる。
「まあね。フェイトの魔力を食わない状態を追求していったらこーなっちゃってな。
あたしはフェイトを守る、フェイトの使い魔だけど、フェイトはもう十分強いし。
sれにもうひとりじゃないしさ。ずっとそばにいて守るばっかりが守り方じゃないからな」
初めて会った頃に比べて本当に成長したなアルフは。
そういった考えが出来るまでになったこの子は、本当に良いフェイトの守護者だ。
「家のことやるのも案外楽しいし、来年にはクロノとエイミィも結婚する予定だし、子供とか生まれたら、もっと忙しくなるしね」
「へぇそうか、クロノとエイミィが結婚・・・・・って結婚!?」
『ア~ル~フ~。その話はまだヒミツだって言ったのに・・・・』
アルフから洩れたクロノとエイミィの結婚という情報に驚愕した。
だがそれは喜ばしいことだから、祝福しないといけないな。
モニターに映るエイミィの顔がハッキリと判るほどに赤くなった。
それはテレか、もしくはアルフが勝手に秘密を漏らしたからか。おそらく前者だろうな。
「何にしてもおめでとうクロノ、エイミィ」
「おめでとう。クロノもやっと決心したんだね」
『まぁ色々とな』
『・・・ありがとうユーノ君、ルシル君』
それにしても来年か。それまで俺とシャルは世界に残っていればいいんだが。
友人の大切な日を参加せずに消えるのだけは遠慮願いたいな。
『そ、それはそうとユーノ君とルシル君はどうなってんの?
なのはちゃんやフェイトちゃんとは何もないわけ?』
無理矢理話を変えたなエイミィ。
恥ずかしがる必要はないと思うんだけどな。
「え~と、なのはは僕の恩人で大事な幼なじみです。
友達ですけど、それだけですよ本当に」
なのはもそうだがユーノも全く自分の気持ちに気が付いていないらしい。
いつ二人の感情が友情から恋愛感情になるかは判らないが、当分先のようだな。
『ルシル君は? フェイトちゃんとは私たちが出会う前からの付き合いでしょ?
少しくらいはそういった感情はあるんじゃない?』
「・・・・確かにフェイトに対して特別な感情はある。いや・・・」
『おお!!』
『な、本当なのかルシル!?』
エイミィとクロノ、それだけじゃなくユーノやアルフまでが目を丸くして驚いている。
「でもそれは恋愛とかそういうのじゃない。何というか家族愛ってモノだ。
あの頃は妹のようなフェイトとアルフに幸福を、という思いでいっぱいだった。
だがもう二人には俺の代わり――フェイトたちを守ってくれるクロノたち家族がいる。
だから今の俺には、フェイトへの特別な想いが“あった”というのが正しく合うと思う」
想いは切り捨てていかなければならない。
どれだけ想おうが手にしようが俺は人間じゃないんだ。
『それはつまり、フェイトちゃんとはこれ以上の進展はない、ってこと?』
「そう捉えてもらって構いません」
エイミィの言葉に答えると、クロノとエイミィが盛大なため息を吐いた。
何やらコソコソと話しているようだが聞き取れない。
「ルシル。あたしはフェイトとルシルが一緒になってくれると嬉しい。
あたしにとってルシルも大切な家族だからさ」
アルフが少し悲しそうな顔でそう言ってきた。
俺はそれに答えることが出来ず、ただアルフの頭を撫でることしか出来なかった。
†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††
定置観測基地から発った私たちは、ロストロギアを受け取る予定である発掘地点へと向かっている。
『皆さんの速度なら、ポイントまでは15分ほどです。
ロストロギアの受け取りと、艦船の移動までナビゲートします』
通信士シャーリーからのナビを受けて空を翔る。
すると突然はやてが、「もう管理局入局6年やなぁ」だとか言ってきた。
思い出を語るのは歳をとった証拠だよ、はやて。とは口には出せない。
「中学も今年で卒業だしね」
「卒業後はきっと今より忙しくなるかな」
思えばここまで案外長い時間を過ごした。
この次元世界に召喚されて7年、私にとっては初めての長期契約だ。
だからこそ時々不安になる。どこまで私はみんなと過ごせるのか、と。
「私は長期の執務官任務も受けることになるし」
「私も教導隊の一員として、あちこち回ることになるね」
「私は卒業の少し前にミッドの地上にお引越しや。
ミッド首都の南側で、家族6人で暮らせる家。
えーカンジのトコを探し中や。決まったら遊びに来てなー」
今を生きるなのはたちには未来がある。
でも私にはもう戦いの永遠しかない。
どうして私は、今を生きていないのだろう?
「シャルちゃん? どうしたのシャルちゃん・・・?」
「なのは? どうしたって何が?」
気が付けばなのはたちが、私の顔を見て戸惑っている。
「シャルさん、泣いてるですぅ」
「え?」
リインに言われてようやく気づいた。
私はまた己の心の弱さゆえに泣いていたのだ。
「何でもないよみんな。それより見えてきた。あそこが・・・ってちょっとあれ!」
目を擦って何でもないと告げ、見えてきた発掘地点に意識を集中させる。
だけどそこで私たちを待っていたのは、黒煙を上げる遺跡だった。
「現場確認。機械兵器らしき未確認体が多数出てます!」
リインの状況報告を聞いた私たちは、なのはが救助担当、はやてとリインは上空で指揮、私とフェイトは遊撃担当とバラけた。
「中継! こちら現場! 発掘地点を襲う不審機械を発見! 強制停止を開始します!」
『本部に中継します!』
なのはとシャーリーとのやり取りの最中、機械兵器より攻撃が放たれた。
あれしきの攻撃なら、なのはの防御は絶対に抜けない。
「フェイト!」
――氷牙凍羽刃――
「うん! プラズマランサー・・・ファイア!!」
フェイトと私から放たれる攻撃は確かにヒットしたけど、ソレは未だ健在だった。
『中継です! やはり未確認! 危険認定。破壊許可が出ました!』
「了解! 発掘員の救護は私となのはちゃんで引き受ける!
フェイトちゃんとシャルちゃんは思いっきりやったって!」
「「了解!」」
私とフェイトはそれに答えて機械兵器へと攻撃を再開しようとする。
だけど、機械兵器よりフィールドエフェクトが発生する。
「まずは様子見ってことで。トロイメライ」
≪Leuchten Pfeil≫
“トロイメライ”を振るって、ロイヒテン・プファイルを一条放つ。
それは機械兵器へと当たる直前で掻き消えた。
「無効化フィールドってわけか」
≪Searched jummer field(ジャマーフィールドを検知しました)≫
“バルディッシュ”からも報告を受ける。
それにしても、
「AMF、アンチ・マギリング・フィールド。
AAAランクの魔法防御を機械兵器が使うなんて」
「あらら。結構なポテンシャル持ってるんだ」
機械兵器ごときが大層な能力を持っているものだ。
私は地面に降り立ち、“トロイメライ”を鞘に収めて対象を見据える。
『はわわッ AMFって言ったら魔法が通用しないってことですよ!?
魔力結合が消されちゃったら、攻撃が通らないですー!』
はやてとユニゾンしたリインから、念話が送られてくる。
でもその考えは少し甘いな~。
「リイン、ちゃんと覚えておいて。戦いの場で「絶対」なんてモノは決して存在しない。
どれだけ強力な相手や魔法があったとしても・・・」
私は鞘に納まった“トロイメライ”を居合いの構えのまま、機械兵器群へと疾走する。
――閃駆――
『ほえ?』
リインの少し間抜けな声が聞こえた。
私が立っていた場所に、私の残像がハッキリとあることにでも驚いているのかな?
これは生前使っていた純粋な身体能力(時々魔力補助)による超加速歩法。
歩法名“閃駆”。名のとおり、閃光の如き速さで駆ける体術。
フライハイト家の古文書に記されていたものを独学で会得した、私だけの力。
魔力補助なしでも使えることから、結構重宝したものだ。
それに魔力補助を使えば、風迅王が使っていた“神速”に匹敵するほどの速さを得られる。
成長した肉体のおかげで、ようやく使えるようになったのだ。
「1、2、3、4・・・」
鞘から抜き放った“トロイメライ”で、機械兵器群へと一太刀ずつ入れていく。
おそらくなのはたちには、いくつもの残像が舞っているように見えるはずだと思う。
「必ず何かしらの欠点がある、ということを、ね」
機械兵器群の間を通り抜け、静かに“トロイメライ”を鞘へと納める。
納めた瞬間、機械兵器が全機、音を立てて真っ二つとなり爆発炎上する。
『す、すごいですーー!! かっこいいですよシャルさん!!』
「さすが陸戦最強と謂われるだけあるなぁ」
「にゃはは、もう人間業じゃないよ」
「そうだね。しかも純粋な体術って言うんだから、ちょっと呆れるかも」
リインの興奮とはやての言葉には嬉しく思うんだけど、なのはとフェイトの言葉には何も嬉しさが湧かないよ。
それからフェイトが発掘員の人から、ロストロギアが入れられたケースを受け取る。
これでまずは一つ目の回収が終わったということだ。
しかしもう一箇所を任されていたのであろうシグナムから通信が来た。
その内容は発掘現場が跡形もなく吹き飛んでいたというものだった。
†††Sideシャルロッテ⇒ヴィータ†††
シグナムから応援要請を受けたあたしとシャマルは、シグナムとザフィーラに合流したんだけど、
「ひでえなこりゃ。完全に焼け野原だ。かなりの範囲に渡っているけど、汚染物質の残留はない。典型的な魔力爆発だな」
その惨状に気が滅入る。人が居なかっただけマシだけど。
それにしてもこんな場所にいると、あの日のことを思い出して嫌になる。
「ヴィータ、どうかしたか?」
「ザフィーラ」
背後まで来ていたザフィーラに気づかねぇなんて。
「別になんでもねぇよ。相変わらずこういう焼け跡とか好きになれねぇだけさ」
3年前のあの日、あたしがもう少ししっかりしていれば・・・。
「何を怖い顔をしているんだヴィータ? リインに見たら心配するぞ」
「うるせぇな、考え事してんだよ。つか撫でんな」
シャマルとの話も終わったのか、いつの間にかシグナムがそばまで来ていた。
それにも気づかないねぇなんてさすがにまずいな。
今はこっちのことだけを考えよう。
「そういやシグナム。一緒の任務って結構久しぶりなんだな」
「そうだな。我々みな、担当部署が離れてしまったからな」
何か話題が欲しくて咄嗟に口にしたけど、思えば見事にバラバラになったものだ。
「でも結局は家に帰れば顔を合わせるし、あんま関係ねぇけどな」
「緊急任務がない限り休暇は皆揃うしな」
ま、それがいいことだとも思うけどな。
そういう何気ない時間こそが幸せだって言うんだから。
「む」
「ザフィーラ?」
ザフィーラが何かを察知したのか遠くを見ている。
「森が動いた。座標を伝える。シャマル、調べてくれ」
中継と連絡を取って分かったのが、もう一ヶ所を襲撃した同系の機械兵器が、なのはたちの進行方向の先へと進路を取っているということだった。
『狙いはやはりロストロギアなのではないでしょうか』
「そう考えるのが妥当だな」
狙いはロストロギアと見て間違いないと結論が出た。
「主はやてとテスタロッサ、それにフライハイトとなのは。
この四人が揃って機械兵器ごときに不覚をとることは万に一つもないだろうが」
「運んでいる物がアレだものね。こっちで叩きましょう」
「ああ。観測基地! 守護騎士から二名出撃する。シグナムとヴィータが迎え撃つ!」
いきなりあたしの名前を出して、背中を叩いてきたシグナム。
かなり強く叩きやがったのか涙が出るほどイテェ。
「つうか、あに勝手に決めてんだよ」
「なんだ、将の決定に不服があるのか?」
「・・・ねぇけどさ」
文句はない。守るための戦いなら望むところだ。
あたしとシグナムははやてたちに連絡をとって、機会兵器掃討へと向かった。
機械兵器の進路へと先回りを終えたあたしとシグナムは、そろそろ現れるであろう機械兵器を待つ。
『特定の反応を追尾して、攻撃範囲にいるものを攻撃するのみのようです。
ですが対航空戦能力は未確認です。お気をつけて!』
「未確認なのはいつものことだ。問題ない」
中継基地からの報告にシグナムが答える。
未確認の機械兵器、これだけであの日のことをハッキリと思い出してしまう。
3年前のあの日の機械兵器も未確認だった。
全てがいつも通りで、笑って終われるはずの任務だったんだ。
誰もが認める無敵のエースがいつも通りに笑っていたから。
笑っていたから、あたしと、たまたまあたしらの部隊に出向していたセインテストはなのはの状態に気づかなかった。
いや、気づかなかったじゃダメだったんだ。
◦―◦―◦回想だ◦―◦―◦
「ゲホッ、ど・・・どうしよう・・・どうし・・・ゴホゴホ・・・」
「・・・なの・・は? 君は・・・無事なのか?・・・」
あたしが気づいたときには全てが終わっていた。
任務が終わっての帰還中に奇襲を受けたなのはは、今までの無理が祟ったのかいとも容易く撃墜されてしまった。
それを逸早く気づいたセインテストは、なのはに対する機械兵器の追撃をかばって、代わりに瀕死のダメージを受けた。
あのセインテストならまず起こりえない事態だった。
けど、それはあいつが普通の状態であればこそ、と付いちまうけど。
そう、なのはだけじゃなくセインテストも人知れず限界を超えていたんだ。
あたしが現場へと着いたとき、そこには機械兵器の残骸と倒れ付すセインテスト。
セインテストの隣で蹲って泣いている血だらけのなのはが居た。
「どうしよう・・・・ヴィータちゃん!?」
「おい、うそだろ。くっ、医療班!! 何やってんだよ!!
早く! 早くしねぇと死んじまうよ!!」
あたしはセインテストの腹に開いた穴を必死に押さえて出血を止めようとする。
縦に開いた穴。それは何かの刃物らしきモノで貫かれたということだ。
なのはだって酷い怪我なのに、セインテストのことばかりを気にしている。
「がはっ、大・・・丈夫だよ。この・・・程度で死ぬ・・・ような・・・」
「バカヤロー!! 喋んな!! お前死に掛けてんだぞ!!」
「それより・・・なのはは?・・・なのはは・・・・・無事なの・・・か?」
こいつは本当に大バカヤローだ。
こんなになってまで他人を心配するなんて、どこまでのお人好しなんだ。
「大丈夫だよ! ルシル君! 大丈夫だから、だい・・・じょうぶ・・・」
なのはは声が出せないほどに泣いてしまった。
だけどセインテストに心配させないためか、必死に嗚咽を堪える。
それを聞いたセインテストは意識を手放した。
それからようやく医療班が到着して、セインテストの治療を始めた。
ある程度の治療を行ってセインテストの意識が覚醒すると、あいつは自身の治癒魔法で重体だった自分を素早く治して2週間で復帰した。その時は本気で驚いたな。
でもその代償なのか、あいつから右目の光が失われてしまった。
◦―◦―◦回想終わりだ◦―◦―◦
あたしはもうあんな思いはしたくねぇ。
だからあいつらの邪魔をするようなヤツはすべて・・・。
「まとめてブッ潰す!!」
あたしらは機械兵器を無事に一掃してなのはたちと合流、アースラへと帰艦した。
†††Sideヴィータ⇒フェイト†††
「ただいま戻りましたー♪」
任務も無事に終了してアースラへと帰艦した私たち。
レクリエーションルームへと入ると、ものすごい料理の数に圧倒されてしまった。
母さんやアルフ、ルシルにユーノからの「おかえり」。
それを聞くだけで本当に嬉しくなる。抱きついてきたアルフの頭を撫でながら、母さんとルシルへと向かう。
「おつかれさまです母さん。ルシルも元気だった?」
「ええ、フェイトもお疲れ様」
「お疲れフェイト。ああ、体調の方なら問題はないよ」
ルシルとこうして直接会うのは一体いつ以来だろう。
休暇が重なっても「やることがある」って言って度々どこかの世界に行っていた。
エリオとキャロもルシルに会いたいって言っているんだけどなぁ。
また一緒に遊びに行きたいんだけど。今度の休暇、空けてくれると嬉しいな。
「俺のことより、今はゆっくりと食事を楽しんでくれ」
「え、うん・・・じゃあ、ルシル。またあとでね」
「ああ。またあとで」
私はルシルに言われるままになのはたちのもとへと向かった。
するとシャルがルシルのそばへと来て、すごく真剣な顔で話している。
けど二人は姉弟?なんだから以前のようにすごく気になったりはしないんだけど。
でもだからこそ、あんな真剣な顔で二人が話す内容が気になる。
「「おつかれ~♪」」
「ひゃっ?」
私がルシルとシャルに気を取られていると、なのはとはやてが私の頬に冷たいコップを押し当ててきた。
さすがにそれには驚いてしまって、変な声を出してしまった。
「もう、何するの? なのは、はやて」
少し怒り気味に言うと二人は笑いながら謝ってきた。
そうしたら私も何だか可笑しくなって笑ってしまった。
「どないしたんフェイトちゃん?」
「何かぼうっとしてたけど」
「え? ううん、何でもないよ」
二人が心配してくれるけど、大したことじゃないないから気にしないように言っておいた。
そう、これから先もずっとみんなでこうして楽しい時間が過ごせると思っていたから。
でもその時間は長くは続かなかった。
この二年後、ルシルとシャルは管理局を辞めて、私たちの前から姿を消した。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。