番外編:管理局に入ろうよ
†††Sideなのは†††
闇の書事件解決から一週間後、一月一日元旦。私たちはみんなで初詣に来ている。
メンバーは私、フェイトちゃん、アリサちゃん、すずかちゃんの四人。
はやてちゃんたちは、検査や面接などがあって今日は来れなかった。すごく残念。
「遅いな~。シャルちゃんとルシル君。何やってんだろ?」
あとはシャルちゃんと、シャルちゃんが無理矢理にでも連れてくるって言ってたルシル君の二人なんだけど・・・。
「ちょっと騒がしいわね。何かあったのかしら?」
「何か・・・可愛い、とか聞こえてるね」
アリサちゃんとすずかちゃんが向いている場所へと私たちも目を向ける。
そこに広がっている人だかりは、なんだかすごいかも。
「いたいた! ルシルの準備に手間取って遅くなっちゃったよ!」
人だかりの壁を掻き分けて現れたのはシャルちゃん。
そしてシャルちゃんが連れているのはすごく可愛い女の子・・・・あれ?
銀髪? 蒼い目と紅い目? ちょっと待って。いやいやいや、もしかして・・・ルシル君?
「お待たせ! どう? これ見ての感想は?」
「くっそ。こんな屈辱・・・初めてだ・・・」
今のルシル君の格好を見て、10人中10人が女の子だって言うと思う。
その綺麗な長い銀髪は、真紅のリボンで結ったツーサイドアップで、歩くたびに揺れてる。
そして体を包んでいるのは、膝下まである黒いケープ付のコートだ。
「「「可愛い❤」」」
「プ、フフフ、アハハハハハハハハ! ちょっ、アハハハ、似合いすぎでしょ!!?」
私とフェイトちゃんとすずかちゃんは、ルシル君のその姿を見て「可愛い❤」と一言。
アリサちゃんはツボに嵌ったのか、おなかを押さえながら笑い続けている。
「だから! こうなることが嫌だったから契約を切ろうとしたんだ!!」
「は~い、ルシルちゃん。今はそんな言葉遣いは禁止~」
ルシル君の頭を撫でながら微笑むシャルちゃん。
何か今のルシル君を見てると、
「男の子に・・・負けた」
妙な敗北感でいっぱいになった。
でもルシル君は男の子だから、やっぱり可愛いなんて言われたくないよね。
以前誰かに、男の子は「格好いい」という言葉の方が嬉しいって聞いたから、きっとルシル君もそのはずだ。
「いや~、いい仕事したわねシャル。でも今度は黒じゃなくて白でも攻めて行きたいわ♪」
「え? う~ん、ルシルの銀髪って黒だから栄えるんだけど。白か・・・・よし!」
「よし! じゃ・・・・なーーーーーーーーい!!!!」
神社に轟くルシル君の絶叫。
あぁごめんねルシル君。やっぱり私じゃ止められないよ。
「ル、ルシルっ。その・・・可愛いよすごくっ」
「っ!!」
「うわぁっ、ダメだよフェイトちゃん!!」
私は急いでフェイトちゃんの口を塞ぐけど、もう完全に今の聞こえているかも。
ルシル君は俯いて震えている。フェイトちゃんはフェイトちゃんで首を傾げてるし。
「・・・フェイト。男にとって、可愛いとは褒め言葉じゃないんだ」
「え? そうなの? でも本当に可愛いと思うんだけど」
私がフェイトちゃんの口から手を離した瞬間、フェイトちゃんは再度爆弾を投下した。
もうダメだ。今のは確実にルシル君に大ダメージを与えたはずだ。
それを見ていたすずかちゃんが、何とかフォローしようと必死になっている。
でも何も浮かばなかったのか戦線から離脱した。頑張ったよすずかちゃん。だからヘコんじゃダメだよ?
「(わ、私が何とかしないと)えっとルシル君、もう着替えよう? ね?」
「「ええぇぇぇぇ」」
シャルちゃんとアリサちゃんが抗議の声を上げる。
でもこれ以上はさすがにルシル君が気の毒だ。
止められらないなんて言っていられないよ。
「そ、そうだよ。ルシル君、着替えとか持ってたら着替えてきてもいいんだよ?」
「うん。シャルちゃんたちは私たちが何とかするから」
すずかちゃんが優しく話しかけた。
私も頑張って抗議を上げる二人を説得する、と決意を口にした。
「すずか、なのは・・・・ありがとう!」
「「「可愛い❤」」」
「っ!! し・・・し・・・死んでやるーーーーーーーっっ!!!!」
私とすずかちゃんの言葉がそんなに嬉しかったのか、すごい笑顔でお礼を言ったルシル君。
その笑顔が本当に可愛くて、つい「可愛い」ってまた言ってしまった。
ルシル君は「死んでやる」って叫びながら走り去って、声をかけてくる男の子たちを片っ端から沈めていっている。
だって今の笑顔は反則だよルシル君。
「あ~あ、行っちゃった。少し冷却時間もいることだと思うし放っておこう」
「「「ええぇぇぇぇ!?」」」
ルシル君をあんなのにしたシャルちゃんがルシル君放置宣言。
私とフェイトちゃんとすずかちゃんはそれに驚愕。
走り去った原因をつくった私たちが言えることじゃないけど、それは酷いよシャルちゃん。
「捜しに行って見つけたら着替え中でした、ていうのはイヤでしょ?
もし着替えを見られたら、今度こそルシル・・・・死ぬかも?」
「そうそう。ルシルが帰ってくるまで待ってましょ♪」
そう言うシャルちゃんとアリサちゃん。私たちはそれに従うしかなさそうだ。
私たちは空いているベンチへと座って、ルシル君を待つことにした。
「そういえばシャルちゃん。シャルちゃんって三年生までの留学・・・なんだよね?」
「うん」
シャルちゃんは一年間の海外留学生として、高町家にホームステイに来た。
それがもう終わろうとしているのがすごく悲しい。
「残念よね~。シャルってあたしといいコンビだったのに」
「確かに最凶コンビだったよね、シャルとアリサ」
「フェイト、何か変なこと考えなかった?」
「ううん! 別に何も!」
こうしてシャルちゃんと話せる時間も残り少ないんだ。
ユーノ君から、ルシル君も無限書庫の司書に誘われてるって話を聞いた。
だけど迷っているのか返事はまだしてないってことだ。
それだけじゃなくて、シャルちゃんを管理局に入れたくないってことも言っていたみたい。
そうなったらシャルちゃんやルシル君とはもう会えなくなっちゃう。
一生の別れにはならないと思うけど、それでも会う機会が少なくなるのは確かだ。
「でも寂しくなっちゃうね。シャルちゃんがいるとすごく楽しいのに」
「ありがとう、すずか。でも実はそれに関してある考えがあるんだ」
「「「「考え?」」」」
私たちが同時に聞き返す。それに関して、ということはこのまま海鳴市に残れる・・・・なのかな・・?
「まぁルシルが許してくれないかもしれないから確定ってわけじゃないけど。
そこのところは何とかするしかないかな、というか何とかする」
「はぁ? 何でルシルの許可が必要なわけ?
どう見てもあんたの方がルシルより立場が上じゃない」
「う~ん、まぁ人間時はそうなんだけどね。語るに語れないわけがあると言いますか」
そう言ってはぐらかすシャルちゃん。
やっぱり二人の間には、私たちの知らない何かがあるのかもしれない。
私やフェイトちゃんが出会う前からの知り合いだってことだし。
「でもそれが本当に出来たら、シャルもルシルもずっとこの街にいられるんだよね?
だったら管理局にも一緒に入れるようになるのかな?」
「私は海鳴市に残れるかもだけど、ルシルはどうだろう?
家族のいないノルウェーに帰って独り寂しく生きてくかもね」
「「え?」」
アリサちゃんとすずかちゃんが固まった。
あ、そういえばルシル君に家族がいないって教えてなかったけ?
「アリサちゃん、すずかちゃん。ルシル君って家族の人たちはもういないんだ。
私たちと会う前から一人暮らしだったんだって」
「そう・・・なんだ」
「だから家事が上手なわけね」
そう、ルシル君の異常な家事能力の高さはそこから来ているみたいなんだ。
どれだけの時間を独りで過ごしたのかは聞けなかったけど、それはきっと大変なこと。
「それと管理局入りは・・・さすがに分からないかな。
でも私は入るつもりだよ。なのはたちとこれからも一緒にいたいから」
「シャルちゃん」
「まぁ今からでも準備をしておこうかな。まずは私の家族を海鳴市に呼ぶことにする」
シャルちゃんの家族かぁ。
ホームステイ初日のシャルちゃんの様子からして何か嫌なイメージがあるけど。
時々連絡を取っていたみたいだし、きっと大丈夫だと思う。
それからすぐに着替えたルシル君が戻ってきた。
その顔は羞恥と疲労の色がいっぱいでした。ごめんね、女装させる前に助けてあげられなくて。
そして私たちは無事初詣を終えて、アリサちゃんのお家にお邪魔して楽しく過ごしました。
†††Sideなのは⇒フェイト†††
高町家、月村家、バニングス家、ハラオウン家(クロノは欠席だった)の四家合同の大旅行から帰っての二日後、冬休み最後の日。
今、私となのはは喫茶翠屋から、私のマンションへと向かっている最中だ。
ルシルとシャルは二人だけで話があるって言って、後から追いかけるとのことだ。
たぶん“あのこと”についてのことだと思う。
「Entschuldigung」
私となのはの前から一人の女性が手を振って歩いてきた。
年はエイミィくらいの十代後半で、シグナムのような髪型をした外国の人だ。
正直困った。一体なんて言ってるのか分からない。
「Guten tag. Darf ich Sie etwas fragen?」
「え~と、その・・・・『フェイトちゃん、この人なんて言ってるか分かる?』」
『ごめんなのは。私も分からない。シグナムたちが使ってる言葉に似てるけど』
私たちが困っているのを見たその女の人が「Verzeihung」と言った。
そして、
「ごめんなさい。つい私の国の言葉で話しかけて。少し聞きたいのだけど・・・いいかな?」
「「え?」」
その女の人は日本語で話しかけてきた。よかった。これなら分かるよ。
「あれ? もしかして日本語間違ってる?」
「いえ! 分からない言葉から急に日本語になったので・・・その」
「ちょっと驚いただけで」
「そっか! よかったよ!」
その女の人が笑うと、うさぎの耳のように立っているリボンがゆらゆらと揺れた。
「あの、聞きたいことがあるってことですけど?」
なのはは恐る恐る聞いている。すると女の人は少し困ったような顔をして話した。
「うん。実はね、道が判らなくて困っていたんだ。海鳴市藤見町の―――」
なのはは女の人が持っている手帳のようなものを見せてもらっている。
すると何か驚いたような表情になった。どうやら知っている住所みたいだ。
「ここ、私の家なんですけど・・・」
「そうなの!? あ、もしかして・・・高町・・・なのは、ちゃん?」
その人はなのはからそう聞いて驚き、次になのはの名前を口にした。
そして今度は私を見て「で、君がフェイト・テスタロッサちゃん・・・かな?」と聞いてきた。
なのはと二人して「はい」と頷くと、
「Fruet mich, Sie kennenzulernen!!
Mein Name ist Chelsea Freiheit. Ich freue mich, Sie zu sehen!!」
と、また意味の分からない言葉攻めを受けた。
でもなんだか嬉しさで興奮しているみたい。
私となのはが困惑の表情を浮かべていると、その人はまた謝った。
「ごめんね! 興奮すると私の国の言葉が出るみたい。
さっきは“はじめまして。チェルシー・フライハイトです。会えて嬉しいよ”って意味なの」
「フライハイトってまさか」
「シャルのご家族の方・・・ですか?」
「そ! チェルシー・フライハイト。いつも妹がお世話になっています!」
†††Sideフェイト⇒ルシリオン†††
「いや~旅行でも大活躍だったねルシル♪」
「うっさい、バカ女。また女装なんて命令出したら無理矢理にでも英雄の居館に叩き込むぞ」
旅行先でも俺を女装させて見世物にした悪魔コンビ、シャルとアリサ。
いつか何らかの方法で逆襲してやる。
「それで、話って何だ?」
「え? うん。えっと・・・ね。う~んと・・・・」
シャルにしては歯切れが悪すぎる。
それからもハラオウン家に着くまでそんなことを繰り返してばかりだった。
結局シャルは何も言わないまま、ハラオウン家に着いてしまった。
「「お邪魔します」」
『どうぞどうぞ入って! シャルちゃん、来てもらったよ!』
インターフォンを押すとエイミィの声が届く。
(来てもらった? 誰か客人でもいるのだろうか?)
シャルに視線を向けると、シャルは俺の視線から逃れるように玄関の扉を開けて入った。
俺も続いてハラオウン家の玄関に入ると、複数の話し声が耳に届く。
分かるのはフェイトとなのは、それにエイミィ。クロノは今日が休みらしいから居るんだな。
シャルは俺へと一瞬だけ視線を向けて、リビングへと続くドアを開けた。
リビングへと入ると、そこで俺は信じられない光景を目にした。
「な・・っ!? は、花の姫君!!?」
フェイトたちと話し込んでいるのは見間違いでは済まされない存在。
かつての強敵、第九騎士“花の姫君チェルシー・グリート・アルファリオ”だった。
俺の叫びを聞き、みんなが「花の姫君?」と首を傾げている。
俺が臨戦態勢に入ろうとしたとき、
「久しぶり姉さん」
「うん! 久しぶりだねシャル!」
「姉ーーーーーーっ!!?」
シャルが“花の姫君”を姉と呼び、そばまで歩いていった。
おいおいおいおいおいおい、どういうことだこれ?
「久しぶりルシル! 妹がお世話になって、ありがとね!」
“花の姫君”が俺に手を振りながら微笑んでいる。
君、そんなキャラじゃなかったよな大戦時。というか話が見えない。
「ルシル君ってシャルちゃんの家で少し過ごしてたって聞いたよ」
「よかった。ルシルがずっと独りで過ごしてたんじゃないってわかって」
なのはとフェイトがそう言うが、俺は全然知らないそんな事実。
“花の姫君”がこの世界にいることすらたった今知ったくらいだ。
『おいシャル。どういうことだこれ?』
一人だけ真剣に警戒しているのも馬鹿らしくなり構えを解く。
俺は“花の姫君”の存在を知っていたであろうシャルを問いただす。
『これが話したかったこと・・・かな。前に言ったよね。私には家族が用意されてるって。
あぁ安心して、チェルシーには大戦の記憶はないし、もちろん魔術も使えないから。
父も母もいるけど、誰だか知ったら驚くよルシル。あまりにイメージが違いすぎて』
リンクを通して説明を求めた結果がこれだ。
シャルの言う父も母もどうせ星騎士シュテルン・リッターの誰かなんだろう。
年から考えて第一か第二が父、母は誰になるだろうか? 若い女性ばっかだったしな。
『父が第一騎士“風の騎士公オペル”。母は第三騎士“鮮血姫シリア”。どう驚いた?』
『・・・・・風の騎士公は何となく解るが、あの鮮血姫が母親?
出来の悪い家族ごっこみたいだな』
実際に家族ごっこだろう。騎士公、鮮血姫、花の姫君。
与えられた役割と記憶を持つ世界が用意した人形。
何故ここにいるのか気になって仕方ないが、フェイトたちが俺の様子に戸惑っているため、まずは、
「えっと久しぶりです。チェルシーさん」
当たり障りのない挨拶。すると“花の姫君”が抱きついてきて、
「チェルシーさん、なんて固いな~♪ お姉ちゃんって呼んでいいんだよルシル♪」
「はい?」
「突然ですがルシル。あなたをフライハイト家の養子にします」
「ふーん、俺を養子ねぇ~・・・・は?・・・・・・はあああぁぁぁーーーーーーーッ!!?」
本当に突然とんでもないことを言い出したシャル。
俺をフライハイトの子供にして一体どうするつもりだ?
「だっていつまでもリンディ艦長の家でお世話になるわけにはいかないでしょ?」
「僕や艦長はそれについて気にしていないが」
「う~ん、私もこのままルシル君を住まわせてもいいと思ったんだけどねぇ」
クロノとエイミィが俺に向けてそう口にする。
いや、しかしシャルの言うとおりなのは間違いない。
このままハラオウン家に世話になり続けるのはさすがに控えたい。
用意されている家に帰るのも一つの手だが、今更独りというのは少し辛いかもしれない。
「もう必要な書類は用意してあるの。姉さん」
「ん。これだよシャル」
チェルシーは膝に置いていたバッグから何枚かの書類を出してテーブルの上に置く。
ここまで俺に悟られずに用意しているとは、これは界律の力を借りているな。
「あとはルシルのサイン待ち。すぐに決めなくてもいい。ううん、本当はすぐ決めてほしい」
シャルが強い視線を向けてくる。
何をそこまで必死なのかは理解できないが、フライハイト家の人間としてドイツに行くのも悪くはないな。
「・・・判った。フライハイトの名、頂戴する」
「そんな簡単に決めていいのかルシル?」
「ああ。このままだろうとフライハイト家に入ろうと大差はない。
これ以上ハラオウン家に世話になるわけにはいかないからな。
だったら考える必要はないと思う」
俺は差し出された書類にサインをした。フェイトの表情が陰ったのが判った。
別に永遠の別れになるわけでもなし。そんなに悲しそうな顔をするな。
シャルと家族になるだけなら大した問題じゃない。
「よろしくね、弟君♪」
“花の姫君”が俺の頭を撫でた。
頭を撫でられるなんて随分と久しぶりな気がした。
そして彼女は書類をしまい、意気揚々とハラオウン家を後にした。
†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††
ルシルは確かに書類にサインをした。
それをしっかり確認した私は心の中でガッツポーズを決める。
「よし! これでこれからもルシルと一緒に海鳴市で暮らせるよ!!」
「「「おおおおーーーっ!!」」」
私の計画通りに事が進み、なのはとフェイト、アルフから拍手が巻き起こる。
しかし今の状況が理解できていないルシルは困惑しているようだ。
「ちょっと待て!! 何の話だそれ!?」
「あれ? 言ってなかったっけ? フライハイト家は三月からここ海鳴市に引っ越します♪」
「言ってねぇぇぇぇーーーーッ!!!」
すでに“界律”から住所変更の許可はもらっている。
というより“ジュエルシード”の一件が終わった時点で、能力以外の制限は取り払われている。
だから海鳴市に住もうが管理局に入ろうが何も文句は言われないのだ。
「ルシルには悪いけどもう決めたから。
あと四月から正式に聖祥小学校へ入ることにしたの。
だからこのまま海鳴市に住むことになる。黙って決めて本当にごめんなさい。
でもなんて言われても私は今の生活を続けたい」
「はぁ・・・・。で、話はそれだけか?」
「・・・それとねルシル。私、管理局に入りたい」
これが最も重要な件だ。このためにずっと計画を練っていたのだから。
しばらくの沈黙のあと、ルシルが顔を上げて静かに口を開いた。
「別にいいんじゃないか? こんな騙すようなことしなくても最初から言ってくれればよかったじゃないか」
「・・・・え? いいの? 本当に?」
予想外の事態だ。もう少し反対を受けると思っていた。
そのためにルシルを説得するための手段をいろいろと用意したのだから。
それなのにこのあっさりさ。あまりにあっさりしすぎて逆に疑いたくなる。
「ああ。本当にいいよ」
そう言ってルシルは微笑んで私の頭を撫でた。
どうやら本当に認めえくれたようだ。これで私の管理局入りが決定した。
「ルシル、以前にも言ったとおり、君にも管理局に入ってもらいたいんだが?」
「あのっ! 私もルシルと一緒に頑張りたいですっ」
「わ、私もみんなで頑張りたいですっ」
クロノに続いてなのはたちもルシルを管理局に誘う。
その真剣な表情を見て、私も真正面からお願いしてみる。
「ルシル、一緒にやろう?」
「・・・・そうだな。海鳴市に住むことになるんならそれもいいかもな。
シャルたちが学校に行っている間は暇だろうし。
それに無限書庫には惹かれていたから司書として働くのも悪くはないか」
これもまたあっさりと言うルシル。
半ば投げ遣りな感じがするけど、ルシルも管理局に入るなら面白くなりそうだ。
「本当かルシル?」
「ああ。三月まではこの家で、それからは管理局で世話になるぞ、クロノ執務官」
「わぁ! やったねフェイトちゃん!」
「うんっ!」
「早速艦長に連絡しておかないとね!!」
あれよあれよと事が進んでいく。
こうして私とルシルの管理局入局が決まった。
「そういえば俺とシャル、どっちが上だ?」
「上って?」
「兄か姉」
ルシルの何気ない疑問。家族になったことで生まれた一つの問題。
私かルシル、どっちが上になるか。
「やっぱり私でしょ」
「君を姉と呼べと? 冗談」
「えっと二人の誕生日っていつなの?」
私とルシルの会話を聞いていたなのはが提示した解決法。
「「4月12日」」
「シャルとルシルって同じ誕生日・・・なんだ」
それからどちらが上になるか真剣に口論した。
それは6年経とうが解決しなかった激しく馬鹿馬鹿しい問題だった。
割とあっさり入局させました。
シャルは初めから入る気満々で、ルシルは無限書庫に惹かれていたためですね。
チェルシーの使っていた言語はドイツ語です。
Entschuldigung=エントシュルディグング=すいません(呼びかけ)
Guten tag=グーテン・ターク=こんにちは
Darf ich Sie etwas fragen?=
ダルフ・イッヒ・ズィー・エトヴァス・フラーゲン?=お尋ねしてよろしいですか?
Verzeihung=フェアツァイウング=ごめんなさい
Fruet mich, Sie kennenzulernen=
フロイト・ミッヒ、ズィー・ケネンツーレルネン=はじめまして
Mein Name ist Chelsea Freiheit=
マイン・ナーメ・イスト・チェルシー・フライハイト=私の名前はチェルシー・フライハイトです
Ich freue mich, Sie zu sehen=
イッヒ・フロイエ・ミッヒ、ズィー・ツー・ゼーエン=お会いできて嬉しいです
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