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迫り来る刻限
 

†††Sideシャルロッテ†††


「ん?・・・・ぅん・・・・っ!」

「起きたようだなシャル。気分はどうだ?」

意識が覚醒してすぐに耳に届いたのはルシルの声。
私がいるのはベッドの上で、横になって寝かされている状態だ。
何でこんなところで寝かされているのだろうか・・・?

「ルシル? どうしてこんな・・・・あ」

思い出した。シグナムに負けて、すぐになのはと同じように魔力を奪われたんだ。
いくらなんでもあまりに不注意だった。
戦闘後こそ最も気を付けるべき時だ。なのにあんなにも簡単に後ろをとられるなんて。

「思い出したか、何はともあれ無事でよかった。
それにしても何故魔術を使わなかった? キルシュブリューテと君の固有魔術を使えば楽に勝てただろうに」

ルシルはそう言うけど、私は魔術師ではなく魔導師として戦いたかった。
だからこそ使わなかった、使いたくなかった。

「やだ。私は魔導師なんだよ? だったらデバイスと魔法を使うのが当然でしょ」

「・・・・はぁ、そこまで染まっているわけか。君は魔導師じゃない。魔術師だ。
3rd・テスタメント・シャルロッテ、使えるものは使わなければ意味がない。
デバイスと魔法で勝てないと判明したならば、即座に魔術を使用するべきだった」

今の私が望んでいる在り方を否定してきたルシル。
分かってる、そんなことくらいは・・・分かってるんだ。

「それと君の魔術は非殺傷設定が出来ないという件だが、いくらでもやりようがある筈」

「そうかもしれない。それでも私は相手が魔導師ならば、魔導師として戦い続ける。
例えその所為で負けたとしても、死んだとしても・・・・この道を貫く!」

これは意地だ。すごくつまらない意地。本当の自分、守護神を忘れていたいから。
それに死んだとしても消えるのは本体から切り離された分身体だ、何の影響もない。
そして未だに“界律”との本契約が済んでいない以上は死んでもまた召喚されるはずだ。

「・・・・そうか、判った。君がそれほどの覚悟を持ち望むなら貫き通せ。
今まで散々こき使われ続けた君だ。それの時間くらいなら少しは許されるだろう」

ルシルは頭を掻きながら呟く。
その表情はさっきまでとは違い、とても柔らかなものへと変わっていた。

「ごめんねルシル。私さ、今ね、すごく楽しいんだ。
こんなに楽しい時間は初めてなんだ、だから大切にしたい。
いつかこの世界を去って、別の世界へと呼ばれても尚忘れることがないように」
 
「気にするな、この数千年の間に何度も組まされたパートナーだ」

「ご迷惑をおかけします。っとそうだルシル、現状はどうなっているの?」

これだけは聞いておかないといけない。
ルシルも真剣な表情を浮かべて答えてくれた。

「ああ、アースラが稼動したことによって、司令部を海鳴市のマンションからここアースラに移した。
そして君のことだが、活動出来るのなら高町家へと帰れるらしいが・・・どうだ?」

「全くもって問題なし。体のほうの傷、ルシルが治してくれたんでしょ」

体を包み込むようにして、ルシルの魔力が残留しているのが分かる。

「ああ。そしてもう一つ、君のデバイスであるトロイメライだが」

「・・・あまり良くない話・・・みたいね」

ルシルの表情から察知する。
確かにあれだけ派手に壊れたのだから、最悪二度と使えないなんてことも。

「かなりの破損で、核にすら被害が及んでいるらしい。無茶をしたものだ。
で、どれだけ急いで修復したとしても年内ギリギリだそうだ」

「・・・・え? 直るの?」

「直る。だからそんな泣きそうな顔をするな」

よかった、あの子は直るんだ。
負けたままで“トロイメライ”を失ってしまうかと思ったら泣きそうだった。

「うん。でも本当によかった、これでリベンジできる」

「程々にな。それじゃあ俺は無限書庫での調査に戻るから。
リンディ艦長には連絡を入れておく。そのままなのはたちと帰るように」

シグナムへのリベンジに燃えていると、ルシルがそう言って椅子から立ち上がった。
本当にお世話になります。

「ありがとう、ルシル」

「ああ」

少しした後、なのはたちが来て、私は海鳴市へと戻った。


†††Sideシャルロッテ⇒ヴィータ†††


「助けてもらったってことで・・・いいのよね?」

今、あたしを助けけて、フライハイトを襲った仮面の男のことについての話をしている。
これまでにあいつは何度かあたしらを助けたりしているようだけど。

「少なくとも奴が闇の書の完成を望んでいるのは間違いないだろう」

「完成した闇の書を利用しようとしているのかもしれんな」

「ありえねぇっ! だって完成した闇の書を奪ったってマスター以外には使えないじゃん!」

それだけは絶対にない。
それに完成したらマスターは誰にも侵されない力を得ることになるんだ。

「完成した時点で主は絶対的な力を得る。脅迫や洗脳に効果があるはずもないしな」

それ以前にそんなことをさせないのもあたしらの役目だ。
主になったはやてをずっと傍で守り続ける。あたしらの力はそのためだけのものだ。
それ以外の使い方なんていらない。

「まぁ家の周りには厳重なセキュリティーを張ってるし、万が一にもはやてちゃんに危害が及ぶようなことはないと思うけど」

「念のためだ。シャマルはなるべく主の傍を離れんほうがいいな」

「うん、そうするつもり。それはそうとシグナム、あなたはもう大丈夫なの?」

「ああ、フライハイトに負わされた傷はお前のおかげで完全に癒えた。
レヴァンティンに関しても破損は見た目に比べて軽微だったしな、今日中には完全に修復出来るだろう」

シャマルの気遣いにシグナムがそう答える。
あたしは合流したシグナムの姿を見て愕然とした。
体中が傷だらけで“レヴァンティン”も途中から折れていたあの姿、信じたくなかった。

「ならいいのだけれど」

「セインテストにフライハイトか。あの二人が同時に攻めてくると対処しきれんかもな。
フライハイトの方に関してはもうしばらくの猶予があると思うが」

ザフィーラの言うとおりだ。
シグナム相手に一対一で、しかも剣での戦いであそこまでダメージを与えたフライハイト。
そしてあたしとシグナム、ザフィーラの三人を相手に渡り合えたセインテスト。
そこに高町とテスタロッサ、その守護獣に管理局がさらに介入してくると対抗のしようがない。
あともう少しなんだ、もう少しで闇の書が完成する。
そうしたらはやては・・・はやては?
なんだろう? 心のどこかで何かが引っかかる。

「えっと・・・さ、闇の書を完成させてさ、はやてが本当のマスターになってさ、そしたらはやては幸せになれるんだよね?」

つい口にしてしまった。
何でそんなことを言ったのか分からないけど、たった今覚えた疑問がどうしても気になった。

「何だいきなり」

「闇の書の主は大いなる力を得る。守護者である私たちはそれを誰より知ってるはずでしょ?」

「そうなんだよ、そうなんだけどさ。あたしはなんか大事なことを忘れてる気がするんだ」

一度覚えた疑問はもう消えてくれそうにない。
すごく大事なことを忘れたこの言いようのない気分。
このまま続けると嫌なことが起きてしまいそうで怖い。
しばらく続く沈黙の中、二階の、はやての部屋から大きな音が聞こえた。
それは二つの何かが倒れた音、まさか・・・・はやて!?
急いではやての部屋へと向かったあたしたちは倒れていたはやてと車椅子を見つける。

「はやて!? はやて!!」

すごく苦しそうに胸を押さえるはやて。
あたしたちじゃどうすることも出来ない。

「病院! 救急車!」

すぐに病院に連絡して来てもらった救急車に乗って、あたしたちは病院へと向かった。


†††Sideヴィータ⇒なのは†††


「本当にもう大丈夫なのシャルちゃん?」

海鳴の街へと帰ってきて、私とフェイトちゃんの前を歩くシャルちゃんに声をかける。
様子からして大丈夫そうに見えるんだけど。

「大丈夫だって。ルシルの魔術で魔力炉(システム)以外は完治済み。
まぁ魔法も魔術も使えないけど、それくらいなら休んじゃいられないよ」

私たちに振り向いたシャルちゃんは笑顔でそう言ってるけど、やっぱり心配だよ。

「無理はダメだよシャル。トロイメライだって、その・・・」

「二人とも気にし過ぎ。時間はかかるけど直るんだから大丈夫。
それよりお腹空いちゃった、早く桃子母さんのご飯が食べたいな~♪」

シャルちゃんは前を向いて歩き出した。
ねぇシャルちゃん。大丈夫って言われたら、私たちは心配しづらいんだよ。


†††Sideなのは⇒シグナム†††


病院へと運ばれた主はやては診察を受け、今は個室で休んでいる。
さっきまでの苦しそうなお姿は今はない。
石田先生の言葉にもきちんと受け答えをしているから、痛みのほうは治まったのだろう。

「はぁ、ホッとしましたぁ」

「せやから、ちょぉ眩暈がして胸と腕を攣っただけやて言うたやん。
もうみんなして大事にするんやからぁ」

「でも、頭を打ってましたし」

「何かあっては大変ですから」

主のあのお姿を見れば誰でも心配する。
そしてその苦痛の原因を知っている私たちなら尚更。

「まぁ来てもらったついでに、ちょっと検査とかしたいからもう少しゆっくりしてってね。
さて、シグナムさん、シャマルさん、ちょっと」

石田先生に呼ばれた私とシャマルは部屋を出て三人だけで話をする。

「今回の検査では何の反応も出てないですが、攣っただけということはないと思います」

「はい、かなりの痛がりようでしたから」

「麻痺が広がり始めてるのかもしれません。
今までこういう兆候はなかったんですよね?」

主があれほど痛むお姿は見たことはない。
いや、見たことがないだけで実際は分からないとしか言いようがない。
私たちが主の傍を離れていた時間にもしかしたら・・・。

「と思うですが、はやてちゃん、痛いのとか辛いのとか隠しちゃいますから」

「発作がまた起きないとは限りません。
用心のためにも少し入院してもらったほうがいいですね。大丈夫でしょうか?」

「・・・・はい」

そう答えるしかなかった。
それから検査が続き、部屋が夕日に染まった頃、主に入院することを告げた。

「入院!?」

「ええ、そうなんです」

主とヴィータの表情が曇る。

「あ、でも検査とか念のためとかですから心配ないですよ。ね?」

シャマルが私に同意を求めてきたのでそれに答える。
今は主を不安がらせてはいけない。

「はい」

「それはええねんけど、わたしが入院しとったらみんなのご飯は誰が作るん?」

それはイタイところを突いてきましたね主。
私たち騎士の中で料理を作れるのはシャマルだけだ。
だがその味付けは未だに微妙で、不味くはないが美味しくもないという半端な料理だ。
主が入院しているその間、シャマルの料理を食べ続けるとなると少し鬱だ。

「それは、まぁ何とかしますから、お気になさらず」

「そ、そうですよ大丈夫です・・・・たぶん」

私とシャマルは苦笑いを浮かべる。
これくらいの逆境乗り越えてみせなければ。

「毎日会いに来るよ! だから、だからさ大丈夫」

「ヴィータはええ子やなぁ、そやけど毎日やのうてええよ。
やることないし、ヴィータ退屈やん」

主はヴィータの頭を撫でながら微笑んでいる。
ご自分が辛いはずなのに気にかけるのはいつも我々守護騎士のこと。
ヴィータはそれに渋々頷いた。

「ほんならわたしは三食昼寝付きの休暇をのんびり過ごすわぁ。
あ、あかん! すずかちゃんがメールくれたりするかも!」

「それなら私が連絡しておきますから大丈夫ですよ」

「うん、お願いや」

「では一度戻って着替えと本を持ってきます。ご希望の本がありましたら」

「う~んと、そやなぁ、任せるわぁ」

こうして私たちは一度家へと戻った。


†††Sideシグナム⇒クロノ†††


「ユーノ、ルシル。今のところはどうだ?」

僕は無限書庫で調査をしているユーノとルシル、そしてアリアに一度連絡することにした。

『じゃまずは僕から。うん。ここまでで分かったことを報告しとく。
まず闇の書っていうのは本来の名前じゃない。古い資料によれば、正式名称は夜天の魔導書。
本来の目的は、各地の偉大な魔導師の技術を蒐集して研究するために作られた主と共に旅する魔導書。
破壊の力を振るうようになったのは、歴代の持ち主の誰かがプログラムを改変したからだと思う』

『ロストロギアを使って、無闇矢鱈に莫大な力を得ようとする輩は今も昔もいるってことね』

『その改変の所為で、旅をする機能と破損したデータを自動修復する機能が暴走してるんだ』

「転生と無限再生はそれが原因か?」

どこの誰かは知らないが余計なことをする奴もいるものだ。
もし時間を遡れるのなら、プログラムを改変した奴を見つけ出し一発とは言わず、何発も殴り飛ばしているものを。

「古代魔法ならそれくらいは有りかもね」

『おそらく。そして一番酷いのは持ち主に対する性質の変化。
一定期間蒐集がないと持ち主自身の魔力や資質を侵食し始めるし、完成したら持ち主の魔力を際限なく使わせる、無差別破壊のためだけに。
だからこれまでの主は完成してすぐに・・・』

自滅する、か。大体のことは分かったな。重要なのはそれに対する手段なんだが。

「停止や封印方法についての資料は?」

『それはルシルに調べてもらってる。ルシル』

『ああ。悪いがちゃんとした解決方法は未だに見つからないな。
だがおそらく完成前の停止は難しいだろう』

「何故だ?」

一番必要なことが分からないのはあんまりだ。
ルシルもそうなのか表情が暗い。

『闇の書が真の主だと認識した人間以外では、面倒なことにシステムへの管理者権限が使用できない。
つまりはプログラムの停止や改変は不可能というわけだ。
さらに厄介なことに、無理に外部から操作しようとすれば主をも吸収して転生するというシステムのオマケ付き。
まったく改変した奴を血祭りにあげたいな』 

確かにそれでは停止を試みることは出来ないな。

『そうなんだよね、だから闇の書の永久封印は不可能って言われてる』

「元は健全な資料本がなんと言うかまぁ」

「闇の書、夜天の魔導書も可哀想にねぇ」

全くその通りだとしか言いようがないな。
改変が行われなければ、あの守護者たちも別の生き方を出来ただろうに。

「調査は以上か?」

『現時点では俺からは以上だ。対策方法もまだ見つかってないから調査を続行する』

『僕のほうも今のところは以上かな。
でもさすが無限書庫だね、探せばちゃんと出てくることがすごいよ』

『確かにな。これくらいの情報量を保有していれば当然かもしれないが』

二人からは一切の疲労を感じることは出来ない。
むしろ調査することを楽しんでいるかのようだ。
このまま二人を無限書庫の司書にするのも悪くないかもしれない。

「そうか、二人とも済まないがもう少し頼む。アリアも頼む」

『うん』

『了解した』

『あいよ、ロッテ、あとで交代ね』

「オッケー、アリア、あとで交代ね」

無限書庫との通信が切れたことで静まり返る。
闇の書に対しての情報をいろいろ知ることができたのは幸いだ。
だが対抗策が未だ見つけられない以上はどうしようもないか。
そしてもう一つ気になる件、仮面の男についてだ。

「エイミィ、仮面の男の映像出してくれ」

「はいな」

モニターに映る仮面の男。始まりは初めて守護騎士と邂逅した日。
ヴィータを逃すまいとルシルが魔術を放とうとした際にバインドを決めて、尚且つ気づかれずにルシルへと接近し背後からの一撃。
続いてはルシルと守護騎士の戦いの最中、視界が悪いうえで長距離から正確にルシルの両足首にバインドを決めた。

「この人の能力って結構ありえない気がするんだよね~。
この二つの世界。最速で転移しても二十分はかかりそうな距離なんだけど。
なのはちゃんの新型バスターの直撃を防御、長距離バインドをなのはちゃんとフェイトちゃんの二人に決めて、それから僅か九分後には、いくらダメージを負っていたとしても、あのシャルちゃんに気づかれずに背後から一撃」

なのはのバスターを容易く防御しきるそのレベルの高さ。そしてシャルの背後から襲撃。
あの二人のことを知っている者なら誰もがこの仮面の男の異常さに疑問を抱くだろう。 

「かなりの使い手ってことになるね~」

「そうだな、僕でも無理だ。ロッテはどうだ?」

僕の師の一人ロッテに尋ねてみる。

「あ~無理無理。私、長距離魔法とか苦手だしね」

「アリアは魔法担当、ロッテはフィジカル担当できっちり役割分担してるもんね」

「そうそう!」

「昔はそれで酷い目に遭わされたもんだ」

「その分強くなったろ? 感謝しろっつうの」

素直に感謝できないんだよ、修行時代を思い起こすとね。
全く、二人が得意なことを分担して攻めてくるから対処に困ったものだ。


†††Sideクロノ⇒シャマル†††


「ふんふ~ん♪」

八神家で一人お弁当作りに精を出していると、はやてちゃんのお友達、すずかちゃんからメールが来た。
内容は今日の放課後、すずかちゃんはお友達を連れて、はやてちゃんのお見舞いに行ってもいいですか?とのものだった。

「すずかちゃん、良い子ね」

あの子の優しさに感動しているのも束の間、送られてきた写真を見て私は凍りついた。
そこに写っていたのは、管理局の魔導師であるなのはちゃん、テスタロッサちゃん、そして先日蒐集したフライハイトちゃんだったのだ。
一瞬で頭の中が白くなる。まずいことになった。
このままだと“闇の書”の主がはやてちゃんだと知られてしまう。
私は混乱しながらもシグナムへと連絡を入れた。

「テスタロッサちゃんとなのはちゃん、フライハイトちゃんの管理局魔導師の三人が今日はやてちゃんに会いに来ちゃうの! すずかちゃんのお友達だから!」

『落ち着けシャマル、大丈夫だ。幸い主はやての魔法資質はほとんど闇の書の中だ。
詳しく検査されない限りバレはしない』

「それはそうかもしれないけど、でも・・・!」

シグナムの冷静な声に少しずつだけど私も冷静に戻りつつあった。

『聞け。つまり私たちと鉢合わせることがなければいいことだ』

「そう、うん。・・・う~ん、顔を見られちゃったのは失敗だったわ。
出撃したとき変身魔法でも使ってればよかった」

全ては過ぎたことだと分かっていても後悔ばかりが出てくる。
もう少し気を遣っていればこんなに考える必要もなかったのに。

『今更悔いても仕方ない。ご友人のお見舞いのときは私たちが外そう』

「うん・・・」

折角のはやてちゃんのお友達なのに、挨拶どころか会うことも出来ないなんて。

『あとは主はやて、石田先生には我らの名を出さぬようにお願いを』

「はやてちゃん、変に思わないかしら?」

『仕方あるまい、頼んだぞ』

「うん」

絶対に怪しまれちゃう。大切なお友達に私たちの名前を出さないでなんて。

「もう、どうしてこんなことになっちゃうの?」

この家に、だた私のため息だけが聞こえた。
日も傾いて夕方。結局気になってしまったから、私は変装して、はやてちゃんの病室の前にいるんだけど・・・。

(本当に良い子たちなのね、なのはちゃんたち)

楽しそうに談笑するはやてちゃんたちを見て、罪悪感がハッキリと生まれてしまった。
確かに必要な行為だったとしても、お見舞いの品を持ってきてくれたなのはちゃん。
率先して面白い話をしてはやてちゃんを笑わせているフライハイトちゃんの二人は特にだ。

「えっと・・・・あの、シャマルさん? 何やってんですか?」

私に声をかけてきたのは石田先生だった。
私を見て若干引いている感じだ。

「あ! ちょっと、その! 気になりまして!」

「中に入ればいいじゃないですか、というのは禁句なんですよね」

「あの・・・えっと・・・」

それから場所を変えて石田先生と話をした。
私たちにはやてちゃんを支えてあげてほしいと。
それから少しして、テスタロッサちゃんたちが帰ったのを確認して、私ははやてちゃんの病室へと戻った。

「お友達のお見舞い、どうでした?」

「うん、みんなええ子やったよ、楽しかった。
あと他にもルシリオン君って子がおるんやって。
写真見せてもらったんやけど、女の子みたいにすっごく綺麗なんよ。
また時々来てくれるって言うてたし、今度はルシリオン君も連れてきてくれるって」

「っ! そうですか、良かったですねはやてちゃん(大丈夫、落ち着いて)」

シグナムの言ってたとおりはやてちゃん“闇の書”の主だと気付かれてない。
ならたとえセインテスト君が来ても大丈夫なはずだ。

「そやけど、もうすぐクリスマスやな。
みんなとのクリスマスは初めてやから、それまでに退院してパァッと楽しむことが出来ればええねんけど」

「そうですね、出来たらいいですね」

それまでに何としても終わらせる。
はやてちゃんが笑っていられる世界のために。


やっぱり難しいですA’sのストーリー。
けど2ndエピソードの終了まであと少し、ここまできたら精一杯頑張ります。


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