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ようこそ高町家へ


†††Sideなのは†††


自己紹介を終えて、境内の石段に座って話を始める。

「ねぇシャルちゃん、やっぱりシャルちゃんも魔法使いなの?」

私は首を傾げながら、私たちを助けてくれた外国の女の子シャルちゃんへとそう訊ねた。

「魔法使い? まぁそういう言い方もあるけど、どちらかと言えば魔術師が普通かしら。
そういうなのはは魔法使いなのよね? 少しばかり変わった装備をしているけれど」

シャルちゃんは少し考えた仕草をして、透き通るような可愛い声で答えてくれた。
でも変わった装備? “レイジングハート”のこと、だよね? 変なのかな・・・?

「うん、そうだね。ちなみにユーノ君も魔法使いだよ」

「僕たちは魔法を使う人を魔導師と呼んでいます」

「魔導師・・・ね。例えば魔法ってどんなことが出来るの?」

シャルちゃんは興味深そうにユーノ君へと質問して、二人?は楽しそうに魔法談義に花を咲かせ始めました。
にゃはは、ユーノ君とシャルちゃんのお話についていけなくて、ちょっぴり寂しいです。


†††Sideなのは⇒ユーノ†††


僕はシャルが扱う魔術と僕たちが使う魔法に少なからず共通点があるのに気付いた。
魔術には攻性術式というものがあって、その攻撃手段は魔法に似通っているものが多い。
魔力付加による直接攻撃や、放射する射砲撃といった風に。
魔術という知らない魔法体系を知って、すごく興奮しているのが分かる。
だけど、シャルの魔術についての話の中には、幻想だとか神秘だとか出ていたけど、僕はいまいちよく分からなかった。

「あ、それと――」
 
「あの~、お話中大変申し訳ないのですが、そろそろ帰らないとまずいと言いますか何と言いますか・・・」
 
次の質問をしようとすると、なのはがそう言ってきた。
しまった、あまりの楽しさになのはと時間のことを忘れていた。

「あ~そっか。確かにそろそろ帰らないとダメだよね。ごめんね、なのは」

「にゃはは。ううん、こっちこそゴメンねユーノ君」

お互い苦笑しながら謝り合う。
本当はもう少しシャルと話したかったけど諦めるしかない。


†††Sideユーノ⇒なのは†††


私は二人だけの世界に行ってしまっているユーノ君を連れ戻す。
そしてシャルちゃんに向かって再度、感謝の言葉とお別れの言葉を口にする。

「それじゃシャルちゃん、今日は本当にありがとう。またどこかで会えると良いね」

ユーノ君を肩に乗せてその場を去ろうとする。

「なのは、あなたのお父上から何か聞いていない?」

「へ?」

今度はシャルちゃんが私を呼び止めてそう口にする。
でも、なんでお父さんのこと? 理由も分からず、最近のお父さんの話を思い出してみる。
考えることおよそ1分弱、二つの単語を思い出す。

「・・・留・・・学生、ホームステイ・・・。あ! もしかしてシャルちゃんって・・・!」

そう、それは一週間位前、お父さんがドイツからの留学生をホームステイさせたいと言っていた。
ホームステイに関してはお母さんやお兄ちゃん、お姉ちゃんも快く承諾していた。

「クス。改めてよろしくね、なのは、ユーノ」

「うん! うん! よろしくね、シャルちゃん!」

「よろしく、シャル!」

ユーノ君も私同様、すごく嬉しそうに言う。


†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††


どうやら本当になのはの家へ留学生としてホームステイするらしい。
全く、この世界の“界律”は用意がいいというか何というか少し呆れてしまう。

「それじゃ案内するからついてきてシャルちゃん」

「ええ。よろしくお願いするわ」

荷物を持ち、なのはを追って神社を後にする。
夕陽に目を細めながらも街を見渡す。
綺麗な街並みだ。もしここが滅ぶような事態に陥るというのなら守りたい。
この世界に来て僅か30分弱。それなのに、私はこの街が好きになり始めていた。
珍しい。今回の契約に、私はどこか期待しているようだ。

(殺戮破壊者の私が言うようなことではないわよね、やっぱり)


†††Sideシャルロッテ⇒高町士郎†††


末娘であるなのはの帰りが遅いと息子の恭也が落ち着かない。
娘の美由紀がそれを宥めているのを視線に入れながら静かに椅子に座る。
実際、もう夕食が出来ていて、あとはなのはが帰ってくるのを待つだけだ。

「父さん、少し辺りを見てくるよ」

「え、じゃあ私も一緒に行こうかな」

恭也と美由紀がそう言いながらソファから腰を上げたとき、

「ただいま~!」

待ちかねた末娘のなのはが帰ってきた。
二人は安堵の表情を浮かべ、俺や妻の桃子も同じ顔をしていた。
そしてみんなで玄関まで迎えに行くとそこには、

「あ、お父さん。それにお母さんたちも。
紹介するね、今日からホームステイする留学生のシャルちゃん」

なのはは横に並んでいた少女を俺たちに紹介した。
外見は明らかに日本人じゃない。外国人だ。
水色の長髪に、透き通ったピンク色の瞳、きめ細かな白亜のような白い肌。
しまった、留学生が来るのは今日だったか。連絡がないので今日とは思わなかった。
分かっていたら迎えに行くつもりだったのに、失礼なことをしたかもしれない。

「こんな夜分での訪問失礼いたします。初めまして、シャルロッテ・フライハイトと申します。
突然で申し訳ないのですが、今日からお世話になります。どうぞ気軽にシャルとお呼び下さい」

その女の子、シャルちゃんはスカートの縁を少し摘み上げ軽く頭を下げる。
その自然な造作に、育ちが良さがハッキリと分かる。

「まぁ、これはご丁寧に。初めましてシャルちゃん。私はなのはの母の桃子です♪」

少し思考停止してしまっていたが、桃子の挨拶によって俺達もハッとして動き出す。
桃子に続き、恭也と美由紀も挨拶をする。

「初めましてシャルちゃん。俺はなのはの兄で恭也だ」

「初めましてシャルちゃん。私はなのはのお姉ちゃんで美由紀っていいます」

俺も美由紀に続き、挨拶をする。

「初めましてシャルちゃん。俺はなのはの父で士郎という。そして、ようこそ高町家へ」

笑顔でシャルちゃんを迎え入れる。

「はい、よろしくお願いします。士郎さん、桃子さん、恭也さん、美由紀さん」

シャルちゃんもまた笑顔で俺たち高町家を受け入れてくれた。
本当に嬉しい限りだ。娘がまた一人増えたようで、父親として何というか嬉しいな。

「でも、迎えに行けなくて済まなかったねシャルちゃん。
連絡が無いから今日来るとは思わなかったんだ」

一応そう謝っておく。連絡が無いとはいえ迎えに行かなかったことには違いないからだ。

「いえ、私の方こそ連絡を出来なくてすいませんでした。
でも偶然、なのはと会うことが出来たので大丈夫でした。ねっ、なのは?」

「うん! それで話していたらこんなに遅くなっちゃたの。ごめんなさい」

「私からも謝ります。ごめんなさい」

なのはとシャルちゃんはそう言って俺たちに謝る。

「まぁ大丈夫だったんだから、良いよな・・・?」

恭也が頭を掻きながらそんなことを言う。
最初はなのはを注意するつもりだったのだろうが、シャルちゃんの手前ではそうはいかないのだ。

「さぁシャルちゃん、どうぞ上がって。今すぐ夕御飯を用意するから♪」

桃子はシャルちゃんの持っていた荷物を受け取り、家の中へと案内する。
そうだ、シャルちゃんの分の御飯がない。なら張り切って美味しいものを作ろう。
あはは、腕が鳴る。

「あ、お母さん。私がシャルちゃんを部屋に案内するからお父さんを手伝ってあげて」

なのはがシャルちゃんの手を取り、シャルちゃんに用意していた部屋へと連れて行く。

「ちょっとなのは、シャルちゃんの荷物わすれてるよ~」

今度は美由紀が桃子からカバンを受け取り、なのはたちの後を追っていった。

「それじゃあ、シャルちゃんのご飯を作ろうか」

「そうですね」

そして俺と桃子はキッチンへと戻る。

「えっと、俺は・・・道場で瞑想でもするか」

一人残された恭也は、一人寂しく道場へと向かった。


†††Side高町士郎⇒なのは†††


私とお姉ちゃんはシャルちゃんを部屋に案内して、明日の予定を決めるために話し合っている。
色んな場所を案内したいし、私の大親友であるアリサちゃんとすずかちゃんも紹介したい。

「なのは、シャルちゃん、夕食にしようか!」

部屋の外からお父さんが呼んでいる。

「行こうか、なのは、シャルちゃん。お父さんとお母さんの料理、すごくおいしいんだよ♪」

「そうなんですか? それはすごく楽しみです」

お姉ちゃんがそう言って立ち上がる。
私たちもお姉ちゃんに続いて部屋を出て、ダイニングへと向かった。


†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††


家庭で一緒にご飯を食べる。私にとってそれは初めての経験だった。
生前、私は独りだった。両親は忙しく、姉もまた屋敷を空けることが多かった。
そして騎士団に入ることになって屋敷を出るその日もまた家族はいなかった。
送り出してくれるのは使用人だけ。悲しいとは思わなかった、それが当たり前だと。
だから、なのはの家族と、同僚とはまた違う誰かと一緒にご飯を食べたのがすごく嬉しかった。
嬉しくて、いつの間にか涙を流していたことに気付かなかった。

「「「「「シャルちゃん!!?」」」」」

みんなが私を見て、何故か驚いている。

「はい、何でしょうか?」

「何でしょうか?って、シャルちゃん泣いてるよ・・・?」

「料理に何か問題でもあったのかな?」

なのはが泣きそうな顔で私を見て、士郎さんが自分の作った料理を前に何か考えている。
桃子さんや恭也さん、美由紀さんも心配そうな顔で私を見ている。
そうか、私はあまりの嬉しさに涙を流してしまっているらしい。
目を擦って涙を止めようとするけれど、全く止まらないどころかさらに溢れてくる。

「ち、違うんです。料理は・・・すごく・・・美味しくて。
そうじゃなくて・・・こうして誰かと一緒に食べるの初めてで、それが・・・嬉しくて・・・だから・・・」

堰を切ったかのように私は泣き出してしまった。
何だこれは? “界律の守護神(テスタメント)”である私には涙はもう必要に無いのに、嬉しいなんて思っちゃダメなのに。
今、胸にあるこの感情は、これだけは無くしたくない。
そっか、これが心の壊れた“彼”を元に戻した想い、“幸せ”なんだ。
未だ泣き続ける私の元に、なのはを始めとした高町家の人が集まって来た。

「寂しかったのねシャルちゃん。この家にいる間は私のことを本当のお母さんだと思ってくれていいのよ」

そう言って桃子さんは私を抱きしめて、両腕の中に私を包み込む。
温かい。そしてほのかに香る優しい香り。これが・・・母の温もり・・・?

「私のこともお姉ちゃんだと思ってね」

美由紀さんは私の左手を取り、泣いてくれている。

「俺のことは本当のお父さんだと思ってくれ」

士郎さんも桃子さんみたいに私を大きな体で包んでくれる。

「そうだな。なら、俺もお兄ちゃんだと思ってくれ」

恭也さんは少し照れた顔をして言ってくれた。

「シャルちゃん、私は・・・」

なのはが私の右手を握りながら続きを話す前に、

「フフ、妹よね」

少し意地悪をする。

「ふぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

高町家になのはの声が響き渡る。

「キュキュイ」

ユーノが肩まで上ってきて頬を、その小さな手で叩いてくる。

「ありがとう、ユーノ。なのはも、士郎さんも、桃子さんも、恭也さんも、美由紀さんも本当にありがとう」

私はもう大丈夫だ。
いつか別れる日がくるけど、それまではこの幸せに甘えていたい。そう思った。
その日の夜は、一つの布団に私となのは、桃子さんが入り、右側の布団には
美由紀さん、左側には士郎さんがいる。ちなみに恭也さんは部屋に入りきらず、自分の部屋で寝ることになった。ごめんなさい。



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