心
†††Sideなのは†††
シャルちゃんとルシル君は、ルシル君の使い魔さんたちとの戦いを始めた。
そして私たちも“闇の書”さんを止めるために動き出す。
そしてさっきからフェイトちゃんと“闇の書”さんが何度も激しい攻防を繰り返している。
今度は一度距離をとって、私とフェイトちゃんは射撃魔法を放つ。
「プラズマランサー、ファイア!」
「アクセルシューター、シュート!」
弾幕を張って“闇の書”さんの行動を制限する。
その間にユーノ君たちがバインドで捕獲しようするけど、
≪Panzergeist≫
“闇の書”さんは魔力を纏って、私とフェイトちゃんの仕掛けた弾幕を力ずくで突破してきた。
「あれってシグナムの・・・!」
フェイトちゃんが驚愕の声を上げる。
どうやらあの魔力を纏う魔法はシグナムさんも使っていたらしい。
「降り注ぎて彼の者を討て、氷牙凍羽刃」
≪Eiszapfen Flügel≫
“闇の書”さんが腕を振るったと同時に、氷で出来た鳥の羽根のようなものがいくつも降り注いできた。
≪≪Round Shield≫≫
私たちは何とか防ぐことが出来たけんだけど、今の魔法は間違いなくシャルちゃんの魔法だった。
でも威力がかなり高い。
「なのは! フェイト! おそらく闇の書は、蒐集した魔導師の魔法を使えるんだ!
だから気をつけて! もしかするとルシルの魔術も使ってくるかもしれない!!」
ユーノ君が離れた場所からそう説明してきた。
ルシル君の魔術も使う? そうなったらかなりまずいかもだよ。
「なのは、もしそうならルシルの魔術が使われる前に・・・!」
「うん、なんとしても闇の書さんを止めないと・・・!」
私の火力とフェイトちゃんの速度で必ず止める。止めてみせる。
フェイトちゃんは“闇の書”さんを翻弄するように空を翔ける。
「バルディッシュ!」
≪Haken Saber≫
「はああぁぁーーーっ!!」
「ゼーリッシュ・ヴィーダーシュタント」
≪Seelisch Widerstand≫
またシャルちゃんの魔法を使った。
フェイトちゃんの――“バルディッシュ”の一撃を完全に防いでいる。
“闇の書”さんは今完全に動きを止めている。今がチャンスだ、きっと。
「ディバイィィィン――≪Master !!≫――・・・え!?」
ディバインバスターを撃つ準備に入った途端、“レイジングハート”が叫ぶ。
“闇の書”さんは、フェイトちゃんの一撃を防いでいる左手とは逆の右手を私に向けて、
「ディバインバスター」
≪Divine Buster Full Burst≫
「撃ち滅ぼせ」
私の魔法を撃ってきた。防御じゃなくて回避行動に入ろうとした時、横合いから大きな蒼い砲撃が飛んできた。
そして“闇の書”さんが撃ったディバインバスターを掻き消していった。
『すまない!そっちに流れ弾が飛んだ! 大丈夫か!?』
ルシル君から私たちに向けて念話を通してきた。
どうやらさっきの閃光はルシル君のものらしいんだけど・・・。
(流れ弾って威力でもないんだけど)
どちらにしても助かったことには違いないのでお礼を言っておく。
『えっと、大丈夫! 逆に助かったからありがとうだよ!』
『そうか、それは良かった・・のか? まぁ無事ならそれでいいんだ』
そう言ってルシル君からの念話が切れる。ルシル君の方も大変らしい。
さっきからシャルちゃんとルシル君が戦ってるビルがいくつも崩れて去っているし。
どんな魔法を使えば、ビルを一撃で倒壊させられるんだろう・・・?
「チェーンバインド!」
「リングバインド!」
そしてもう一度ユーノ君とアルフさんがバインドを仕掛け、見事に成功した。
「・・・今だ! レイジングハート!」
≪Divine buster, extension≫
「シュートッ!!」
「バルディッシュ!」
≪Plasma Smasher≫
「ファイア!!」
動きを抑えられた“闇の書”さんへ向けて、二人同時の砲撃を放った。
完全に直撃コースだ。だけど、
「盾」
≪Panzer schild≫
たったその一言で現れたベルカの魔法陣に、私とフェイトちゃんの砲撃が止められた。
“闇の書”さんは二つの砲撃を防ぎながら、新しい魔法をさらに撃ってきた。
「刃を以て、血に染めよ。≪Blutiger Dolch≫穿て、ブラッディダガー」
いくつもの短剣が私とフェイトちゃん、ユーノ君たちへと襲い掛かる。
なんとか直撃する前に離脱できたことで大したダメージはない。
「輝けたる光において其の御姿はいと美しくただ煌いて。
その威光の前にて有象無象は塵芥と化す。満ち足る――」
“闇の書”さんの足元に五つの円環が現れて、球体を形作りながら回っている。
何かの魔法の準備だと思うんだけど、どういう魔法かわからないから迷っていると、
「逃げろぉぉぉーーーーーーっ!!!」
遠くで金髪の女の子と戦っていたルシル君が叫んだ。
その様子は尋常じゃなくて、すごく焦っているようにも見える。
そしてすぐさまルシル君から念話が来た。
『急いでその場から離れるんだ! それはかなりまずい!
えっと・・そうだ! フェイト! アルフ! 指輪と腕輪を持っているか!?』
『え、あ、ごめんなさい。ルシルに一人前と認めてもらえるまでは使わないってアルフと決めたから、今は部屋に大事にしまってあるんだ』
『Oh! あぁそうか・・・とりあえず彼女から可能な限り距離を取れ!
一応放たれる前に妨害するが、もし放たれた場合は全力で防御に移ってくれ!』
ここまで切羽詰ったルシル君の声を聞くのは初めてかもしれない。
そして魔法の正体を知っているということは、あれはルシル君の魔術なんだろう。
「アルフ、ユーノをお願い! なのはは私と!」
「あいよ!」
「え? うん!」
フェイトちゃんに抱えられて“闇の書”さんから全力で離れる。
円環の球体の中心には、ルシル君の魔力光サファイアブルーの閃光が揺らめいていた。
†††Sideなのは⇒フェイト†††
ルシルの尋常じゃない声を聞いて、あの子が放とうとしている魔法がルシルの魔術であることはすぐに理解できた。
私たちはルシルの声に従って全力で距離を取る。
一体どういう効果のある魔術なのかは聞けなかったけど、かなりの広範囲攻撃だと推測できる。
かなり距離が開いたところで、“バルディッシュ”から信じられないことが告げられた。
≪Sir, there are noncombatants on the left at three hundred yards.
(左方向300ヤード、一般市民がいます)≫
それはこの結界の中に一般の人が取り残されているとのことだった。
私となのはは“バルディッシュ”が示した方向へと変更して一般人を探すことにした。
「なのは、この辺・・・!」
「うん・・・!」
抱えていたなのはを離す。私は信号機の上に降り立ち、周囲を見渡して取り残された人を探す。
≪Twenty, Eighteen≫
“バルディッシュ”によるとすぐ傍にいるはずなんだけど見つけられない。
「あの! すみません! 危ないですからそこでじっとしててください!!」
なのはは見つけたらしい。私もなのはの視線の先へと目を向ける。
そしてそこにいたのは、
「なのは・・・?」
「フェイトちゃん・・・?」
友達のアリサとすずかの二人だった。
その突然の出来事に、私となのははただアリサとすずかを見ていることしか出来なかった。
†††Sideフェイト⇒ルシリオン†††
「くそっ! 邪魔をするなエヴァ!」
今から“闇の書”が放とうとしているのは俺の魔術の一つだ。
その名を“光神の調停”。全方位無差別砲撃の対軍攻性術式だ。
一対多数において効果を発揮する殲滅特化の上級魔術。
放たれた砲撃が何かに着弾すると、そこからさらに広範囲に魔力波が広がリ、さらに被害をもたらす。
(まさか複製された魔術を、しかも上級術式を魔法へと構築するとは思いもしなかった)
確かにそれは不可能ではないが、俺より先に成し遂げていたことに純粋に驚く。
いや、“闇の書”が“異界英雄”を召喚できた時点でそれも念頭においておくべきだった。
「はは、こいつは見どころのある見物じゃないかルシリオン!
貴様の“魔術”はかなり極悪な効果を持っていたな。
どうなるのか一緒に見ていようじゃないか!」
再度“エンシス・エクセクエンス”を作り出してエヴァが微笑む。
円環の中心で輝いている光の量からして臨界点は近い。
おそらく術の発動はもう止められない。
『シャル! 君は動けるか!?』
頼みの綱であるシャルへとリンクを通して話す。
しばらくは繋がらなかったが、ようやく通じてくれた。
『ムリ! かなり手古摺ってる! さっきからカットカットってうるさくて!
それに影のような女や大男なんてのが次々と出てきて参ってんの!
ルシルの方こそどうにかできないわけ!?』
『出来たら苦労はしない! ・・・が仕方ない。ズェピアも俺が引き受ける!
シャルはすぐにフェイトたちと合流して、あの子達を守ってくれ!!』
『・・・・・・分かった』
地上に放たれる砲撃が少なければシャルの防御力なら凌ぎきることが出来るはずだ。
リンクを切り、エヴァの攻撃を全力で避ける。
“エンシス・エクセクエンス”がビルへと刺さり、ビルを全壊させた。
「ぐっ、危ないだろうエヴァ! 当たったらどうする!?」
触れた固体や流体を強制的に気体へと相転移させるなんて、人間相手に使うようなものじゃないというのに。
「貴様の多層甲冑を抜くにはこれしかないだろう」
「見てのとおりその術式を使っていないことくらい君は気付くだろう!?」
「んん? わからないなぁ、何せ不可視の多重障壁だからな~」
エヴァは完全にイタズラ好きの子供ような笑みを浮かべている。
俺が多層甲冑を使っていないのを知ってての“エンシス・エクセクエンス”か。
このドS王女め。
『うわぁ! ルシル君! それ以上は壊さないでぇ!!
結界内だからいいんだけど、それでも少しは抑えてぇ!!」
『すいません! 無理です!!』
エイミィからそんな通信が入るが、無理な注文だった。
ビルの瓦礫が周辺へと吹き飛んでいる中、その瓦礫ごとエヴァに向けて魔術を放つ。
「刻め、汝の天災!」
「お?」
指先から五つの雷の斬撃を飛ばす。
周囲一体に強烈な雷光が放たれ、そしてそれに伴った轟音が鳴り響く。
エヴァには直撃こそしなかったが、それでも動きを止めることができた。
「シャル!」
「分かった! あとはお願い!」
シャルと入れ代わるようにしてズェピアへと突撃する。
シャルはものすごい速さで、この場から離脱してフェイトたちのもとへと向かった。
「上演中に飛び入り参加とはいささか無粋だと思うが。
いやしかし、筋書きのない殺戮は愉しめるというもの。
それゆえに喜んで相手を引き受けよう我が漆黒の主よ」
「あのガキどもを守るために、私とそいつを一人で相手するか」
ズェピアが両目から血涙を流しながら静かに笑う。
そしてエヴァはゆっくりと俺の背後へと降り立つ。
「前門にはズェピア、後門にはエヴァ、か」
だがおそらくタタリではないズェピアを倒すことは容易だろう。
それにしても俺に設定されている“異界英雄”の召喚時間は過ぎ去っている。
それでも未だに存在し続けている、ならば俺と闇の書の召喚における違いはやはり・・・
(プログラム、というのが最大の差ということなのか?
だがいくらなんでもこれは反則過ぎやしないか?)
「戦闘中における深い思考は自身と味方の破滅を導く。貴様の言葉だろうルシリオン」
――凍る大地――
足元から突き出してくる氷柱群。
「っ!!」
「さぁ第三幕だ」 ――クリーチャーチャンネル(アポトーシス)――
完全に氷柱で捕らわれてしまった。そこに、ズェピアは堕ちた真祖の影を具現させた。
俺の身動きを封じてからの必殺。というわけか。
「だが甘い。輝き燃えろ、汝の威容!!」
足元に広がる直径500mの円陣より蒼く燃える炎が噴き上がる。
エヴァは咄嗟に上空へ逃げたようだが、ズェピアはまともに飲まれた。
威力と神秘が弱いとはいえ、それでも直撃によって完全に動きを止めるズェピア。
「カット・・カカ、カット! キィィィィーーーーキキキキキキキキキキ!!
蛮能ハ改革シ、衆生コレニ賛同スルコト一千年! 学ビ食シ生カシ殺シ称エルコト更ニ一千!
麗シキカナ、毒素ツイニ四肢ヲ侵シ汝等ヲ畜生ヘト進化進化進化セシメシ!」
≪我が手に携えしは確かなる幻想≫
ズェピアの魔力が膨れ上がり、奴がマントに包まれ暴力の渦へとなる。
俺は咄嗟に同じものを選択し、真っ向からの力勝負に持ち込んだ。
「ネズミよ回せ、秒針をサカシマに誕生をサカシマに世界をサカシマに!!」
「開幕直後より鮮血乱舞、烏合迎合の果て名優の奮戦は荼毘に伏す」
――ナイトルーラー・ザ・ブラッドディーラー――
「「回せ回せ回せ回せ回せ回せ回せ回せ回せ回せ回せ回せ回せ!!!!」」
二つの暴力がせめぎ合い、弾かれては再度衝突を繰り返し、ビルをさらにもう一棟潰す。
吹き飛ぶ瓦礫を面倒くさそうに払い除けるエヴァを視線の端で捉えた。
術後に生まれた隙を突いてくるようなことはなさそうだ。
今ならズェピアの術後硬直を狙って倒すことが出来る。
≪我が手に携えしは確かなる幻想≫
取り出したるは、ズェピアと同じエルトナムの名を持つ少女の保有していた武装。
そしてまずはズェピアの動きを完全に抑えるため、取り出した第四聖典へと磔にする。
――今此処に神罰を執行す――
「まずはお前からだズェピア! ガンバレル、フルオープン!!」
砲撃の衝撃によって吹き飛ばされないように、背の剣翼を上下に具現した円陣に突き刺す。
――バレルレプリカ・オベリスク――
「・・・・・これが此度の・・・私の終演・・か」
ブラックバレル・レプリカより放たれた閃光に飲み込まれたズェピア。
まずは一人、ズェピア・エルトナム・オベローンの始末が完了した。
そして次の瞬間、“闇の書”より“光神の調停”が放たれた。
†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††
ルシルが私と入れ代わるようにしてズェピアへと突撃したのを確認してから、私はなのはたちの元へと向かった。
なのはとフェイトの魔力反応を頼りに空を飛んでいると・・・・ようやく二人を見つけた。
見つけたんだけど、傍にはさらに人がいる。
「・・・うそ、アリサ!? すずか!?」
なのはたちと一緒にいたのは、信じられないことにアリサとすずかだった。
「シャル・・・ちゃん?」
「ちょっと! あんたもどういうことよこれ!?」
すずかの戸惑いの声と、アリサの大声が静まり返っている街に響く。
なのはとフェイトも完全に戸惑っている感じだ。
「えっと・・・映画の撮影?」
紛れもなく大嘘な言い訳。
もちろんそんなものが通じるわけもなくアリサが怒鳴る。
「そんなわけないでしょ!?」
これは本当のことを説明するしかないかも。
だけど今はそんなことをしている時間がない。
“闇の書”からずいぶんと離れているというのに、その彼女の静かな声が私たちに届いた。
「――即ち公正たる断罪の閃光、コード・・・バルドル」
その瞬間、遠くで大きく輝いていた球体から何条もの砲撃が“下方”にのみ放たれた。
あの魔術は全方位砲撃のはずだけど、彼女はどうやら“下方にのみ放たれる”ようにしたらしい。
「(どれだけ器用なわけ!?)なのは! フェイト! 障壁!!」
「「はい!!」」
――ディフェンサー・プラス――
フェイトがアリサとすずかにドーム状のバリアを張る。
私となのはとフェイトの三人は、バリアの周囲に三角形の円陣を組み、どこから魔力波が襲い掛かってきても対処出来るようにしておく。
今思えば無差別なのが幸いした。
放たれた砲撃のほとんどが私たちからかなり離れた場所に着弾して、大きいドーム状の魔力波を生み出し続けている。
だけどやっぱりそう上手いことは続かず、こっちにも最初の一撃が来た。
「来た!!」
≪Wide area Protection≫
≪Round Shield≫
「真楯!!」
それぞれが障壁を張って、今から私たちに襲い掛かるであろう莫大な魔力波を待つ。
そしてまずは第一波が私たちの元へと到達した。
「うっぐ・・・!」
「なんて・・・強い・・くぅぅ・・・!」
なのはとフェイトがあまりの威力に呻き声を上げる。
私は魔術による最高の障壁のため、それほどの衝撃は感じられない。
だけどやっぱり最高の守り。一度使っただけでかなりの魔力を消費してしまった。
『フェイト! なのは! シャル!』
『三人とも大丈夫!?』
アルフとユーノから念話が入る。
余裕のないなのはとフェイトの代わりに私が対応する。
『私たちは何とか耐えてる! だけど結界内にアリサとすずかが取り残されていたの! そっちで何とか出来ない!?』
そう告げると、今度はエイミィから連絡が入った。
『ごめん! その魔法とその余波が治まるまでもう少しだけ耐えて!!』
それもそうか。こんな中で転送なんて出来るわけがない。
今なお続く一撃のみでなのはとフェイトは辛そうにしている。
あといくつの砲撃が放たれるか分からないけど、これ以上なのはたちに負担はかけられない。
(魔力炉破綻覚悟でキルシュブリューテの能力を完全解放するか、それともこのままこの方法で耐えるか・・・・どうする?)
“魔力炉破綻”を起こすのはかなり痛いけど、これからの魔力波には対処できる。
そのかわり最低でも三ヶ月は確実に魔力行使は出来なくなるだろうけど。
そしてようやく一撃目の魔力波が途切れた。
だけど最悪なことに、一度あることは二度、二度あることは三度というように、近くに三発続けて着弾した。
「うっそっ! また来る! なのは! フェイト!」
「「う、うんっ」」
これは結構まずい状況だ。なのはとフェイトの顔からは疲労が見える。
「・・・待って二人とも、やっぱり私一人でいい。
なのはとフェイトは、この後に待ってる闇の書との戦いに備えて魔力を温存して」
「シャルちゃん!?」
「だ、ダメだよシャル!」
二人が止めてくるけど、そんな余裕はない。
あと20秒とせずに、魔力波が到達する。もう迷っている時間はない。
「目醒め――「とおっ!」――え!?」
いきなり目の前に現れたのは、生前に見たことのある少女。
「シュタッと華麗に、みんなのアイドル、フェンリル推・参❤」
ピースサインを決めてそこに突っ立ていたのは、大戦時に色々な意味で有名だった駄犬(いや駄狼か)こと“フェンリル”だった。
†††Sideシャルロッテ⇒フェイト†††
闇の書から放たれたルシルの魔術の威力は半端じゃなかった。
一撃を防ぐだけでも大変だったのに、さらに付近に三発が着弾した。
私たちは再び襲い掛かってくる魔力波を防ぐために障壁を張ろうとしたけど、シャルがその対抗策でも持っているのか自分一人で防ぐって言ってきた。
「シャルちゃん!?」
「だ、ダメだよシャル!」
なのはと二人して止めようとしたけど、シャルはもう聞いていないみたいだ。
私たちのところに三つの魔力波が到達するまで時間がない。
このまま迷っていると、私たちだけじゃなくて、アリサやすずかまで被害に遭ってしまう。
(シャルに託すしかないの?)
シャルはルシルと同じ魔術師だから何とか出来るのかもしれない。
それでも、そんな簡単に任せるなんてことは・・・出来ない。
シャルが“キルシュブリューテ”を掲げたのを見た。
「目醒め――「とおっ!」――え!?」
私たちの目の前に現れたのは、綺麗な白い肌に黒い瞳、地面に付きそうなほど長い黒髪の、たぶんエイミィくらいの年の女の人だった。
頭に輝く黄金のカチューシャに付けられているリボンを軽く払って一言。
「シュタッと華麗に、みんなのアイドル、フェンリル推・参❤」
ピースサインを私たちに向けてウィンクしたフェンリルと名乗ったその女の人。
この緊張感を根こそぎ奪ってしまっていた。
「ちょっと何で――「防御は私に任せて」――は?」
そう言ったフェンリルさんは、両拳を地面へと殴りつけた。
すると私たちの周囲に綺麗な銀色の光の壁が現れる。
その直後に私たちへと到達した三つの魔力波を完全に防ぐ。
それからしばらく続いた魔力波にも耐え切って見せた。
「「・・・・すごい」」
なのはと同じ言葉が口から出た。
「ちょっと何でここにいるわけ!? それ以前に出て来れるなら初めから出て来い!!
ていうかルシルが初めからこうしていれば良かったじゃん!!」
シャルがフェンリルさんへと詰め寄り、フリルがたくさんある黒い服を掴みとって、激しく揺らしている。
「そんなことより。“バルドル”も打ち止めのようだね。
その子たちを避難させるのが先決と思うんだけど。どう剣神?」
「う。確かに。エイミィお願い」
シャルがフェンリルさんから離れて、エイミィへと通信を入れる。
「えっと、アリサちゃん、すずかちゃん」
なのはが二人に声をかける。私も何か言ったほうがいいのかもしれない。
「もう、大丈夫だから」
そんなことしか言えなかった。
「すぐ安全な場所に運んでもらうから、もう少しだけじっとしててね」
アリサとすずかが立ち上がって何かを言おうとしていたけど、その前に転送が始まって私たちの前から姿を消した。
†††Sideフェイト⇒なのは†††
「見られちゃったね」
今まで隠してきたことがアリサちゃんとすずかちゃんにバレてちゃった。
フェイトちゃんはそれに頷いて答えてくれて、さっきまでアリサちゃんとすずかちゃんが居た場所を見つめる。
シャルちゃんはフェンリルさんと何か話をしているようだ。
するとフェンリルさんは私とフェイトちゃんへと振り向いて、
「それじゃ、私はここまでだから」
そう言ったフェンリルさんの体が次第に薄れていき、光の粒子みたいに散っていく。
「助けてくれて、ありがとうございました!」
「あ、ありがとう!」
お礼だけは言っておかないとダメだと思った。
それを聞いたフェンリルさんは笑顔で手を振ってくれて、そして消えていった。
「シャルちゃん、フェンリルさんって」
「うん、ルシルの使い魔の一つ」
そう言ったシャルちゃんは“闇の書”さんの方へと視線を移した。
「ルシルの魔術も使えるということは、私の魔法だけじゃなくて魔術も使えると見たほうがいいかもしれない。
ねぇ、ユーノとアルフにアリサたちの方を任せたいんだけど」
「うん、そうだね」
「うん。私も賛成」
私とフェイトちゃんは、ユーノ君とアルフさんに念話でアリサちゃんたちを守って欲しいとお願いした。
これでアリサちゃんとすずかちゃんの方は大丈夫と思う。
あとは“闇の書”さんをどうにかするだけ。
『なのはちゃん、シャルちゃん、フェイトちゃん。クロノ君から連絡。
闇の書の主に、はやてちゃんに投降と停止を呼びかけてって!」
エイミィさんから通信が入る。やっぱりもうそれしかないみたいだ。
その“闇の書”さんがいつの間にか接近してきていて、私たちを空から見下ろしていた。
『はやてちゃん、それに闇の書さん、止まってください!
ヴィータちゃんたちを傷つけたの、私たちじゃないんです!!』
『シグナムと私たちは――』
『我が主はこの世界が、自分の愛する者たちを奪った世界が悪い夢であってほしいと願った。
我はただ、それを叶えるのみ。主には穏やかな夢の内で永久の眠りを。
そして愛する騎士たちを奪った者には永久の闇を』
ダメだ、完全に私とフェイトちゃんを敵としか見ていない。
「闇の書さん!!」
「お前も、その名で私を呼ぶのだな」
すごく悲しそうな表情をした“闇の書”さん。
「それでもいい。私は主の願いを叶えるだけだ」
「願いを叶えるだけ? そんな願いを叶えて、はやてちゃんは本当に喜ぶの!?
心を閉ざして、何も考えずに主の願いを叶える道具でいて、あなたはそれでいいの!?」
いいわけがない。だって、
「我は魔導書、ただの道具だ」
「だけど言葉を使えるでしょ!? 心があるでしょ!?
そうでなきゃおかしいよ、本当に心がないんなら泣いたりしないよ!!」
闇の書”さんは涙を流しているから。
私が“闇の書”さんと呼んだら悲しい顔をした。
ほら、悲しいって思える感情があるんだよ。辛いって思える心があるんだよ。
――たとえプログラムでも、人と関われば心は生まれる――
ルシル君の言葉だ。あんな顔をするんなら、あの子には心がちゃんとある、そう断言できる。
「この涙は主の涙。私は道具だ、悲しみなどない」
「・・・・トロイメライ、セット」
≪Jawohl, Meister≫
「さっきから聞いていれば後ろ向きなことばかりウダウダ言ってんじゃない!!」
シャルちゃんの怒号が響く。
「あなたが自身を道具と言い張るならそれで結構!
でもその所為ではやてが死ぬとしても、あなたはそれでいいというわけね。
あぁそれなら確かにあなたは心のない、願いのない単なる道具だ」
「っ・・・! 貴様に何が解る!? 私が一体どれだけ主の幸せを願ったか!
そんな願いすら叶えられず、自らが愛しき主を殺めるこの絶望が―――!?」
シャルちゃんの言葉を聞いた“闇の書”さんが怒鳴った。
でもそれに気づいた“闇の書”さんは、自らの言葉に驚愕している。
「やっぱり心が、願いがあるじゃない。それなのに自分を道具なんて言わないで。
信じてあげて、あなたの主を、きっとあなたの想いに応えてくれる」
シャルちゃんは優しい表情と言葉で“闇の書”さんに語りかける。
「そうだよ! はやては優しい子だからきっと大丈夫!」
フェイトちゃんもそれ続いて説得に移る。
でもそんなときに大きな地震が起きた。
そして、いろんな場所から炎と水晶、それに何かの触手のようなものが突き上げてきた。
「・・・・いつもより早く崩壊が始まってしまったか。
私もじきに意識を失くすことになるだろう。
もう止まることは出来ない。なら、主が最後に願ったことだけでも叶えたい」
「まだそんなことを言うか愚か者!!」
シャルちゃんや私たちの言葉は届かなかったのだろうか?
「氷槍断罪」
≪Code Shalgiel≫
私たちに向けて氷で出来た槍が放たれた。
「炎牙崩爆刃ッ!」
シャルちゃんが炎を放ってそれを全部焼き払う。
フェイトちゃんはマント消して、攻撃態勢に入る。
――ソニックセイル――
「この駄々っ子!」
≪Sonic Drive≫
「言うことを――≪Ignition≫――聞けぇーーーーッ!!」
“闇の書”さんが魔導書の方をフェイトちゃんへと向ける。
フェイトちゃんの一撃をシールドで防ぐ。次に起こったのは信じられない事態。
フェイトちゃんが光となって薄れていったのだ。
「フェイトちゃん!?」
「まさか、人ごと取り込めるというの!?」
そしてフェイトちゃんは完全にその姿を消されてしまった。
≪Absorption≫
魔導書が一言発しそのページを閉じた。
「全ては安らかな眠りの内に」
やっぱりおかしな展開になってしまいした。
もう少し最後のほうを上手く表現したかったのですが、このようなことに。
ズェピア瞬殺についてですが、空が飛べない(はず)彼では、ルシルとエヴァの空中戦には着いていけないので、早々に逝ってもらいました。
複製武装・術式:メルティブラッドシリーズ
ブラックバレル・レプリカ
バレルレプリカ・オベリスク
ナイトルーラー・ザ・ブラッドディーラー
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