いざ海鳴市へ
戦いが繰り広げらている空より少し離れたビルの屋上に佇む一人の騎士。
名を湖の騎士シャマル、守護騎士ヴォルケンリッターが一角を担う女性。
足元には料理に使われると思しき食材が入ったビニール製の袋。
厚さのある一冊の書物を左脇に抱え、自分を含めた騎士が敬い慕う主へと連絡を入れていた。
そう、仲間が苦戦している状況がただ信じられないという表情をしながら。
†††Sideヴィータ†††
(何なんだよこいつは!?)
犬ッコロと入れ替わるようにして現れたもう一人の黒い魔導師。
さっきの黒いやつと同じ管理局の人間みてぇだが強さがハンパじゃない。
信じられないことにあたしの魔法――シュワルベフリーゲン――を使ってきやがった。
その後もあたしの障壁を・・・なんつったかな? コード・ゼルエル?だっけ?
その魔法でまるで障壁をただのガラスを割るかのように簡単に砕いてきやがった。
「チッ。何なんだよテメェッ!」
今日で三度も砕かれた障壁を見てヘコんじまう。
それに続いて炎の鳥や竜巻、氷の龍まで使ってきやがるし、わけわかんねぇ。
「そろそろ降参して投降してもらえると嬉しいんだけどな」
なんだよあの余裕は!? ムカツク、ムカツク、ムカツク、ムカツクーーー!!!
ふざけんな、あたしが、あたしたちがこんなところで捕まったら・・・はやてはどうなる!?
だから負けらねぇ、負けられねぇんだ!!
「アイゼン! カートリッジロード!≪Explosion≫ラケーテンフォルム!!」
アイゼンをハンマーフォルムからラケーテンフォルムへと変形させる。
この一撃で、さっき墜とした白いのと同じように一気に終わらせてやる。
「ラケーテン・・・ハンマァァーーーーッ!」
「諦めないか。仕方ない・・・。知らしめよ、汝の力」
衝突する“アイゼン”とやつの十字架。にしても十字架のデバイスって何だよ。
それはともかく。ものすげぇ火花が飛び散りながら、あたしと奴のデバイスが拮抗する。
「ぐううぅぅ・・・!」
こいつ、やっぱミッドの魔導師じゃねぇ。なんなんだこの魔法は!?
おかしすぎるだろこれ!? あたしの魔法を使うし、魔力変換も炎熱に氷結って二つ使いやがるし。
離れたところから撃ってくるだけの弱っちいミッド魔導師が、こんなデタラメなこと出来るわけねぇ。
なんとか拮抗していたお互いの攻撃も、次第にあたしが押され始める。
そして、
「はああぁっ!!」
「っ!? うあああっ!(あたしが競り負けた? 本当になんなんだよこいつ・・・!)」
少し離れたビルまで吹き飛ばされがらも、なんとか体勢を立て直してあの銀髪のガキを睨み付ける。
「さぁおとなしく名前、出身世界、目的を話してもらおうか」
「・・・・チッ、ヴィータ。ヴォルケンリッター、鉄槌の騎士ヴィータ」
ああ、認めてやるよ。あたしじゃテメェに勝てねぇって。
奥の手を使えば、と思ったけど、こいつがそんな隙を与えてくれるとは思えない。
だけど、まだ終わっちゃいない。
『シャマル、早く白いガキから蒐集してくれ。あたし一人じゃこいつを抑えきれない。
わりぃ、シグナム、ザフィーラ。頑張ったけど勝てる気がしねぇんだ』
思念通話で仲間に語りかける。
どうやってもこれ以上は殺す気でいかないと勝てないと。
手加減したままのあたしじゃ、もうこいつを抑えきれねぇよ。
『いや、私の方も似たようなものだ。フライハイトの剣技は疾く鋭い。
まさか主はやてと同じくらいの歳でこれほどまでの力を持っているとは恐れ入った』
『気にするなヴィータ。今回は相手が悪かっただけのことだ。
我が相手をしている少女二人の連携もなかなかのものだ』
『待っててみんな、すぐに蒐集行動に移るから。だからもう少しだけ耐えて』
『『『応!!』』』
だったらもう少しだけやってやる。
†††Sideヴィータ⇒なのは†††
やっぱり強いな~。シャルちゃんとルシル君が来てくれただけで、戦況がこっちに傾いてきてる。
「ねぇユーノ君。私って本当にこのまま黙って見てるだけでいいのかな?
やっぱり何かお手伝いしたほうが・・・」
「う~ん、シャルとルシルは問題ないけど、フェイトとアルフは結構疲れてきてるかも。
シャルにはここで待機って言われてるけど、僕が行ってくるよ。だからなのはは、回復に専念してて」
私のその言葉を聞き、自分が戦いに行くって言ったユーノ君。
やだな~、なんか私って役に立ってないかも。すごく悔しい。
「それじゃ、行ってくるよなの・・・は?」
ユーノ君は私を見て顔色を青くした。
ユーノ君の視線を辿るように私もユーノ君が見ている場所へと視線を移す。
そして私に今起こっている異常をこの目でハッキリと見る。
「え? な、なに・・・これ?」
私の胸の辺りから突き出しているのは、人の腕?
そしてその手のひらの上にあるのは私のリンカーコア。
「あ、あ、ああ・・・!」
「なのはーーーッ!」
イヤだイヤだイヤだイヤだ。あまりの出来事に頭の中が白くなる。
次第にリンカーコアの輝きが失われながら小さくなっていく。
助けて、助けて!!
†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††
ユーノの叫び声が聞こえたからそちらへと視線を移す。
シグナムほどの騎士相手にそれは愚行だけど、ユーノの普通じゃない叫びの方が気になってしまった。
「あれはまさか・・・まだ他にも仲間がいたということみたいね」
なのはに視線を向ける。リンカーコアを手中に収めている腕が、なのはの胸から生えていた。
一瞬パニックになりそうだったけど、出血していないところを見て何とか抑えきることが出来た。
もし出血していたら、魔術を使ってでもシグナムを殺し、なのはを傷つけた奴も殺す。
「驚かないのだな、もう少し取り乱すかと思っていたが」
鍔迫り合いの最中、シグナムがそう聞いてくる。
実際フェイトがそうだった。「なのはぁぁーーーっ」って叫んで向かおうとするけど、ザフィーラに妨害される。
「私は似たようなものを以前見たことがあるので、何とか冷静でいられるだけ。
それに出血していないところを見ると、肉体的なダメージがなさそうなんで」
「ほう、以前に見たことがあると・・・。フライハイト、お前は何者だ?」
私の言葉を聞いてシグナムが私の正体に疑いをかけてきた。
真は抑止力、今は人間、ただそれだけだ。
「騎士シャルロッテ。それ以下でもそれ以上でもなく、ただそれだけの存在」
「その幼さで達観しているのだな。だがもう少し子供らしくあってもいいのではないか?」
シグナムから距離を取る。シグナムはそう告げてくるけど、
「十分子供らしいと思っています。だからこそ・・・戦える!!」
今はそう思う。だから本心を告げた。
≪Schwarz Strom(黒浪)≫
“トロイメライ”の刀身に漆黒の影を渦巻かせる。
狙うはこの一撃によるシグナムの撃墜、そのまま伏兵の探索、打破へともっていく。
「凶牙・・・波瀑刃!!」
放つの漆黒の魔力という津波。シグナムは至近距離での攻撃に、成す術なく飲み込まれた。
私はそのまま伏兵の探索に移ろうとしたけど・・・
「はあああッ!!」
「シグナム!? トロイメライ!!」
≪Seelisch Widerstand(我が心は拒絶する)≫
まさかあれの中を突っ切ってきて、そのうえ反撃までしてくるなんて思いもしなかった。
結構本気で撃ったんだけど。ううん。私がシグナムを甘く見過ぎてたんだ。
「油断したなフライハイト。確かに危なかったがあれでは私は墜とせん!!」
ごめん、こうなったら任せるよ、ルシル。
†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††
ヴィータとの戦闘に集中していると、ユーノが「なのはぁぁーーーっ」と叫んだのが聞こえた。
視線を移すと、なのはの体から腕が生えているうえ、リンカーコアから魔力が奪われている状況だった。
「ヴィータ、あれはなんだ? まだヴォルケンリッターというのがいるのか?」
「うっせぇ、だったら何だよ。それが分かったところでどうしようもねぇだろ!?」
俺に一撃も与えられないのがよほど不満なのか、殺気いっぱいでそう言ってきた。
馬鹿なミスをしてしまったものだ。もう少し周囲を索敵していればこうはならなかった。
なのはから出血がないことは確認しているので何とか冷静でいられる。
(あれは・・・・転送か何かか・・・?)
なんらかの術式で空間を繋げて、リンカーコアだけを狙って取り出したのだろう。
器用な真似ができる魔導師――いや騎士か――がいるものだ。
見たところ肉体へのダメージの心配はなし。しかし精神面へのダメージは計り知れない。
まだ9歳という少女には残酷な光景だ。
「・・・・・なるほど、これが君たちの目的か。
この結界の効果は対象の逃亡封じ、閉じ込めることみたいだな。
つまりこの結界が消えれば俺たちの逃亡を防ぐことが出来なくなってしまう。
そうなれば君たちは用件を果たす前に撤退するしかない、ということだ」
複製の力でこの結界の構成式を読み取り、ヴィータたちの目的を推測する。
ヴィータの顔色に少しだけど変化が見られた。推測が確信へと移行する。
「ならば破壊して、なのはの魔力吸収を止めさせるまでのこと」
「な、おい!? てめ――やめろ!!」
「轟き響け、汝の雷光!!」
蒼の雷光砲撃バラキエルを放ち、結界を瞬時に破壊する。
結界が破壊されたのが理由か、またはなのはの魔力吸収が終わったのか判らないが、なのはの体から生えていた腕が消えていた。
†††Sideルシリオン⇒シグナム†††
ヴィータと戦っていた銀髪の少年――少女かもしれんが――が放った蒼い雷光が天を衝き、結界を一撃で破壊した。
驚いた。この強固な結界を単純な砲撃のみで、しかも一撃。フライハイトと言い銀髪の少年と言い、腕のある術者が居るのだな。
『結界が破壊された!? シグナム、ヴィータちゃん、ザフィーラ、撤退の準備を!!』
シャマルから思念通話が送られてきた。
もう少しフライハイトとの戦いを楽しみたかったが仕方が無い。
「『わかった、いつもどおりの場所で落ち合おう』すまないなフライハイト、この戦い一度預ける。構わないか?」
「ええ、私も早くなのはのもとへ行きたいので、そうしてもらいたいです」
「判った」
私はフライハイトの言葉に甘えることにして、すぐさまこの場から撤退した。
†††Sideシグナム⇒ルシリオン†††
「やりやがったなこのやろうぉぉ!!」
ここにきてついにぶちキレたヴィータ。
いや、仲間を助けるためなのだから、この方法は間違っていない。
そもそもキレていいのはこちらの方だ。いきなりなのはやシャルを襲撃し、それだけにと留まらず、なのはのリンカーコアに何かした。
お釣りが来るほどに許せない、キレていい状況だ。
「他の連中は逃げているぞ?」
「ううぅぅ、覚えてろよバーカ! バーカ!!」
安い捨てゼリフを口にしながら逃亡しようとするが、このまま黙って見逃すつもりはない。
「おっとなのはを傷つけた代金だ、釣りはいらないから取っておけ。光輝け――何・・・っ!?」
逃亡を図っているヴィータに魔術を放とうとしたところ、何者かにバインドをかけられた。
このバインドの色からして第三者の魔法と判断する。
「チッ、まだ伏兵がいたの――がっ!?」
背中に途轍もない衝撃を感じる。
衝撃に耐えられず、そのまま向かいのビルまで吹き飛ばされてしまった。
(いつの間に背後を取られた!?)
バインドをかけられながらも体勢を立て直し、さっきまで立っていた場所に視線を向けたが誰もいなかった。
「逃げられたか、くそっ。いや、今はそれより・・・クロノ! 見ているか!?」
『ああ、結界が消えたことで今そちらの状況を確認できた!
今本局の医療施設の手配をしているから、もうしばらく待っていてくれ!』
「判った。身体的なダメージじゃないから何とも言えないが、出来るだけ早く頼む」
クロノに連絡を取り、俺はすぐさまなのはのもとへと向かった。
†††Sideルシリオン⇒フェイト†††
「なのは!? なのは!」
蒼い狼ザフィーラが撤退したのと同時に、私はなのはのもとへと向かった。
本当は管理局の魔導師なのだから追跡するべきなんだけど、私は友達のことを選んだ。
「少し落ち着いてフェイト。気を失ってるだけだから」
シャルが私の肩に手を置いて、落ち着けって言ってくるけど、落ち着いてなんかいられない。
「俺が応急処置をするから少し離れていてくれフェイト」
「あ、ルシル・・・! なのはが!」
ルシルが私の横を通り過ぎて、なのはの近くに行って膝をつく。
左手をなのはの胸の辺りにかざして、術式の名前を口にした。
「傷つきし者に、汝の癒しを」
なのはを包み込むように蒼い光が拡がっていく。
光に包み込まれたなのはの表情が、苦しそうなものから安らいでいるようなものへと変化した。
以前、傷ついちゃった私に掛けたくれた治癒魔術。
「ルシル、なのはの今の様子ってわかる?」
ユーノがルシルの肩からなのはを覗き込みながら、ルシルにそう聞いた。
「身体的なダメージはヴィータとの戦闘で負ったものだが、もうほぼ治すことが出来た。
さっきの腕はリンカーコアから直接魔力を吸収していただけに過ぎないから、おそらく少しの間、魔法が使えなくなるかもしれない」
「リンカーコアから直接魔力を奪うってそんなこと出来るの?」
私はそんなことが出来る魔法なんて知らない。
だから色々なことを知っているルシルに聞いてみた。
「どうだろう、判らないな。でも実際に出来ているのだからそういう魔法もあるんだろうな」
それから少しして、私たちは管理局本局へと案内された。
†††Sideフェイト⇒シャルロッテ†††
私たちは今管理局本局へと来ている。ここへは初めて来たけど。
「すごい、こんなすごいものが造れるまできたのね次元世界って」
その光景に驚いてルシルへとそう呟く。
ルシルはその呟きの返答として「六千年以上経っているんだから当然だろ?」と言ってきた。
確かにそうだけど、私たちの時代に比べたら本当にすごいものだ。
当時、機械なんて連合の主力“アムティス”でしか見たことなかったし。
これくらいの大きさの建造物はあったし、本局以上に大きな建造物もいっぱいあった。
だけど、機械だというのがすごい。科学ってすごいなぁ。
「それはそうと、なのはについててあげなくていいのか?」
廊下の壁に背をあずけて腕を組んでいるルシルが聞いてきた。
「ん? うん、何か会いづらいというか、ね。それに今フェイトが向かってるから、少し話しをさせてあげようと思って」
「そうか」
ルシルは一言告げて黙ってしまった。
これから私とルシルで決めた計画のために行動を移していかないと思うと気が重い。
「シャルちゃん、ルシル君」
廊下の向こうからなのはとフェイト、クロノが私たちのもとへと歩いてきた。
なのはの表情からもう大丈夫そうだと判って安心する。
「久しぶりだな、なのは。それからすぐに助けようとしなかったことを謝っておきたい。本当にすまなかった」
「ごめんなさい、なのは」
ルシルと二人して頭を下げて、なのはに謝る。
必要なことだったとはいえ、やっぱり辛い。
「そ、そんな! 頭なんて下げないでシャルちゃん、ルシル君。
シャルちゃんたちの言うことも分かるから。
私だっていつまでもシャルちゃんたちに甘えてちゃダメってことくらいは分かるよ本当に、うん」
なのはが手のひらを振りながら焦っている。
そう言ってもらえるのは助かるけど、それが私たちとなのはたちが別れるために必要な計画のひとつとは分からないだろう。
少しずつなのはたちと会う時間を減らしていって、最終的には完全に姿を消す計画。
私たちがなのはたちといる必要は“ジュエルシード”の一件を終えたことでなくなった。
それがとても悲しいけど、それがお互いのためだと思って耐えるのみだ。
「何の話をしているんだ君たちは?」
クロノがそう聞いてきたから、道すがら説明した。
†††Sideシャルロッテ⇒フェイト†††
私はルシルたちから、どうしてあの時黙って見ていたのか教えてもらった。
それはいつか私たちと別れる日が来るから、それまでにルシルたちに助けてもらうことが必要なくなるように強くなってもらいたかった、ということだった。
(やっぱり別れる日が来るんだね。でもずっと会えなくなるわけじゃないから、私は諦めないよルシル)
「そういえば、クロノ。フェイトとなのはのデバイスはどうなっているんだ」
「ん? ああ、今ユーノが見ている。こっちだ」
クロノに案内してもらった部屋の中にはユーノとアルフがいた。
「ユーノ君、アルフさん。やっとちゃんと話せたね」
「そうだねぇ、なのははもう大丈夫なのかい?」
「うん! もう大丈夫だよアルフさん!」
アルフに撫でられながら微笑んでいるなのはを見て、私も笑顔になるのが分かる。
よかった。すぐに歩けるようなもので。ううん。良いことなんかない。
リンカーコアが傷ついてしまった事で、少しの間、魔法を使えなくなった。
「ユーノ、破損状況はどうなってる?」
クロノがユーノに聞いた。
私となのはは“バルディッシュ”と“レイジングハート”のもとへと近寄る。
所々がひび割れていて痛々しい姿になってしまってる。ごめんね“バルディッシュ”。
「正直あんまりよくない。今は自動修復をかけてるけど、基礎構造の修復を済んだら一度再起動して部品交換とかしないとダメかな」
「そう、か。そこまでのダメージを負ってしまっているのか」
「あぅ・・・・」
それを聞いていたルシルとシャルの落ち込みようは私たち以上に酷い。
やっぱり気にしているんだ。私たちはもう気にしてないからって言ったのに。
『アルフ。どうしよう・・・?』
「『そうさねぇ。よし』そういえばさ、あいつらの魔法ってなんなんだい?」
「あれはベルカ式だよアルフ。その昔、ミッド式と魔法勢力を二分した魔法体系だよ」
この重い空気をどうにか出来ないかアルフに念話で相談したら、アルフがそんな疑問を漏らした。
そのアルフの疑問に、ユーノが答える。ユーノの返答を継ぐようにクロノもベルカ式の説明に入る。
「遠距離や広範囲攻撃をある程度度外視した対人戦闘に特化した魔法で、優れた使い手は騎士と呼ばれている」
「それってつまりはシャルのような奴かい?」
アルフがシャルへと視線を移つすから、私たちも自然とシャルのほうへと視線を移す。
シャル・・・まだ落ち込んでる。ルシルは・・・・あぅ、どうしよう。ルシルもだよ。
「ああ、シャルのデバイスであるトロイメライもベルカ式のものを使っている。
偶然にもシャルは地球での騎士らしいから、そこのところが通じるのかも知らない。
ベルカ式のデバイスも難なく使っているしね」
「へ~。それじゃあともう一つ、あの弾丸みたいのは?」
「あれはカートリッジシステムと呼ばれる武装だよ。
儀式で圧縮した魔力を籠めた弾丸をデバイスに組み込んで、瞬間的に爆発的な破壊力を得ることができるというものなんだ」
ベルカ式の説明を聞き終えた後、私たちはある人との面接の時間が来たため、この部屋を後にした。
†††Sideフェイト⇒シャルロッテ†††
ルシルとフェイトの面接だというのに、クロノについてくるように言われた私となのはは、今、管理局のギル・グレアム提督という人の居る応接室に来ている。
ここに来るまでにクロノから聞いたところ、このグレアム提督という人はかつてクロノの指導教官だったらしく、歴戦の勇士と謳われ、艦隊指揮官、執務官長の階位までいったらしい。
「そうか、なのは君は日本人、シャルロッテ君はドイツ人なんだな。
そういえばルシリオン君はノルウェー出身だったか?
懐かしいな、ノルウェーには行ったことがないが日本とドイツには行ったことがあるよ。
私もね、地球出身のイギリス人なんだよ」
「ふわぁ!? そうなんですか!?」
なのはがグレアム提督の生まれがイギリスだと知って驚いている。
イギリス? えっと・・・どこだっけ? 確か学校で習ったはずなんだけど。
それからグレアム提督は、なのはの魔法との出会いが自分と似ていると話をしていた。
確かにその内容はなのはとユーノの出会いに似ていた。
「フェイト君、ルシリオン君。君たちは、なのは君とシャルロッテ君と友達なんだね」
「はい」
「もちろんです」
ルシルとフェイトは即答。
このままずっとなのはたちと友達でいられたら私とルシルはどれだけ幸せだろうか?
そんなことばかり考える自分が情けない。
決めたじゃないか、もう私たちはなのはたちに必要のない存在になろうと。
「約束してほしいことは一つだけだ。友達や自分を信頼してくれる人のことは決して裏切ってはいけない。
それが出来るなら、私は君たちの行動について何も制限しないことを約束する。出来るかね?」
「はい、必ず」
「はい」
裏切らないということ、それはもう手遅れだ。
私たちはもうすでに嘘で自分たちを塗り固めてみんなを裏切っている。
ルシルもそれが分かっているからこそ、あんな表情をしているんだ。
その後、クロノが今回の一件の捜索捜査担当になったことを告げ、部屋を後にした。
クロノとグレアム提督の間で、闇の書関連のことで何かあったのだろうか?
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
私とシャルちゃんは今、フェイトちゃんたちと別れてエイミィさんとお話してます。
なんとフェイトちゃんとリンディさんが親子になるかもしれないとのことでした。
「まぁまだ本決まりじゃないんだけどね。
フェイトちゃんってあの事件で天涯孤独になっちゃったでしょ?
だから艦長の方から家の子供にならないか?って聞いたみたいなんだ。
まぁルシル君にも同じような話をしたようだけど、あまり乗り気じゃないみたい」
リンディさんとフェイトちゃんが親子、かぁ。
ならクロノ君はフェイトちゃんのお兄ちゃん・・・?
「なのはちゃんとシャルちゃん的にはどう思う?」
「私はその、すごくいいと思います」
「私はフェイトとリンディ艦長の養子縁組には賛成だけど。
でもルシルはたぶんその話には乗らないと思うよ」
エイミィさんに私たちの意見を話す。
私はフェイトちゃんもルシル君もリンディさんと親子になるのがいいなって思ったけど、シャルちゃんはルシル君が養子になるのはないだろうって言った。
「う~んそっか、やっぱりルシル君には何かあるのかな~?」
エイミィさんがルシル君のことですごく悩んでいる。
ルシル君、か。ルシル君には一体があるんだろう?
唯一ルシル君の事を知っていそうなシャルちゃんはその後も何も語ろうとはしなかった。
†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††
私たちはリンディ艦長に呼ばれて、ある一室にアースラスタッフの人たちと一緒に集められてる。
「さて、私たちアースラスタッフは今回ロストロギア闇の書の捜索、及び魔導師襲撃事件の捜査を担当することになりました。
ただ肝心のアースラがしばらく使えない都合上、事件発生地の近隣に臨時作戦本部を置くことになります。分割は―――」
(事件発生地の近隣って海鳴市のこと?)
案の定、リンディ艦長はなのはの家の近所に臨時本部を置くと言っていた。
騒がしくなりそうだ。でも楽しくなりそう。というか嬉しい。
†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††
なのはの近所のマンションへと引っ越してきた俺たち。
いやはや、まさかこんな形でこの街に住むことになるとは。何が起こるか判らないな。
今のなのはのテンションがものすごく高い。フェイトも高く、シャルはついていけてない。
俺にもついていけそうにないから、少し離れてクロノの手伝いをしている。
「「こんにちはー!」」
そんな中、玄関に現れたのはなのはたちの友達、アリサ・バニングスと月村すずかの二人だ。
玄関から俺を見て「あ」と二人揃って口を開けてしまっている。
まずはこちらから挨拶をしようか。
「こんにちは。直接会うのは温泉以来だね」
「う、うん。えっと、ルシリオン君、だよね。えっと、久しぶりって言うのかな?」
「そうでしょ? 会ったことがあるんだから、久しぶりルシリオン」
反応が対照的な二人だ。ビデオメールを見てなんとなくそう思っていたけど、ここに来て確信。
「久しぶりアリサ、すずか。ビデオメールでも言ったとおりルシルで構わないよ」
「えっと、ルシル、君」
「そう? じゃあルシルね」
本当に対照的だ、豪快なアリサに慎み深いすずか。
そういえばシエルとカノンもこんな感じだったな~。
さて彼女たちはなのはとフェイト、シャルに会いに来たのだろうから待たせるのも悪いな。
「今なのはたちを呼んでくるから少し待っていてくれ」
†††Sideルシリオン⇒なのは†††
私たちは今、お父さんとお母さんのお店翠屋でお茶をしている。
リンディさんは父さんたちに引越しの挨拶をしに行っていて、ルシル君はクロノ君たちと話があるからと言って残ってしまった。
一緒に来ればよかったのに。そうしたらお父さんやお母さん達に紹介できたのに。
それに、アリサちゃんとすずかちゃんたちと一緒にルシル君とお話もしたかったなぁ。
「まぁここまでの女の子に囲まれると、ルシルまで女の子に見られることになるからね~。
それがイヤだから残ったんだと思うよ」
シャルちゃんがルシル君の残った理由を話す。
ルシル君が女の子に? そんなわけが・・・・あ~見える。
「ルシルの後ろ姿を見たら誰だって女の子だと思うわよ。
前から直接見ても女の子に見えるんだから」
「アリサちゃん、それはルシル君に失礼だよ」
「すずかはそう思わないの? だってルシルって家事も出来るんでしょ?
生まれてくる性別を絶っっっ対間違ってるわよ。
ねぇねぇ、女の子の服を着せたら似合うと思うんだけど、どうかなシャル?」
うわぁ、アリサちゃんがルシル君のことをメチャクチャ言ってるよ~。
シャルちゃんはそれを聞いて「それいい」と笑いながら賛同している。
ルシル君、私たちについてこなくて本当によかったね。
もしかしたらいつか女の子の服を着ることになるかもしれませんが、私では助けられそうにありません。
ごめんなさい。でも私も似合うと思うから少し見てみたいです。
「でもでも、ルシルって男の子らしいところもあるんだよ。
いつも私のこと考えていてくれたし、助けてくれたし格好いいんだよ」
フェイトちゃんが少し照れながらそんなことを言うものだから、アリサちゃんの標的にされてしまった。
「なになに、フェイトってルシルのことが好きなの?」
「え? ええっ!? あ、その・・」
始まった。アリサちゃんは人の恋のお話とか大好きなんだよね。私もだけど。
フェイトちゃんもアリサちゃんの妖しく光る目に気付いたのか、私たちにヘルプの視線を向けてくる。
私は意を決して助けに入ろうとしたとき、アレックスさんが大きな箱を持って私たちのところへとやってきました。
そしてみんなで箱の中身を確認して驚いた。
「ねぇこれって・・・!」
「うん、やっぱりそうだよね・・・!」
急いでリンディさんのところへ行って聞いてみないと。
†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††
アレックスさんがフェイトへ持ってきたのは私たちの通う聖祥小学校の制服。
間違いない、リンディ艦長はフェイトを通わせる気だ。
なのはたちはことの真相を確かめるため、翠屋店内へと突撃していってしまった。
私もそれに遅れて続いていく。
入り口付近まで来たところで、リンディ艦長が、週明けからなのはたちと同じクラスで通えるって話しているのが聞こえた。
それを聞いたなのはたちのテンションはそれはもう最高潮、私ではついていけそうにない。
「リンディさん、ルシル君もフェイトちゃんと同じように通うんですか?」
なのはがルシルも同じ学校へ通えることになっているのか聞いている。
ルシルが学校? うわっ何か違和感でいっぱいになる。
「えっとね、ルシル君は自分の国の大学を出ているらしいから、もう学校にいかなくてもいいらしいのよ。
だからなのはさんたちと通えるのはフェイトさんだけなの」
「「「「え? えええぇぇぇぇ!!?」」」」
翠屋に響き渡る少女四人の絶叫、店内は一気に静まり返る。
っていうか大学? それって確かまだ先の学業を学ぶ学校よね!?
何でそれを卒業なんかしてるのよルシル!?
†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††
「クシュッ」
「なにルシル君、またくしゃみ? 風邪でもひいたの?」
「いや、何か背筋がゾクッとしたんだけど・・・、風邪ではないかと」
今の悪寒はなんだろう? さっきから何度もくしゃみをして、クロノの話を中断させてしまっている。
「すまんクロノ、続けてくれ」
「ん? ああ、この闇の書の最大の特徴はそのエネルギー源にあるんだ。
闇の書は魔導師の魔力と魔法資質を奪うために、リンカーコアを喰うんだ」
「物騒だな。なのはもそれの被害にあったというわけ、か」
「それで間違いないはずだ。闇の書はリンカーコアを喰うと蒐集した魔力と資質に応じてページが増えていく。
そして最終ページまで全て埋めることで闇の書は完成する」
なるほど。確かに性質の悪い書物のようだが契約には入らないようだ。
つまりはこれで世界の危機が訪れることはないということ。
それならば安心してクロノたちに任せられそうだ。
「ねぇクロノ君。もし闇の書が完成したらどうなるの?」
確かにそれは聞いておいたほうがいいかな。
だがクロノの様子からしてあまりいいことではないみたいだ。
「少なくとも碌なことにはならない」
拳を握り締めるその姿は、ただ何かに耐えているかのようだった。
少なからず何らかの因縁があるようだ。
†◦―◦―◦―◦―◦↓シャルシル先生の魔法術講座↓◦―◦―◦―◦―◦†
シャル
「はーい、今回も始まったシャルシル先生の魔法術講座♪」
ルシル
「今回は結構な数が出てきたな」
なのは
「えっと、シャルちゃん。私とユーノ君ってもしかしてお払い箱?」
ユーノ
「僕、この第二章から先、一気に出番がなくなるから、このコーナーだけが最後の砦なんだよ」
ルシル
「切実だなユーノ」
シャル
「なのは、ユーノ。私が大切な友達を見放すわけないでしょうが。
これからも一緒に頑張っていこうね二人とも」
なのは
「シャルちゃん。・・・うんっ、頑張ろうねっ♪」
ユーノ
「よかったぁ。これからもよろしくお願いするよ、シャル」
ルシル
「決まったようだな。あと、俺の方から新しいメンバーを紹介したいんだが」
シャル
「おっ。私もそのつもりだったからちょうど良いね」
ルシル
「では。フェイト、アルフ。来てくれ」
フェイト
「えっと、おじゃまします。フェイト・テスタロッサです」
アルフ
「じゃまするよ~。フェイトの使い魔アルフだ」
なのは
「フェイトちゃん、アルフさん」
フェイト
「なのは。ルシルもみんなも。よろしくね」
シャル
「メンバーが揃ったことで、早速始めようか。
今回、私が使った魔法は、
――凶牙波瀑刃――
の一つだけ。これは、闇黒系の魔力の波を放つっていう元魔術ね。
シュヴァルツは闇。シュトロームは流れっていう意味なの」
フェイト
「状況が状況だったからよく見ていなかったけど、あのすごい剣士シグナムに放ってたよね」
アルフ
「あーでもアッサリと突破されてたね~」
シャル
「うぐ。まぁ文句は言えないけどさぁ、事実だから」
ユーノ
「あ、でも、あの魔法って結構範囲が広いし、威力も高いから並の魔導師じゃ防げないよね」
ルシル
「だが今回の敵は並じゃない。あの剣士相手にはもう通用しないだろうな」
シャル
「分かってるって。ほら、今度はルシルの魔術の紹介だよ」
ルシル
「あ、ああ。俺が今回使ったのは
――知らしめよ、汝の力――
――轟き響け、汝の雷光――
――光輝け、汝の威光――
の三つだな。コード・ゼルエルは、補助術式だ。魔術効果や身体能力の強化が出来る。
コード・バラキエルは、単純な雷撃系の貫通性の高い砲撃術式だ。
直撃した対象のところにしばらくプラズマが残り続け、さらにダメージを加算していく。
コード・ウリエルは、閃光系の砲撃術式だな」
なのは
「ゼルエル、かぁ。ルシル君の魔術ってただでさえ強力なのに、それをさらに強化って・・・反則じゃない?」
アルフ
「敵からして見ればそうなのかもねぇ。けどあたしらからしてみれば心強いよ、ルシルの強さは」
フェイト
「そ、そうだよねっ。ルシルが居てくれればどんな困難でも乗り越えられるよっ」
シャル
「おお、フェイトが大胆になってるよぉ~♪」
フェイト
「ふぇっ!? え、えっと、その、あっ、バラキエルってすごいよねっ! 結界を一撃で破壊したしっ!」
なのシャルフ
「ニヤニヤ」
フェイト
「な、なんでそんなにニヤつくの・・・? アルフまで・・・」
ルシル
「(助けた方が良いな)それはな、フェイト。バラキエルは、放たれてから着弾するまでの間、大気にある電気を吸収していくんだ。
だから発射時より威力が上がっている。あとは、結界の脆いところを狙ったからだ」
ユーノ
「脆いところ? ルシルはそんなものまで分かるんだ」
シャル
「ホント何でもありだから恐いわぁ」
アルフ
「あたしとしてはシャルもなかなかに恐いんだけどね。
陸戦でフェイトを圧倒するしさ。シグナム相手にも一歩も引かないし」
なのは
「あぅ、ルシル君はルシル君で、あの子に勝っちゃったし」
なのフェイ
「魔術師ってやっぱりすごい」
シャルシル
「二人も頑張り次第だよ」
なのフェイ
「そうなのかなぁ~・・・?」
シャル
「そうだって。っと、もうこんな文字数。それじゃ今回はここまでっ!」
本当にこのまま進めて良いのか迷う今日この頃。
シャルとルシルは、この世界に来てなのはたちとの関係の輪に入ってしまったことで、完全に人間だったときの自分へと戻っていってしまいます。
だからこそ迷いのなかった守護神という己のスタンスが徐々に崩壊していく。
シャルとルシルの結末は既に決定していますが(というよりそれが書きたくて始めた)、それまでは楽しい時間を過ごしてもらおうかと考えています。
あとルシルのノルウェー出身設定ですが、ANSURは北欧神話関連が多くノルウェーはちょうどその文化圏に入っているのでノルウェー出身としました。
本当なら術式名なども古ノルド語から分化したノルウェー語にしたいのですが、ANSUR執筆時代と同じくノルウェー語関連の資料が少ないのです。
辞書を買おうにも書店には置いていないうえにネットでは高い!!
3万超えってなんですか?もっと安いのがありますが内容がわからないので手が出せず、ここまでずっと英語にしてきました。
ほぼ諦めていますがノルウェー語で書きたかったなぁ~。
それともう一つ、ルシルの飛び級大卒。
どこかのなのは関連サイトで呼んだ記憶があるのですが、中学校では男子女子は別々の校舎で学ぶらしいのです。
ならあと数年だけの共学生活なら、別になのはたちと過ごさなくてもいいんじゃない?と思い、通わせませんでした。
下手に恋愛フラグを作っても無意味ですし。
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