砂漠の決闘
†††Sideシャルロッテ†††
「それじゃ、いってきま~す!」
「いってきます!」
「二人ともごめんね~」
なのはとフェイトの二人が今日の夕食の材料を買いに出掛けた。
以前までならルシルが担当していたことらしいんだけど、ルシルは今、本局にいる。
だからこそエイミィが手の空いていたなのはとフェイトに頼んだというわけだ。
「いや~、買い物なんか頼んじゃって悪いことしたかな~?」
「二人には買い物という形のデートを楽しんでもらうってことでいいかと、仲良いし」
ちなみに私は勉強中。もちろん魔法の、と言いたいところだけど、そうじゃなくて学校の勉強だ。
私は、未だに“サッカー女帝”と敬うアホな男子たちとバカをやってしまい、その反省文と上乗せされた宿題を片付けるために現在孤軍奮闘中なのだ。
まぁそんなアホな男子に乗っかった自分もまたアホだがそこは忘却の彼方へ。
「それよりエイミィがここを空けるほうがよっぽどまずいから。
リンディ艦長たちが帰ってくるまでの間、エイミィが指揮官代行なんだしね」
そして今、管理局の人間はエイミィしかいない。
リンディ艦長もクロノたちも今は本局へと出向いているから。
何でもアースラの武装追加が済んだから試験運行をするためらしい。
「あはは、デートかぁ。そう思えば確かに悪くないかもだね」
エイミィが腕を組みながら納得してくれた。
それじゃさっきから気になっているアースラの追加武装について聞いてみようか。
「あ、そだ。ねぇエイミィ。アースラの追加武装って何か聞いてもいいかな?」
「う~んと、たぶんアルカンシェルのことだと思うんだよね。
アルカンシェルっていうのはね、簡単に説明すると空間歪曲と反応消滅によって対象を殲滅する魔導砲なんだ。
艦船武装の中でもかなり高い殲滅力を持っててね、効果範囲は発動地点を中心として百数十キロっていうとんでもない物なんだ。
本当なら使わないに越したことないんだけど」
空間歪曲と反応消滅か。ルシルと殲滅姫の対界真技に似てるかも。
「今回の事件でそんなものって必要なの? いくらなんでもやり過ぎだと思うんだけど」
「実はね、今までの闇の書事件にもこのアルカンシェルを使うことが何度からあるんだ。
前回の闇の書事件の際にもアルカンシェルを使って消滅させたって話だし」
そう話したエイミィの表情は暗く悲しげなものへと変化していた。
気になるけど、私なんかが聞いていいような雰囲気じゃないため諦める。
「そこまで酷いことになるんだ、闇の書の事件って・・・!? なにっ!?」
突然鳴り響く警報。それは守護騎士発見を知らせるものだった。
いくつものモニターが設置された部屋で私とエイミィ、留守番のアルフがモニターに映ったシグナムとザフィーラの姿を確認した。
「文化レベル0、人間は住んでいない砂漠の世界だね。
結界を張れる局員の集合まで最速で45分ってまずい、まずいよこれ」
結界の張れる局員が揃うまでの時間が掛かりすぎだと焦るエイミィ。
シグナムとザフィーラは私たちに見つかったことには気付いていないだろうけど、45分もその世界に留まるかといえば限りなく“NO”だ。
こんなときにルシルがいればどうとでもなるというのに。
「エイミィ、私が出るからなのはたちに連絡を入れておいて。
アルフ、私とのコンビじゃ不満だろうけどザフィーラの相手はお願い」
「ふふん、そんなことないさ。あんたとルシルには世話になっているからね。
出来る限りのことはやってやるよ。それに、一度シャルとも組んでみたかっし」
アルフが子犬フォームから人間フォームへと変身する。
これで決まりだ。フェイトには悪いけど、シグナムとの決着は私が先につける。
「待ってシャルちゃん! えっと、なのはちゃんたちが来るまで待って!」
エイミィのその必死さに驚くけど、今はそんなことを言っている場合じゃない。
「なのはたちが来るまでの時間稼ぎくらいどうってことない。行くよアルフ」
「おう!」
†††Sideシャルロッテ⇒シグナム†††
目の前にいるのは恐ろしく巨大な蛇のような生物。
先程から何回か攻撃を与えているが一向に倒れない。
「ヴィータが手古摺るするわけだな。これは少々厄介な相手だ―――なっ!?」
油断しているつもりはなかった。
なかったのだが、突如背後に現れた尾から伸びた触手に捕われてしまった。
「うっぐ、しまった・・!」
巻きついた触手がさらに力を強めてきた。
正直これはまずい。このままでは己がなすべきことを為しえぬまま・・・
≪Säge Form≫
「はああぁぁぁぁッ!!」
上空より現れたのは、真紅の片翼を羽ばたかせたフライハイト。
その手にしている“トロイメライ”は片刃の長刀ではなく両刃の大剣となっている。
そして刀身の周りには小さな刃と、刃から伸びたいくつもの魔力刃が唸りをあげて回転している。
フライハイトは降下してきた勢いのまま蛇の頭を踏みつけ、私を捕らえている触手を全て切り捨てた。
「トロイメライ! カートリッジロード!」
≪Explosion≫
「蛇ごときがシグナムを仕留めようだなんて数千年早いッ!」
≪Blitz Ermordung(雷殺)≫
――雷牙神葬刃――
フライハイトはその大剣を蛇へと突き刺し、直接蛇の体内に雷撃を流し込んだ。
天地をも蛇をも貫いたその真紅の雷は、実に美しいものだった。
蛇は聞くに堪えない叫び声を上げながら地中へと潜り姿を消した。
「・・・礼は言わんぞ、フライハイト」
助けてもらったことには変わりないが、私の誇りがそれを許さなかった。
「礼なんて必要ないよシグナム。シグナムほどの剣士をあんな蛇如きに奪わせるわけにはいかないから。
シグナム。あなたを倒すのは、私か、それともフェイトのどっちかってことだけが絶対なの」
フライハイトのその言葉を聞いた私はあまりにも可笑しく笑ってしまった。
フライハイトには、テスタロッサにはないある“もの”が存在している。
それは純粋な闘争心。戦いを楽しむ戦闘者のみが持つ想いだ。
「なにか可笑しい? シグナム」
私の笑い声を聞き、フライハイトは少し不機嫌さを顕わにしながらそう口にする。
「いや、お前はどこまで私に似ているのかと思ってな。
決してお前を馬鹿にしたわけではない。だからそんな顔をするなフライハイト」
フライハイトは軽くため息を吐き、私をただ見据える。
「似ている、それは以前から私も思ってかな。あなたは私と同じ戦う者。
戦って得るもの、得たものを守りたいがためだけの戦闘者。
何故あなたたちがそこまでして蒐集なんてことをしているのか聞きたいけど、まずは白黒つけてからにする」
「ふふ、そうか、そうだな。やはり騎士はそうでなくてはな。
本当なら預けた勝負はまたにしたいところだが、お前のその気概に私は応えたい。
ゆえにこそ、己が仕えし主のために私はこの騎士の魂を振るおう」
フライハイトにつまらない小細工は通用しない。
それより同じ剣の騎士として戦うからには純粋な剣での勝負にしたい。
「トロイメライ――≪Schwert Form≫――今日こそ私たちに決着を」
「ああ。まずはお前との勝敗を決しよう」
フライハイトは蒼い刀剣“トロイメライ”をいつもの形態へと戻し、鍔へとカートリッジを三発装填した。
そして背にあった片翼が、無数の羽となり散っていった。邪魔になるからだろう。
私も“レヴァンティン”へとカートリッジを装填する。
互いに準備は万端、気合も十分、やるべきことは目の前の相手を打破するのみ。
相手は正真正銘の騎士。セインテストのようにはいくまい。
「「いざ、参る!!」
†††Sideシグナム⇒アルフ†††
「よう、ご主人様が気になってしょうがないかいザフィーラ?」
シャルと一緒に来た世界で、あたしはザフィーラと対峙する。
ザフィーラはさっき遠くで光った一筋の赤い雷が気になっているようだ。
まったく、フェイト以上の雷撃を放つなんてシャルもまたすごいヤツだよ。
「お前か」
ザフィーラはあたしへと向き直り静かに告げる。
そこには焦りも、あたしが邪魔しに来たことへの憤りも感じない。
「あんたのところのご主人様も一対一、こっちも同じだ。少しの間付き合ってもらうよ」
それを聞いたザフィーラは構えをとり、戦闘開始を待ちながら告げる。
「シグナムは我らの将だが、主ではない」
「あんたの主は、闇の書の主ってわけね」
あたしも構えをとっていつでも戦闘に入れるようにする。
「行くよ!!」
あたしの気合の声が開戦の合図となり、お互いの顔に殴りかかった。
†††Sideアルフ⇒なのは†††
「エイミィさん!」
私とフェイトちゃんは、エイミィさんから連絡を受けてすぐに帰ってきた。
「ごめんね二人とも! 今すぐシャルちゃんとアルフのところに――っ!?」
警報が鳴ったあと、モニターには“闇の書”を持ったヴィータちゃんの姿が映った。
「もう一箇所!? こっちが本命!? なのはちゃん、フェイトちゃん、頼める・・・!?」
「「はいッ!」」
シャルちゃんとアルフさんなら大丈夫だと信じて、私とフェイトちゃんは、“闇の書”を持つヴィータちゃんのもとへと向かうことになった。
†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††
「「おおおおおおッッ!!」」
さっきから何度もお互いのデバイスが衝突して火花を散らす。
やっぱりシグナムは強い。私の弱体化云々を除いてもその腕前は確かだ。
それを証明するかのように、私もシグナムも体中に刀傷がいくつも付いてしまっていて、少なからず出血している。
量からして失血死なんてことには絶対にならないし、なったら困る。
(やっばい。強い。でもそれ以上に楽しい・・・♪)
ルシルは以前、シグナムの力量は多く見積もっても中の下の騎士程度だと言っていた。
けど実際に剣を交えた私は、シグナムは上位近くに入り込める腕だと思った。
「「カートリッジロード!」」
互いが同時にロードして標的を狙う。
どちらの魔法が一早く相手に到達するかが勝負の分かれ目。
「紫電――」
「光牙――」
相手はすぐ目の前。
“レヴァンティン”を振り下ろすシグナム、“トロイメライ”を振り上げる私。
速さは互角、ならば威力がものを言う。
「――一閃!!」
「――月閃刃!」
真紅の閃光を纏う刃と紅蓮の炎を纏う刃がぶつかり合う。
しばらくの膠着状態が続いて、私の耳に“ピシッ”っといやな音が届いた。
「っく」
シグナムは自ら間合いをとり、“レヴァンティン”を見る。
もちろん私もバックステップで後退して“トロイメライ”を――正確には刀身を――見る。
「・・・まさかレヴァンティンにヒビを入れるとは。さすがだなフライハイト」
「シグナムこそさすが。結構頑丈に作ってもらったんだけどなぁ~」
私の“トロイメライ”にも僅かだけどヒビが入ってしまっていた。
“トロイメライ”は、私の魔力とカートリッジの魔力に耐えられるように作ってもらったんだけど、やはり相手は歴戦の剣士。
一筋縄ではいかないということだ。
「しかし、純粋な剣技では決着が見えんな。残念だが手段を選んではいられないようだ」
シグナムは“レヴァンティン”を鞘へと収め、カートリッジをロードした。
「そう、だね。ならこちらも手段は選ばずにあなたを倒すから。トロイメライ、ゼーゲフォルム」
≪Explosion. Säge Form≫
“トロイメライ”を剣技ではなく、ただ破壊に特化したゼーゲフォルムへと再度変形させた。
魔力刃が伸びた無数の刃が回転して唸りを上げ始める。
「いくぞ!」
シグナムが瞬時に間合いを詰め、“レヴァンティン”を鞘に収めたまま突撃してきた。
よく見ると鞘にはとんでもない魔力が帯びているのが分かる。
「トロイメライ!≪zerschlangen(粉砕)≫鞘ごと斬り絶つ!!」
「レヴァンティン!!」
――パンツァーガイスト――
回転刃と鞘をぶつかり、ガリガリとものすごい音を発する。
いくら魔力を籠めた鞘の防御力といえど、この破壊に特化した回転刃には意味はないよシグナム。
次第に鞘を砕いていく“トロイメライ”。だけどこのタイミングでシグナムは“レヴァンティン”を抜き放った。
「ここまで刃が食い込んでいると避けれまい!」
≪Sturmwinde≫
シグナムは私の目の前で“レヴァンティン”を振るい、炎の衝撃波を叩きつけてきた。
「っ・・・!≪Seelisch Widerstand≫うぐっ・・!」
“トロイメライ”がギリギリで障壁を張ってくれたおかげで直撃は免れた。
けどその威力に最後まで抗えず、弾き飛ばされてしまった。砂漠に背中から落ちて咽る。
少し離れた場所に“トロイメライ”が突き刺さって砂塵を巻き上げていたけど、“トロイメライ”の意志なのか回転刃が止まる。
まさか鞘を囮として使ってくるとは思わなかった。
「一か八かの賭けだったが、どうやら私に運が向いたようだ」
「運、なんかじゃない」
私は立ち上がって、少し離れた地点に突き刺さっている“トロイメライ”を手に取り、シグナムと向き合う。
あれはシグナムの運ではなく実力だ。
鞘に収めたまま突撃してきて、そのまま攻撃に入った時点で気づかなかった私の失態。
あんな策をこんな短時間によく考えたものだ。
「まだやるかフライハイト?」
「当然」
私は“トロイメライ”をもう一つの形態へと変形させる。
「トロイメライ、ツヴィリンゲフォルム」
≪Explosion. Zwillinge Form(双刀形態)≫
†††Sideシャルロッテ⇒ザフィーラ†††
よもや会う度に力をつけてくるとは。このアルフと名乗った者には驚嘆を覚える。
「あんたも使い魔、守護獣ならさ、ご主人様の間違いを正そうとしなくていいのかよっ!?」
何も知らぬ愚か者が、我らの主に間違いなど何一つとして在りはしない。
黙って聞いていても良かったのだが、我らが主への侮辱は許せん。
「闇の書の蒐集は我らが意思。我らの主は我らの蒐集については何もご存知ない」
これだけは言っておかなければ気が済まん。
心優しきあの少女のことを貶すような発言はこれ以上口にはさせん。
「なんだって? それは一体どういう・・・!?」
「主の為ならば血に染まることも厭わず。我と同じ守護の獣よ、お前もまたそうではないのか」
「そうだよ。でも、だけどさっ!!」
言っておきたいことは言い終えた。
ならばもう話すことはない。この者を打ち据えて、シグナムのところへと向かわねば。
セインテストと同格であろうフライハイト。純粋な剣技であればシグナムが上手だろう。
しかしあのフライハイトからは言い知れぬ何かを感じる。
†††Sideザフィーラ⇒ヴィータ†††
『シグナムたちが!?』
『うん、砂漠で交戦してるの。フライハイトちゃんとテスタロッサちゃんの守護獣と』
とことん邪魔をする奴らだな。
おとなしくあたしらの蒐集を黙って見てればいいのに。
『テスタロッサって奴はいないのかよ?』
あの犬っころとフライハイトのコンビってのもおかしな話だ。
『ええ、いないわ』
『そんじゃ他は? セインテストと高町・・・なんとか』
高町なんとかは別にいいとして、頼むから出てくんなよセインテスト。
もう嫌だぜあんな思いするのは。
『なのはちゃんね・・・いないわ。セインテスト君も同様に』
助かった。あいつがいないってだけで十分だ。
それじゃ今いるのはフライハイトと犬っころ。
フライハイトはシグナムと同じ剣士だから、強いシグナムが勝つに決まってる。
ザフィーラもあんな犬っころなんかに負けることはないはず。
『でも長引くと見つかっちまうな。しゃあねぇ、助けに―――チッ・・!』
『どうしたのヴィータちゃん?』
「『くそっ、こっちにも来やがった。テスタロッサとあいつ・・・』高町ナントカ!」
あ~もう! 言いにくい名前しやがって。
もっと言いやすい名前に変えやがれっ。
「う゛っ、なのはだってば! な・の・は! ちゃんと覚えてよヴィータちゃん!」
「うっせぇ! にゃのはって言いにくいんだよ!」
「ほらっ、また間違ってるぅ!」
「知るかっ! お前なんか高町ナントカで十分なんだよッ!」
「にゃっ!? ひっっどぉぉーーーーいっ!」
言い合った所為でお互いに肩で息をしている。一体何してんだろあたし。
「えっとなのは、今はね、その・・・」
「えっ? あ、うん、ごめんねフェイトちゃん。はふぅ・・・。
ねぇヴィータちゃん、やっぱりお話を聞かせてもらうわけにはいかないのかな?
もしかしたらだけど、手伝えることがあるかもしれないよ?」
テスタロッサに促されて、高町が理由によっては手伝えるかもしれないって言ってきた。
そう微笑みかけてきたあいつを見てあたしは少し心が揺らいだ。
だって似てるんだ。はやてのあの優しくて温かい笑顔に。
でもあいつらは管理局だ、あたしらの邪魔をする敵だ。だから・・・!
「うるせぇっ! 管理局の人間の言うことなんて信用できるか!」
「私、管理局の人じゃないもの。民間協力者」
「そっちの奴は管理局の人間だろ!」
テスタロッサに“アイゼン”を向けて言い放つ。
高町が何て言おうと傍には管理局の奴がいる。
「わ、私だって何か手伝えるかも、だよ?」
テスタロッサが慌ててそう言うけどやっぱり信用できない。
“闇の書”の蒐集は一人につき一回。高町からはもう出来ないし、テスタロッサから蒐集しようにも二人がかりで向かって来られたらさすがにまずい。
カートリッジも無駄に出来ないし、ここは撤退するのが一番だ。
「てめぇらをぶっ倒すのは、また今度だ! 吼えろ! グラーフアイゼン!!」
≪Eisen geheul≫
†††Sideヴィータ⇒フェイト†††
なのはの説得も空しくヴィータの心には届かなかった。
もし私が一緒じゃなかったら、あの子の返事も変わっていたのかな?
≪Eisen geheul≫
あの子は、手に生み出した赤い球体を“アイゼン”で打ちつけた。
その瞬間、世界が光と爆音に包まれた。
あまりの音に私となのはは耳を塞だ。その隙にヴィータが逃走を図った。
「っ、しまった、逃げられる!」
「待ってフェイトちゃん!」
私はヴィータを追おうとしたけど、なのはに呼び止められた。
なのはに振り向いてみると、“レイジングハート”をバスターモードへと変え、砲撃の準備に入っていた。
「な、なのは・・・?」
「大丈夫、絶対に逃がさないから! いくよ、久しぶりの長距離砲撃!」
≪Load cartridge≫
“レイジングハート”がロードし、前方に環状魔法陣が二つ現れる。
いつ見てもなのはの砲撃は魔力濃度が高く、そして綺麗だ。
≪Divine buster. Extension≫
「ディバイィィィン・・・バスタァァァーーーッ!!」
桜色に輝く砲撃が放たれた。そして真っ直ぐヴィータへと向かい直撃した。
当たる直前の様子からして防御も回避もしてないことは確かだ。
「え~と、ちょっとやり過ぎちゃったかも・・・しれない」
≪Don't worry≫
“レイジングハート”は大丈夫って言っているけど、私もやり過ぎかなってちょっぴり思う。
けど、その心配はなかった。何故なら、突然私となのはにバインドが掛けられたからだ。
「「っ!?」」
煙の中から現れたのはヴィータともう一人、仮面の男だった。
「こんな距離でバインド!?」
「あれがクロノが言ってた要注意人物!?」
私たちがバインド破壊の魔法を使って自由になったときには誰もいなかった。
「ごめんねフェイトちゃん。私がフェイトちゃんを止めたから」
「ううん。もしあのまま行ってたら、あの仮面の人に気づかなかったと思う。そうしたらどうなっていたか」
どちらにしても私たちがこの世界ですることはなくなった。
†††Sideフェイト⇒シグナム†††
≪Explosion. Zwillinge Form(双刀形態)≫
フライハイトの言葉に従い、“トロイメライ”が二振りの短剣となった。
「・・・それがお前の奥の手か?」
「奥の手というわけではないけど、この形態でないと扱えない魔法があるから」
その瞳には自信が漲っている。
どうやらハッタリなどではなさそうだ。
「そうか。ならば私も奥の手とまではいかないが・・・・」
≪Explosion. Schlange Form≫
カートリッジ一発を消費して、シュベルトフォルムからシュランゲフォルムへと変形させる。
シュランゲフォルムを見たフライハイトの表情が変わった。
「いくぞ! はあぁぁっ!!」
――シュランゲバイセン――
連結刃がフライハイト目掛けて地を疾走する。
≪Eins Rubin Flügel≫
「はっ!」
フライハイトは背中からあの真紅の片翼を出し、空へと回避するが、それだけでこの攻撃から逃れたと思わぬことだ。
「甘いわ!」
連結刃が渦を巻きながらフライハイトを追撃する。
もう少しで包囲できるというところで
「これだけで避けれたなんて初めから思ってない・・・!」
≪Gefrieren unt Finsternis(氷闇)≫
×十字に振るわれた双剣より巨大な氷の刃と影の刃が放たれる。
その二つの刃が、まずは連結刃の勢いを止め、二発目で叩き落した。
「トロイメライ!≪Geschwindigkeit Aufstieg(速度上昇)≫はああぁぁッ!!」
片翼が大きく羽ばたき、フライハイトは速さを上げて私へと突撃してきた。
そして双剣を×十字に掲げて振り下ろす。
「おおおおおっ!!」
少し砕けた鞘を使ってそれを防ぎ捌く。
さらに破損が大きくなってしまったが、今の斬撃の直撃よりは幾分かマシだ。
「まだまだぁぁ!」
フライハイトは翼を消し、右の短剣のみを逆手に持ち、独楽のように回転しながらの連撃を繰り返してきた。
私はそれを跳躍して回避。再度連結刃を突撃させる。
†††Sideシグナム⇒シャルロッテ†††
私の斬撃を跳躍して避けたシグナムは、もう一度私へと連結刃を向けてきた。
私は双刀を交差させて、剣先が到達すると同時に左右に引いて弾く。
弾かれて勢いを失くした連結刃の間を飛んで、未だに滞空しているシグナムへと向かう。
それを見たシグナムは“レヴァンティン”をシュベルトフォルムへと戻し鞘へと収めたあと、カートリッジをロードする。
(今度は何をするつもり?)
さっきみたいな方法で私の斬撃を防ぐとでもいうのだろうか?
ツヴィリンゲフォルムはゼーゲフォルムに比べれば直接的な破壊力はないけど、それでもそれなりの威力を持っている。
今のあの鞘で防ぎきれるとは思えないけど、それを選択するというのなら・・・
「今度こそ斬り絶つ!≪Geschwindigkeit Aufstieg≫ はああぁぁぁ!!」
再び出した片翼を羽ばたかせて、シグナムのもとへと向かう。
「これで終わりだ、飛竜・・・一閃!!」
鞘から抜き放たれた“レヴァンティン”が再度連結刃として襲い掛かってきた。
あの速さと直径からして回避は無理と判断する。
(くっ、まさかこんな魔法も持っているなんて)
ならばと私は障壁の役割も持つ片翼を纏うことで、回避ではなく真正面から飛竜一閃の一撃を受けることにした。
ドンッ!と強い衝撃が翼に包まっている私に届く。
衝突したすぐに片翼が無数の羽根となって散っていって消えてしまうのが分かる。
だけどまだ攻撃は続いているため、私はすぐさま双刀を掲げ盾とする。
そして何とか耐えることに成功した。
「抜けたぁぁーーーーっ!!」
片翼はダメになったし“トロイメライ”もまたさらに破損。
私自身も結構なダメージを受けてしまった。だけどそれでも尚戦えるだけの力は残っている。
「なに!?」
未だに健在な私を見たシグナムは驚愕の声を上げる。
連結刃になっていることで防御が薄い今こそチャンス。
「風牙・・・真空烈風刃!」
≪Echt Orkan(真嵐)≫
私の風嵐系最強の術式をシグナムへと放つ。
右の短刀より真空刃、左の短刀より烈風刃を別々に放つことによって、同時に放つより威力が高まった一撃を放つことが可能となった。
≪Panzergeist≫
シグナムは体に魔力を纏った上で鞘を掲げて防ごうとするけど、鞘の半分ほどが破壊された。
そしてそのまま直撃して地面へと落下した。
(これで決まっていればいいのだけれど・・・)
いくら完全に避けれなかったとはいえ、飛竜一閃を受けたのがまずかった。
私は地面へと降り立ち、シグナムの様子を窺う。
ゆっくりと起き上がるシグナム。さすがにこれ以上の戦闘はまずいかもしれない。
「っぐ・・・まさかこれほどとは。恐れ入ったぞ、フライハイト」
傷ついている“レヴァンティン”を支えにして何とか立っているシグナムがそう口にする。
「何を言っているの? あなたもあれを受けてまだ立つなんて」
双刀形態となった“トロイメライ”のおかげでここまで戦えた。
でももう限界。“トロイメライ”も“レヴァンティン”も刀身の所々が壊れてしまっている。
おそらく耐えられるのはあと一撃。これで決まらなければ引き分けだ。
「はぁはぁ・・・もう少しだけ耐えてくれ、レヴァンティン」
≪Ja≫
シグナムと“レヴァンティン”もまだやる気だ。
ならそれに付き合うのも悪くはない。
「トロイメライ、着いてきてくれる?」
≪Ja≫
さすがこの世界での私の新しい相棒、分かってくれている。
そうだ。ここまでやったのなら最後の最後まで戦うのみ。
「「カートリッジロード!」」
≪≪Explosion≫≫
お互い最後のカートリッジ一発をロードする。
「紫電――」
「双牙――」
交わる視線、瞳に写すは相手を倒した先にある勝利の二文字。
数秒間の硬直、だけど感覚的には永遠とも思える長い時間だった。
二人の間に風が吹く、それを合図としてお互いが同時に疾走する。
「―――一閃!!」
「―――風炎刃!!」
†††Sideシャルロッテ⇒シグナム†††
衝突する“レヴァンティン”と双剣の“トロイメライ”。
火花が散らしながらもしばらく拮抗していたが、終わりは唐突に訪れた。
“トロイメライ”の刀身が付け根から先が完全に壊れてしまったのだ。
とはいえ私の“レヴァンティン”も刀身が半ばから折れてしまった。
勝敗を決したのはデバイスの耐久力だろう。
フライハイトの実力は私と同等だ。それだけは間違いないと言える。
「私の・・・負け・・かぁ」
「ああ、私の勝ちだ」
だが正直勝敗なんてあってないようなものだ。
互いのデバイスは完全に壊れてしまっている。
そして二人とも未だに立っているのなら引き分けと言えるかもしれない。
「ふふ、なかなかにたのし―――え?」
「フライ・・・ハイト・・・?」
フライハイトの胸から太い腕が伸びている。
突如フライハイトの背後から現れた仮面の男の腕だ。
その腕から光が発せられる。
「っあああああああっ!?」
あまりの激痛ゆえにフライハイトが叫び声を上げ気を失ってしまった。
「っ! 貴様ぁぁぁッ!!」
頭に一気に血が上る。私とフライハイトとの決闘を穢した、その仮面の男に激しい怒りを覚える。
私は折れた“レヴァンティン”で仮面の男へと斬りかかろうとしたそのとき、
「さぁ奪え」
仮面の男はそう一言。
「っ!!」
あの男の手のひらに浮かぶのは、セインテストと同じ三つの円環に包まれたリンカーコア。
散々迷った末、私はフライハイトの魔力を蒐集した。
「許してくれフライハイト」
その後、テスタロッサの守護獣が来るまで、私はフライハイトを抱きしめ続けた。
え~まずは申し訳ありません。
以前のあとがきで、なのはとフェイトの出番を潰したくないと書いておきながら、
シャルがシグナムとの戦いに出てしまいました。
でもこのままではシャルのトロイメライの出番が少なくなってしまうので、
ここで書いておかなければと思いこうなった次第であります。
シャルはルシルのように魔力炉の自己封印が出来ません。
というよりルシルのみが扱える特別な術式ですので。
その所為で結構なページを稼がせてしまいました。
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