聖夜に降り立つ夜天の王
†††Sideフェイト†††
アリシアと別れた私は、時の庭園の塔内にある玉座の間まで来た。
そしてそこにはルシルが一人、私を待っていたかのように玉座の間の中央で佇んでた。
「・・・ルシル、私は――「帰るのだろう?」――・・・うん」
私はゆっくりとルシルのもとへと歩きだす。
ルシル以外はもう誰一人としていないみたいだ。
「今の心境・・・聞いてもいいか?」
「悪くはない、かな。夢だったけど、確かにアリシアに逢えて話しをすることができた。
それと・・・えっとね、ルシルとも家族になれた・・・から」
言ってて恥ずかしくなって顔が赤くなる。
さっきまでアリシアとの別れで泣いていたというのに。
「だから現実でも、ルシルと家族になりたいなって思ってたり」
「まぁそれは現実の私に言ってくれ。ここで私に告白しても意味はないからな」
それはそうなんだけど。
あれ? 私とアルフがお願いして変えてもらった一人称が“私”に戻っている。
やっぱり夢だからなのかな?
「うん、そうする」
「さて、それじゃ帰りなさいフェイト。
君にならこの捕獲空間を破壊することくらい簡単だろう」
そう言ってルシルは中央から隅の方へと歩いていった。
私はそんなルシルを見送ったあと、“バルディッシュ”を起動させる。
「・・・バルディッシュ、ここから出るよ。ザンバーフォーム、いける?」
≪Yes, Sir≫
「うん、良い子だ」
バリアジャケットへと着替え、この捕獲空間を破壊するため一撃を放つ準備を始める。
≪Zamber form≫
“バルディッシュ”が、性能の大半が攻撃に特化されたフルドライブモード“ザンバーフォーム”へと変形する。
「疾風迅雷!」
“バルディッシュ”の刀身を床に沿うように払うと床に帯電した。
直後、玉座の間には強大な電撃が満ちた。
「現実で待っているぞ」
ルシルがそう一言呟いて消え始め、私はそれに頷いて応える。
ルシルは、私の頷きを見て微笑みながら消えていった。
「いくよバルディッシュ。スプライトザンバーーーーーッ!!」
構えていた“バルディッシュ”を何もない場所に一閃。
その瞬間、空間内はガラスが割れたかのようなヒビが入り、そして砕け散った。
一瞬の暗転、気がつくと私は現実へと戻っていた。
†††Sideフェイト⇒シャルロッテ†††
「エクセリオンバスター、フォースバースト!!
ブレイク・・・シューーーーーートッッ!!!!」
“レイジングハート”より放たれる凄まじい四発の同時砲撃。
不可視のバインドに捕らわれた“闇の書”へと全弾直撃した。
周囲一体を照らし出す桜色の閃光。それだけじゃなく空へと一条の雷撃も放たれた。
「フェイト!!」
アルフに嬉しそうな声が私たちの耳に届く。
やっぱりさっきの雷撃はフェイトのものだったようだ。
フェイトも無事に脱出できたようだし本当に良かった。
これであとは、ルシルが来てくれればみんなが揃う。
その矢先、空間が振動し始めた。まだ終わってはいないということだ。
『みんな気をつけて! 闇の書の反応、まだ消えてないよ!』
そして眼前に現れたのは巨大な黒い澱み。その前方には白く輝く球体がある。
おそらくあの中にはやてがいるんだって推測する。
『みんな、下の黒い澱みが暴走が始まる場所になる!
クロノ君が着くまで無闇に近づいちゃダメだよ!』
言われなくてもあんなものには近づきたくはない。
周辺には何か気色の悪いのがいるし。
「さすがに好き好んであれには近づきたくないな」
私たちの後ろから聞こえたのは紛れもないルシルの声。
一斉に声がした方向へと振り向く。
「「ルシル!!」」
私とフェイトの声が重なり合った。
なのはたちは少し遅れてから名前を呼んでいた。
ゆっくり私たちへと近づいてきたルシル、だけどその表情には明らかな疲労がある。
あのエヴァとかいう金髪少女によほど手古摺らされたのみたい。
「間に合ってよかった。帰ってきたら事がすでに終わってました、なんてことは避けたかったからな」
その言い回しに心当たりがある私は驚愕した。
それほどの力を使わなければ、あの少女に勝てなかったのだろう。
「まさか・・・『創世結界に行ってたの? 体もそうだけど魔力炉大丈夫なわけ?』」
リンクを通してルシルの心配をする。
創世結界を展開するよりかは負担が少ないだろうけど、それでもかなり負担がかかってるはずだ。
『問題ない。君のほうも疲労が見えるけど大丈夫なのか?』
『まあまあ大丈夫かな。ルシルよりかは絶対マシ』
二人して笑みを浮かべているものだから、なのはたちは不思議がっていた。
†††Sideシャルロッテ⇒はやて†††
「管理者権限発動」
「防衛プログラムの進行に割り込みをかけました。数分程度ですが、暴走開始の遅延ができます」
「うん。それだけあったら十分や」
さすがリインフォース、きっちり応えてくれた。
次にすることは、わたしの大切な家族を呼び戻すこと。
わたしのそばに四つのリンカーコアが現れる。
「リンカーコア送還。守護騎士システム破損修復」
四つのリンカーコアが強く輝き始めて、その姿を消した。
それはつまりみんなも現実へと帰ってきたということや。
「おいで、わたしの騎士たち」
ハッキリと感じる家族の存在。ならわたしもみんなのもとへと行こう。
「リインフォース、わたしの杖と甲冑を」
「はい」
この身を包み込む黒いスーツ。そしてわたしは、目の前に現れた黄金の剣十字杖を手に取る。
†††Sideはやて⇒ルシリオン†††
黒い澱みの近くにあった光の球体が一際輝いた。
みんながその閃光から目を覆う中、俺はしっかりと見た。
守護騎士たちがあの球体を護るかのように現れたのを。
「ヴィータちゃん!」
「「シグナム!」」
光が収まり、シャルたちも守護騎士たちの姿を確認したようだ。
嬉しそうな声を上げている。
「我ら、夜天の主のもとに集いし騎士」
「主在る限り、我らの魂尽きることなし」
「この身に命ある限り、我らは御身のもとに在り」
「我らが主、夜天の王、八神はやての名のもとに」
四柱の騎士がそう告げた。己の存在は、自らが敬い慕う主はやての為だけに、と。
光の球体が砕け、十字杖を手にしたはやてが現れる。
「夜天の光よ、我が手に集え! 祝福の風、リインフォース、セーットアップ!」
彼女は十字杖を掲げて告げる。その身に騎士甲冑を纏った彼女の姿は、立派な騎士の一人だ。
俺は少し離れていたために聞き取れないが、彼女と騎士たちは少し話をしている。
するとヴィータがはやてへと勢いよく抱きついた。
今のヴィータは外見相応に泣いて、何度もはやての名前を呼んでいる。
その家族の再会を見ていたシャルとフェイト、なのはが彼女たちの足下に展開されている魔法陣へと降り立った。
俺はそうせず、少し近づいただけにしておく。
「なのはちゃん、フェイトちゃん、シャルちゃん、ほんまにごめんなぁ。
家の子たちがいろいろ迷惑かけてもうて」
「ううん」
「平気」
「気にしてないから」
三人の返事を聞いたはやては、ゆっくりと俺へと視線を移す。
その目は何か言いたそうなものだったので、俺も魔法陣へと降り立つ。
「はじめましてやねルシリオン君。ルシリオン君にも謝っておかなあかんと思ったんや。ごめんな」
初対面である俺に、はやてが何に対して謝っているのか判った。
俺も“闇の書”に蒐集された一人だ。それに対する謝罪がさっきの言葉なのだろう。
「シャルたちも言ったとおり、もう気にしていない。
まぁ少し苦労はしたが、それも君が帰ってくるのに必要なものだと思えば何でもない」
思ったことを告げた。さっきまでの苦労も、はやてと守護騎士たちのことを思えばどうってことはない。
それだけの価値がある。はやてと、騎士たちの笑顔には。
「ありがとうな」
「すまないな。水をさしてしまうんだが、時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ」
そう言って降下してきたクロノが俺たちの前に姿を現す。
「時間がないので簡潔に説明する。
あそこの黒い澱み、闇の書の防衛プログラムがあと数分で暴走を開始する。
僕らは何らかの方法で止めないといけない。停止のプランは現在二つある。
一つ、極めて強力な氷結魔法で停止させる。
二つ、軌道上で待機している艦船アースラの魔導砲“アルカンシェル”で消滅させる」
ということは、グレアム提督たちの解決法は俺たちのと一緒だったわけか。
つまるところクロノの手にしているカードも、提督たちが用意した物なのだろう。
さっきのクロノの言葉から、それが強力な氷結魔法のためのデバイスらしいことはわかる。
「これ以外に良い手はないか? 闇の書の主と、その守護騎士のみんなに聞きたい」
「え~と、たぶん最初のは難しいと思います。
主のない防衛プログラムは魔力の塊みたいなものですから」
「凍結させても、コアが在る限り再生機能は止まらん」
「アルカンシェルも絶対ダメ! こんなところで撃ったらはやての家までぶっ飛んじゃうじゃんか!」
クロノの問いに答えた守護騎士たち。
“アルカンシェル”のデータは以前見せてもらったが、確かにここでの使用はまずい。
俺の対界真技“再誕”よりかは遥かにマシだが。それでも被害がとてつもなく大きいのは確か。
使う必要が無いなら、それに越したことはない。
そんなヴィータの猛反対を見たなのはが、「そんなにすごいの?」とユーノへと説明を求めている。
「うーんと、発動地点を中心に百数十キロ範囲の空間を、歪曲させながら反応消滅を起こさせる魔導砲、と言うと大体わかる?」
「早い話、この街が全てまとめて吹っ飛ぶ、というわけだよなのは」
俺の簡単にし過ぎた説明で、なのはとフェイトの顔色が青くなった。
二人はこの街が消し飛ぶ様を想像してしまったのだろう。
俺だってこの街に少しくらいの愛着が湧いている。
だからこそ“アルカンシェル”なんてものを撃たすわけにいかない。
「あの! 私もそれ反対!」
「同じく絶対反対!」
「僕も艦長も使いたくないよ。でも闇の書の暴走が本格的に始まったら、被害がそれよりはるかに大きくなる」
なのはとフェイトの二人からも猛反対を受けたクロノ。
もちろん自分たちも使いたくはない、と口にする。
「暴走が始まると、触れたものを侵食して無限に広がっていくから」
ユーノの補足を聞いたフェイトとなのはが黙り込む。
どちらにしても被害が尋常じゃないことになるのが判ったから。
『はいみんな! 暴走臨界点まであと十五分切ったよ! 会議の結論はお早めに!!』
エイミィからの通信でさらに空気が重くなる。
「何かないか?」
「すまない。あまり役に立てそうもない」
「暴走に立ち会った経験は、我らにもほとんどないのだ」
「でも何とか止めないと、はやてちゃんのお家がなくなっちゃうのイヤですし」
クロノが守護騎士たちに向き直り、再び問う。
が、しかし返ってきたのは無慈悲な答えだった。
「・・・・ルシル、シャル。君たち魔術師は何か・・・何かないか?」
藁にも縋りたい気持ちなのだろうな。
クロノが俺とシャルへと顔を向けたことで、全員がこちらへと顔を向けた。
守護騎士たちが「魔術師?」と首を傾げているが、説明している時間はない。
「う~ん」
「シャル、君のキルシュブリューテと真技を使えば何とかなるんじゃないか?」
俺は一つの解決法を提示する。シャルの“神器”と“真技”を使えばおそらくは・・・と。
「え? 真技って・・・飛刃?」
「いや、牢刃の方だ」
†††Sideルシリオン⇒クロノ†††
僕は藁にも縋る気持ちでルシルとシャルに聞いてみた。
いくら彼らでも出来ないことだろうと思っていたが、
「シャル、君のキルシュブリューテと真技を使えば何とかなるんじゃないか?」
ルシルのその一言を聞いたとき、足に力が入らなくなって座り込みそうになった。
ルシルとシャルは「ひじん」とか「ろうじん」と、僕には理解できない会話をしていた。
「あるのか!? 方法が!?」
ここまで期待させるような発言をしたんだ。やっぱり無し、というのは許さないぞ。
「でもちょっと待って! 確かに当てられれば何とか出来るかもしれないけど!!
あんな大きなものには効果がないよ! だってあれは近接対人真技なのよ!?」
「待ってくれ! 一応詳しい話を聞かせてくれ!」
シャルの「当たれば何とか出来るかも」というその言葉が僕の期待をさらに膨らませた。
だからこそ詳しい話を聞いておきたい。そのルシルの提案に縋ってみたい。
「あの防衛プログラムの本体、コアに直接当てられればなんとか。
でもそれにはキルシュブリューテの能力開放、しかも瞬間解放じゃなくて数秒間の解放が必要になってくる。
私にはそんな魔力は残っていないし、そもそも初めから足りていない」
「・・・・どうしても出来ないのかシャル」
僕はシャルに問う。シャルが黙って頷こうとしたとき、ルシルが静かに告げた。
「待ってくれ、コアが露出してくれれば、あとは俺とシャルが何とかする。
コアさえ外に出ていればおそらく問題はないはずだ」
「っ! 本当なんだなルシル」
「・・・・・ああ」
ルシルは少し間を置いた後に、確かにしっかりと頷いた。
これで決まりだ。どういう方法なのかはわからないが、“アルカンシェル”を撃たなくていいというだけで助かる。
そして詳細な作戦を練る。練りはしたが、実に個人の能力頼りでギャンブル性の高いプランだ。
だがそれを成功させればシャル。そしてシャルをサポートするルシルが何とかしてくれる。
それにしても。シャルとルシルの話が本当だったなら、シャルは正しく最強の存在となる。
軽い戦慄。だけど、恐れるようなことじゃない。何せシャルとルシルは、僕らの友達なのだから。
†††Sideクロノ⇒シャルロッテ†††
まさか私がこの戦いの幕を下ろす役割を担うことになるなんて思いもしなかった。
「防衛プログラムのバリアは魔力と物理の複合四層式。まずはそれを破る」
「バリアを抜いたら本体に向けて、私たちの一斉砲撃でコアを露出」
「そしたらシャルちゃんの魔術でコアを完全破壊」
作戦の最終確認をする私たちだけど、本当に出来るか不安が募る。
まったくもう、ルシルは本当に余計なことを言ってくれたものだ。
「ルシル、あなたの魔術・・・は無理か。複製武装や術式じゃ何とかならないの?」
「アレを消すほどのランクの高いものは今も使えない。なら君の神器に頼るしかないだろう?」
ルシルってこの世界にどれだけ嫌われてるわけ?
私以上の制限をこれでもかってくらいに掛けられてるじゃない。
「はぁ、もう分かった。それで足りない魔力はどうするの?」
神器“断刀キルシュブリューテ”の数秒間の解放には、おそらくSSSランクは要る。
私が現状使える魔力は最大Sランク。まぁ魔力炉破綻させればSSSくらいは捻り出せる。
だけど今の状況じゃさすがにリスクが高すぎる。それはルシルも分かっているはずだけど。
「契約――メンタルリンク・・・は駄目だろうか?」
「へ? 契約?・・・あぁなるほど」
ルシルのちょっと遠慮がちな提案は、魔術師同士で行われる“契約”をする、というものだった。
確かにそれを行えば何とか出来るかもしれない。
“契約”を交わすと、契約者と自分の魔力炉をリンクさせて、お互いの保有する魔力を扱うことが可能となる。
それに魔力炉破綻のような魔力炉に対するダメージも分担出来るから結構無茶もできる。
「一応マスター権限は君持ちということになるな。もちろんこの決戦時のみの契約となる」
「んーー、うん。分かった。それと別にこれからもずっとマスターでいいけど?」
「すまん断る」
「即答かよ」
私の冗談半分の申し出にノータイムで答えたルシル。何かムカつく。
それはともかく。ルシルの言うとおり“キルシュブリューテ”も扱えると思う。
なら、ほんの一時だけ私がルシルの御主人様になってあげますか。
みんなに少し時間をもらえるように頼んで、私とルシルは“契約”の儀式を始める。
「「ここに今誓いを立てる」」
私とルシルは両手の親指の肉を切り、私たちはお互いの手の平を重ねるようにして傷口を合わせる。
交じり合う私とルシルの血と魔力。
足元に広がるのはルシルの固有魔術における魔法陣“アースガルド魔法陣”。
ほとんど展開する必要のないモノだけど、儀式関連のときは展開されてるモノだ。
中心に十字架があり、その四方から四つの剣が伸びている。
そしてその剣を繋げるように三重の円環があって、その円環の間に無数のルーンが刻まれているという紋章だ。
その光景を見ている全員が固唾を呑んでいる。
「我、シャルロッテ・フライハイト」
「我、ルシリオン・セインテスト・アースガルド」
ルシルは“フォン・シュゼルヴァロード”じゃなくて、魂に刻まれた真名“アースガルド”を名乗る。
やっぱり貰いものの名前では効果がないってことだ。
「「我ら、ここに誓いを築き、主従の理を宣言す」」
私とルシルの魔力炉がリンクするのが分かる。
お互いに流れ込む魔力を制御し、最後の段階へと持っていく。
「「契約」」
術式名宣告。最後に私とルシルは口づけを交わす。
少し恥ずかしいけど、この儀式の時はカウントに入れないようにしているから何とか平気。
でも気づく。そういえばここにいる全員の前で“契約”を交わしたんだ。
一気に顔が赤くなるのが分かる。でもルシルは何事もなかったかのように平然としている。
そして全員の反応は様々だった。
「き、君たち、何もこんな人前でやることは・・・その、ないんじゃないか?」
クロノが赤い顔を背けながらそう一言。だからそんなやらしいものじゃないから。
「時と場所を考えてほしいものだな。フライハイト、セインテスト」
そんな真剣な顔でシグナムが言った。だから“契約”って口にしてたよね私たち。
「はやてちゃん、見ちゃダメです」
「シャマル、さっきからわたしの目を隠してるから見えんかったって」
シャマルははやての両目を、自分の両手で覆い隠していた。
分かってて言っているな騎士連中は。
「あぅあぅ」
私とルシルの口づけを見たフェイトが困惑している。
そういえばフェイトってルシルに特別な感情を抱いているんだった。
“契約”に必要だったとはいえ可哀想なことをしたかもしれない。
「大丈夫。私とルシルはそんなんじゃないから」
フェイトだけに聞こえるようにして呟き、そっとフェイトの頭を撫でた。
†††Sideシャルロッテ⇒はやて†††
シャルちゃんとルシリオン君の突然の行動から立ち直ったわたしたち。
そして防衛プログラムの暴走までの時間が迫る。そやけどその前に、
「なのはちゃんたち、結構怪我がひどい。ちょぉ待ってな、シャマルお願いや」
わたしは傷ついてるなのはちゃん、フェイトちゃん、シャルちゃん、ルシリオン君の四人を見て、シャマルに治癒魔法をかけてもらうようにお願いする。
「はい、みなさんの治療ですね。お任せください。クラールヴィント、本領発揮よ」
≪Ja≫
「静かなる風よ、癒しの恵みを運んで」
シャマルの魔法“静かなる癒し”。それは怪我の治療から体力と魔力の回復、バリアジャケットや騎士甲冑の修復までこなすものや。
それの恩恵を受けたなのはちゃんたちは、みんなして驚いとる。
「湖の騎士シャマルと風のリングクラールヴィント、癒しと補助が本領です」
なのはちゃんたちからお礼を言われたシャマルは照れくさそうに微笑んだ。
よしっ。これでいつでもいけるな。
「ユーノ、悪いんだけど、私とルシルに足場を作ってくれる? 飛翔術式に回している魔力も攻撃に使うから」
「え? あ、うん、そのあたりでいい?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
シャルちゃんとルシリオン君が、ユーノ君に作ってもらった魔法陣の上に立つ。
ルシリオン君の背中には、四枚の蒼い剣の翼だけが残った。
「始まったぞ。みんな」
そして澱みを囲むように、黒い柱が海面から突き出してきた。暴走が始まる合図や。
「夜天の魔導書を、呪われた魔導書と呼ばせたプログラム、闇の書の“闇”」
澱みから現れたのは形容し難い異形の存在。
まるで歌のような声を上げる女性の上半身が怪物の頭部にあった。
最後の大一番、なんとしても成功させる。
†††Sideはやて⇒シャルロッテ†††
澱みの中から現れたのは合成獣のような怪物だった。
ああいうのを大戦時に見慣れているとはいえ、やっぱり少し引いてしまう。
「チェーンバインド!」
「ストラグルバインド!」
ユーノとアルフのバインドが蛇の胴体のようなバリケードを捕らえて、一気に縛りあげて断ち切る。
「縛れ、鋼の軛!」
ザフィーラもそれに負けじとバリケードを一瞬でなぎ払った。
これで邪魔をするものはなくなった。
「ちゃんと合わせろよ、高町なのは!」
「ヴィータちゃんもね!」
まずは第一層と第二層を破壊する役割のなのはとヴィータ。
「鉄槌の騎士ヴィータと鉄の伯爵グラーフアイゼン!!」
≪Gigant form≫
ヴィータのデバイス“グラーフアイゼン”が巨大なハンマーへと変形した。
「轟天爆砕! ギガント・シュラァァァーーークッ!!」
その巨大な鉄槌の一撃を受けて、一層目の対魔力障壁が砕け散った。
それを見たルシルが一言呟く。
「俺さ、アレより少し小さいモノで叩き落とされたことがあるが、今思うとよく生きてるなって、そうしみじみ感じるよ」
なるほどね。アレの一撃を受けたから蒐集されちゃったわけか。
さすがに今のルシルじゃ、あんなの受けたとなったらそりゃ負けるわ。
「高町なのはとレイジングハート・エクセリオン。いきます!!」
“レイジングハート”が四発カートリッジをロードし、翼を展開させた。
おそらくさっき放った砲撃と同じものだろう。
「エクセリオン・・・バスタァァァーーーッ!!」
≪Barrel shot≫
本命の先駆けとして衝撃波が放たれ、襲い掛かってきた触手に不可視のバインドがかけられる。
「ブレイク・・・シューーーーーット!!」
本命の一撃が放たれた。それは容易く二層目の対物障壁を砕く。
未だ9歳であれって、将来どんな大物になるか分かったものじゃない。
「次! シグナムとテスタロッサちゃん!」
シャマルの指示が飛ぶ。それに応えるようにシグナムが“レヴァンティン”を構えた。
「剣の騎士シグナムが魂、炎の魔剣レヴァンティン。
刃と連結刃に続くもう一つの姿・・・!」
“レヴァンティン”の柄尻に鞘を連結させた。
シグナムの手に携えられるのは剣から弓へと変形した“レヴァンティン”だ。
≪Bogen form≫
“レヴァンティン”に番えられているのは槍のような長い矢。
会に入っているシグナムの足元から炎が吹き上がる。
「翔けよ、隼!!」
≪Sturm falken≫
“レヴァンティン”より放たれた一閃は、三層目の対魔力障壁を粉砕した。
「フェイト・テスタロッサ。バルディッシュ・ザンバー。いきます!!」
大剣となっている“バルディッシュ”から、おそらく物理破壊効果を持つ衝撃波が放たれ、バリケードを容易く薙ぎ払っていった。
「撃ち抜け、雷神!!」
≪Jet Zamber≫
“バルディッシュ”の刀身が伸びるようにして最後の障壁と、“闇”の本体を斬り裂いた。
「あれも受けたくないな」
「激しく同感」
ユーノの張った魔法陣の上で観戦中の私とルシル。
手伝いたいけど、今は少しでも魔力の流出を抑えたい。
ルシルは二対の蒼翼だけを残して、付近に充満する魔力を取り込んでいる。
ルシルは咽るようにして、少し吐血した。
「無理しないでよ」
「使えるものは使う、それが俺たちだ」
そういう返事を聞きたいんじゃないんだけど、そう言うならもう何も言うまい。
“闇”の周辺から現れた蛇の尾のようなモノから、砲撃が放たれようとしていた。
だけど、それを黙って見ているザフィーラじゃない。
「盾の守護獣ザフィーラ。砲撃など撃たせん!!」
海上から突き上げた棘のようなもので、それらを全て貫き砲撃が放たれるのを防いだ。
「はやてちゃん!」
シャマルが上空で待機していたはやてへと指示する。
はやては“リインフォース”を左手に持ちページを開いた。
「彼方より来たれ、ヤドリギの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍、ミストリティン!!」
はやての背後から七条の砲撃が放たれた。
それを受けた“闇”は着弾したところから石化していき、脆く崩れていく。
「シグナムのレヴァンティンもそうだけど、今のミストリティン、だっけ?
アンスールが持ってた神器と名前が似てるよね」
アンスールが一人、炎帝セシリスの保有した神器“煉星剣レヴァンテイン”。
そして冥祭司プレンセレリウスの保有していた神器“神葬剣ミスティルテイン”。
「・・・・似たようなモノはどこの世界にでもあった。
それにこの世界は俺たちの時代の遥か未来、名前が残っていてもおかしくないさ」
寂しそうで、でも懐かしそうにルシルがそう呟く。
まずい、配慮が足りないことを言ってしまった。
「気にするな。もう俺は大丈夫だから。それよりアレは酷いな。崩れたところから再生している」
「うえ、何かすごいことになってる」
“闇”が滅茶苦茶に再生しているから、かなりグロテスクなモノへとなっていた。
でもクロノはエイミィに「プランの変更はなし」だと言っている。
なら私たちもそろそろ準備をしておこうか。
「いくぞデュランダル」
≪OK, Boss≫
クロノが“デュランダル”を構えて詠唱へと入った。
「悠久なる凍土。凍てつく棺のうちにて、永遠の眠りを与えよ――」
海上が凍結されていき、海上に在る“闇”も凍っていく。
「――凍てつけ!!」
≪Eternal Coffin≫
最後の仕上げと言わんばかりに“デュランダル”を振るったクロノ。
“デュランダル”の術名が告げられたと同時に“闇”は完全に氷付けとなった。
しかしそれでもなお再生しようとする“闇”。
最後はなのは、フェイト、はやてによる同時砲撃トリプルブレイカーによるコアの露出。
そのあとは私とルシル、二人の魔力を持つ一撃でこの戦いを幕とする。
「いくよ。フェイトちゃん! はやてちゃん!」
「「うんっ」」
なのはの指揮のもと、三人が己の最強の一撃の準備に入った。
私はそれを見ながら“キルシュブリューテ”を取り出し、“真技”の術式を組む。
そこで私は鞘に収められた“剣神の愛刀”を見据えた。
「期待に応えないといけないよね」
「いくらでも魔力を持っていって構わない。剣神の名の由来、見せてやれシャル」
「よぉっし!」
私とルシルは、なのはたちへと視線を移した。
「全力全開! スターライト・・・!!」
「雷光一閃! プラズマザンバーーー!!」
「響け、終焉の笛。ラグナロク!!」
はやての術式名を聞いた私とルシルは一瞬身構えた。
まさかこんなところで“ラグナロク”なんて聞くとは思ってもみなかったからだ。
残ってほしくない名前はさっさと消えてくれればいいんだけどね。
「「「ブレイカァァァァーーーーーーッッ!!」」」
三人より放たれた膨大な魔力を持った砲撃。
それを受けた“闇”は粉々になってしまった。
「フライハイトちゃん! セインテスト君! 今!!」
シャマルから声がかかった。“闇”の残骸の中心で黒く輝くコアを確認した。
「目醒めよ。断刀・・・キルシュブリューテ!!」
体内の魔力炉が暴れだし、魔力が荒れ狂う。
だけど魔力炉へのダメージは、ルシルと分担してるから割と少ない。
そしてルシルから引き出した魔力のおかげで“キルシュブリューテ”の解放に成功した。
ならあとは、魔法陣から跳び出し、コアを抹消することだけだ。
そして身体強化を最低限かけて、私は跳んだ。
「真技!!」
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
シャルちゃんからは尋常じゃないくらいの魔力を感じた。
そして立っていた魔法陣から跳び出して、そのままコアへと向かった。
ふとルシル君を見ると、ルシル君は口から血を流しながら、魔法陣に膝をついていた。
それを見たフェイトちゃんが、ルシル君のもとへと行くんだけど、それがスローに見える。
私はルシル君が気になりながらも、シャルちゃんへと視線を移して、そして私は見た。
鞘から抜き放たれた“キルシュブリューテ”の刀身が、桜色の光を放ちながらコアへと同時に8つの斬撃を与えたのを。
―――真技、牢刃・弧舞八閃―――
私は今起こったことが全てスロー再生のように見えていた。
そしてそんなスローの世界が普通の時間へと戻る。
「シャルちゃん!!」
防衛プログラムの本体のコアを桜色の八つの刃で斬り裂いたシャルちゃんが力なく海へと落ちた。
私は急いでシャルちゃんを助けるために飛ぶ。海面に突っ込んで、沈んでいくシャルちゃんを抱き締める。
「ぷはっ。シャルちゃん!? シャルちゃん!」
助け出したシャルちゃんへと、何度も名前を呼んだ。
そして、
「なの、は・・・。あはは、大丈夫。だけど、やっぱり冬の海は冷たいや」
シャルちゃんはそう言って微笑んだ。
アルカンシェル出番なし! すいません!
シャルの本当の力、とまでは全然足りてないですけど、なぜか2nd期間中に
書いておきたかったんです。
ですが正直、悪い反響が来そうで怖いです。
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