新しい力で
†††Sideクロノ†††
「調子はどうだ、ルシル?」
ルシルと守護騎士の戦いから約10時間が経過した。
僕は今、本局の医療施設にある個室で休んでいるルシルの様子を見に来ている。
「身体的損害65%、精神的損害0%、魔力炉における損害49%。
魔術正常使用可能まで概算144時間の猶予が必要」
「は? ルシル?・・・おい、ルシル?」
ルシルのその機械的な言動をおかしく思い、再度呼びかける。
「ん? なんだクロノ?」
「は? 何ともないのかルシル? さっき君は・・・いや、なんでもない」
「おかしな奴だな。言いたいことがあれば言ってくれていいんだぞ?」
さっきのは気のせいだったんだろうか? あんな無機質な表情と声。
しかし今のルシルは普段どおりのルシルだ。
「いや、何でもないからいいんだ。それと、このことはシャルたちには伝えていないから安心してくれ。
離れた世界での捜索がたたり疲労で倒れたと言っておいた」
「・・・・それを聞いたシャルたちのリアクションは聞かないでおくよクロノ、お疲れ。
感謝するよ本当に、さ。あとすまない、守護騎士を足止めしきれなかった」
「それは君が謝ることじゃない、謝るのは僕たちのほうだ。
もう少し早く救援に行けていたら君が蒐集されることはなかった」
ルシルが謝るのは間違っていると僕は思う。
なにより守護騎士を相手に一人で戦い、15分も足止めのために戦ってくれた。
そんなすごい働きをしたルシルを責める者がいたら僕はそいつを絶対に許さない。
「あれは自身の戦力を過信していたのが原因だよ。
初めから潰そうと思えば出来ていたかもしれないのに、本当にそれでいいのかと迷い、何かあればいつでも勝てると思ってしまった自分の過剰な自信、馬鹿なことをしたよ」
「・・・・今はとりあえずゆっくりと休んでくれ。
しばらくしたら艦長も見舞いに来てくれると思う」
「ああ、ありがとうクロノ。あとで今回の報告書を提出しておく」
「くれぐれも無理はしないようにな」
僕はルシルの病室を後にして地球へと戻った。
†††Sideクロノ⇒フェイト†††
「結局この数日間ルシルと会えなかったけど、どれだけ使われてるわけ?」
私とアルフ、シャル、ユーノは修復を終えた“バルディッシュ”と“レイジングハート”を手に、診察を受けているなのはの居る診察室に向かうために廊下を歩いている。
でもそんななか、シャルが不満げにそう愚痴をこぼしながら歩くものだから、私たちの横を通り過ぎる管理局の人たちがその黒いオーラを放つシャルを見て足早に過ぎ去っていくのが分かる。
「シャル、とりあえずその黒いオーラはしまって。
ここは医療施設なわけだから今のシャルの顔と雰囲気はまずいよ?」
ユーノがそう言ってシャル宥めている。
それでようやくシャルから黒いオーラは消えて落ち着き始めた。
「はぁ、ごめん。ルシルが単なる疲労で倒れるなんて思えなくって。
それなのに倒れたってどれだけ荒いことをさせられてるのか気になって、ね」
「うん、でもルシルは自分の体調不管理が原因だから気にするなって言ってたし」
「そうなんだけどね・・・」
診察室前に来たところで、診察室からなのはが出てきた。
私たちはなのはに駆け寄った。
「なのは・・・? その、体はもう・・・」
「うん! もう大丈夫、無事完治だよ!」
「こっちも無事完治だよなのは!」
なのはの笑顔を見て安心する。
だから私も笑顔で“バルディッシュ”と“レイジングハート”の完治を笑顔で告げる。
†††Sideフェイト⇒ヴィータ†††
蒐集を終えて帰ってきたところで管理局に見つかっちまった。
周囲に今まで何度も相手にしてきた武装隊っつう奴らが居て、あたしとザフィーラを包囲している。
「管理局か」
「大したことねぇよあいつに比べたらな」
数日前に戦ったセインテスト。あいつに比べたらこいつらなんてそこらの小石程度だ。
いや、比べること自体が間違っているんだ。あいつは普通じゃないんだから。
つっても正直こいつらの相手をするのも面倒くさくて仕方ない。
でもま、逃げるために戦うのが必要ってんならやってやるさ。
やる気を出したのも束の間、管理局の連中はあたしらから離れてしまった。
「上だ」
ザフィーラの声に従いあたしも上を見上げると、そこにはもう一人の魔導師がいた。
しかもそいつの周りにある魔力の剣群を見て、あたしはセインテストの槍の雨を思い出した。
「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!!」
その号令を合図として撃ち出される剣の雨。
ザフィーラはあたしをかばって障壁を出してくれた。
いくつもの剣を弾いていくけど、三発のみ障壁を突破されザフィーラの腕に刺さっていた。
「ザフィーラ!」
「気にするな、この程度、セインテストの攻撃に比べればまだまだ温い」
そう言って魔力剣の刺さってる左腕に力を込め、刺さった魔力剣を砕く。
つうかザフィーラもセインテストと他の奴らを比べるのかよ。
あたしは上にいる魔導師に視線を向けると、そいつはあたしたちとは別の場所を見ていた。
こんな状況であたしたちから視線を背けるなんて馬鹿にしてんのか?と思い、そいつが見ている場所へと視線を移す。
「あいつら・・・!」
そこにはあの白い奴と黒い奴の二人、そこから少し離れたところにもう三人。
どうやらセインテストは居ないみたいだ。
いや、居たら居たで、その復活の早さにキレてしまいそうだから助かるし。
それにもう二度とあんなふざけた奴とは戦いたくないってのも本心だ。
白と黒の二人はデバイスを起動させて変身を終えた。
だけど、以前とは形状が変わっているデバイスに気づき注視する。
「あいつらのデバイス、あれってまさか・・・」
あいつらのデバイス。あたしらと同じベルカのカートリッジシステム。
チッ、まさかあんなものを用意してくるなんて。
驚きはしたけど、デバイスをちょっとやそっと強化したくらいであたしらに勝てると考えたことに腹が立つ。
返り討ちにしてやる。こっちははやての命が懸かってんだ。負けるわけにはいかねぇんだよっ。
†††Sideヴィータ⇒シャルロッテ†††
エイミィから守護騎士の発見の報を受けて、私たちはすぐに海鳴へと帰ってきた。
なのはとフェイトは新しく生まれ変わったデバイスを手に変身を終える。
二人のデバイスには私や守護騎士と同じカートリッジシステムを新しく組み込んだ。
これで守護騎士のデバイスとの差はほとんどなくなった。
おそらく互角の戦いができるはずだ。
「私たちはあなたたちと戦いに来たわけじゃない。まずは話を聞かせて」
「闇の書の完成を目指している理由――」
まずは話し合いに持ち込もうとするなのはとフェイトだけど、ヴィータが途中で遮る。
「あのさ、ベルカのことわざにこういうのがあんだよ。和平の使者なら槍を持たない」
それを聞いた二人は意味が分からないのか首を傾げている。
ヴィータが言いたいのは、話し合いをするのに武器になんていらなくない?ってことだろう。
「話し合いをしようってのに武器を持ってやってくる奴がいるか馬鹿って意味だよ。バァーカ」
「いきなり有無を言わさずに襲い掛かってきた子がそれを言う!?」
なのは、そんな安い挑発に乗るんじゃありません。
「それにそれは諺ではなく、小話のオチだ」
「うっせぇ! いいんだよ細かいことは」
ザフィーラがツッコミ!? それに反応するヴィータはボケ担当!?
私一人で馬鹿なことを考えていると、付近に雷のようなものが落ち、落ちたビルの屋上にはシグナムが一人佇んでいた。
「シャルちゃん、ユーノ君、クロノ君、手を出さないでね!
私、あの子と一対一だから!!」
そう言われたら手を出すわけにはいかない。
フェイトもそのつもりなのか、念話でシグナムとの一対一での戦いを望んできた。
アルフもまたザフィーラ相手に対抗心を燃やしている。
なら私たちが今やるべきことはただひとつ。
「ユーノ、クロノ、今のうちに連中の主を見つけよう。
あの三人は闇の書を持っていないから、別の騎士か主が近くにいるはず」
「そうだな、ここでこうしていても仕方がないしな。
分かった、僕は外を探す。シャルとユーノは中の捜索を頼む」
「「分かった」」
ていうかこんな状況になっているのにルシルは何してるわけ!?
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
「フンッ、結局やんじゃねぇかよ」
ヴィータちゃんを追っていると私に向けてそう言い放ってきた。
「私が勝ったら話を聞かせてもらうよ! いいね!?」
フェイトちゃんと決めたんだ、話をするために必要なら戦って勝とうって。
だから私は勝つよ。
「やれるもんなら・・・やってみろよ!」
≪Schwalbe fliegen≫
ヴィータちゃんは以前と同じようにあの球体を四つ出して放ってきた。
≪Axel fin≫
「甘ぇっ! アイゼン!」
――ラケーテンフォルム――
“レイジングハート”の機転でその攻撃を難なく回避することが出来たけど、それを見たヴィータちゃんは以前私を追い詰め、“レイジングハート”を壊したあの攻撃を仕掛けてきた。
「ラケーテン・・・ハンマァァァーーーッ!」
正直受け止めるか避けるか迷ったけど、“レイジングハート”は私を安心させるかのようにプロテクションを張るように言ってきた。
「お願いレイジングハート!」
≪Protection Powered≫
衝突して火花を散らすヴィータちゃんの“アイゼン”と私のプロテクションだけど、
「なんだこれ、堅ぇ・・・!」
ヴィータちゃんの言うとおり以前とは比べるまでもなく強力かつ堅固に障壁になった。
うん。これならもう大丈夫だ。前みたいに簡単には墜とされたりなんかしないからね。
≪Barrier Burst≫
“レイジングハート”のその言葉によって、ヴィータちゃんの“アイゼン”の接地点に魔力が集まっていくのが分かる。
そして爆発が起きて、お互いがその爆風によって吹き飛ばされて、間合いが開いた。
でも、やる前にちょっと説明が欲しかったかもだよ“レイジングハート”。
†††Sideなのは⇒ヴィータ†††
くそっ、デバイスを強化してきただけの魔導師に遅れなんてとってたまるかよ。
「アクセルシューター、シュート!!」
あいつから放たれた魔力弾。それが全てあたしを包囲するかのように周囲を飛び交っている。
「アホか!? こんな大量な弾を制御出来るわけねぇだろうが!!」
あたしはそれを証明するために、待機させてあったシュワルベ・フリーゲンを四方からあいつに向けて放つ。
でもあいつは、あたしのフリーゲンを当たる直前で撃ち落しやがった。
(どんだけの制御力なんだよあいつ!?)
セインテストもそうだけど、こいつもとんでもなくヤバイ奴かもしれない。
「約束だよ、私たちが勝ったら事情を聞かせてもらうって。アクセル―――」
「はっ、あたしらに勝てるって思ってんのかよ!? アイゼン!」
≪Panzer hindernis≫
「――シューット!」
あたしはこの包囲網から抜ける自信はないから防御に専念することにした。
だけど次第にヒビが入っていくのを見て選択を少し間違えたと思ってしまった。
くそっ。こんなところで捕まっちまうわけにはいかねぇんだ。だから負けねぇ。
†††Sideヴィータ⇒フェイト†††
ビルの間を駆け上がりながら何度も衝突する私とシグナム。
“バルディッシュ”を強化したおかげで競り負けることがなくなったからこそ出来る戦いだ。
幾度目かの衝突の後、距離が開いたことでルシルの魔術のコード・カマエルを基にしてフォトンランサーを再構築した魔法、プラズマランサーを八基射出する。
≪Plasma Lancer≫
「プラズマランサー、ファイア!!」
放たれたランサーを、シグナムは以前と同じように“レヴァンティン”に炎を纏わせて切り払おうとするけど、それの前に誘導させ回避させる。
「ターン!」
再度シグナムへと突撃させる。だけど、今度はシグナムが上空へと向かうことで回避された。
でもまだ追撃は終わらない。ランサーは魔力が完全に消えるまではいつまででも誘導し追尾できる。
上空へと逃げたシグナムへと三度目の突撃をかけさせる。
≪Blitz Rush≫
プラズマランサーの速度を上げる“バルディッシュ”。
シグナムが構えた“レヴァンティン”から再び炎が吹き上げる。
≪Sturmwinde≫
レヴァンティンから放たれた炎の衝撃波がプラズマランサーを全弾焼き払った。
シグナムの意識が少し私から離れた瞬間を狙って、私は接近して斬りかかる。
≪Haken Form≫
≪Schlange form≫
それに対応したシグナムもまた“レヴァンティン”を鞭のような連結刃に変形させて対抗してきた。
衝突と同時に爆発が起きて互いに距離をとる。
私はシグナムの胸に一撃与え、シグナムもまた私の左腕に二撃当てた。
お互いに決定打を与えられなかったけど、ひとつ多いシグナムのほうが上手であることは間違いない。
「強いな、テスタロッサ。それにバルディッシュ」
“レヴァンティン”を元の形態に戻して、私と“バルディッシュ”を認めてくれたシグナム。
こんな強い人に認めてもらえることは、それだけで嬉しいことだ。
≪Thank you≫
「あなたとレヴァンティンも、シグナム」
≪Danke≫
「フライハイトといいお前といい、全く私は惜しいことをしてしまっている。
この身に成さなければならぬ事がなければ心躍る戦いの筈だったが、 仲間たちと主のため、今はそうは言ってられん。
殺さずに済ます自信はない。この身の未熟を許してくれるか、テスタロッサ?」
シグナムが“レヴァンティン”を構える。
「構いません、勝つのは私ですから」
私だって負けるつもりはない。
勝って絶対に話を聞かせてもらう。
†††フェイト⇒Sideシャルロッテ†††
なのはとヴィータ、フェイトとシグナムの戦いを見て羨ましく思う私。
ヴィータとは戦ったことがないからよく分からないけど、シグナムは昔の私そのままだ。
だからこそ解る。騎士としての一騎打ちというその面白さに。
『いいな~、二人ともあんなに楽しそうに戦ってるよ』
『ちょっとシャル!? 見てないでちゃんと探してよ!』
『はいはい』
私が捜索をサボっているのを念話だけで分かってしまうユーノ。
私だってシグナムと一騎打ちで戦いたかったんだけど、フェイトのほうが先だからね。
そこは諦めるしかない。
「はぁ、私に戦わせてくれる日は来るのかな~?」
†††Sideシャルロッテ⇒シャマル†††
『状況はあまり良くないな。シグナムやヴィータがあのセインテスト以外に負けることはないと思うがここは退くべきだ。シャマル、何とか出来んか?』
私は結界外で待機して、ザフィーラから現状を聞かせられている。
デバイスを強化してきたことでその強さに磨きがかかったらしい二人の少女。
その所為で苦戦を強いられてしまっているシグナムとヴィータ。
それだけじゃない。あの結界の中には、数日前に蒐集したセインテスト君と同等の魔力を持つフライハイトちゃんって子がいるはず。
確かにこのままだと状況はさらに悪くなるかもしれない。
『何とかしたいけど、局員が外から結界維持してるの。私の魔力じゃ破れない。
シグナムのファルケンかヴィータのギガント級の魔力を出せなきゃ』
『二人とも手が離せん。止むを得ん、アレを使うしか・・・』
確かに“アレ”を使えば、この強固な結界も破壊することくらいは出来るだろうけど。
そんなことをしたら折角集めたページが減ることになってしまう。
『分かってるけど、でも・・・っ!』
ザフィーラとの思念通話に気をとられ過ぎたことで、私の背後近づいてきた管理局の魔導師に全く気づかなかった。
『シャマル? どうしたシャマル!?』
私の様子に変化が生じたことを察したザフィーラが私の名前を呼ぶけど、私は応えられない。
「捜索指定ロストロギアの所持、使用の疑いであなたを逮捕します」
その口から告げられるのは私たちへの罪状。
そんなことより今はどうにかしてこの場を離脱しないといけないという考えで頭がいっぱいになる。
「抵抗しなければ弁護の機会があなたにはある。同意するなら武装の解除を」
どうする? 何か良い手はないの? 諦めちゃダメよ私。
必死に離脱の算段を構築するけどどれも上手くはいかない。
そんなとき、私は右から何者かの足音を聞き、視線のみ向ける。
†††Sideシャマル⇒クロノ†††
結界外にいたもう一人の騎士にS2Uを向け投降を呼びかけていると、突如新手が現れて腹部に一撃を入れてきた。
かなり強烈な蹴りだったため、向かいのビルまで吹き飛ばされフェンスに衝突してしまう。
もしフェンスがなければさらに遠くまで飛ばされたかもしれない。
「ぐっ・・・!」
起き上がるまでにあの騎士と何やら話をしていた仮面の襲撃者。
全くかつてのルシルといいこの男といい、仮面をつけたやつはどうしてこうも。
あ、もしかしてルシルの報告にあった第三者とはこいつのことだろうか?
「何者だ!? 何を目的として彼らに手を貸している!?」
「知る必要はない」
それなら力ずくで聞くまでと思ったところで、結界上空に異変が起きたのに気づく。
さっきの騎士が何かの魔法を使おうとしているのを確認するが、それが隙となった。
仮面の男の素早い移動。
「ッぐ――うあああぁあぁ・・・っ!!」
また仮面の男の蹴りを受けてしまうが、地面への衝突は何とか防ぐ。
さっきから蹴りばかりなこいつはどうやら足癖が悪いらしい。
「今は動くな! 時を待て。それが正しいとすぐに分かる」
「なに・・・っ!?」
どういうことだ? 守護騎士を放置することが正しいとでも言うのか?
考える時間もなく、結界の上空からさらに爆音が響き、そして強大な雷撃が結界を直撃した。
結界が破壊されてしまった事で、おそらく騎士たちは逃げることだろう。
それを止めろ、なんてなのは達には言えない。あんな強大な雷撃の中、騎士達を捕まえるために動くのは自殺行為だ。
こうして今回の守護騎士との戦いは、謎の仮面の男の存在が明らかになったということだけが判明した形で終わりを告げた。
†††Sideクロノ⇒シグナム†††
家へと帰り、待っていたのは明かりの点いていない我らの主が家。
今日は主とその御友人である月村すずかという少女が来ることになっていた。
だが私たちの帰りが遅いために、主はやては御友人のお宅へと向かったらしい。
シャマルが主はやての通信端末――携帯電話というらしい――に連絡を入れ、繋がってからはシャマルが主に謝り続けている。
悪いことをしてしまったものだ。
「――はい、じゃあヴィータに」
シャマルからヴィータへと受話器が移る。
ヴィータは主と話し始め、シャマルはテラスへと出て行った。
私もそれに続きテラスへと出る。
「寂しい思いをさせてしまったな」
「うん」
共に居ると誓っておきながらのこの失態。
シャマルは一言返事したが、やはり沈んでいる。
「それにしてもお前を助けたあの男は何者だ?」
それが先ほどから気になって仕方がない。
まさかとは思うが、セインテストが言っていたバインドの主とはあの男のことかもしれん。
我々を助け、管理局側であるセインテストにバインドを仕掛けた者。
「分からないわ。・・・少なくとも当面の敵ではなさそうだけど」
警戒はしておいて損はないだろう。
理由も明かさず我らに手を貸し、“闇の書”の完成を待つ謎の男。
「どちらにしても管理局の連中もこれでますます本腰をいれてくるだろう」
「うん。あの砲撃で大分ページも減っちゃったし」
「だが余り時間もない。一刻も早く主はやてを闇の書の真の所有者に」
主の体を蝕んでいる呪いが主の命を消す時間、そしてセインテストの復活までの時間、どうにかして早く終わらせなければ全てが手遅れとなってしまう。
「シグナム、はやてが代わってって」
「ああ、分かった」
ヴィータより受話器を受け取り、「主はやて。シグナムです」と、声が沈まぬように努める。
主はやての優しく、温かな声が胸に突き刺さる。責めていただけないのだな。
本当に優しいお方だ。約束を反故にしてしまったというのに、責めるどころか優しいお言葉をおかけしてくれる。
だからこそ。我々はやらなければならない。どれだけ他者を傷つけようが、憎まれようが恨まれようが。
主はやての未来のために。この手を穢すことになっても・・・我々は・・・。
Asの難しさには解っていましたがここまでとは。
というよりシャルとルシルを動かさないとこの小説って意味がないですよね?
今更それに気づいてしまいました。
でも決戦ではシャルとルシルの相手は用意していますので大丈夫かと。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。