旅立ち
†††Sideフェイト†††
私となのはとはやての三人の同時砲撃によって、暴走していた防衛プログラムは崩れた。
その残骸の中心にはコアが黒く輝いている。
そのコアを破壊する役目のシャルが、足場となっていた魔法陣から跳んだ。
そして私は、シャルの後ろに立っていたルシルが、口から血を吐いて膝をつくその瞬間をこの目で見てしまった。
「ルシル!?」
私はすぐにルシルの元へと飛んで、魔法陣へと降り立ってルシルに近づく。
「大丈夫ルシル!? ルシル!!」
「あ、ああ。だ、大丈夫だよフェイト。心配性・・・だな」
私の頭を撫でたあと、魔法陣の上で仰向けになった。
口に付いている血を手の甲で拭って、二、三度深呼吸をした。
「大丈夫かルシル!?」
クロノを初めとして、みんなが私とルシルのいる魔法陣に来た。
ルシルは左手を上げて「大丈夫だ」と言って左手を振った。
「そうか。ユーノ、治癒魔法をかけてあげてくれ」
「うんっ」
ユーノがルシルに治癒魔法をかけている中、なのはとシャルも魔法陣へと降り立った。
シャルは寒さに震えながらもちゃんと立っているから、ルシルよりかは調子は良いみたい。
「シャマル、シャルちゃんにも治癒魔法お願いや」
「はい!」
シャルの方も一応、シャマルから治癒魔法をかけてもらった。
『コアの完全消滅を確認!! みんなお疲れ様でした!!
このあと残骸の回収とか、市街地の修復とか色々あるんだけど。
みんなはアースラに戻って一休みしてって!』
エイミィからの通信で、ようやくみんなの顔から緊張が消えた。
「やったなシャル、ルシル」
「「当然」」
クロノはシャルがハイタッチしたあと、体を起こしたルシルともハイタッチしていた。
ルシルの大丈夫そうな顔を見た私も、なのはやはやてとハイタッチを交わした。
長い長い夜の終わりだ。
「あ、そういえばエイミィさん。アリサちゃんととすずかちゃんはどうなったんですか?」
『うん。被害が酷い場所以外の結界解除してるから、元いた場所に戻ってもらったよ。だから安心して』
よかった。アリサとすずかのこともずっと気になっていたから。
「ふぅ、これで一件らく――「はやて!?」――・・っ!?」
シャルの声を掻き消したのはヴィータの叫び。
私たちがヴィータの方へと向くと、シグナムに抱えられた苦しそうにしているはやてが居た。
「はやて!? はやて!? はやて!」
雪の降る夜空に、ヴィータの悲痛な叫び声だけが響いた。
「ぅく、クロノ! 彼女を早くアースラへ!」
「ああ! エイミィ、今すぐアースラへ転送を!!」
ルシルの一声にクロノが答え、私たちはアースラへと向かった。
†††Sideフェイト⇒ヴィータ†††
あたしら守護騎士は、アースラとかいう管理局の艦の一室を借りて集まっている。
ベッドの上で眠るはやてを見守るようにして。
「やはり破損が致命的な部分にまで至っている。
防御プログラムは停止したが、歪められた基礎そのままだ。
私は――夜天の魔導書本体は遠からず新たな防御プログラムを生成し、また暴走を始めるだろう」
はやてから新しい名前を貰った夜天の魔導書“リインフォース”がそう告げた。
「やはりか」
「修復は出来ないの?」
「無理だ。管制プログラムである私の中から夜天の書本来の姿が消されてしまっている」
修復出来れば何とかなると、シャマルと同様にあたしも思った。
だけどリインフォースはそれは不可能なことだって言って首を横に振った。
「元の姿が分からなければ戻しようもない、というわけか」
「そういうことだ」
何でこうも上手くいかないことばかりなんだろう。
まるであたしたちは世界に嫌われているみたいだ。
「主はやては・・・大丈夫なのか?」
「何も問題はない。私からの侵食も完全に止まっているし、リンカーコアも正常稼動している。
不自由な足も、時を置けば自然に治癒するだろう」
それを聞いたあたしらは安堵でいっぱいになる。
はやてはこれでもう大丈夫。だけど・・・
「そう。じゃあ、それならまぁ良しとしましょうか」
「ああ、心残りはないな」
「防御プログラムがない今、夜天の書の完全破壊は簡単だ。
破壊しちゃえば暴走することも二度とない。代わりにあたしらも消滅するけど」
そう、そこにあたしらはいない。
折角はやてを助けられて、リインフォースも一緒に揃うことが出来たのに、はやてとあたしらの、あの時間はもう二度とやってこない。
「すまないなヴィータ」
「何で謝んだよ? いいよ別に。こうなる可能性があったことくらい、みんな知ってたじゃんか」
こうなる覚悟はしていた。でも実際そうなるとすごく辛い。
もっとはやてと話して、はやての美味しいご飯食べて、これからもずっと一緒に・・・
ずっと一緒に同じ時間を過ごして生きたかった。
それがあたしの本音で、そう思わずにはいられない。
「いいや、違う」
リインフォースがそう一言。あたしらは一斉にリインフォースへと視線を向けた。
「お前たちは残る。逝くのは・・・私だけだ」
†††Sideヴィータ⇒シャルロッテ†††
私とルシルは治療を完全に終えて、なのはたちが待っている部屋へと来た。
クロノがみんなに何か話しがあるとのことだったけど、一体何なんだろうか?
私とルシルも椅子へと座り、待たせていたクロノから話を聞いた。
その話の内容というのは“夜天の書”を破壊するというものだった。
「闇の書――いや、夜天の書の管制プログラムからの進言だ」
「管制プログラムって、なのはたちが戦ってた?」
「ああ」
アルフの疑問にクロノが答えた。
暴走していた部分が無くなったのだから、そんなことする必要のないことと思うんだけど。
「防御プログラムは無事破壊できたけど、夜天の書本体がすぐにプログラムを再生しちゃうんだって」
「なるほど。再びあの厄介な力が戻るわけか。確かにそれはまずいな。
もう一度はやてが侵食されたら、今度こそはやての命の保障がない。
それを危惧しての破壊の申し出、というわけなんだな」
「うん。そういうこと」
「だから夜天の書は、防御プログラムが消えているうちに、自らを破壊するように申し出たんだ」
そんなのってない。やっとはやてと逢えたというのにあんまりじゃない。
今の話を聞いた私となのはとフェイトは沈黙する。何か別の良い方法はないのか、って。
「で、でも! それじゃシグナムたちも消えちゃう!」
「そ、そうだよ!」
「いや、私たちは残る」
なのはとフェイトの叫びに近い声に答えたのは、守護騎士のリーダー、シグナムだった。
シグナムのそばにはザフィーラ、シャマルがいる。
ここにいないヴィータはたぶんはやての側についているんだろう。
「どういうことか聞いても?」
「防御プログラムとともに、我々守護騎士プログラムも本体から解放したそうだ」
ルシルの問いにザフィーラが答える。
消える必要のある本体から切り離されたのなら、一緒に消えることはない・・・か。
『ねぇルシ――『無理だ。今の俺じゃ夜天の書は救えない』――・・・そっか』
ルシルなら何とか出来ると思って聞いてみたけど、やっぱり無理だそうだ。
本当はリインフォースも残してあげたかったけど。
「それでリインフォースから、なのはちゃんたちにお願いがあるって」
「お願い?」
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
私とフェイトちゃんは、リインフォースさんの待つ公園へとやって来た。
ここでリインフォースさんからお願いされたことを叶えるために。
「あぁ来てくれたか」
そして街を見渡せる高台にリインフォースさんは居た。
「リインフォース・・・さん」
「そう呼んでてくれるのだな」
柔らかな微笑みだった。これから始めることを考えると心が痛んだ。
「あなたを空に還すの、私たちでいいの?」
「お前たちだからこそ頼みたい。お前たちのおかげで、私は主はやての言葉を聞くことが出来た。
主はやてを食い殺さずに済み、騎士たちを生かすことが出来た。
感謝している。だから最後は、お前たちに私を閉じてほしい」
これこそがリインフォースさんが私たちにお願いしたこと。
私とフェイトちゃんの二人の力で、リインフォースさんを天へと送る。
シャルちゃんも入っていたけど、デバイスの都合上で私とフェイトちゃんの二人になった。
「はやてちゃんと・・・お別れしなくてもいいんですか?」
「主はやてを悲しませたくないんだ」
「・・・リインフォース」
「でも、そんなのなんだか悲しいよ」
確かに会わなければ悲しみは少ないかもしれない。
でもやっぱり最後だからこそ・・・はやてちゃんとお別れしてほしい。
「お前たちもいずれ分かる。海より深く愛し、その幸福を守りたいと思う者と出逢えれば、な」
そう言ってリインフォースさんは微笑む。
私にもいつか来るんだろうか、そう思える日が。
私たちに遅れて、山道の向こうからシグナムさんたちが来た。
私たちと一緒にリインフォースさんを天へと送るために。
でもそこに一緒に見送るはずのシャルちゃんとルシル君の姿はなかった。
一体どこに行ったんだろう?
「・・・あの子達はいないのだな。あの二人にも礼を言いたかったのだが・・・残念だ。
少しばかり心の残りだが仕方がない。そろそろ始めよう」
もう何やってるの!? シャルちゃん! ルシル君!
姿を見せない友達に向かって怒る。
†††Sideなのは⇒はやて†††
「ん・・・ん?」
目が覚めると、そこはわたしの部屋のベッドの上。
いつの間にか送ってもらったみたいや。体を起こした瞬間、胸が急に痛み出した。
「リイン・・・フォース?」
リインフォースと繋がっているからかな。
今からリインフォースがやろうとしていることが脳裏に浮かんだ。
「あかん・・・こんなの!!」
わたしはベッドから車椅子へと移り、部屋を飛び出す。
そのまま家の外へ出ると、薄着には辛い寒気がわたしを襲った。
「うっ」
あまりに急いどったために防寒着とか忘れとった。
「そんなカッコじゃ風邪ひくよ。ルシル」
「ああ。ほら、これなら大丈夫だろ?」
まるでわたしを待ってたように家の外におったんは、シャルちゃんとルシリオン君の二人やった。
ルシリオン君は、自分の着てた黒いロングコートをわたしに差し出した。
「え? あ、ありがとう。ルシリオン君・・・」
わたしはそれを受け取って、コートに手を通して着た。
すごく温かくて、ほのかな香水の匂いが鼻をくすぐった。
ルシリオン君が着とったコートをわたしが着たから、ルシリオン君はどうするんやろ?と思って見てみると、どこから取り出したんかいつの間にか別のコートを着とった。
「?・・っ!・・・そうやなくて! シャルちゃん! ルシリオン君!
わたしをリインフォースのトコまで連れてってくれやんか!?」
それより今はリインフォースのことが心配や。
わたしに黙って、勝手にこんなことした新しい家族のことが。
「うん。そのために待ってたから。ルシル、マスター命令。車椅子よろしく」
「・・・・ひゃぁ!?」
いきなりシャルちゃんがわたしを横に抱えた。
俗に言うお姫様抱っこってやつや。
「了解。さっさと切っておけばよかったな・・・契約」
「文句は聞かない。蒐集されていたことを黙っていた罰、一発殴るの代わり。しばらく私の命令に従え」
ルシリオン君は、わたしの座っていた車椅子を軽々持ち上げて肩に担いだ。
シャルちゃんの言葉を聞いたルシリオン君は「はい、喜んで」と泣く泣く言う。
「それじゃ飛ばすから、しっかり摑まっててよはやて」
「あ、うんっ!」
一瞬の浮遊感、直後にリインフォースやみんなのいる海鳴公園へと空を翔る。
早朝とはいえ、人も疎らに歩いているのに飛んでもいいん?と訊いてみたら、
「私とルシルの周囲に認識阻害の結界が張ってあるから。
視覚で捉えていても脳が認識していない。つまり実際には目に入っていても見えていない、というわけ」
ということらしい。透明人間のようなものやとわたしは思うことにした。
「・・・なんで・・・なんでリインフォースはこんなこと」
わたしはそう口にした。独り言やったけど、シャルちゃんはそれに答える。
「彼女が優しいから、でしょ。はやてとの別れで、あなたを悲しませたくないって」
「いやや、そんなん。わたし・・・わたし、あの子に何もしてあげてへん。
それに絶対にお別れなんてさせへん・・・!」
これからもずっと一緒に生きていける。
そう思っとる。だからお別れなんて認めへん。
「・・・・そう・・・だね」
シャルちゃんが悲しそうに呟いた。
それからしてすぐ、公園が見えてきたところでルシル君が、
「まずい。もう準備が出来ている。はやて、彼女の名前を呼んであげてくれ」
「え? うん! リインフォースーーーーッ!!」
わたしの今出せる一番の声。力いっぱい家族の名前を呼んだ。
みんな、空から降りてきたわたしたちを見て驚いてる。
先に降り立っていたルシリオン君が置いてくれた車椅子へと、シャルちゃんが優しく座らせてくれた。
「はやて!!」
「動くな! 動かないでくれ。儀式が止まる」
ヴィータがわたしに駆け寄ろうとしたんを、リインフォースが止める。
そしてリインフォースは、わたしの後ろにいるシャルちゃんとルシリオン君を黙って見た。
「お前たちがいなかったのは、主はやてをここに連れてくるため・・・だったのだな」
「そう。初めからはやてをここに連れてくるって、ルシルと決めてた。
ねぇリインフォース。あなたは別れを告げるとはやてが悲しむと思ったから、こうして黙って逝こうとしたんでしょ?
でも目を覚まして、そこにあなたがもういないと知ったら、はやてが余計に悲しむって分からなかった? それとも考えなかった?」
「それは・・・」
シャルちゃんの言葉を聞いたリインフォースは押し黙った。
「リインフォース、こんなんやめて。破壊なんて、リインフォースが逝かんでもええ。
わたしがちゃんと抑えるから、だから・・・こんなん・・・せんでええ!!」
リインフォースは困ったような、悲しんでいるような苦い顔をした。
「主はやて、よいのですよ」
「っ! いいことなんて・・・いいことなんてあらへん!!
そんな辛そうな顔で・・・なにがいいんや!?」
あんな悲しそうな微笑みを浮かべても何も納得できへん。
「・・・随分と長い時を生きてきましたが、最後の最後で私はあなたに、綺麗な名前と心を頂きました。
騎士たちもあなたの傍にいます。何も心配はありません」
わたしはそんなんが言いたいのと・・・聞きたいのとちゃう。
「ですから、私は笑って逝けます」
「話し聞かん子は嫌いや!! マスターはわたしや!! 話し聞いて!!
わたしがきっと何とかする! 暴走なんかさせへんて約束したやんか!!」
「その約束は、もう立派に守っていただきました」
その約束は、あの時だけやのうてこれからもずっとって意味や。
だからわたしは守ってない、守りきっていない。
「リインフォース!!」
「主の危険を払い、主を守るのが魔導の器の務め。
あなたを守るための最も優れたやり方を、私に選ばせてください」
「そやけど・・・ずっと悲しい思いしてきて・・・やっと・・や・ぅく・・救われたんやないかぁ!!」
「私の意志は、あなたの魔導と騎士たちの魂に残ります。私はいつもあなたの傍にいます」
「そんなんちゃう! そんなんちゃうやろ! リインフォース!!」
たとえそうでも、そこにリインフォースが居らんと意味ない。
だからそんなん認めへん。
「駄々っ子はご友人に嫌われます。聞きわけを」
どっちが駄々っ子や。マスターのわたしの言うことを聞かんのはリインフォースの方や。
「リインフォース! わたしは――!?」
リインフォースのところへと行こうと車椅子を進めるんやけど、何かに引っ掛かって車椅子ごと転倒してしまった。
「「はやて!」」
シャルちゃんとルシリオン君がわたしを抱え起こしてくれた。
わたしは二人に感謝の目を向けてから、リインフォースへと向き直る。
「これから・・・やっと始まる・・・これから、うんと幸せにしてあげなあかんのに!!」
「・・・はやて」
シャルちゃんが強く手を握ってくれる。
リインフォースはゆっくりとわたしのところへと歩いてきた。
わたしの前で片膝をついて、そっとわたしの頬に手を添えてくれた。
以前、わたしがリインフォースにしてあげたように。
「大丈夫です。私はもう世界で一番幸福な魔導書ですから」
リインフォースの綺麗な微笑み。
リインフォースはもう・・・止まらへん、止められへん。
「主はやて、一つお願いが」
リインフォースの最後の願い。わたしはなんだって聞いてみせる。
「私は消えて、小さな無力な欠片へと変わります。
もしよければ、私の名はその欠片ではなく、あなたがいずれ手にするであろう新たな魔導の器に贈っていただけますか?
“祝福の風リインフォース”。私の魂はきっとその子に宿ります」
「リイン・・・フォース」
「はい、我が主。それからフライハイト、セインテスト。お前たちもありがとう。
主はやてとの別れの時間を与えてくれたこと、感謝する」
「いつまでもはやてを見守ってあげて」
「ああ」
“リインフォース”を受け継ぐ子。それがリインフォースの願いなら、わたしは・・・。
リインフォースは再び魔法陣の中央へと戻る。これで本当にお別れになる。
「主はやて。守護騎士たち。そして小さな勇者たち。ありがとう。さようなら」
リインフォースは最後にとても綺麗な笑顔で、その長い長い旅路を終えた。
天へと上る光の先、その空から何かがゆっくりと降ってきた。
わたしはシャルちゃんに支えてもらいながら、それをしっかりと手にする。
「リイン・・・フォース」
両の手の平の上で輝く十字架。わたしはそっと胸に抱いた。
†††Sideはやて⇒ルシリオン†††
リインフォースを送り、みんなと別れた俺とシャルはアースラへと来た。
訓練室の一室で向き合う俺とシャル。
「ねぇ、もうこのままでいいんじゃないの?
毎回毎回、状況の悪いときに契約なんてしてられないよ?」
「イヤだ。どんな命令を下されるかわかったものじゃない。
君が滅茶苦茶な命令を下す前に、なんとしても契約を・・・切る!!」
それだけは絶対に阻止。
俺はフェイトから、海鳴市引越しの日にシャルとアリサの話の内容を教えてもらっている。
生まれてくる性別が間違ってるだの、女装させれば面白いだの、それは恐ろしい内容だった。
今更それを思い出した俺は、すぐさま契約破棄の儀式を行うことにした。
だがそれをさらりと拒否したシャル。
もしこのままシャルがマスターとなれば、俺の男としての尊厳が粉々に砕かれる日が来るかもしれない。
そうなったら俺はもう生きていけない。
「分かった。なら戦って決めよう。私が勝ったら契約続行、ルシルが勝ったら契約破棄、これでいいよね?」
「受けて立つ!!」
こうなると薄々思っていたからこそのアースラだが。
戦うとなるとやっぱり激しく面倒だ。
「トロイメライ――≪Jawohl, Meister≫――さてと、いくよルシル」
魔導師として俺と戦うか。なら俺もそれに付き合わないといけないだろう。
「勝敗はギブアップ、もしくは気絶させたほうが勝利。
戦闘中にお互いの魔力を引き出すのはアウト、もちろん俺に命令するのもアウト」
「分かってるって。そんなことしたら瞬殺になっちゃうじゃん♪」
その天使のようで、実は悪魔のごとき笑みが激しく恐ろしい。
“トロイメライ”を軽く振っているシャルは余裕で満ちている。
「その余裕、粉々にしてやる!!」
「返り討ちだよルシル!!」
――雷牙閃衝刃――
――燃え穿て、汝の浄炎――
このあと朝まで戦い続けたが、お互いの魔力切れということで勝敗は着かなかった。
残った結果は、もうしばらくは現状維持と言う俺にとっては最悪な展開だけだった。
やばい、泣きそうだ。
そしてシャルは朝早く海鳴市へと戻った。
今日、なのはたちがご家族と友人のアリサ、すずかに真実を明かすからだそうだ。
あとで聞いた話だと、やっぱり最初はみんなが驚いていたが、受け入れてもらったようだ。
これでもうフェイトたちは大丈夫だろう。
ならば、あとは俺とシャルの今後についてだが・・・・。
「どうするかな~」
まぁ何とかなるだろう。これまでもそうだったように、ただ流れる水のごとく。
この身を委ねるとしよう、世界が界律の守護神に求めるそのままに。
―――6 Years Later―――
桜並木に一人立って、友達を待つ。
早いものであれから六年。いろいろなことがあった。
お父さんたちやアリサちゃんたちに魔法のことや管理局のことを話して六年。
私とフェイトちゃん、ユーノ君、そしてシャルちゃんやルシル君(は私達より早いけど)が正式に管理局に入って六年。
ルシル君は、前に私をかばって受けた傷も早くに治して復帰。不死身と言われてます。
そして空戦SSのルシル君は、今もまたたくさんの部署を兼任してる(させられてる?)。
無限書庫、本局医療局、航空武装隊etcとか、過労死するんじゃないかって噂です。
日常のほうでもいろいろありました。
はやてちゃんの足も治って、私たちと同じ学校に通えるようになったし、フェイトちゃんもハラオウン家の正式な家族になった。
私の方は、今では武装隊の戦技教導官、ときどき捜査官として頑張っています。
「なのは!」
「なのはちゃん!」
「あ、アリサちゃん! すずかちゃん!」
後ろから聞こえてきた友達の声に振り返って、二人に大きく手を振って応える。
アリサちゃん、すずかちゃんと挨拶を交わして歩き出す。
「今日もお仕事?」
「うん! 今日は久しぶりにみんな集まるんだ!
お昼過ぎに早退しちゃうから、午後のノートお願い♪」
「はいはい! 頑張ってコピーしやすいノート取るわよ!」
さすがアリサちゃん。持つべきものはやっぱり友達だよね。
「にゃはは! ありがとう!・・・あ!」
道の先にいるのは大親友の二人、フェイトちゃんとはやてちゃんだ。
二人が私たちに向けて大きく手を振っている。
フェイトちゃんは、六年前に語った執務官の夢を叶えて頑張ってます。
はやてちゃんも捜査官として、シグナムさんたち守護騎士のみなさんと頑張ってます。
さてと、あと一人が来てくれればみんなの合流完了となるんだけど。
「今日集まるんだって?」
「うん!」
「ほんま楽しみやわぁ」
「先に行くなんてひどーーい!!」
会話に花を咲かせる中、やっと最後の一人シャルちゃんが姿を現す。
シャルちゃんの方もいろいろあったんだ。
ドイツにいる家族が海鳴市に引っ越してきたり、正式に聖祥小学校に入ったり、ルシル君がシャルちゃんの弟になったり(ルシル君は兄だと主張する)と、そういろいろ。
そんなシャルちゃんも、今では陸戦SSの魔導師として一目置かれてたりします。
「ごめんごめん!」
「何よシャル? あんたまた他校の男子に告白されてたわけ?」
そう、シャルちゃんは何故か(←失礼)すごく他の学校の男子に人気があったりする。
というか私の周りにいるフェイトちゃんやすずかちゃんたちもよくモテる。
私はあまりそうでもない(←自覚なし)からちょっと羨ましいかも。
そんなこんなで、今日もまた私たちは空を翔けます。
いつか誓った想いをこの胸に秘めて。
「レイジングハート!」 ≪Yes, my master≫
「バルディッシュ!」 ≪Yes, sir≫
「リインフォース」
「はい、マイスターはやて!」
「トロイメライ!」 ≪Ja, Meister≫
≪Stanby Ready≫
「「「「セーット・アップ!!」」」」
2nd Episode:夜天の主と守護の騎士 Fin
NEXT Episode:高き破滅より来たる大罪
†◦―◦―◦―◦―◦↓シャルシル先生の魔法術講座↓◦―◦―◦―◦―◦†
シャル
「ほい、第二章の最後で始まる、シャルシル先生の魔法術講座ッ❤」
ルシル
「なぁ、シャル。逃げるつもりはないのだからバインドで拘束しないでくれ」
なのは
「あー、ごめんねぇルシル君。シャルちゃんがどうしてもルシルを縛って連れて来いって」
フェイト
「私たちもそこまでしなくていいんじゃないかなぁ~って思うんだけど、シャルになんか逆らえなくて」
ルシル
「アルフとユーノもそう言った口か?」
ユールフ
「まぁそんな感じ」
シャル
「まぁまぁ、ルシルもそう不機嫌にならないでよ。さてと、早速本題に行くよ。
何せ溜まってるからねぇ、紹介しないといけない魔術や魔法が」
なのは
「でもどうしてこんなに溜まっちゃったの?」
シャル
「良い質問だよ、なのは。まず第一。ルシルと守護騎士による戦闘が行われていたことを知らなかったから」
フェイト
「そ、そうだよっ。ルシル、どうしてあんな無茶をしたの!? 私たちに話してくれなかったしっ」
アルフ
「確かにそいつはちょっと看過できないねぇ。ルシル。あんた、散々迷惑をかけておいて謝りも無いのかい?」
ルシル
「い、いや、謝っただろ。確かに」
ユーノ
「あれ? 謝ってないよ確か。シャルから罰を言い渡されて、それでうやむやに」
ルシル
「ユーノ・・・。余計なことを」ボソッ
アルフ
「あ、今ルシルの奴、余計なことを、って言った!」
ルシル
「アルフ・・・」
なのは
「ルシル君、それはさすがにダメだよ」
フェイト
「う、嘘をついてたことに対して、私たちはルシルに謝罪を求めます・・・!」
シャル
「あはっ。なのはとフェイトが敵に回ったらもうダメだね。潔くこうべを深々と垂れて謝るが良い。
そして、これからはずっと私の奴隷となると誓え」
ユールフ
「いや、最後のは要らないでしょ」
ルシル
「そう、だな。ああ、判った。みんな、黙っていてすまなかった」
なのフェイ&ユールフ
「うんっ」
シャル
「まぁ、それで良しとしておこっか」
フェイト
「でもルシル。どうして教えてくれなかったの?」
なのは
「そうだよね。隠しておく意味ってあったの・・・?」
ルシル
「いや・・・、まあなんだ。心配をかけたくなかったんだよ。判るだろ?
それに、なのははもちろん。フェイトもシャルも、大切な学校の最中だった。
それを、戦いということで邪魔したくなかった」
なのフェイ
「あ・・・・」
シャル
「・・・はぁ。そんなこと言われたらもう責めれないじゃん」
アルフ
「気遣いは嬉しいんだけどさ。心配くらいしてもいいだろ?」
ルシル
「でもやっぱり心配をさせたくないって気持ちは汲んでくれ」
シャル
「ま、それがルシルだもんね。もうこの話は終わりしによ。
んで、第二になんだけど。それは、このコーナーの主である私がシグナムとの決闘に負けて、その回でのコーナーが出来なかったわけなんだけど」
ユーノ
「あー、やられちゃったからか」
なのは
「これは私が謝らないとダメだよね。ごめんね、シャルちゃん」
フェイト
「私も。何も出来なかった。ごめん」
アルフ
「だったらあたしもだよ。もう少し早く駆けつけてれば、蒐集されなかったかもしんなかった。ごめんよ」
シャル
「ストップストッーップ! あれは私の責任なんだから、なのはたちが謝ることじゃないって」
ルシル
「そうだぞ。シャルが魔法ではなく魔術を使えばどうにでもなったんだ。
意地になって魔術を使わなかったシャルの責任。それ以外なしっ! だから謝る必要なんて――あいたぁぁーーッ!?」
シャル
「ちょっと黙ってて。でも、うん、まぁそんな感じだからさ、気にしなくたっていいんだよ。
というわけで、そんなこんなで溜まっちゃったわけ」
なのは
「ここでまた謝って、シャルちゃんの責任を勝手に背負うのはダメだよね」
フェイト
「そっか。うん、じゃあ、もう謝らない。シャルの気持ちのために」
アルフ
「そういうことならしゃあないね。あいよ」
シャル
「うん、オッケー。じゃ、始めようか。まずは私の魔法からね。
――ゲシュウィンディヒカイト・アオフシュティーク――
――光牙十紋刃――
――牢刃・弧舞八閃――
の三つなんだけど。
ゲシュウィンディヒカイト・アオフシュティークは魔法で、飛行速度を一時的に上昇させるなの。意味はそのまま速度上昇。
閃光系魔力の斬撃を十字型に放つ光牙十紋刃タオフェ・クロイツ。タオフェは洗礼、クロイツは十字架って意味ね。
最後は、私の持つ二つの真技のひとつ、牢刃・弧舞八閃。
えっと、居合い抜きによって加速された斬撃を四太刀同時に放って、さらに魔力で構成された刃をさらに同時に四太刀放つ、計八太刀同時斬撃の剣技なんだ。
んで、作戦会議のときに説明したとおり、キルシュブリューテの能力・絶対切断が刀身・魔力刃に付加されているから、どんなものでも斬っちゃうことが出来るの」
ユーノ
「アレ、すごかったよね。まさか防衛プログラムのコアを斬るなんて。魔導師じゃ絶対に出来ないことだよ」
なのは
「うん。魔法じゃなくて魔術なんだよね。すごいなぁ。シャルちゃん」
フェイト
「ねぇ、シャル。真技ってどういう意味なの? 魔術とは別のやつとか? それとも魔術の中での特別なってこと?」
シャル
「そっ♪ フェイトの言う後者の方ね。真技っていうのは、魔術師が持つ固有魔術の中で、最強・最高の効果を持つ術式の事なんだ。
私の場合、キルシュブリューテの能力と自分の剣技を合わせたものね」
アルフ
「魔術師はってことは、ルシルも持ってんの?」
ルシル
「ああ、持ってるぞ。二つな。シャルも二つだな」
フェイト
「そうなんだ。ルシルのはどんなの?」
シャル
「ルシルのは極悪だよ~。必中必殺のやつと、アルカンシェル以上の破壊力を持ってるやつ」
なのは
「ア、アルカンシェル以上って・・・・うそだよね・・・?」
ユーノ
「でも、ルシルならアリかも」
フェイト
「えっと・・・・そうなの?」
ルシル
「まぁそうだな。アルカンシェルの効果を聞いたから言えることだが、確かに俺の最強の真技はアルカンシェル以上の被害をもたらすことが出来るだろうな。
具体的な被害としては、なのはとフェイトは分かるな? カナダという一国を丸ごと消し飛ばせるだけの威力を誇るよ」
なのフェイ
「カナダ?・・・・・・えええええええーーーーーーーーーーッッッ!!??」
なのは
「カナダ!? 今カナダって言ったのルシル君っ!?」
フェイト
「えっとえっと、カナダって確かこの世界の国で、二番目に大きな国だよねっ!」
なのは
「どんだけスゴイの魔術って!! 日本が消えちゃうよっ! アルカンシェルなんて目じゃないよ!」
フェイト
「なんでそんな魔術が作るの!? というか使ってもないのに何で威力とか被害が――」
ルシル
「ふふ、これでも物心つくより魔術とともに生きてきたんだ。
どういう術式を組めば、どれだけの効果を生み出せるか、簡単にイメージができる。
まぁ作ったところで使う日は来ないと思うが、用心に越したことはい、ということだ」
なのフェイ&ユールフ
「用心って・・・」
シャル
「ま、この話はもう終わり。そんじゃ次行ってみようか。今度はルシルの魔術ね」
ルシル
「ああ、判った。
――その身に焼きつけよ――
――流麗なる乙女――
――吹き荒べ、汝の轟嵐――
――舞い降るは、汝の麗雪――
――殲滅せよ、汝の軍勢――
――崇め讃えよ、汝の其の御名を――
――瞬神の飛翔――
――光神の調停――
この八つだな。まずは、自動追尾型の火炎の鳥を放つ、その身に焼きつけよフェニックス。
水柱を自分の周囲に噴き上げさせて、高水圧による障壁とする、流麗なる乙女ウンディーネ。
竜巻を自分の周囲に発生させ、攻防一体の障壁とする、吹き荒べ、汝の轟嵐コード・ラシエル。
氷の槍を、最大で1000本射出する、舞い降るは、汝の麗雪コード・シャルギエル。
あらゆる属性の槍を最大2000本射出し、敵軍を殲滅し蹂躙する、殲滅せよ、汝の軍勢コード・カマエル。
蒼翼22枚から砲撃を連続、全方位から敵へ集中砲火する、崇め讃えよ、汝の其の御名をコード・ミカエル。
空戦能力を爆発的に上昇させる、瞬神の飛翔コード・ヘルモーズ。
全方位に向けて無差別に複数の砲撃を連続して放ち続ける、光神の調停コード・バルドル」
アルフ
「あたし、思ったこと言っていいかい? ルシル、あんたさ、もう人間じゃないよね?」
ユーノ
「4ケタの槍を一気に展開して一斉に射出・・・? どれだけ魔力と制御能力があれば出来るんだ?」
なのは
「私じゃ考えられないよ。絶対出来ないもん」
フェイト
「うん、そうだよね。ルシルってデバイスの演算処理以上の早さだし」
なのは
「にゃはは、すごいよね~。あ、でもルシル君。ちょっと質問いいかな?」
ルシル
「ん? 俺に答えられるのなら」
なのは
「フェニックスとウンディーネって、他の魔術と違って、コード、ってついないよね。だからなんでかなぁ?って」
ルシル
「あぁそれは、その二つが下級術式だからだな。正確には未完成品だ」
ユールフ
「未完成品?」
ルシル
「ああ。下級術式というのは、幼い頃に組んだ術式で、術式に綻びがあるんだ。
だから、コード、を付けることのできない未完成品というわけだ」
フェイト
「よくそれを実戦で使ったねルシル。シグナムとヴィータとザフィーラを一度に相手にしてる場面で」
ルシル
「綻びがある半面、消費魔力も少ないし、暴発・炸裂することで本来以上の威力が生まれたりする。
だからあの場面で使ってみた。結局は役に立っていなかったけどな」
シャル
「ルシルってギャンブル好きだったっけ?」
ルシル
「ん? いや、別にギャンブルをやったわけじゃないんだが」
フェイト
「ルシル、あんまり危ないことしちゃダメだよ? 暴発なんて、ホントに危ないから」
アルフ
「そうだよ。あんたの魔術って強力なんだから、至近で暴発してあんたが吹っ飛ぶなんて嫌だからね」
ルシル
「ああ、判ったよ。気を付ける。それと、もう下級術式は使わない。
フェイト達に心労をかけるのは良くないからな」
フェイト
「あ、うん。そうしてくれると嬉しい・・かも」
アルフ
「その約束、破ったら承知しないよ」
ルシル
「了解だ」
シャル
「んっ。話も纏まったことで、今回はここまでにしておこうか。
それじゃ今回はここまで! 第三章でまたお会いしましょーーーーッ!」
なのは
「また次回で会おうねーーーーっ」
フェイト
「えっと、ばいばい」
ユーノ
「次章からも僕出れるのかなぁ~・・・?」
アルフ
「あたしだって次章から出番が一気に減るしねぇ~」
ルシル
(アルフも切実だなぁ~)
後半メチャクチャに省いてすいません!
もう途中でギブアップさせていただきました。
最後はなのはかシャルのどちらかに語らせるか、と思っていたんですが、やはりなのはにしてしまいました。
リインフォースのことですが、やはり当初の計画どおりに天に召されてもらいました。
かなりギリギリまで迷っていたんですが、初めに決めたことは変えないでおこうと思いましたので。
そしてシャルロッテとルシリオンの管理局入局。
それだけでなく二人が家族になった経緯、それは次に書こうと思います。
きっと短いモノになってしまうと思いますが、書かないよりかはマシかと。
一応今の段階としては、上記のシャルシル(略)の話。
花見はどうしようかと思ってますけど、書こうかな?
そしてSTRIKERSへのプロローグ(コミックのです)を一話、もしかしたら二話に?
それから3rdに入っていくかと思います。
それではこれからも誠心誠意頑張りますので、よろしくお願いします。
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